1985年の優勝と今年(2003年)の優勝。両者の相違点は多々ある。
強打と投手力、偶然性と計画性、ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代と自信喪失デフレの時代・・・等々。
しかし、最大の相違点は「Jリーグの有無」だろう。
85年には、まだJリーグが存在せず、プロ野球は娯楽スポーツの王者だった。その頃は、プロ・スポーツは「興業」(見世物)であり、アマチュア・スポーツは学校や企業に所属する選手が行うもの・・・と、誰もが信じて疑わなかった。
だから85年の「タイガース・フィーバー」も、所詮は「最高の見世物」として「馬鹿騒ぎ」を楽しむことができた。
が、Jリーグが誕生した今年は、ただ「馬鹿騒ぎ」を繰り返すだけでは意味がない。
スポーツにはそもそもプロ・アマの区別など存在せず、両者ともに地域のスポーツ・クラブが運営することによって地域社会の活性化につながる・・・という欧米社会の常識を、Jリーグは実践してみせた。その結果、親会社の利益を追求するだけのプロ野球界の矛盾や、高校・大学・社会人といったアマチュアとプロが分離対立してきた日本球界の矛盾が露呈され、多くの優秀な野球選手が日本のプロ野球を見限ってメジャーリーグへ渡った。
「プロ野球にも改革が必要ですよ」と星野監督はいう。「サッカーは人気がなかったからゼロから組織を作り直せたけど、野球界はそう簡単にはいかない。だから、たとえば親会社を複数にして企業色を薄め、地域色を出すとか、国際大会を通じて低くなったアマチュアとの垣根を完全になくすような変革が必要やと思う」
――そろそろ、そういう背広の仕事を?
「いやいや、60歳くらいまではユニフォームを着させてくれよ。そのあとやな、そういう仕事は」
今年のタイガースの優勝は、球団よりも星野監督の将来にとって大きな意味を持つものといえるに違いない。いや、阪神球団も、東京の球団に引っぱられるだけでなく、この優勝をきっかけにして、自ら「プロ野球改革の先鋒」になれるはずだが。 |