ジャイアンツの前GMである清武英利氏の著書『巨魁』を読んだ。そこに書かれているチーム作りの方法論はすべて正しい。
ブラッド・ピット主演の映画『マネーボール』で有名になったセイバーメトリクス(野球統計学)を研究し、ヤンキースから直接BOS(ベースボール・オペレーション・システム=選手の力を客観的な数値で評価分析する手法)を学び、スカウトたちの勘に頼らない新人選手の発掘法を確立。さらに、彼らに多くの試合を経験させる育成システム(三軍制度)を構築し、スカウトやコーチはパソコンで情報を共有……。
そんななかから坂本のように他球団の評価が高くなかった選手や、山口のような無名投手を獲得し、一流選手に育てた。それは、じつにリーズナブルなチーム作りで、こういう作業が即座に黄金時代(連続優勝)につながるわけではないだろうが(それにはスーパースターや名監督の出現が不可欠ですからね)、しかし、このような合理的な方法がチームに定着し、ノウハウを蓄積すれば、ジャイアンツは選手たちが溌溂と活躍し、多くのファンに支持され、愛される気持ちの良いチームになったに違いない――と、私は確信できた。
そのチーム作りの最中、野球に対する愛情もなく、事情に無知な「ナベツネ」と呼ばれる「巨魁」(辞書によると「悪人の親玉」)が、「鶴の一声」で全ての計画を押し潰したのだから、清武氏の堪忍袋の緒が切れたのも理解できる。
しかし所詮は「読売巨人軍」というコップの中の嵐でしかない。
たとえ清武氏のチーム作りが成功しても、それはすべて親会社(読売新聞社)の利益となるだけのことである。だから日本の優秀なプロ野球選手は、野球を支配する親会社など存在しない「純粋な野球」を求めて次々と渡米する――ということに、そろそろ誰もが気付いているはずだが……。 |