18歳高校3年生・菊島宙さんという素晴らしい女子サッカー選手の存在を知った。
小学2年の頃に、社会人リーグでプレイしていた父親からサッカーを教わったが、生まれつき視力に障害があり、小学4年から視覚障碍者の5人制ブラインドサッカーに転向。そこで急成長し、2015年の日本選手権に13歳で初出場。史上最年少ゴールを記録。
一昨年と昨年の日本選手権では2年連続得点王でMVPも獲得。17年には女子日本代表の一員として、ウィーンで行われたIBSA(国際ブラインドサッカー協会)トーナメント大会に優勝。
昨年のさいたま市ノーマライゼーションカップでもIBSA世界選抜に10対0で勝利。そのうち9得点を挙げてMVP。
「ブラインドサッカー界の澤穂希(さわほまれ)」と呼ばれる彼女の素晴らしさは、ユーチューブで紹介されているプレイの映像を見れば一目瞭然。ボールを見事にコントロールし、身体を反転させてドリブル突破する様子は、目が見えていると思えるほど鮮やかだ(大住良之さんは、ブラインドサッカー界のメッシだ!」と興奮されてました。
彼女は男子チームでもエースとして活躍でき、来年の東京パラリンピックでの活躍に期待したくなるのだが、パラリンピックのブラインドサッカーは男子のみ。女子種目はなく、日本では許されている男子の試合への女子の参加も認められていない。
菊島選手は「夢はパリンピックでの優勝」で「女子の種目ができれば最高ですが、男女混合チームとして参加できるようになったら、男子チームに混じって出場したい」と語る(東京都ホームページより)。
しかし彼女の「夢」は、東京大会での実現は無理で、24年のパリ大会でのルール変更に期待してのことだという。
これほど素晴らしい選手がいるなら、もう少し早く日本からパラリンピックのルール変更の声をあげられなかったものかと残念だ。が、日本のスポーツ界自身が、まだまだ女子のスポーツに対して閉鎖的で差別的なままなのだ。
オリンピックや国際大会では、男女が同じ競技を同じように行うのが大原則。男子のみの競技、男子のみの大会や組織は、「弱者(女性)差別」で許されないというのが世界のスポーツ界の常識だ。
が、たとえば日本の高校野球の甲子園大会は、男子のみ。女子硬式野球も存在するが別組織で、誰も不思議にさえ思わない。チーム数が少ないから、と言うのは理由にならない!少ないチーム数でも、同じように大会を開催するべきなのに、同じ競技なのに、男女で組織まで異なっているのだ。
毎年日本武道館で開催される天皇杯日本選手権も男子のみの大会。女子の皇后杯日本選手権は別の場所(横浜文化体育館など)で別の日に行われる(今年は新型コロナで男女とも12月に講道館で開催されるが、同じ日ではない)。
以前から山口香さんなど多くの女子柔道家が、男女とも同じ日に日本武道館での開催を要求しているが、なぜか受け入れられない(理由は「昔からそうしている」という馬鹿馬鹿しいものだという)。
箱根駅伝も男子大学生のみ。高校駅伝までは全国大会も男女同じ日に同じ場所で開催されているが、テレビの全国ネットで人気の高いお正月イベントの箱根駅伝は女子選手を排除。関東以外の大学も排除(関東学生陸上競技連盟主催)という「差別的」な大会だ。
高校野球も箱根駅伝も、朝日、毎日、読売という大新聞社と系列テレビ局が主催・後援し、人気を盛りあげているが、「弱者(女性)差別」を助長する行為はジャーナリズムとして即刻「改善」する必要があるのでは?
こんな現状では、菊島選手のような逸材が世界で活躍するためのルール変更も、日本から主張することは不可能。男女共同参画社会の実現も程遠いと言えそうだ。マスメディアの責任は大きいのでは……?
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