奇妙な話というほかない。
今シーズンのプロ野球は昨シーズンよりも、よく「飛ぶボール」が使われていたというのだ。それも秘密裏に……。
その事実を、プロ野球の最高責任者であるコミッショナーが知らなかったというのだから、これまた奇妙な話だ。
こんな重大な「変更」を、事務方の職員であるコミッショナー事務局長が、一人でボール・メーカーに指示し、「口止め」までしていたというのだから、これまた奇妙な話だ。
そもそも今シーズンは昨シーズンよりも、ホームランが約1.5倍にも増えている。
選手の多くも「今年のボールはよく飛ぶ」と確信し、目の肥えたファンも(いや、あまり目が肥えていなくても)「今年のボールは去年よりよく飛ぶみたい……」と思っていた。
反発係数の調査でも「飛ぶボール」への変更は明白。それを「選手(打者)の努力の結果と思っていた……」と記者会見で語った加藤コミッショナーの言葉も奇妙な話だ。
さらに一切を知らなかったコミッショナーが、自分が知っていたら「公表していた」と言いながら、選手やファンに「ボールの変更」が隠されていたことを、「不祥事とは思わない」と言ったのだから、これも奇妙な話。
そして自らの「ガバナンス(組織統率力)の(欠如の)問題」と言いながら、責任を取ってコミッショナー辞任しないのも奇妙な話。
しかし、何が一番奇妙な話か……と言えば、記者会見の席で新聞記者たちが、コミッショナーやコミッショナー事務局長を、あまり鋭く追求しなかったことだろう。
コミッショナーが知らなかったはずはない! 事務局長一人で下せる命令ではない!……ということを、誰も追求しない。
それは、コミッショナーより「力」のある人物が存在していることを、誰もが知ってるからだ。
それは読売グループのトップの渡邉恒雄氏のことで、だからオーナー会議でも、渡邉氏の支持するコミッショナーを追求した人は誰もいなかった!
こういう「隠れた権力の二重構造」が存在する限り、日本のプロ野球の発展はありえないだろう。 |