茶番といっては失礼だろうが、文化の日の前日に行われたプロ野球オーナー会議による新規参入球団の発表と、その決定のための審査は、なんとも珍妙な出来事だった。
楽天のほうがライブドアよりも「永続的に球団を維持する体力」があるらしい。が、その判断を下したのが、何十年間にもわたって莫大な赤字を垂れ流し続けた既存球団の人たちであり、それを改善しようともしなかった球団の人たちなのだ。
さらに倒産した企業やバブル崩壊で数百億円もの赤字を出した企業の人たち、株式の不正売却や不正取得や不正申告という違法行為を犯した企業の人たちもいる。そんな人たちの「お墨付き」など、誰も信用しないだろう。
せっかく東北の地に新球団が誕生したのだから応援したいとは思うが、将来の日本野球のヴィジョンもなく、ただ「企業の仲間選び」をしただけでは、同じ騒動が繰り返されるに違いない。
Jリーグの浦和レッズは三菱自動車フットボールクラブが母体で、発足時には「親会社」の三菱自動車から5億円以上の「援助」を受けていた。が、フリューゲルスとマリノスの合併を機にJリーグ全体がチームの自立と経営改善に取り組み、一社に頼らず多くのスポンサー企業を募った結果、今季の三菱自動車からの「広告収入」は5千万円にまで減ったという。
もしもチーム発足時の運営状態が今日まで続いていたなら、三菱ふそうグループのリコール車問題をきっかけに、レッズはチーム消滅の危機や合併騒動に見舞われたに違いない。
「東北楽天ゴールデンイーグルス」と、チーム名に企業名が入っていることでも明白なように、新球団も旧球団と同様、親会社主導の「企業球団」にほかならず、それがスポーツ・クラブのあり方として「異状」であることは、ヴィッセル神戸の株主でもある三木谷社長にはおわかりのはずだ。
プロ球界の旧弊を一球団で正すのは無理というなら、せめて「嘘のない球団」として、裏金その他の悪弊には手を染めず、経営のディスクローズを実践してほしい。その手始めに、正しい観客動員数を公表してはどうか。小さな嘘が大きな嘘につながるのだから。 |