ロサンゼルス・エンゼルスの二刀流・大谷翔平選手が、米メジャー・リーグ(MLB)初となる2度目の満票でアメリカン・リーグMVPに輝いた。まったく見事な快挙と言うほかない。
が、一方で、我々日本人は何とも保守的で、否定的な考えに縛られているかということを、再認識させられた。
なぜなら今から30年前、野茂英雄投手が日本のプロ野球(NPB)を飛び出しMLBに加わったときは、多くの人が彼の活躍を否定し、半年で尻尾を巻いて帰ってくる」と断言した野球解説者もいた。
しかも野茂が、1年目から奪三振王となり新人王を獲得する大活躍をすると、今度は「投手は成功できても打者は無理だろう」と言う人が現れた。
ところがイチロー選手が大活躍。すると外野手は務まっても内野手は無理との声。そこへ松井稼頭央選手や井口資仁選手が内野手としてMLBで大活躍。
「捕手は絶対に無理」の声は、城島健司捕手が覆し、「長距離打者は難しい」との声も、松井秀樹選手がワールドシリーズMVP。そして「二刀流は無理」との声も、大谷選手がぶち壊したのだ。
これから先も、多くの日本人野球選手がMLBで活躍するだろうが、ここで野球解説者の皆さんにお願いしたいことがある。
それは選手の「解説」よりも、日本のプロ野球(NPB)のあり方に対する「解説」や「批判」もしてほしいということだ。
MLBで日本人選手が活躍するのは確かに日本人として喜ばしいことだが、NPBが現状のままでは、アメリカに優秀な選手を供出するだけで、これではまるでMLBの二軍リーグだ。
野茂投手がアメリカに渡った頃のMLBの市場規模は約1千5百億円で、日本の市場規模もほぼ同等だった。しかもMLBは選手組合の長期ストライキなどで、存続が危ぶまれるほどの危機にあった。
が、MLBは新たに球団を増やし、リーグ全体で多角経営に乗り出し、FA制度の改正などで選手の年俸を引き上げたり……で、市場規模を約1兆円にまで拡大した。
一方NPBの市場規模は約2千億円と、ほぼ横ばいのまま。選手の平均年俸はMLBが4億5千万円に対してNPBは約4千3百万円と、10倍もの差をつけられた。
細かい為替の変動は無視しても、NPBの市場規模の頭打ち状態は、まるで昨今の日本経済の低迷ぶりそのもので、円安状態が続くならますますMLBでドルを稼ごうという選手が出てくるに違いない。
NPBは、来年度から二軍の2チーム増加を決定した。が、その二軍の2チーム「ハヤテ223(フジサン)」と「新潟アルビレックス」には、「一軍チームを持たないこと」という参加条件を付けた。
一軍は既存の12球団で利益を分け合いたいというわけか。こんな挑戦心の欠如したNPBではファンも発展する未来像を描けず、MLBでの日本人選手の活躍に注目するほかないのか……?
今、日本の子供たちの野球人口が、激減しているという。それを危惧してか、大谷選手は日本全国約2万校の小学校にグローブを合計6万個プレゼントした。
みんなで野球をやろう! と呼びかけたのだろうが、いま日本の野球界に必要なのは経営陣によるNPBのMLB並みの大改革! 野球解説者にも、それを訴えてほしいと思う。
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