かつては南アメリカのほうが北アメリカよりも豊かだった、というと驚く人が多いだろうが、大航海時代(15〜17世紀)、南米は肥沃な大地と資源に恵まれ、「黄金の国」と呼ばれた。それに対して北米は、砂漠の広がる不毛の土地が広がっていた。
その結果、豊かな南米で暮らしていた原住民は侵入者との闘いにあっさり敗れ、新たな支配者となった西欧人も資源を簒奪するのみで貧富の差は広がり、国力は高まらなかった。
一方、貧しい北米で原住民と闘い開拓を果たした西欧人は、その辛酸と労苦を教訓に民主主義を発展させ、国力全体を高めた。ちなみに当時のフットボール(サッカー)は牛や豚の膀胱を膨らませたボールを使ったため、豊かな南米では発展したが、食料を粗末に扱えない貧しい北米では糸を巻いた小さなボールを使うベースボールしかできなかった、ともいえる。
大正時代の関東大震災をきっかけに関東から関西に移り住んだ文豪谷崎潤一郎は、「関西の豊かさ」を次のように書いている。《西へ行けば行くほど(略)気候が一層温かになり、魚がますます甘くなり、景色がいよいよ明るくなる》(『私の見た大阪及び大阪人』より)
しかし、《男の児を立派に育てようと云うのには、東京でなければ駄目である》とも書いている。《些少ながらも親譲りの財産があって、季候がよくって、食物が安くついて甘いと来るから、皆小成に安んじてしまい、壮志を抱く者がないようになる。(略)あまり天然に恵まれることも善し悪しである》
これこそ阪神タイガース長期低迷の元凶・・・と思うのは私だけだろうか? そこへ「壮志」を抱く「西の英雄」(星野監督)が「東方」(信長、秀吉、家康を輩出した地)から舞い戻り、「豊かな地方」の凋落に歯止めをかけ、復活させようとしている。その成否は現在の北米中心の国際秩序を考え直すうえでも・・・というのはいいすぎだろうが、関西の将来と日本の未来を左右する、というのは、あながち大法螺でもないような気もする。 |