コラム「スポーツ編」
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掲載日2009-11-11
今回の「蔵出しコラム・スポーツ編」は、「民主党政権で日本のスポーツは変わるか?」と題し、文部科学省副大臣の鈴木寛氏(民主党参議院議員)と文教科学委員会委員の友近聡朗氏(無所属参議院議員=インタヴュー当時/現民主党)へのインタビューを“蔵出し”します。この原稿は、『本格スポーツ議論マガジン「論スポ」』(VIP STYLE11月号増刊)=交通タイムズ社発刊)「日米クライマックスシリーズ特集号」に掲載されたものです。我が国のスポーツを考えるうえで、じっくり読んでいただきたいと思います。尚、雑誌発表時には、紙幅の関係で割愛された部分を復活しました。

民主党政権で日本のスポーツは変わるか?

玉木 衆議院選挙で民主党は政権交代を実現させ、「政治が変わる」、「社会が変わる」といわれますが、「スポーツが変わる」という話は出てこない。アメリカのスポーツ産業は20兆円、欧州で15兆円、日本では5兆円の消費があるといわれる分野でも、その程度の認識なんでしょうか?

鈴木 いや、それはマスコミの問題ですよ。こちらはスポーツのことで聞かれれば、いくらでも答えるのに聞きにも来ない。どうでもいい政局の話は多いですが(苦笑)。

玉木 これまで自民党は、たいしたスポーツ政策も持ち合わせていなかった。でも、ナショナルトレセンやスポーツ科学センターは、関係者の間では麻生太郎前総理や森喜朗元総理のおかげでできたとされています。この「おかげ」という言葉に象徴されるように、多くのスポーツ団体のトップを自民党の有力議員が務めていた。そういう人達が今回の選挙でかなり落ちた。では今後は民主党議員が…?

鈴木 それは、まったくないですね。今までは全部、お上が枠組みを作っていた。だから森元総理が日本体育協会の会長にもなる。特別公益法人のスポーツ団体の長に現役の国会議員がなる。まして総理大臣まで勤めた人が業界のトップをやるというのは、他の業界ではありえない話です。スポーツ界だけにまかりとおっていた異常事態です。今後はその長が民主党に代わるという話はまったくないですよ。

玉木 それを聞いてほっとしました。これまでは、カネを出す人をもらう所に迎えよう、というやり方ですからね。

スポーツ界における異常事態の是正

鈴木 そういう異常を普通の状態に戻したい。それには、まず我々が考え続け、主張してきたスポーツ基本法の成立から始まることになるでしょう。

玉木 自民党も総選挙直前の国会に提出しましたね。

鈴木 名前は同じスポーツ基本法ですが、自民のスタンスは現在のスポーツ振興法の改正で、民主党は新たなスポーツ基本法の設定を考えていた。最初は超党派の議連で考え、その意向は自民の議員の方々にもある程度受け入れらたはずだったんですが、麻生さんが選挙目当てに使おうとしておかしくなった。蓋を開けてみればスポーツ庁を文科省のなかに作るゴマカシ案で、これまでのスポーツ青少年局が庁になるだけ。超党派で積み上げてきた話とはまったく違っていて、麻生さんの得点稼ぎでしかなかったんです。局が庁になっただけでは縦割り行政の問題が何も解消されない。僕らが主張してきたスポーツ権の話も、まったく反映されていなかった。

玉木 スポーツ権とは、スポーツをやったり見たりして楽しむ権利のことですね。

鈴木 ええ。それを、まずアスリートにも国民にも固有の権利として認めなければならない。我々の政権では、これからはスポーツ権を軸にした本物のスポーツ基本法の実現に向けて頑張っていきたい。

玉木 スポーツ権が認められると、どう変わるんですか?。

鈴木 ひとつはスポーツの世界にフェアネスが取り戻されることになります。はたしてフェアネス(公正性、公平性)が、これまでの日本のスポーツ界に存在したのかという議論もあるくらいで(笑)、2005年のプロ野球再編とストライキのとき、選手会の古田敦也選手が「たかが選手ごとき」と言われたことや、友近さんが議会で質問した我那覇のドーピングの問題にも象徴されているように、選手が大資本の道具、つまり収奪の対象となっている場合があるわけです。スポーツを見る観客もスポーツ資本の利潤の対象でしかない場合もある。こういう世界に、スポーツの尊厳とフェアネスを持ち込みたいのです。

