コラム「スポーツ編」
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掲載日2016-05-11
この原稿は『ZAITEN』(財界展望新社)2016年3月号に書いたものです。オリンピック・パラリンピック2020年東京大会は、本当にマトモに無事開催できるのでしょうか。1964年の大会の時は、当時の組織委の一員だった人から、「敗戦から復活した日本を世界に示すため、日本の一番素晴らしいものを世界に見せよう、と誰もが必死になっていた」という言葉を聞いたことがあります。が、今の組織委の人々は、自分の(所属する組織の)経済的利益、自分の(所属する組織の)名声ばかりを考えて動いているように思われてなりません。スポーツのことも何処かに吹っ飛んで……。こんな心配を吹き飛ばす方法は何かないものか……という気持ちを込めて“蔵出し”します。

東京五輪ゴルフ競技会場問題第2弾・霞ヶ関CCで消える億円単位の巨額血税

 予算が当初の予定から6倍にも跳ね上がれば、民間企業なら責任者はクビだろう。が、国の役所は、そうならないものらしい。

 昨年12月、2020年東京オリンピック・パラリンピックの運営費が1兆8千億円になると発表された。

 当初(五輪招致運動時)の予算が約3千億円だったから、6倍増。こんな杜撰な計算を軽々しく発表されたら、国民はただただ呆れるほかない。

 しかもこの数字を発表したのはNHKだけ。どうもこれは五輪組織委が意図的にリークした「観測気球」のようなものらしい。

 というのは大幅な予算膨張、経費増加が正式に発表されたとなると、責任問題に発展するから、情報を小出しにして国民の耳を痲痺させておこうという魂胆だという。

 そう言えばこの「NHK発表」以前には森喜朗組織委会長が、運営費は「最終的に2兆円を超すかも」と発言。メディアは、その数字に驚きながらも、ロンドン大会も2兆円、ソチ冬季大会は5兆円、さらに半世紀前1964年の東京五輪も「1兆円五輪」と言われた、などと報道した。
 が、同じオリンピックだからと言って、比較できない数字を持ち出して並べるのは論外。ロンドンもソチも道路や鉄道の建設等、都市改造のためのインフラ整備に要した費用を加えての話であり、64年の東京五輪も、新幹線、地下鉄、首都高速道路、名神高速道路等の建設を含めて「1兆円五輪」と称されたのだった。

 ところが20年東京大会の1兆8千億円というのは、テロ対策の警備の費用や、分散した会場に選手を運ぶための運送費、高速道路専用レーン使用料等、五輪後のレガシー(遺産)としては、カタチが何も残らないものに投じられる、純粋な運営費なのだ。

 そのうち1割にあたる1千8百億円が、高速道路の専用レーンを設けるための費用だという。そこで頭に浮かぶのは、昨年の本誌12月号に書いた「五輪ゴルフ会場問題」だ。

 まったく理由が判然としない(「慶応閥」という学閥と、利害関係者の手によって決められたとしか思えない)まま、五輪のゴルフ競技の会場は、都心から50キロ以上離れた埼玉県川越市にある霞ヶ関カンツリークラブ(CC)に決められた。

 当初予定されていた東京湾の選手村のすぐ傍にあるパブリックコース(東京都所有)の若洲ゴルフリンクス(GL)を使用すれば、高速道路の専用レーンを設ける必要もなければ首都高速道路株式会社などに支払う損失補償費も減らすことができる。もちろん警備のための費用も格段に安くなる。

 ところが霞ヶ関CCの場合は、都心南部と埼玉西北部を結ぶ50キロ以上の高速道路に、最低でも1週間近くに渡って、男女の選手専用の自動車走行レーンを設けることになるため、その損失補償費や警備費用が必要になる。もちろんプライベート・コースである霞ヶ関CCを「使わせてもらう」ために、霞ヶ関CCにも営業補償費や施設改造費を支払う必要があり、その費用も1兆8千億円の運営費には含まれているはずだ。

 五輪に若洲GLを使うなら、たとえ費用がかかっても、それはレガシーとして残り、そのレガシーは多くのゴルファーが享受できる。が、霞ヶ関CCという超高級プライベートコースでは五輪のレガシーを享受できる人が、ごく少数の会員(エリート)に限られる――という話は以前にも書いた。

 そんな「経費」の積み重ねの結果が1兆8千億円と言うのでは、これは容認できる問題ではない。しかも国際オリンピック委員会(IOC)からの分配金やスポンサーの協賛金など、運営費として使うことのできる収入が見込まれる額は、約4千5百億円。1兆円以上の不足分は、国税や都税の税金から補填する以外ないという。

