コラム「スポーツ編」
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掲載日2018-09-26 NEW!!
この原稿は財界展望新社『ZAITEN』2018年10月号の連載「玉木正之のスポーツ批評」第12回に『どんどん出てこいスポーツ界の不祥事』と題して書いたものです。まだ女子体操界の不祥事(塚原夫妻のパワハラ?速見佑斗コーチの暴力等)が表沙汰になる前に書いた原稿で、女子体操界と朝日生命体操クラブの関係がプロ野球と読売ジャイアンツの関係にそっくり…といったことには触れていません(次回の更新でそのような原稿を蔵出しします。乞御期待)。が、不祥事は、臭いものに蓋をするよりもどんどん表沙汰になって改革のきっかけになったほうがイイという気持ちを込めて“蔵出し”します。

どんどん出てこい!スポーツ界の不祥事

 思い返せば女子柔道日本代表監督によるパワハラ・セクハラ事件あたりが出発点と言えようか。そこから問題は柔道界全体に飛び火して全柔連や講道館の人事改革に発展。

 その後、至学館大学女子レスリング部の監督や日本レスリング協会の強化本部長を務める栄和人監督のパワハラ問題が露見。国民栄誉賞まで授与された五輪4連覇の伊調馨が被害を被ったことが認定され、すったもんだの末に、栄監督はレスリング界の一切の要職をクビになった。

 そして日本大学アメリカンフットボール部の悪質タックル事件。それが内田正人監督や井上コーチなどの解任と、外部の選考委員会が選んだ新監督(立命館大学出身の橋詰功氏)就任、関東学生アメフト連盟による日大の来シーズンのリーグ戦復帰の不認可で一段落か……と思ったところが、同時期に同じ日大の女子チアリーディング部監督による部員へのパワハラやイジメが発覚。アメフト部の事件への対応の遅れが社会的に非難されたことを気にして(反省して?)、日大はこの事件の報道が出た翌日にチア部監督を即刻解任。

 さらに女子水球日本代表チーム選手の「悪質プレー(水着を故意に破る行為があった?)」を、男子水球の代表チーム監督がフェイスブックで非難。それで選手が傷つき合宿が中止になる事件も発覚。

 そんななかで世間を最も騒がせた(マスメディアが最も騒いだ)のが、日本ボクシング連盟山根明会長による数々の事件だ。

「連盟職員に対するパワハラ」「自分と関係のある出身地や大学の選手を勝たせるよう審判に圧力をかけた不正判定」「ボクシング用品(グローブ)の不正独占販売」「選手強化費や遠征費などの公金の不正使用」……などなどの「疑惑」を、「日本ボクシングを再興する会」に集まった連盟会員333名が内部告発。

 山根会長は、それらの「不正」や「疑惑」を認めないまま、世間を騒がせたことを理由に、日本ボクシング連盟の会長職と理事職を「辞める(辞任)」と発表した。が、関西ボクシング連盟の理事長や、日本ボクシング連盟の会員は辞任するとは明言しておらず、まだ影響力を残している(支持者はいる?)なかで、「院政」を敷くのでは……と危惧する声も聞かれる。

 それに対して「ボクシングを再興する会」の有志は、連盟の総会を開き、山根氏を連盟から除名する動きを見せており、この対決の行方がどうなるかは、現時点では予想が付かない(結局新会長による新体制が生まれた)。

 何しろ山根明氏は78歳の高齢にもかかわらず、テレビカメラの前で巻き舌で捲し立てる姿は、誰の目にも反社会勢力(と最近マスコミが呼ぶようになった団体。かつてはヤクザの組と呼ばれた暴力団のこと)の一員としか思えず、じっさい暴力団の元組長と50年以上にわたって親交を温めていたことを本人も認めている。

 その元組長もテレビ画面に登場し、かつては山根会長を弟分のように可愛がっていたことを話した。

 山根氏自身は、暴力団の組員になったとはなく、「杯も交わしていない」と明言している。が、連盟会長時代に暴力団の組長と親交があったというだけでも、スポーツ団体のリーダーになる資格がないのは明白。しかも山根氏は、大阪堺市の出身で、終戦直後に憲兵をやっていた父親が占領軍(GHQ)に逮捕される可能性が出たので母親とともに韓国へ渡ったと自称しているが、学歴は不明(大阪十三小学校と十三中学を卒業したと本人は言っているらしいが判然としない)。

 出自や経歴が判然とせず、暴力団と接触していた人物が、なぜボクシング連盟の会長にまで上り詰めることができたのか? それはまったく謎としか言えない。

 が、韓国での生活も経験し、韓国語に堪能だった彼は、アジアのなかでアマチュア・ボクシングの最強豪国と言われた韓国の関係者と交流。そこから国際ボクシング連盟(AIBA)との関係を築き、その働きが日本国内でも認められるようになったうえに、対抗する勢力に次々と「圧力をかけて」いつの間にか日本ボクシング界の「独裁者」の地位を得たらしい。

 山根氏自身も、自分は世界のボクシング界から「カリスマ山根」と呼ばれていると胸を張り、「世界と渡り合えるのは自分しかいない」と断言する。テレビカメラの前でそう話したときに、国際ボクシング連盟会長代行のガフール・ラヒモフ氏から18年前にプレゼントされた金の腕時計を自慢気に見せたが、ウズベキスタンの実業家であり、同国オリンピック委員会の副会長でもあるラヒモフ氏は、麻薬密売やマネーロンダリングに関わった人物と交流があり、アメリカ財務省はロシアの犯罪組織と関係のある人物として告発したこともある。

 これを受けてIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長は、AIBAに組織の浄化を求め、改善策が提示されないようなら、2020年東京大会の正式競技からボクシングを排除するとの警告まで発している。

 それに対してAIBAはどう動くのか? ボクシング界は日本での不祥事だけでなく、世界でも日本と同様の「反社会勢力」との関係によって、オリンピックから締め出されようとしているのだ。

 そんな「危ういAIBA」と密接な蜜月関係を結ぶことができた山根氏は、まさに「蛇の道は蛇」とでも言うほかない「勝手知ったるボクシング界のやり方」を駆使したのかもしれない。

 公益財団法人ではなく一般社団法人の日本ボクシング連盟は、税金で優遇されない反面、経理に対する国(法務省)の査察もゆるく、したがって人件費も細かく報告する義務がない。いわば丼勘定が通用する組織とも言われている。

 それは言ってみれば旧態依然たる日本のスポーツ組織の典型とも言え、パワハラも丼勘定もセクハラも審判の不正も……日本のスポーツ界にはよくある話なのだ(プロ野球にも巨人寄りのジャッジがあったし、箱根駅伝など人気大学スポーツの経理は不透明のままですからね)。

 ならば日本のスポーツ界の不祥事が次々と出てきて、表沙汰になるのは、むしろ大いに歓迎すべきことと言えるだろう。問題は、これをきっかけに、どれだけ改革が進むかだが、それには「団体」と癒着しないスポーツ・ジャーナリズムの確かな視点も必要なはずだが……。

 
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