玉木 今あるスポーツ振興法は、一切プロを対象にしないことが明文化されています。それは時代錯誤も甚だしいことですが、それ以外にも、障害スポーツは厚生労働省、高校野球は文科省の管轄で、縦割り行政のなか、横の連携や協力体制が一切ありませんね。

鈴木 そういう縦割り行政を廃することは、政府全体の大きな課題で、そのために新たに国家戦略局をおきます。これは政府直轄でやっていくんです。玉木さんがおっしゃるとおり、健康については厚生省、スポーツ産業は経済産業省、スタジアムは国交省、地域スポーツは総務省、学校体育は文科省と分かれていますが、これは全部サプライサイド(与える側=行政の側)の話なんです。ここを市民サイドからの見方に変えて再編したい。その意味で、真のスポーツ庁の実現は重要になってきます。

玉木 スポーツ基本法のもとでスポーツ庁によって再編されても、高校野球は学校教育として文科省に残りますか?

鈴木 いや、ですからまずスポーツ基本法をしっかり作ることが大切なんです。そしてスポーツ権、すなわちスポーツにおける自治を認める。競技団体の自治。スポーツ権は当事者の間でルールが作られ、バランスを崩した場合は、訴権として民と民の民事法でフェアネスが保たれるんです。現在は行政方にコントロールされていて、何かおかしなことがあれば、お役所に言う、上に頼むという構造です。だから、そこに権力が発生する。スポーツのあるべき姿は、そうじゃないですよね。役所に頼るのは間違っています。

玉木 原則としては私もそうだと思います。ただし、日本のスポーツ界においては、いろんな隠れ蓑がある。教育の隠れ蓑で野球興行をしたり、プロ興行ではスポーツ団体でなく、実は親会社が儲けている場合もある。これについてはスポーツ庁が行政指導しなければならないのでは?

鈴木 プロ野球は昭和20年代に生まれたときから税の特別扱いがあります。そういうものを取り払っていくと「普通」が実現します。そういう利権化している通達を取り消すのは、国税局長官であって行政指導ではありません。

玉木 ひとつひとつの組織を「普通」にしていけば、そういう利権などがなくなると?

鈴木 財団法人日本高校野球連盟の所管大臣は文部科学大臣だから、事業報告、予算、決算などを文科省に認可してもらわねばならない。結局は団体の許認可権の問題なんです。NPOは所管省庁はありません。一般社団法人・一般財団法人もありません。ただ、公益(社団・財団)法人については所管が必要です。これに関しては最近面白いことが起きていて、公益法人を取れるところでもランニング・コストがかかったり許認可が煩雑だからと、一般社団・財団法人にするところが増えている。公益法人の改革が決まっていて、あと4年以内に一般か公益かを決めなければならないので、あらゆる社団法人や財団法人で議論が起きているんですが、漏れ伝わる話では一般法人に流れています。

玉木 東京ドーム内にある野球体育博物館は、「体育」という文字をつけないと旧文部省に公益財団法人として認可されなかった。そんなナンセンスが、なくなっていくわですね。

鈴木 そうですね。それぞれの団体がどの方向で行くかを選択できます。一般財団法人だと野球博物館でOKです。医師会も一般社団法人でいくか特定公益法人にするかを議論している。同時にスポーツ基本法の議論が平行して進んでいくことで、監督してもらわなくとも一定の秩序やフェアネスが実現するならば、どんどん一般社団法人化、一般財団法人化は進むと思っています。

玉木 なるほど。そうして法人団体が整理されたあと、教育としての体育は、スポーツ庁に入れる必要はないですね。

鈴木 学校の授業の体育は入れる必要はないですよね。行政には事前救済型と事後救済型があります。ようするにトラブル前に箸の上げ下ろしを言うのが、今までの行政の事前救済型で、事後救済型は基本的に自由。何かあれば准司法で裁定が行われることになる。たとえばドーピングの話で言えば、現在あるスポーツ仲裁機構を純司法機関としてスポーツ庁に入れるほうが、我々の文脈にはあっている。高校野球みたいに、事前に「あれだめ。これだめ」というものをやめて行こうという観点なんです。

