過日、某ネットテレビの討論番組に出演したが、その討論のテーマに驚いた。
4年後に迫った東京オリンピック・パラリンピックでは様々な問題が次々と噴出。新国立競技場の建設見直し、エンブレムの盗作疑惑とコンペのやり直し、運営費が当初予算の6倍に、仮設競技場の建設費も3倍以上に高騰!? そして五輪招致時の「賄賂疑惑」まで浮上。
そこで某討論番組では、「東京五輪はやるべきか?」というテーマで、出演者に「やるべき」または「中止して返上すべき」のどちらかの意見を求めたのだ。
シロかクロかの結論を急ぐのはマスメディアの悪癖と言える。が、2020年東京大会に対して「返上論」が出るまでになったのは、大きなショックだった。
小生は招致時から五輪開催に大賛成で、東日本大震災から立ち上がるためのきっかけになってほしいと願っていた。
が、最近の様々な問題に加えて熊本の大震災などを思うと、どんな大会にするべきか、あるいは大会を返上すべきか、大いに悩んでいた。
そこで討論番組では、小生は「悩んでる」という立場を取らせていただいた(こういう立場もあるはずですよね)。
そして何故悩んでるかを話すと同時に、大学教授や元官僚、実業家や漫画家など6人の「賛成派」「返上派」の方々の意見に真摯に耳を傾けた。
するとさらに驚いたことに、「賛成」「返上」両者の意見とも日本のスポーツに対する考えは示されず、ほとんど経済の話題ばかりに終始したのだ。
「東京五輪の経済効果は30兆円」
「ロンドン五輪は開催後1年間で約1兆5千億円の経済効果」
「北京五輪は建設投資が約4兆5千億円」
……だから開催すべし。
「北京五輪開催前は14%を超えていた中国の経済成長率が翌年は9%に鈍化」
「88年ソウル五輪以降、経済成長率を伸ばしたのは96年アトランタ五輪を開催したアメリカだけ」
「04年アテネ大会の結果ギリシアは国家破産の危機」
……だから大会は返上すべし。
確かにオリンピックほどのビッグなスポーツイベントとなると、国家経済にも少なからぬ影響を及ぼす。
64年東京五輪によって新幹線や高速道路や地下鉄などの社会インフラが整備され、高度経済成長が始まったのは事実。
だが翌年の「五輪不況」の結果、第二次補正予算で日本の財政史上初の赤字国債2590億円が発行され、累積赤字1千兆円にも及ぶ今日の財政問題が幕を開けたのも事実。
小生は経済学者ではないから4年後の東京大会の結果日本がどのような経済状況になるのか、まったく予想も想像も出来ない(そもそも正確に予想できる人など存在するのだろうか? と疑ってもいる)。
しかし、いくらビッグといえどスポーツの大会である。
日本人の誰もがスポーツの本当の素晴らしさに気づき、スポーツが社会で大きな価値を持ち、スポーツが社会に存在することによって、平和で健康的で幸福な社会が築かれるはず……。
重要なことは、2020年東京大会をきっかけに、そんな未来社会の青写真が描けるかどうか、だろう。
それが描けないなら、大会を開催する意味などないと思うのだが……。 |