9月9〜13日、東京で第28回世界柔道選手権大会が開催される。世界柔道の最近の日本での開催は、95年千葉、03年大阪があったが、東京では56、58年の第1回、第2回大会以来約半世紀ぶり。
当時は、日本選手権と同じように、無差別級のみの世界一決定戦で、第1回大会、2回大会ともに日本人が優勝した。が、61年第3回パリ大会ではオランダのヘーシンクが優勝。3年後の東京五輪無差別級でも彼が優勝し、柔道は一気に国際化の道へと踏み出し、「JUDO」へ大きく変化しはじめた。
そして日本人選手がなかなか勝てなくなってきたのと足並みを揃えるように、体重制が細かく分かれるようになり、技の判定も細分化され、カラー柔道着が導入され、シドニー五輪で「世紀の大誤審」が起こり(篠原選手の内股すかし一本が認められず、金メダルが消えた)、多くの日本人が「柔道」ではない「JUDO」に小さくない違和感を感じるようになった。
とはいえ我々日本人はJUDOのことをどれほど知っているだろうか?
柔道の創始者である嘉納治五郎のことを知っている人は少なくないだろう。が、フランスJUDOの基礎を作りあげた川石酒造之助(かわいしみきのすけ)や、ヘーシンクを育てた道上伯(みちがみはく)、ブラジルに帰化してコンデ・コマと名乗り、「グレイシー柔術」の祖といわれる前田光世など、柔道や柔術の国際化に貢献した日本人柔道家の存在を知っている日本人は、おそらく数えるほどしかいないだろう。
また「世紀の大誤審」を知っている日本人は多いだろうが、多くの外国人柔道家が、かつては「日本人が相手だと判定では不利」と考え、日本人の驚くような技を新たに開発して勝利をつかみ、その結果、日本人がJUDOに違和感を覚えるようになった、ともいえる経緯を知る日本人もそれほど多くはないだろう。
今年約半世紀ぶりに東京に戻る世界柔道は「原点回帰」を唱え、レスリングとの差別化(最初から足にタックルする技は禁止)、「一本」「技あり」「有効」に続く技に対する評価の「効果」を廃止(同時に「指導」も廃止)して、少しでも「原点」に戻ろうとする「新ルール」で行われる。
はたして東京代々木体育館では、どんなJUDOが展開されるか? 誰もが納得する「美しいJUDO」を見たいものだ。
(付記・原点回帰の世界柔道は、なぜ武道館で行われないのでしょう? 試合場が狭いから?しかし、少々残念です)
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