IOC(国際オリンピック委員会)が、東京大会の4年後の2020年パリ大会から「e(イー)スポーツ」をオリンピックの正式競技に採用するかもしれない、というニュースを聞いて驚いた。
「eスポーツ」とは「エレクトロニック・スポーツ(erectronic sports)」の略で「電子工学(エレクトロニクス)」を用いたスポーツのこと。早い話がコンピューターゲームで、つまりテレビの画面の動画を見ながら、リモコンをカチャカチャと動かすゲームを、オリンピックの正式競技として採用しようというのだ。
それがスポーツと言えるのか? と訝(いぶか)る人も多いだろう。が、スポーツという言葉の原義に従えば、けっしておかしなことではない。
スポーツとは元々ラテン語のデポラターレから生まれた言葉で、「日常の労働や仕事から離れた遊びや祭りの時空間」といった意味。だから英和辞典で「sport(s)」
という言葉を調べると、「スポーツ、運動、競技、体育」などのほかに「娯楽、遊び、冗談、おふざけ」といった言葉も並んでいる。だからeスポーツ(コンピュータゲーム)も立派なスポーツの一種と言えるのだ。
実際アジア大会では、チェス、ビリヤード、社交ダンスのほか、囲碁や中国象棋(シャンチー)が正式競技として実施されたこともあった。また、コントラクト・ブリッジ(トランプを使い、4人でテーブルを囲んで行うゲーム)は、現在行われているインドネシアでのアジア大会での正式競技となり、72歳の中尾共栄(なかおともえ)さんが日本代表選手として参加している。
2年後の東京五輪では、サーフィン、スポーツクライミング、野球・ソフトボール、空手、ローラーボードの五競技が東京大会に限った新規採用競技に選ばれ、そのときは残念ながら落選したが、コントラクト・ブリッジも正式競技として選ばれるよう立候補していた。ほかにも、チェスやダーツなども立候補し、採用の可否が審査されたのだった。
だからリモコンをカチャカチャと動かすeゲームも立派なスポーツなのだ……などという書き方は、eスポーツの競技者(ゲーマー)に対して失礼な表現とも言えよう。何しろ彼らは、インターネットで結ばれた相手と、延々と数時間もかけて対戦するのだ。そのため一流のゲーマーは、常日頃からランニングでスタミナをつけ、腕や指先や腰に疲れが生じないよう筋肉を鍛えるトレーニングにも励んでいるという。けっしてソファに寝転んでポテトチップスをつまみながらできる競技ではない(らしい)のだ。
それにeゲームには、プロのゲーマーたちも世界中に大勢存在するという。賞金総額が20億円を超す世界大会には、一流のプロの競技者たちが集まり、1万人以上(!)もの観客が押し寄せ、会場に設置された大型スクリーンで競技者の動かす動画を凝視しながら、素晴らしい技が飛び出したときには(画面のなかの動画の主人公が高得点を叩き出すような見事な動きをしたときには)、会場は(サッカーや野球の観客席と同じように)大歓声と大拍手に包まれるという。
これほど世界的に人気のあるeゲームを、「スポーツ競技」として取り入れようとするのはIOCだけではない。FIFA(国際サッカー連盟)も、サッカー人気を広げるため、「eサッカー」の国際大会の開催を計画しているという。
そんなeスポーツ人気が広がれば、いずれ学校の課外活動(部活動)にも「eスポーツ部」が生まれて、中高生は放課後にコンピューター・ゲームで「eスポーツ甲子園大会」を目指し……。
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