玉木 日本のスポーツ界の現状としては、オリンピックスポーツ、興行スポーツ、教育スポーツの3つに大きく分かれていますが、運営に問題ある団体が多いですね。

鈴木 訴権とスポーツ権がはっきり認められると、「この団体の運営はなんですか。一般会員の言うことをきかないし、現場を離れて何十年経つボスたちが好きなことをやっている。これはスポーツ基本法の精神に反している」ということを、いつでもどこでも誰でも言えるようになる。これがフェアネスの権利です。これを行政指導に任せると大変な時間がかかる。世の中にたくさんあるスポーツ団体をひとつずつ見ていけば100 年かかりますよ。でも現場にフェアネスを実現する権利を付与すれば、至るところで是正する動きが出てきます。その環境を作ります、その権利も付与します、裁定する場所も作ります、ということなんです。

玉木 政治家の有力者がスポーツ団体のボスになれば、その団体は発展するなんて嘘ですからね。

鈴木 そうそう。サポーターを含めて多くの人が参加できる民主的なコミニティを作れば、そのスポーツは振興します。どれだけ多くのマン・パワー、人のエネルギーを集められるかが、フェアネスの実現にかかってるのです。

玉木 メディアのスポーツ支配も考え直す必要があるし、スポーツジャーナリズムもフェアにならねばならない。

鈴木 今はジャーナリズムでなく宣伝ですからね。

民主党はなぜ石原五輪に反対したのか

玉木 この本が出る頃には、結果は出ているんですが、東京オリンピック招致についての国会決議に、民主党は最初抵抗されていましたね。

鈴木 一貫しているのは、オリンピック憲章に乗っ取った開催や招致活動には賛成。しかしながら石原都知事のやっている招致の動機、その招致活動の実態は、活動費をべらぼうにとって政治利用しているもの。石原さんの石原さんによる石原さんのためのオリンピックには反対、スポーツを愛する人のスポーツを愛する人によるスポーツを愛する人のためのオリンピックならば賛成。国会の招致決議では、その条件で賛成しました。

玉木 その条件は守られていますか?

鈴木 守られないとき、その都度文句を言いました。

玉木 長野五輪では、当時JOC会長でプリンスグループの総帥である堤義明がサマランチ会長と手を握った。その後招致活動費の報告書類を破り捨てたことからも、相当カネが動いたことは容易に推測できますが、五輪招致は綺麗ごとでできないというのは現実にありますよね。

鈴木 もちろん、それはわかっていますが、民主党は裏交渉や裏工作をしてまで招致しなければならないというスタンスではありません。そういう手法は断固反対です。

玉木 東京五輪招致の理念ともリンクするんですが、自民党はトップアスリートを積極的に強化していくというトップダウン型。民主党は逆の発想のボトムアップ型で、地域のスポーツクラブの育成が芯になってますね。

友近 自民党の出したスポーツ基本法は団体のお手盛り要望をもりこんだ内容で、200億円ほどある予算配分で言えば、トップアスリートに60〜70%、学校体育に30〜40%、障害者スポーツ並びに一般大衆へはわずか6%。この配分は変えなければなりません。私はドイツで総合型スポーツクラブというものを体験しました。ボトムアップ型で、ボトム、すならち地域に予算を割き、地域が活性化してこそメダルも獲れるんだという形にしていきたいんですよね。

玉木 確かサッカーくじの収入の使い道は、そこですよね。

鈴木 サッカーくじが約100億円。別にスポーツ振興基金も100億円以上あって利息が年間5億円くらい出ます。サッカーくじの基本理念はスポーツ振興です。だから比重は、地域、一般大衆になっていますね。

玉木 私はtotoの創設にかかわったから詳しく知っているけれど、実は財務省に利益の3分の1を国庫納付金として取られています。それはおかしいんじゃないですか?