 ここで思い出すべきは、64年の東京リンピックだろう。

 それは確かに、日本の戦後復興を国際的に示すと同時に、高度経済成長をも牽引した素晴らしい祭典だったと言える。が、それが幕を閉じた翌年、日本経済は、祭りの後の虚しさとも言うべき反動による「五輪不況」に見舞われ、企業の倒産が続出。政府の税収も落ち込んだ結果、補正予算で2950億円の赤字国債を発行した。

 当時の佐藤内閣は「あくまでも特例」と発表したが、この時以来の赤字国債の恒常化の結果、現在の財政の負債総額は地方を合わせて1千兆円を超す。そのきっかけが64年の東京オリンピックだった、という言い方が正しいのか否か、その判断を下すことは(背景に複雑な経済事情や政治事情があるだろうから、経済学者でも政治学者でもない)小生にはできない。

 が、財政の建て直しが叫ばれ続ける現在、1兆円単位の「オリンピック特別支出」は、やはり当然見直されるべきだろう。

 当初は「コンパクト五輪」が標榜され、半径8キロ圏内に85パーセント以上の競技施設を設ける……とされていた。が、新しい施設や仮設の施設を建設するより、既存の施設を利用して経費を節減しようということで、レスリングなどの会場を有明から幕張メッセに移し、バドミントンを江東の新設会場から調布の既存施設に移し、セーリング(ヨット)を東京湾から藤沢の江ノ島に移し、自転車競技のトラックとマウンテンバイクを武蔵野の仮設会場から伊豆修善寺のペロドロームに移すなどして2千億円以上の経費節減ができた……と発表されたのも束の間。

 今度は、競技会場の場所が広がってしまい、警備や移動に経費がかかって3千億円が1兆8千億に……というのでは、笑止千万。もはや、あまりの財政運営感覚の無さに、呆れて笑うほかない。

 が、そんななかで五輪ゴルフ会場の若洲GLから霞ヶ関CCへの変更は、最も早い時期に(20年五輪決定直後から)決まっていたというのだから、それを決めた(慶応閥の)方々は、機を見るに敏というべきか。しかし、オリンピックの運営費高騰の結果、日本の財政再建が頓挫、しかもレガシーなき最大の出費がゴルフ会場の遠さのため……というのでは、嗤うに笑えない。

 今からでも遅くはない。五輪ゴルフ会場は若洲GLに戻すべきだろう。いや、霞ヶ関CCのほうが五輪会場として優れている、と主張する人には、その理由を(筆者には全然わからないので)披露してほしいものだ。

 
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・ 岡田vs玉木 ドイツW杯特別対談第2回「世界のランクBからAへ昇るには…」

・ 岡田vs玉木 ドイツW杯特別対談第1回「追加点を取るという国際的意識に欠けていた」

・ 巨人の手を捻る

・ 中日ドラゴンズ監督・落合博満の「確信」(加筆版)

・ 300万ヒット記念特集・蔵出しの蔵出しコラム第2弾!

・ 300万ヒット記念特集・蔵出しの蔵出しコラム第1弾!

・ 「朝青龍問題」再考

・ 大相撲の改革の契機に

・ “日本のサッカー”は“現代日本”を現す?

・ スポーツとは合理的なもののはずなのに……

・ 世界陸上と日本のスポーツの未来

・ デデューの「復帰」に学ぶ「カムバック」に必要なもの

・ 特待制度は「野球の問題」か?

・ 学校はスポーツを行う場ではない!

・ 動き出すか?球界の真の改革

・ 東京オリンピック〜戦後日本のひとつの美しい到達点

・ 日本スポーツ界における「室町時代」の終焉

・ 「水泳ニッポン」は復活するのか?

・ スポーツはナショナリズムを超えることができるか?

・ 「歴史の重み」による勝利は、いつまで続く?

・ スポーツ総合誌の相次ぐ「廃刊・休刊」に関して考えられる理由

・ 廃刊の決まった『スポーツ・ヤァ!』をなんとか継続できないものか!?

・ 日本の野球選手はなぜアメリカを目指すのか?

・ 日本のプロ野球と北海道ファイターズに未来はあるか?

・ 私の好きな「スポーツ映画」

・ 東京・福岡「五輪招致」のナンセンス?

・ 政治と格闘した宿命のチャンピオン〜モハメド・アリ

・ 日本のスポーツ界は「中田の個人の意志」を前例に

・ 「求む。新鋭ライター」〜玉木正之の「第5期スポーツ・ジャーナリスト養成塾夏期集中講座」開講のお知らせ

・ 1個のボールが世界の人々を結ぶ

・ 「型」のないジーコ・ジャパンは大丈夫?

・ 社会はスポーツとともに

・ 「日本サッカー青春時代」最後の闘い

・ スポーツは、学校(教育の場)で行われるべきか?

