アメリカにはNCAA(National Collegiate Athletic Association全米大学体育協会)という大学のスポーツ組織がある。
全米約2千3百の大学のうち約1千2百が加盟し、バスケットボールやアメリカンフットボールのように数千人から5万人以上の観客を集め、プロ並みの人気を誇るスポーツから、陸上競技、水泳、レスリング、体操、さらにアメリカでは人気のない卓球やバドミントンまで、すべての大学スポーツを統括する団体だ。
全競技会の入場料収入やTV放映権料収入が年間約8千億円。そのうち約1千億円がNCAAの資金として運営されている巨大組織で、学生の健康管理、学業とスポーツの両立、ルールの統一や大会運営の指導などを行い、大学スポーツの発展に寄与している。
NCAAは試験で一定以上の成績をあげないと練習や試合に出られないというルールも創った。そのため学生たちはスポーツに邁進するだけでなく、大学の勉強も疎かにはできず、結果的にスポーツを行う大学生の質の向上につながり、スポーツ以外のキャリア(仕事)の獲得、プロスポーツの運営組織や世界的スポーツ組織への優れた人材の提供などにも寄与している。
収入と人気がアメフットとバスケに偏りすぎているとか、巨大スタジアムの維持は大学経営に負担が大きいといった批判もある。が、大学も人気スポーツで好成績を残すと、大きな宣伝になり、(学問的にも)優秀な新入生が大勢入学してくるようになるなど、直接の収支以外のメリットも大きいという。
そしてNCAAのもとでスポーツ運営に力を入れることがアメリカの五輪選手などの活躍を支えているとも言われている。
そこで日本でも「日本版NCAA=全国的な大学スポーツ組織」を作ろうという動きが出てきた。
私は、この動きに大賛成である。
日本の大学スポーツは(高校スポーツもそうだが)、どうしても教育(体育)という考え方が強く、TV放映権料や入場料やグッズ販売などのビジネスへの展開が脆弱で、そこから得ることのできる収入を増やして大学スポーツの発展に寄与しようといった考えが存在しない。
従って箱根駅伝のような超人気の学生スポーツイベントもあるが、主催者の関東学生陸上競技連盟は任意団体で法人格を持たないため、決算等の報告義務もなく、それを管理する上部団体も存在しない。
共催している読売新聞社の系列企業の日本テレビは、約2億4千万円の放送権料を支払っているとも言われているが、出場大学20校に各2百万円、合計4千万円の出場支援金が支払われる以外、支出内容は開示されてない。
日本版NCAAが生まれれば、このような大学スポーツ団体の「丼勘定」は是正され、収入を大学スポーツ全体の発展につなげることもできるはずだ。
また箱根駅伝は関東学生陸上競技連盟の加盟大学しか出場できず、青山学院大学陸上部監督の原晋氏などは、この人気イベントを全国大会にして関東の大学と地方の大学の陸上部の「人気格差」をなくすことが日本の長距離界全体の発展に必要と主張されている。
他にも関東大学ラグビー対抗戦やリーグ戦と地方大学のラグビー、東京六大学野球や東都大学野球と地方大学の野球リーグなど、中央の「伝統大学」と地方大学の「人気(収入)の格差」は大きく、その一極集中は日本の大学スポーツ界、延いては日本のスポーツ界全体の発展につながっていないのではないか?……という声もある。
そういった問題を根本から話し合い、改善すべき点は改善するためにも、大学スポーツの全国組織「日本版NCAA」の誕生を、私は待望している。 |