2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロに続く2020年のオリンピックとパラリンピックは、東京で開催される可能性が高くなってきた……らしい。
東京のライバル都市マドリッドは、スペイン国内が住宅バブルの崩壊とユーロ危機で失業率が25%を超す状態。バルセロナが州都のカタルーニャ州の分離独立運動まで激しくなりはじめ、とてもオリンピック開催どころではないという。
もうひとつのライバル都市トルコのイスタンブールは、イスラム圏初の五輪開催地として最有力視されていたが、隣国シリアの内戦が長期化。
戦争に巻き込まれかねない状況に陥っているうえ、トルコは同じ年にサッカーのヨーロッパ選手権の開催にも立候補しており、6月と8月に続けてビッグ・イベントを開催できるのかと危惧する声が高い。
国際オリンピック委員会(IOC)も両者の同時開催は認めない方針だという。
そこで、残るは東京……となるのだが、東京にも世論(都民)の支持が最低という致命的なマイナス要因がある。
IOCの調査では、オリンピック開催に賛成する声がマドリッドは78%(反対16%、どちらでもない5%)。イスタンブールは72%(反対3%、どちらでもない25%)。それに対して東京は、賛成が過半数を切る47%!(反対23%、どちらでもない30%)。
これはロンドン五輪の開幕前に行われた調査結果で、ロンドンで史上最多の38個のメダルを獲得したあと、東京五輪招致委員会が独自に調査をした最新の結果(10月)では、賛成が67%まで伸びた(反対13%、どちらでもない21%)。
しかし、それでもライバル2都市の結果と較べれば、少々見劣りがする。
それは「白黒をはっきり言わない日本人の特徴」と分析する人もいて、確かに「どちらでもない21%」のうちの半数が賛成に回れば、ライバル都市と肩を並べる数字になる。
が、賛成が少ない理由は、それだけではないはずだ。
1964年の東京五輪は第二次世界大戦の敗戦からの復興五輪。焦土と化した都市にビルが建ち並び、新幹線や高速道路が造られ、高度経済成長の最中の大会だった。
ならば2度目のオリンピックはどんな大会になるのか? それが想像できないから、賛成票が伸びないのではないか?
2度目の東京オリンピックは、もちろん東日本大震災からの復興という側面もあるだろう。が、基本的には、成熟した国の、成熟した首都での、成熟した大会となるはずだ。
ならば、それはどんな大会か?
今秋東京で開催される第68回国民体育大会は、「スポーツ祭東京2013」と名付けられ、第18回障害者スポーツ大会と同時に開催されることになっている。
この素晴らしい「合体」を国際的にも実行するとなると、IOCとIPC(国際パラリンピック委員会)の関係の調整や各種国際競技団体内の障壁の調整、さらに宿泊施設や競技会場施設の改善整備など、乗り越えなければならないハードルが、山ほど出現することになるだろう。
が、オリンピックとパラリンピックの2大会に分かれることなく、健常者も身障者も一緒に参加する一つの大会こそ、未来のオリンピックの理想形、成熟した都市で行う成熟したオリンピックといえるのではないだろうか。
100m決勝の後は車椅子100mの決勝。その後は視覚障害者……。そんな東京五輪なら、賛成票も一気に増えるはず!
じつは、このオリンピックとパラリンピックの同時開催というアイデアは、今年10月、宮城県石巻市で行われた第2回武道フェスティバルのあと、東京都のスポーツ関係職員数人と食事をしながら話し合ったときに、ある女性職員の口から飛びだしたものだった。
石巻の武道フェスティバルは、東京都の復興支援事業の一つで、東京五輪招致が実現したときには、石巻市で五輪正式種目以外の武道(空手や剣道など)の大会を開く計画もある。
パラリンピックをオリンピックにくっつけると、表向きには(建前では)賛成を口にしながら、心のなかでは(本音では)反対するIOC委員も少なくないはずで、国際的に声高に主張するのは控えたほうがいいかもしれない。
「理想の未来」の建設には、反対者も多いのが常。それだけに、成熟した都市・東京で開催される2度目の日本での成熟したオリンピックは、東北地方の復興のシンボルとなると同時に、オリンピックとパラリンピックなどという区別の存在しない「新しいオリンピック」の実現を目指すべきだろう。
そういう声を東京都がいち早く主張すれば、開催賛成の声も、一気に高まるはずだが……。 |