友近 まだ民主党としてスポーツ振興クジを精査してないので、考えは固まっていませんが、個人的には使い方は見直すべきだと思っています。

地域のスポーツコミニティを育てる

鈴木 1964年の東京五輪はハードシステムを残しましたね。じゃあ、今回は招致結果がどうあれ、何を生み出して残すのか。私は、地域スポーツクラブを残したい。五輪を機に東京中のいろんな地域にスポーツクラブができる。さらに全国に波及して各地にできる。それが理想です。招致に莫大なお金を使うくらいなら、それを基金にして毎年何十億というお金を生み出していけば、それは地域を活性化する果実になりますよ。予算の配分もトップアスリートが60%でなく、健全に地域スポーツが発展していくためのヒューマンソフトに割いていくべきなんです。

玉木 東京五輪のプレゼンテーションの中では、スポーツクラブのことが書かれていない。リオも、シカゴもマドリッドもわが町の愛するクラブチームの話が書かれています。アトレチコ・マドリッドやレアル・マドリッドと有名なサッカーチームもありますからね。でも東京の場合、ジャイアンツは地域と密着したクラブではないんです。そこが寂しいし、世界レベルで東京の弱いところですよね。

鈴木 日本の現状を表現していますよ。スタジアムに体育館。ハードはそこそこあるのにソフトがない。日本中にスポーツクラブでできて、少年から壮年まで楽しんでいるような街が五輪を招致するなら素晴らしいことですよ。

玉木 先日、石原都知事と対談した際に、「落ちても次また立候補するんでしょう」とふると「そのときは、オレはいないから、次の知事が考えることだ」という返事でした。

鈴木 知事であろうが都民であろうが、本当にスポーツを愛好するなら、立場がどうであれ招致運動は継続するはずですよ。だから、あの人の招致の動機は不純なんです。僕ならワールドカップが来るなら何でもしますよ。国会議員でも大学の先生でも、そのときの立場の権限を最大限に使って招致活動しますよ。それがスポーツを愛するもののビヘイミアですよ。グラスツールでのアクティビテイを応援する気持ちが、石原さんにはなかったということですよ

玉木 それは、感じられなかったですね。文学者としての面白いスポーツ観はお持ちでしたが…。

鈴木 東京は土地の問題もあるけれど、高級スポーツクラブはあっても、スポーツを楽しみにくい街になってますね。

友近 僕はドイツの7部のチームでプレーしたときに体験したんですが、練習後や試合後の芝生のグラウンドに、おじいちゃんやおばあちゃんが集まってソーセージを焼いて、ワイワイとビールを飲む。スポーツクラブは地域の憩いの場でもあるんです。ボールを蹴るという行為が地域の生活に溶け込んでいる。そういうものを日本に作りたいんです。

鈴木 民主党内はスポーツの問題を大変重要な課題と認識しています。数値化は難しいけれど、スポーツは地域を元気にすることに最大に貢献しています。友近さんが関係した愛媛FCやアルビレックス新潟、大分トリニータなど、スポーツは地域が生きていく糧になっています。それくらいの大事なものですから、我々は、社会ムーブメントの重要なテーマとして、今後も活発に議論していきますよ。

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プロ野球ストライキと構造改革

「メディア規制法」とスポーツ・ジャーナリズム

黒船襲来。プロ野球維新のスタート!

パラリンピックを見よう! 日本代表選手を応援しよう!

アテネ大会でオリンピック休戦は実現するか?

「NO」といえるプロ野球

プロ野球選手が新リーグを創ってはどうか?

買収がダメなら新リーグ

「逆境こそ改革のチャンス!」

あの男にも「Xデー」は訪れる・・・

F1― それは究極の男の遊び

「戦争用語」ではなく「スポーツ用語」を

スポーツは国家のため?

阪神優勝で巨人一辺倒のプロ野球は変わりますか?

「高見」の論説に感じた居心地の悪さ

原稿でメシを食ったらアカンのか?

アメリカ・スポーツライティングの世界

<戦争とスポーツ>

長嶋野球の花道と日本球界の終焉

スポーツを知らない権力者にスポーツが支配される不幸

ニッポン・プロ野球の体質を改善する方法

草野進のプロ野球批評は何故に「革命的」なのか?

理性的佐瀬稔論

新庄剛志讃江――過剰な無意識

無精者の師匠、不肖の弟子を、不承不承語る

誰も知らないIOC

日本のスポーツ・メディア

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