西武ライオンズの「裏金問題」に関する調査委員会が中間報告を発表した。
それは、予想以上に日本球界の悪弊に切り込んだ評価できるものといえる。その報告に接して、まず頭に浮かんだのは「ロッキード事件」だった。
その事件は『田中角栄の金脈と人脈』(立花隆)『淋しき越山会の女王』(児玉隆也)というふたつのレポートが月刊誌に発表されたことが発端となった。が、そのとき政治家やその周辺にいる「関係者」(もちろんジャーナリストを含む)の多くは、「そんなことなら、誰もが知っていた」とうそぶいたという。
一国の首相の逮捕にまで至る大事件は「関係者」なら「誰もが知っていた」事実が表沙汰になったことから起きたのだった。
西武の「裏金事件」も、まったく同じ構造といえる。
自分たちが決めた契約金の上限をどの球団も守っていないことなど「関係者」なら誰もが知っている。
プロ球団から裏金を得て、高級外車に乗っているアマチュア野球の「関係者」がいることも、多くの「関係者」は知っている。
新人の獲得時だけではない。トレードでもFAでも裏金は動き、某球団の一流選手の実際の年俸は、「推定」として発表されている金額の約2倍ということも、「関係者」の間では「常識」だ。
プロとアマの関係だけではない。少年野球から高校野球、高校野球や大学野球から社会人野球へ進むときに「支度金」の用意されることがあることも、「関係者」なら誰もが知っている。
清廉な野球関係者(指導者)も存在するが、そういう人物が裏金を手にしないことで尊敬されたり評価されること自体、異常というほかない。
今回の西武調査委員会の中間報告が、他球団の裏金をも示唆したことで「自球団の問題を他球団に押しつけるな」と批判する声が出たそうだが、今回の問題は日本の野球界全体の大問題である。
「関係者」(もちろんスポーツジャーナリストも含めて)は全員、現在の日本の野球の構造を破壊し、新しいプロ野球、新しいアマチュア野球を創造するくらいの覚悟と気概で、旧弊の打破に取り組んでほしいものだ。
元の原稿には書かなかったことを一言付け加えておきます。
「改革」とは、じつに簡単なことです。「組織」を変えようとせず、「人」を変えればいいのです。「人」を残して「組織」を変えようとしても、それは無理でしょう。「裏金」のことをすべて知っている(どころか関わってもいる)人物が、メディアで「解説」をしたり、「改革」を主張しているようでは、日本の野球界は変わらないのかも……。 |