横浜ベイスターズの球団売却交渉が決裂した。そこで頭に浮かんだのは、欧米のプロ・スポーツ・チーム運営方法である。
欧米のプロ・チームの本拠地スタジアムは、ほとんど税金で建設され、その施設は野球チームやサッカー・クラブに無償で貸与される。 または名目だけの超低価格でチームに譲り渡される。
たとえばアリゾナ・ダイヤモンドバックスの本拠地チェイス・フィールドは、フェニックス市や近隣のマリコバ郡が消費税を2%アップして約400億円の建設費を捻出。
そのうち約100億円をダイヤモンドバックスが支出したとされ、運営が同球団に任されている。
が、実際は将来に及ぶ命名権(ネイミング・ライツ)の収入がその費用に充てられ、球団は球場使用料ゼロで、広告や売店や駐車場の収入を得て、球団と球場を一緒に経営できるシステムになっている。
またドイツ・ブンデスリーガのサッカーチームで有名なHSV(ハンブルガー・スポーツ・フェライン)というスポーツクラブは、06年のW杯ドイツ大会をきっかけに、老朽化したスタジアムと駐車場などの周辺設備を市当局から1マルク(現在の約0・5ユーロ=約60円)で獲得。
シーズン指定席や、厨房付のマンションの一室のようなボックスシート席を大量に売り出して改造費を捻出。広告収入、入場料収入、売店売上げ、駐車場収入、他のイベント収入などで、現在もサッカーだけでないスポーツクラブ全体の運営を支えている。
それでもスポーツチームの経営は常に困難で、大リーグ30球団中黒字は7球団前後しかない。大黒字球団のヤンキースでも新球場建設にニューヨーク市の多額の補助金を得たほどで、欧州のサッカーチームも公的支援なしには成り立たない。
それら欧米のスポーツチームの運営が成り立つのは、公共財として公的支援を受ける価値が認められているからだ。
つまり、スポーツチームが都市(本拠地)に存在することの社会の経済的メリットだけでなく、住民の精神的メリットが認められ、税金を使用することが認められているからだ。
もちろん、そうであるからには、スポーツチームを親会社やオーナーが「私物化」することなどできない。またリーグ全体の運営も、ファンやサポーターの納得できるものでなければならない。
一方、横浜市も株主に名を連ねる(株)横浜スタジアムは約50人の従業員で昨年3億円近い利益があった。それは、20億円近い赤字の球団を救える額ではない。が、それでも何か矛盾を感じる。
ソフト(球団)よりハード(球場)優先の考えが改まらない限り日本のスポーツ文化は欧米に遅れをとり続けるに違いないだろう。
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