コラム「スポーツ編」
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掲載日2010-02-24
この原稿は経済誌『ZAITEN』(財界展望社2009年10月号)の連載コラム『スポーツと金』に書いたものです。政権交代しても変わり映えしないスポーツ界のことを考え直すきっかけになってほしい…という気持ちを込めて“蔵出し”します。

「自民党=政府」でなくなった「二大政党制」の時代に、「スポーツ政策」を構築するのは誰?

 この原稿を書いているのは2009年8月下旬。総選挙を約十日後に控え、もちろんその結果は予想できない。なかには民主党の圧勝と政権奪取を予測し、民主党マニフェストのなかで高く評価できるもの、実現可能性の低いもの、実現しても不都合が生じるもの……といった分類を求めるアンケートを送りつけてくるメディアもある。

 公務員制度の抜本改革、政官関係の見直し(与党議員百名が政府に入る)、年額31万2千円の子供手当、高速道路料金原則無料化、日米FTAの締結、日米地位協定の見直し、普天間基地移動間所の見直し……等々、官僚の抵抗や公労協の対応、財源問題や環境問題、アメリカの反応……等を考えると、民主新政権の船出は(船出しているか否かはさておき)順風満帆ではないだろう。

 それもまた「揺れ/戻し」の繰り返しのなか、より成熟した民主主義を日本に定着させるための試練なといえるかもしれない。そんななか、意外と知られていないのが、先の国会で解散寸前に提出され、廃案になった「スポーツ基本法」のことだ。

 同法は、現在の「スポーツ振興法」がプロ・スポーツを否定し、アマ・スポーツのみを「振興」しているなど、時代に合わなくなった結果、新たな「基本法」を制定し、「スポーツ庁」の新設を推進する企図のもとに起草されたもので、当初は与野党のスポーツ議員連盟による超党派での法案提出の予定だった。

 が、スポーツ庁によるトップダウン式(エリート・スポーツマン育成とオリンピックでのメダル獲得によるスポーツ振興)を目指す与党(自公政権)と、地域のスポーツクラブやスポーツリーダーの育成を主張する民主党が対立。法案は与党のみの提出となり、解散をきっかけにして廃案になってしまった。

 日本の国会では、どんな理由であれ一度廃案になった法案はなかなか再提出できないようで、このスポーツ基本法も「オクラ」になったうえ、民主党政権誕生となれば、ますます「蔵出し」は困難となる。

 そこでオリンピックでのメダル獲得を目指して強化費の増額を目論んでいたJOC(竹田恒和会長)や日本体育協会(森喜朗会長)は、新たな戦略の練り直しどころか、二大政党制の実状に即した根本的な政策転換が急務となった。

 かつては唯一の政権政党といえた自民党に対して、旧皇族や自民党文教族のボスを組織のトップに戴き、陳情して予算を獲得し、選挙では人気スポーツ選手やメダリストを「陣笠」として立候補させ、集票に貢献する……といったスポーツ界の「政界(自民党)工作」が、当然のように蔓延(はびこ)っていた。そうして、ナショナル・トレーニングセンターができたのは、「森元首相と麻生首相のおかげ」という認識が、スポーツ界では一般化していた。

 スポーツマン(スポーツ界)は保守的……という「常識」が、いつからのことか(「社会党が政権を取ったらプロ野球は潰れる」という長嶋茂雄氏の巨人現役選手時代の発言以来にも思われる)はさておき、政権政党が一党に固定していた時代は、スポーツ界に限らず、その一党に取り入ろうとする動きがあらゆる団体の「政治活動」だった。が、どうやら、そのような時代は幕を閉じるようだ。

 民主党政権誕生の場合、当初はおそらくスポーツ政策どころではないだろうが、では、スポーツ政策は、誰が、どこで、どのようにして練りあげるのか。

 たとえば廃案になったスポーツ基本法にしても、JOCと体協がオリンピックスポーツを中心に予算獲得に動いたのみで、日本のスポーツ界全般のあり方を考慮したうえでの「政策」とはいえない。

 スポーツ庁が新設されたところで、現在厚生労働省が管轄している障害者スポーツはどうなるのか? 文科省管轄の大学・高校野球や大相撲はどうなるのか? それらは障害者のリハビリ事業であり、あるいは教育事業や伝統文化事業であるということで、たとえスポーツ庁が生まれても、現状のまま文科相のもとに残り、スポーツ庁の管轄には移行しないかもしれない。

 そして、スポーツ(と我々が認識している)団体で、また厚労省と文科省とスポーツ庁のあいだで、見苦しい利権の引っ張り合いが生じる可能性が高い。そこでオリンピック関連競技種目だけが法律を整備され、予算を獲得しても、日本のスポーツ界全体の発展につながるものとは思えない。

 旧来の「予算獲得陳情型」ではなく、また政党の「人気獲得利用型」でもなく、日本のスポーツはどうあるべきかをスポーツ界全体(各競技団体の代表者会議のようなもの)で話し合い、どのような新法と新省庁がふさわしいか、その青写真を練りあげたうえで各政党と協議し、全国知事会や経済労働諸団体が各政党のマニフェストを採点したように、スポーツ界(スポーツ諸団体)も各党のスポーツ政策を採点比較評価するようになるべきだろう。

 それこそが、日本のスポーツ界が、二大政党制下でまず手をつけるべきことかもしれない。スポーツ・ウェアやシューズ等のスポーツ用品の売上げ、競技場等の建設、試合の入場料、宣伝関連費等、すべて合わせて10兆円以上のマーケットのうえに、大衆の支持も高いのだから、スポーツ界はもっと政治的力を発揮できるはずである。

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