06年のトリノ冬季五輪で荒川静香さんが金メダルを獲って以来、浅田真央、安藤美姫、中野ゆかり、村主章枝…と、続々と世界トップレベルの選手が台頭し、いまや女子のフィギュア・スケートは(特に女性ファンの間で)人気ナンバーワンのスポーツになった。
もちろん男子も負けていない。高橋大輔、織田信成に続き、小塚崇彦、南里康晴、無良崇人…といった若手選手の台頭も著しく、いずれ国際試合の表彰台の真ん中に立つ選手も現れそうな気配だ。
日本の冬季スポーツのレベルは総体的に高く、いまは少々低迷気味だが、かつてスキーのジャンプは日本のお家芸ともいわれ、02年の長野五輪では原田、船木といった選手の活躍に日本中が大興奮した。
クロスカントリーと合わせたスキーの複合競技でも荻原兄弟が大活躍したことは記憶に新しい。さらにスピードスケートも世界最高レベルの大会に、常に日本人選手が顔を出している。
「ウィンター・スポーツ」と呼ばれる競技は、当然のことながら雪と氷に恵まれなければ練習することもできず、地球の北のほうの寒冷地方の国々が高いレベルを保持している。
とはいっても寒いから雪に恵まれるわけではなく、次期オリンピック夏季大会(12年)の開催都市であるロンドンは、夏季大会としては3度目の開催になるが、過去にイギリスで冬季大会が開催されたことは一度もない。
それは降雪量が少なく雪が積もらないからで、イギリスの(数少ない)スキー選手はアルプスまで足を伸ばして練習している。
オリンピックの夏季大会と冬季大会のどちらも開催した国は、フランス、アメリカ、ドイツ、イタリア、カナダ、そして日本の6か国だけ。14年にロシアのソチで冬季大会が開催され、ソ連時代のモスクワと合わせてロシアを加えても、たった7か国しかない。
長野は冬季五輪が開催された都市のなかで最も南に位置し、開催招致に立候補した当初は、IOC委員のなかから「雪が降るのか?氷が溶けないのか?」といった声まで出たくらいだった。それは、ふつう夏の8月に開催されるオリンピックの夏季大会を、1964年の東京オリンピックは10月に開催したことにも起因している。
日本人の間では「スポーツの秋」という言い方が常識だが、近代スポーツ発祥の地といえるイギリスでは夏がスポーツの季節で、スポーツ全般を「サマーゲーム」と呼んでいる。なのに東京での10月開催が認められたのは、IOC委員多くが、日本(ヤポネシア)は熱帯にあると誤解していたからだという。
たしかに日本の夏は熱帯といわれても納得するほどの蒸し暑さだが、極東の島国は、亜熱帯地域から亜寒帯地域まで南北に長く伸びている。さらに標高の高い山脈もあり、降水量(降雪量)にも恵まれ、四季折々の季節感も豊かで、夏と冬の気温差も大きく、そんな豊かな自然に恵まれた環境が、ウィンタースポーツの人気の高さやレベルの高さにもつながっている、ともいえそうだ。
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