7月4日「野球賭博問題」で揺れる日本相撲協会理事会が、賭博に関わっていた力士、親方、その他の関係者への処分を発表した。その記者会見をテレビで見て驚いた。横綱白鵬までが登場し、頭を下げたからだ。
相撲協会の幹部は、事件の本質をまったく理解していない、というほかない。白鵬は部屋の仲間と何度か花札賭博を楽しんだらしい。そんな些細なことはどうでもいい。
日本では、賭博は国に公認された公営ギャンブル以外、刑法で禁止されている違法行為だ。しかし世界的には多くの国々で解禁されている。現在行われているサッカーW杯もテニスのウィンブルドンも様々なゴルフ・ツアーも、ほとんどすべてのスポーツ大会が賭博の対象となり、オッズ(賭け率)が発表され、多くの人々が賭博を楽しんでいる。
それを禁じると、非合法で賭博を行う反社会団体(暴力団)が出現し、大きな資金源になる――というのは、かつてアメリカで禁酒法が施行されたとき、ギャングたちが裏社会の酒の密売で大儲けしたのと同じ構造だ。
だから日本も賭博の解禁(民営化)を考えるべきなのだが、その問題はさておき、行為そのものが「悪」とは断じて言えない賭博という行為の有無など、はっきり言ってどうでもいいこと。
問題は、規模(賭け金)が大きく、明らかに暴力団と関係があると思われる組織的な賭博に、力士や親方など相撲界の関係者がどれほど関わっていたか、ということなのだ。
昔から興行の世界と任侠(やくざ)の世界は、深いつながりがあった。
それは晩年の美空ひばりが市民会館などの公共施設での公演を閉め出された事件や、柏鵬の二大横綱(柏戸、大鵬)が、ハワイからの旅行帰りにやくざの組の親分にピストルをお土産として買って帰った事件などで、多くの人々が知っていた。
やくざが暴力団と呼ばれるようになり、さらに1992年に施行された暴力団対策法によって、そのような反社会的団体は徹底的に社会から排除されるようになった。その結果、そのような団体の資金源となる行為に手を貸す行為も徹底的に取り締まられ、あらゆる興行団体は「昔からの付き合い」を完全に精算しなければならなくなった。
それは「健全な社会」を作るための当然の行為であり、相撲界も(もちろん野球界や芸能界も)「健全な社会」の方向を目指さなければならなくなったのだ。
ところが相撲界には、そのような社会の動きに対する自覚が全くないようだ。今回の琴光喜や大嶽親方に対する処分(解雇)と多くの力士に対する処分(謹慎)、それに白鵬などが個人的に行った賭博行為に対する謝罪は、まったく種類の異なる問題である。
何が重要な問題かは明白で、それは賭博行為の有無ではない。大相撲という興行団体の関係者が「やくざ」と呼ばれる団体や人々と、過去において全く無縁だったとは考えにくい。ならば未来において、そのような反社会団体との関係をどのように解消するのか?
今回の事件で最も重要なことは、その一点にある。
にもかかわらず、賭博行為の有無ばかりを問題にしていると、相撲界は将来、さらに大きな代償を支払わなければならなくなるに違いない。
|