今年の東京マラソンでは、様々なことを考えさせられた。
優勝したのはケニアの選手。現在男子マラソン世界記録の歴代10傑はケニア(7人)とエチオピア(4人)の選手が独占(10位の選手が同タイムで合計11人)。そこで東アフリカ選手の「身体的優位」を唱える声もある。
が、1920年代にヌルミ(フィンランド)という強いランナーを中心に北欧選手が大活躍したり、第二次大戦後にザトペック(チェコ)が活躍したときは、中長距離走での北欧東欧選手の「身体的優位」が唱えられた。
しかし『なぜ人は走るのか』(トル・ダコス著/筑摩書房)によると、人種や民族によるランニング能力の優劣など証明できるものではなく、現在東アフリカのランナーがマラソンで好成績を残しているのは貧困から脱出するために走っているからだという。
そして国際大会での勝利で高額の金銭を手にしたランナーは、彼らも彼らの子供たちも走らなくなるという。
つまり、パワーの源はハングリー精神。2位(日本人1位)に入った藤原新選手も、高校大学時代からの名ランナーたちが歩むエリートコースの実業団所属ではなく、フリーのランナーとして「賞金に目がくらんで」前を走る選手を追い抜いたのだ。
今大会では調子を崩して14位に終わった埼玉県職員の川内優輝選手も、エリートランナーではなくハングリー精神の持ち主として、ロンドン五輪出場を期待したくもなる(*)。
それに名門大学や実業団に入ると駅伝の練習や試合が増え、それがマラソン走者としてはマイナスにもなるらしい……?
等々、いろんなことを考えた東京マラソンだったが、最も残念だったのは2020年東京五輪招致のアピールが皆無だったこと。東京ビッグサイトには広報の展示物があったそうだが、テレビ放送では幟もポスターも見えず、話題にもならず。せっかくの機会に、何故?
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(*:残念ながら川内選手は、ロンドン五輪代表選手に選ばれなかった。陸連の発表によると、「安定感(のある選手)」を選んだという。ならば「安定した結果」として15〜20位程度は期待できるということか…苦笑)。 |