日本では、ゼネラル・マネージャー(GM)という役職が少々誤解されている。
球団オーナーは、球団株を最も多く所有している人物。球団社長は球団の収支(経営)に責任を持つ人物。彼らはスポーツ・ビジネス(とくに野球界の事情や野球選手の能力と、それに伴う金銭関係)に明るくないので、スポーツ・ビジネスのプロフェッショナルを雇う。それがGMで、彼の下にビジネス・マネージャー(営業担当現場責任者)とフィールド・マネージャー(グラウンドでの現場責任者=すなわち監督)が存在する。
監督、コーチの任命、それに選手のスカウトやトレードはすべてGMが取り仕切り、監督は与えられた戦力でベストを尽くす。さらにチケットの販売促進、ファンクラブ活動(マーケットの拡大)、放送権の交渉、球場の広告営業等々のビジネス活動の責任もGMにある。
これがメジャーリーグの組織だが、日本ではリーグ全体の運営に関わる球団代表(親会社からの出向で球界事情に疎い人物)がGMと呼ばれたり、監督の上の総監督に位置する人物(球界事情には強いがビジネスに無知な人物)がGMと呼ばれるケースが多い。
昨年に片岡、今年は金本、下柳、伊良部といった選手を獲得し、近鉄のノリにも触手を伸ばした星野監督は、「金で選手を集める巨人と同じやり方」といわれると激怒する。
「何をいうてるんや。23人も選手をクビにして、その年俸の浮いた分で収支は計算してる。球団に損はさせてない。巨人のようにジャブジャブ金を使うとるわけやないぞ」
さらに甲子園球場に新たな広告を出稿する会社も獲得してきた。そんな彼こそ、日本プロ球界で初めての本物のGM(兼監督)といえるかもしれない。
85年は他球団を追われたベテランを拾った結果、彼らが「偶然」活躍してくれて、優勝につながった。今年の快進撃はGMの敷いたレールのうえを走っているのである。 |