「水着問題」に一応の決着をつけたときの記者会見で、日本水泳連盟のある幹部が次のような言葉を口にした。
「もう、水着で言い訳は許さない」
この言葉を聞いて、違和感を覚えたのは私だけだろうか?
現代スポーツは好むと好まざるとに関わらず、最先端の科学テクノロジーと無縁ではいられない。陸上選手やサッカー選手のユニフォームやスパイクにも、野球選手のグラヴやバットにも、すべて最新の科学技術が駆使され、選手たちの好記録や好プレイをサポートしている。
世界のトップアスリートたちは、すべてF1のパイロットのようなもので、ユニフォームやシューズ(マシン)を整えるメカニック、練習や食事を調整するトレーナーや栄養士、スケジュールやプロモーションを管理するマネージャー…等々、多くの人々に支えられ、勝負に臨んでいる。
そこで世界新記録を多発している水着があると聞けば、選手がそれを試してみたいと思うのは当然だろう。
また、彼らをサポートするスタッフたちも、即刻その水着を取り寄せ、分析研究し、真価が実証されたなら、選手に使わせたい、と思うのが当然だろう。
その対応が遅れたうえ、スタッフのトップの立場にある人物が、「言い訳は許さない」などと口にしたのは、どこか古い体育会系的体質を思い出させ、先輩(先生)が後輩に頭ごなしの命令を下しているようにも見え、きわめて不快な気持ちになった。
そういえば今回の「水着問題」では「気分の問題」「我々の時代は褌で泳いでいた」といった言葉も水連幹部の口をついて出た。
理不尽な命令や無意味な精神論こそ、現代スポーツに対する不勉強の「言い訳」に聞こえるが、選手を支えるスタッフは、世界の舞台で10分の1秒を競っている選手を、さらに助ける努力に打ち込んでほしいと思う。 |