私は、ゴルフをやらない。
いちど仕事でハワイへ行った折にゴルフコースに出るチャンスを得て、美しい波越えのコースでワンオンしたことがあるだけだ。ビギナーズ・ラックとはいえ、その時の爽快感はいまも鮮明に残っている。
また、そのときに何度もアプローチに失敗し、芝目を読むことの難しさも少しは理解できた。
その程度のゴルフ経験しかないが、今年のマスターズのタイガー・ウッズの復活優勝には大興奮した。
不倫騒動、離婚騒動、家庭崩壊、酒酔い運転、薬物疑惑……等々が報じられ、身体はぶよぶよに太り、顔つきもだらしなく崩れ、誰もが再起不能と思った状態からの復活だけに、ゴルフには詳しくない小生も、テレビ画面を見ながら拳を握り締め、優勝の瞬間には、快哉を叫んでしまった。
それと同じ時期に、ゴルフに関する面白い記事に出くわした。『書斎のゴルフ』(日本経済新聞社)に載った、「知らなければ恥ずかしい!正しいゴルフ英語」という記事だった。
筆者の村越秋男さんは、家電メーカーで貿易に携わる(すなわち英語を駆使する)仕事に関わったあと、語学学校や市場調査会社を立ちあげられたゴルフ歴40年ハンデ8のアマゴルファー。
そんな彼が書かれた「間違った和製英語」の数々に、思わず大爆笑したり、考え込んだりしてしまった。
たとえば私は、この記事の冒頭に「ワンオン」「アプローチ」という言葉を使ったが、それもじつは「正しい英語」とは言えないのだ。
日本のテレビのゴルフ中継では、ゴルファーが一打でグリーンに乗せたときには「ワンオン」、2打の時は「ツーオン」と、アナウンサーや解説者が言う。が、その言葉は英語ではグリーン上にボールが1個、または2個あることしか意味しないのだ。
また日本ではグリーン上やグリーン周辺から、ホールに寄せる打球をアプローチ(寄せ)と言っている。が、英語のapproach は、パー4(5)なら第2(3)打で、フェアウェイなどからグリーンを狙うフルショットのことを言うらしい。
笑ってしまったのは、日本のアナウンサーがよく口にする「フェアウェイをキープしました」という言葉。これをそのまま英語にしてkeep the fairway
と言うと、それはコース管理員(グリーンキーパー)が、芝生を管理するという意味になり、日本で使ってる「フェアウェイ・キープ」の正しい英語は、「ヒット・ザ・フェアウェイ
hit the fairway 」になるという。
また日本では「良いスコア」「素晴らしいスコア」「スコアをよくすること」などを「ハイスコア」「ビッグスコア」「スコアアップ」などと言うが、ゴルフのスコアは少ないほうが良いのだから、これらはすべて正反対の大間違い。本当は「良いスコア」は「ロウスコアlow
score」と言わなければならないのだ。
そう言えば野球でも、外国人(アメリカ人)に通じない和製英語が多々ある。デッドボール(正しくはhit by pitch)、フォアボール(同base
on balls )などなど……。
ただ言葉は生き物で、外来語が現地語に変化するのは、世界的に珍しいことではない。アメリカで「メジャーリーグ」と言ってもまったく通じない(メイジャ・リーグスmajor
leaguesが正しい発音で「メジャー」と言うと measure で「物差し」や「測ること」の意味になってしまう)。
が、日本在住のアメリカ人は、日本式発音を受け入れてくれている。
とはいえ、ロウスコアが「良いスコア」なのに、それを「ビッグスコア」と言うのは絶対に理解されないし、認められないだろう。
来年のオリンピックではゴルフも正式競技として東京から世界に発信される。和製英語を使いながらも、今のうちに正しい英語を知っておくほうがイイだろう。 |