コラム「スポーツ編」
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掲載日2017-02-09
この原稿は、石川県金沢市に本社のある北國新聞社の発行する北國新聞2016年11月25日付夕刊の月イチ連載『スポーツを考える・第12回』に書いたものです。小生が最初につけていたタイトルは「五輪のゴルフ会場に女人禁制の超高級クラブは不適 都営のパブリック・エコロジー・ゴルフコースで行うべし」というものでしたが、霞ヶ関カンツリー倶楽部は女人禁制だけでなくバリアフリーが不完全で、組織委にそのことを指摘すると組織委の事務方の人は「ゴルフはパラリンピック競技に含まれていませんから」という答えでした。組織委は、ギャラリー(観客)は健常者だけに限る、と考えてるのでしょうか? そんな「五輪不適格」の意味も込めて“蔵出し”します。この文章の冒頭で、石川県金沢市に……と書いたことの意味はおわかりですよね。

東京五輪のゴルフ場問題 都営の若洲変更しかない

 新国立競技場、エンブレム、東京都の3会場(ボート・カヌー、バレーボール、水泳)と、様々な問題続きの東京五輪に、今度はゴルフ会場問題が浮上した。

 現在五輪会場決まっているのは埼玉県川越市の霞ヶ関カンツリー倶楽部(CC)。ところが、それに対して森喜朗組織委会長が「遠すぎる」と指摘したのだ。

 新聞やテレビなどのメディアも報道したので御存知の方も多いだろう。が、この指摘は遅すぎる。

 別に自慢するわけではないが、小生は3年前から霞ヶ関CCは五輪会場に相応しくないと主張し続けてきた。

 選手村のある都心からクルマで早くても約1時間半。往復に3時間以上を要する場所は、1週間近く毎日通う選手にとって身体的負担が大きすぎる。しかも周辺に適当な宿泊施設が少ないため、役員や大勢の報道陣、観客(ギャラリー)の移動も大変で、警備の費用も莫大になる。

 数万人単位の観客を運ぶ鉄道も未整備で、道路も狭く、さらに、その付近は夏の暑さが日本一とも言われる地域。そのため熱中症対策も考えなければならない。

 もしも7月下旬の炎天下で、5万人のギャラリーの0・1%が熱中症にかかったとしても50台の救急車が必要で、救急車が確保できたとしても、活動するには駐車場も道路も狭すぎる。

 さらに大問題なのは、霞ヶ関CCは入会金が1千2百万円とも言われる超高級クラブ。誰もが会員になれる(プレーできる)わけでない。

 そのうえ女性は正会員になれず、日曜日はプレーできない。そんな時代錯誤としか言えない「女人禁制」の規則まである。

 オリンピックとは、人種、民族、宗教、財産、性別などによる差別に反対する平和運動でもあり、あらゆる競技で男女平等を主張している。なのに女性差別や富裕層だけに会員を限るクラブは、基本的に五輪精神に反したスポーツ施設と言える。

 1996年のアトランタ五輪のとき、ゴルフの伝統的大会であるマスターズが行われる名門コースのオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブでゴルフ競技を復活させようという動きがあった。が、当時のオーガスタは女人禁制。その結果ゴルフの五輪競技復活は見送られたという経緯もある。

 オーガスタの女人禁制ルールも今では改められ、霞ヶ関CCも五輪をきっかけに女性差別をなくせばいい…という意見もある。が、そうなったところで、誰もが霞ヶ関CCで自由にプレイできるわけでなく、五輪のレガシー(遺産)はごく一部の富裕層の人々しか享受できないことに変わりはない。

 はたして、そんな場所でオリンピックを行う価値があるだろうか?

 東京には選手村の近く、自動車で10分足らずの湾岸に若洲ゴルフリンクス(GL)というパブリック・コースがある。東京都の経営だから申し込み制で、誰でもプレーできる。2016年の五輪招致のときは、ここがゴルフ会場になっていたが、20年のとき、なぜか理由が不明確なまま、誰が決めたのかもわからないまま、霞ヶ関CCに変更された。

 霞ヶ関CCを推薦する人々は、世界一流のゴルファーが大勢参加する大会は世界一流のゴルフコースで行うべきで、ゴミの埋め立て地などでやるべきではない、と考えているらしい。

 が、若洲GLは岡本綾子さんがコース設計をし、夜間は東京の高層ビルの夜景が美しい。そこが家庭ゴミの埋め立て地というのも、資源の再利用としてエコロジー的にオリンピック精神に相応しい会場と言える。

 ゴルフは一部のエリートが楽しむ高級スポーツだ、と言うならば、オリンピックの正式競技にはならなかったはずだ。ならば東京五輪のゴルフ会場は、若洲GL以外にないはずだが……。

 
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