現在の日本のスポーツ界における最大の問題点は、二つあげることができます。
一つは、多くのマスメディアがスポーツ大会の主催者やスポーツチームの所有者となっていることです。
その結果、自社主催のスポーツ大会や自社所有のスポーツチームに対して、スポーツ・ジャーナリズムとしてまっとうな批判ができず、大会やチームを盛りあげ、宣伝する働きしかできていないことです。
批判精神(ジャーナリズム)の存在しないところに、発展は望めないでしょう。
今一つの問題点は、スポーツに対する理解のレベルが全国民的に低いことです。
これも、スポーツ・ジャーナリズムが機能していないので、スポーツが真っ当に伝えられていない結果とも言えます。が、さらに、日本のスポーツは、ほとんどが学校教育の体育として教えられているため、身体を動かすことばかりが優先されて、「スポーツとは何か」を理解することが等閑にされた結果とも言えます。
スポーツを教育としてとらえた場合、理科(医学)系のスポーツ(身体機能を身体運動から分析学習する)、文科系スポーツ(文化としてのスポーツがどのような歴史のなかで誕生し、発展したかを学習する)、そして体育系スポーツ(スポーツを実践し、身体の発達、体力向上などをめざす)、の三分野が考えられます。が、日本のスポーツ教育(体育)では、体育のみが強調され(他に、わずかに理科系医学系が存在するだけで)、文科系スポーツ教育は存在しない、と言える状態です。
そんななかで、たとえば、「ドッジボール」「バレーボール」「サッカー」「テニス」といったスポーツの名称すら、どういう意味か知っている人が少ないというのが実状です。さらに「サウスポー」「オフサイド」「ラインアウト」……等のスポーツ用語についても本当の意味を知っている人はごく少数で、体育の先生から言われて、何の疑問も持たず「実践」しているのが実状です。
そんななか、スポーツマン(体育会系学生)といえば、目上の人間の命令や指示に(何の疑問も持たず)従順に従う人間という歪んだスポーツマン像まで(かつては)生まれ、現在もまだ、「スポーツ=体育」という認識や、スポーツマンに対する謬った理解(スポーツマンは勉強しなくてもイイ?)が残っている状態です。
子供たちのスポーツ離れ……という問題を考える場合も、まず「スポーツとは何か」「体育ではないスポーツとはどういうものか」という点を理解し、教えるなかでこそ、新しい打開策、方法論が見出せるようにも思われます。 |