・ 常識を貫いた男・野茂英雄(日本人ヒーロー/1995年大リーグ新人王獲得)

・ 「玉木正之のスポーツ・ジャーナリスト養成塾第4期GW期集中講座」開講のお知らせ

・ 最近のプロ野球は面白くなった!

・ 人生に「アジャストメント」は可能か?

・ 「栄光への架け橋だ!」は、五輪中継史上最高のアナウンスといえるかもしれない。

・ スポーツの「基本」とは「ヒーロー」になろうとすること?

・ 2005年――「2004年の奇蹟」(選手会のスト成功)のあとに・・・

・ アジアシリーズ日韓決戦レポート『日本の野球はどのように進化したか?』

・ 2005日本シリーズに見た「短い闘い」と「長い闘い」

・ イーグルス1年目をどう総括する?

・ スポーツとは経験するもの? 想像するもの?

・ 阪神電鉄VS村上ファンド――正論はどっち?

・ 高校野球の「教育」が「暴力」を生む

・ 『スポーツ・ヤァ!玉木正之のスポーツ・ジャーナリスト実践塾』進塾希望者への筆記試験

・ ナニワの乱痴気

・ スポーツが開く未来社会

・ タイガースって、なんやねん 第10回「星野監督・阪神・プロ野球/それぞれの未来」

・ タイガースって、なんやねん 第9回「この先は、どんな時代になるんやねん?」

・ タイガースって、なんやねん 第8回「ミスター・タイガースはおらんのか?」

・ タイガースって、なんやねん 第7回「誰がホンマのファンやねん?」

・ タイガースって、なんやねん 第6回「関西は「豊か」やからアカンのか?」

・ タイガースって、なんやねん 第5回「星野さんは、コーチやなくて監督でっせ」

・ タイガースって、なんやねん 第4回「球団職員にも「プロの仕事」をさせまっせぇ」

・ タイガースって、なんやねん 第3回「星野監督は当たり前のことをする人なんや」

・ タイガースって、なんやねん 第2回「今年のトラにはGMがおりまっせ」

・ タイガースって、なんやねん 第1回「今年はバブルとちゃいまっせ」

・ 「関西・甲子園・タイガース」=バラ色の未来――あるタクシードライバーの呟き

・ 第�V期スポーツジャーナリスト養成塾夏期特別集中講座・配布予定資料一覧

・ 失われた「野球」を求めて――「楽天野球団」は「新球団」と呼べるのか?

・ 浜スタから金網が消えた!

・ わたしが競馬にのめり込めない理由(わけ)

・ プロ野球ウルトラ記録クイズ

・ 島田雅彦vs玉木正之 対談 『北朝鮮と闘い、何がどうなる?』

・ 野球は、なんでこうなるの?

・ 投手の真髄――PITCHING IN THE GROOVE

・ 「球界第二次騒動」の行方は?

・ 2005年日本スポーツ界展望〜「真の新時代」の到来に向けて

・ 日本のスポーツの危機

・ 野球は「学ぶもの」でなく、「慣れ親しむもの」

・ ライブドア堀江社長インタヴュー「落選から西武買収まで、すべて話します」

・ 球団・選手「金まみれ」の甘えの構造

・ 地域社会に根ざすスポーツ

・ 新球団『東北楽天ゴールデンイーグルス』に望むこと

・ 闘いはまだまだ続く

・ 中日ドラゴンズ監督・落合博満の「確信」

・ 奇蹟は起きた!

・ さようなら、背番号3

・ プロ野球ストライキと構造改革

・ 「メディア規制法」とスポーツ・ジャーナリズム

・ 黒船襲来。プロ野球維新のスタート!

・ パラリンピックを見よう! 日本代表選手を応援しよう!

・ アテネ大会でオリンピック休戦は実現するか?

・ 「NO」といえるプロ野球

・ プロ野球選手が新リーグを創ってはどうか?

・ 買収がダメなら新リーグ

・ 「逆境こそ改革のチャンス!」

・ あの男にも「Xデー」は訪れる・・・

・ F1― それは究極の男の遊び

・ 「戦争用語」ではなく「スポーツ用語」を

・ スポーツは国家のため?

・ 阪神優勝で巨人一辺倒のプロ野球は変わりますか?

・ 「高見」の論説に感じた居心地の悪さ

・ 原稿でメシを食ったらアカンのか?

・ アメリカ・スポーツライティングの世界

・ <戦争とスポーツ>

・ 長嶋野球の花道と日本球界の終焉

・ スポーツを知らない権力者にスポーツが支配される不幸

・ ニッポン・プロ野球の体質を改善する方法

・ 草野進のプロ野球批評は何故に「革命的」なのか?

・ 理性的佐瀬稔論

・ 新庄剛志讃江――過剰な無意識

・ 無精者の師匠、不肖の弟子を、不承不承語る

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・ 日本のスポーツ・メディア

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