東京オリンピック・パラリンピックは、海外からの「観客」を受け入れないことが決定された。
海外で販売済みの入場券は約63万枚。その払い戻しも大変だろうが、東京へ行って応援を……と思っていた選手の家族や友人は、さぞかしガッカリしているだろう。
それに多くの来日外国人と記念バッジの交換を楽しんだりする機会も減り、「異文化交流」のチャンスが少なくなって淋しいオリンピックに……と思っていたら、問題は「観客」だけでなく「選手」への影響も大きいことがわかった。
たとえばロンドン五輪やリオ五輪では、日本の選手団の多くが「ジャパンハウス」を利用したことを御存知の方も多いだろう。
そこでは日本料理を自由に食べることができ、医療スタッフも揃っていて、マッサージや風呂など身体のメンテナンスも日本にいるときと同様に受けることができた。
そのようなシステムを今では多くの国が取り入れ、選手のコンディションを最良の状態に保ち、メダル獲得を目指す選手を応援しているのだ。
が、そのような「応援スタッフ」は、競技団体の役員や選手のコーチのように選手団の一員としての入場許可証(クレデンシャル)が発行されず、試合を見る場合は入場券を手に「観客」として会場入りすることになる。
東京大会での日本選手は地元開催で「ジャパンハウス」も必要ないが、海外から来日する選手にとっては大問題。
各国が「○○ハウス」といった拠点を作るのはコロナ対策上もちろん許可されないだろうし、柔道やレスリングやボクシングでは、コーチの他に練習相手(スパーリング・パートナー)が絶対に必要で、彼ら「練習パートナー」が「観客」として日本に入国できないとなると、日本の「練習パートナー」にボランティアとして参加してもらうことが必要となる。
が、身体が直接接触する格闘技のような練習相手となると、協力者を見つけるのは容易ではないだろう。そうなると日本選手に対して、海外の選手のハンディはかなり大きくなる。
しかもIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長や組織委員会の橋本聖子会長は感染防止のため、選手は試合の4日前に選手村に入り、試合終了の2日後には選手村を離れることを求めている。
が、それは選手村での行動日程で、多くの選手はその前に、自国の五輪委などが確保した日本各地のキャンプ地でトレーニングを行い、時差調整をしたり体調を整えたあと選手村に入る。
ところが北海道から沖縄まで、各地に存在する各国のキャンプ地のなかには住民のコロナ対策で手一杯で海外選手のコロナ検査体制や医療体制まで手が回らず、キャンプ地返上を申し出る自治体も出始めている。
そこで別のキャンプ地が見つからないと「キャンプ地難民」となって行き場のない海外選手も出かねない。
しかし、そんなハンディのなかで開催するオリンピックも悪くないかもしれない。
練習が十分にできず、自分の力を発揮できない選手が必死に奮闘する姿は、金銀銅のメダル獲得選手より価値ある尊いに違いない。
そのときメディアは、「国別メダル獲得数」という無意味な数字を発表するのをやめ、それを「東京モデル」として「遺産(レガシー)」にすればいい。オリンピックとは参加することに意義があるのだから。
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