2月4日北京冬季オリンピックが開幕する……予定になっている。
オリンピックに合わせて、常に国連では「オリンピック休戦」を決議し、今回も五輪開幕7日前からパラリンピック終了の7日後まで、国連加盟国は「オリンピック休戦」を行う決議が満場一致で採択された。
が、今回の決議はいつもと少々異なっていた。いつもならば、ほとんど全ての国連加盟国が決議に賛成すると同時に、決議の提案国にも名前を連ねるのに、今回は日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国などが提案国に加わらなかった。
それは中国のウイグル族に対する人権問題等があるため、中国と共には提案国に名前を連ねないことにしたのだが、その結果、東京五輪での186か国の提案国が173か国に減少。
採決自体はいつも通り満場一致で可決されたが、この決議が形だけであることも露呈したようだ。
そもそもこの決議が日本のメディアでほとんど報じられなかったが、代わりに報じられたのが、何やら開戦前夜のようなキナ臭い話題ばかり。
ロシア軍がウクライナ侵攻を始めそうで、10万人以上の陸軍をウクライナとの国境に結集させたとか、ベラルーシとロシアが合同演習を始めたとか、NATO軍がウクライナの支援に向かったとか、アメリカがウクライナ在住の政府職員の家族などに国外退去を命じた……等々。
そう言えばロシアは旧ソ連時代のモスクワ五輪(80年)の前年にアフガン侵攻。08年北京五輪の開会式当日に南オセチア紛争に乗じてグルジア(現ジョージア)侵攻。14年ソチ五輪直後にはウクライナのクリミア半島へ侵攻……と、まるでオリンピックに乗じるように戦端を開いている。
おまけに今回の北京冬季五輪終了後には中国が、台湾侵攻までは手を付けないにしても、南沙諸島の台湾領の小島・太平島(台湾軍が約2百人駐留)に上陸する可能性もあるらしい(近藤大介『台湾VS 中国謀略の100年史』ビジネス社より)。
「平和の祭典」と称されるオリンピックの異名が、たとえタテマエに過ぎないにしても、開幕前からこれほど「平和」が蔑ろにされている大会も史上初と言えるのではないだろうか?
そこで思い出されるのは、昨年の東京オリンピックで、IOC(国際オリンピック委員会)のマーク・アダムス広報部長が口にした言葉だ。彼は、新型コロナの感染を防ぐために採用された「バブル方式」で囲まれたオリンピックの選手村や競技会場を、「パラレルワールド」(別世界)と表現した。
それによって「私たちの世界から東京に感染を広げることはなかった」かもしれない。が、IOCの言う「私たちの世界」=「オリンピック」が実社会(東京)とは無関係の「別世界」での出来事だと、IOCの幹部は、平然と断言したのだ。
ならば「別世界=パラレルワールド」での「平和の祭典」の外側の「実世界」が、開戦寸前のキナ臭い空気に包まれていても、オリンピックにはまったく無関係。
「オリンピック休戦」も、所詮は「パラレルワールド」内部の世界だけの出来事ならば、外部の世界で何が起ころうが、「バブル」内の「パラレルワールド」の住人たちは一切我関せず、スポーツに専念することができる……というわけだ。
が、オリンピックはそれでいいのか!? オリンピックは、平和運動ではなかったのか?
いまこそオリンピックのすべてを、考え直すべきときと言えるのではないだろうか?
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