2020年の東京五輪開催をきっかけに、野球とソフトボールがオリンピックの正式競技として復活する可能性は消滅していないという。
国際オリンピック委員会(IOC)の新委員長トーマス・バッハ氏が日本を訪れ、「オリンピックは開催国の文化や社会を反映するべきだ」と発言。野球とソフトの人気が高い日本社会への理解を示し、「28競技」と定められている五輪の競技数についても「参加選手の総数さえ増えなければ、競技数は増えてもかまわない」と明言。実施競技は開催の7年前(東京五輪の場合は2013年)に決定というルールも「IOC委員の同意で変更が可能」と断言した。
さらにバッハ委員長は「ソチ冬季五輪でのIOC総会で議題に取りあげたい」とまで言ったのだから(残念ながら、この話は何故か進展しなかったようだが……)、日本の野球とソフトボールの選手やファンは大いに喜こんだに違いない。
野球が五輪の正式競技となったのは1992年のバルセルナ大会。当時はすべての競技でアマチュア選手が中心だったが、やがてプロ化が進み、IOCもアメリカ・メジャーリーグ(MLB)の選手の出場を要請するようになった(世界最高レベルの人気選手の出場で、放送権料の値上げを期待した?)。
しかしMLBは、ペナントレースの佳境で有力選手を1か月近くもナショナル・チームに奪われることを拒否し、マイナーや学生の選手が五輪に出場。これでは野球人気の低いヨーロッパ・西アジア・アフリカ諸国の注目を喚起するまでには至らず(放映権料の値上げも期待できず)、08年北京大会を最後に正式競技から外された。
そして20年東京五輪開催が決定したブエノスアイレスでのIOC総会で、最後の1競技を決める争いで野球とソフトがレスリングに敗れたことは多くの人々の記憶に新しい。
ただ、このとき敗れたとはいえ、野球とソフトボールは五輪正式競技復活のために、様々な改善の努力をした。
IOCは男女間に差別の存在することを徹底的に排除しているため、野球とソフトボールが一緒になった国際団体WBSC(World Baseball Softball
Confederation 世界野球ソフトボール連盟)を立ちあげ、フィールドの呼び名(ダイヤモンド)から、両者を「ダイヤモンド・スポーツ」という統一名称に統合。男女が参加する1種類のスポーツとして扱うことを宣言した。
さらに準決勝と決勝戦にはメジャー選手も出場することを約束し、試合時間短縮のため、野球の7イニング制導入の積極的検討を約束した。
この「野球7イニング制」の導入は、大いに注目すべきだろう。
1960年代(前の東京五輪の頃)の野球は、平均試合時間が約2時間半。2時間以内に終わる試合も珍しくなかった。が、最近のプロ野球は3時間を超えるのが当たり前。2013年の平均時間は3時間22分。
この長さが現代の娯楽として適切かどうか。1854年、野球のルールが整えられたときは21点を先に取ったチームが勝ちで、100イニングを超えて2日に渡る試合もあった。それが(12進法に従って)1試合12イニングと短くなり、1857年には今日と同じ9イニングとなった。
以来、このルールは、150年間変わっていない。
すべてがスピードアップする時代に、野球もオリンピックをきっかけに、スピードアップに転じるのか?
それともスピードアップの世知辛い時代だからこそ、野球だけはのんびりと長々と楽しむほうがいいのか?
野球ファンは、どっちを望む? |