競走や高跳びなどは、なぜ「陸(の)上(の)競技」と呼ぶの?
「おれは、バスケ部に入る。おまえは……?」 「おれは陸上をやるよ。足に自信があるから」
こんな中学一年生の会話を耳にして、ちょっと驚いた。「陸上をやる」って、どういうこと?
もちろん「陸上」とは「陸上競技」のことで、競技場の競争路(トラック)を走って速さを競ったり、野原(フィールド)で跳躍や投擲を競うスポーツだとはわかる。が、それを「陸上競技」とか、「陸上」と略して呼ぶのは、少々おかしくないか?
英語では、アスレチックス(athletics=運動競技)や、トラック・アンド・フィールド(track and field)という名称があるのに、なぜ日本語は「陸(の)上(の)競技」などと奇妙な言葉になったのか?
調べてみると、正岡子規の『松蘿玉液』(中国の有名な墨の名前)という彼の随筆集に辿り着いた。
明治時代に「西洋より来りし戸外遊技」に興味を抱いた彼は、まず「今最も盛んに行はるるは端艇競漕(ボートレース)」と書き、水上の競技に対して「陸(の)上(の)競技」として「競走,高飛、棹飛(棒高跳び)、幅飛。槌投(ハンマー投げ)、鉄丸投(砲丸投げ)」などを紹介。
さらに「競馬、テニス、ベースボール」を紹介し、子規が最も気に入ったベースボールの詳しい説明へと続けた。そのなかで、競馬やテニスやベースボールは、それぞれ固有の名称で呼ばれるようになったが、その他の競走や跳躍競技や投擲競技は、同じ場所で競技を行うこともあって、最初に子規が名付けた名称の「陸上競技」と一括して呼ばれるようになったらしい。
「陸上競技」以外に、何か良い呼び名はあるでしょうかねえ?
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