コラム「スポーツ編」
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掲載日2024-11-06
この原稿は雑誌『ZAITEN』(財界展望新社)11月号(2024年10月1日発行)の連載『玉木正之の今月のスポーツ批評』第86回に書いたもです。現在のテレビのスポーツに対する取り扱いは、本当にヒドイものとしか言えない状態で、ドジャース大谷選手の私邸を"覗き見視線"で報じただけでなく、セ・リーグのクライマックス・シリーズに勝って日本シリーズ進出を決めた横浜DeNAベイスターズの三浦監督への勝利監督インタヴューを放送しなかったり、日本シリーズの中継と同じ時間帯にメジャーのワールドシリーズの再放送を流したり……と、日本のスポーツの発展など無視して、視聴率さえ取れれば……という姿勢が、あまりにも露骨に目立っているように思えます。そんななかで、NHKまでもがワケのわからないことを……という嘆きの気持ちを込めて"蔵出し"します。嗚呼!!

日本のテレビ・メディアはスポーツをエンタメとして騒ぐだけでなくキチンと報道せよ!

 小生の感覚が鈍かっただけのことかもしれないが、数週間前から(いや数ヶ月前からか?)、NHKの『7時のニュース』を見ていて気になることがあった。

 それは、ニュース報道からスポーツニュースと天気予報へと変わるときに、短い文章が画面に出ることだ。

 最初のうちは、あまりにも短時間だったので、文章を読めなかったが、何度か見るうちに、その文章が読めるようになった。

《きょうもあすもあなたと一緒に》

 何だこれは?
 報道の要(かなめ)たるニュース番組に、これは必要な文章か? あまりに視聴者に媚びた文章ではないか!?

 最近、番組の終わりにアナウンサーが、「今日もご覧いただきありがとございました」とお辞儀をして挨拶したことを見て仰天したが、NHKは受信機を所有している視聴者から強制的に視聴料を徴収することを国によって法律で公認され、公共の所有物である電波を使用することを認められ、一般的に「公共放送と呼ばれてる放送局である。

 ならば《きょうもあすもあなたと一緒に》などとわざわざ断らなくても、視聴料を支払っている我々(視聴者=あなた)の側に立って、我々(あなた)と一緒に(ニュースやその他の)番組作りを行うのは、あまりにも当然のことと言えるだろう。

 なのに、それをわざわざ媚びた口調の文章で断らなければならないというのは、何か後ろめたいことでもあるのかと勘ぐりたくもなる。

 しかもその文章(文字)は、あまりにも早く消えてなくなる。何日間か必死になって目を凝らして集中しないと読めない速さで消え去るものだから、NHKとしては、薬の能書きや生命保険や火災保険の契約書と同様、誰も詳しくは読まないだろうことを見越して、わざと小さい文字で素早く見せたいのかもしれない。

 そして何か問題が起きたときは、我々NHKは、自分たちの基本姿勢を番組内でキチンと断ってますよと言い訳できるよう配慮しているのかと邪推したくもなる。

 しかも薬や保険の能書きは印刷物として残るが、テレビ番組は録画しないと残らず、ユース番組を録画する人も極めて少数であることを思うと、この文章《きょうもあすもあなたと一緒に》は、まったく意味のない文章とも思える。

 まったく意味がないならば、何も小生が目くじら立てて問題に必要するはないではないかと言われそうだが、これはやはり大問題で、何が問題かと言うと《あなたと一緒》という媚びた姿勢が問題なのだ。

 NHKの『7時のニュース』のホームページを見ると、《きょうもあすもあなたと一緒に》のあとに、《日本、そして世界のこれからを考える確かな情報を届けます》と続く。

 このNHK『7時のニュース』の基本方針に則って考えると、ドジャースの大谷翔平がホームラン50本50盗塁(フィフティ・フィフティ)の記録に近づいたときに、「今日は○号を打ちました」「今日は盗塁をしました」「今日はノーヒットでした」といちいち報じることが《日本、そして世界のこれからを考える情報》とは思えない。

 大谷が50本塁打50盗塁のメジャーで前人未踏の大記録を達成したときには『7時のニュース』で報道する価値があるだろうが、そのときは、その価値が《日本、そして世界のこれからを考える情報》としてどのような価値を持つのか、その重要性の情報(インテリジェンス)とともに報じれば良い。

 が、記録が達成される前は、単なるエンターテインメントとしての「スポーツ・ネタ(情報=インフォメーション)」にすぎないだろう。

 大谷以外の日本人選手のメジャーでの活躍も、それが《日本、そして世界のこれからを考える情報》と考えられるときは、『7時のニュース』の報道姿勢に則って報道されるべきだろうが、そうでないときは単なる「スポーツ(エンタメ)ネタ」に過ぎない。

 100年ぶりにパリ五輪が開催されたことや、パリで初のパラリンピックが開催されたことは、報道価値のあるインテリジェンスと言えるだろうが、日本人選手にメダル獲得や活躍は、大相撲の日々の勝敗結果、プロ野球セパ両リーグの試合結果と同様、エンタメのインフォメーションに過ぎないだろう。

 きちんとした年代はわからないが、かつてはNHKでも他の放送局でも、「スポーツ・ニュース」や「天気予報」という短時間の番組が、ニュースとは別に独立して存在していたように記憶している。

 いまも『すぽると!』や『サンデースポーツ』など、スポーツのニュースを他のニュース番組とは別に、独立して伝える「スポーツ・ニュース番組」は存在する。

 が、今日ではNHKも、また他のテレビ放送局も、スポーツ・ニュースや天気予報をニュース番組やニュース・ショウ(ワイドショウ)番組の一コーナーに吸収してしまい、インテリジェンスとインフォメーションの区別が曖昧になり、報道番組と娯楽番組の区別も分け難くなり、すべてのテレビ番組が視聴率最優先のバラエティ番組化するなかで、スポーツはほとんど完全にスポーツ・エンターテインメント番組と化し、確かな「スポーツ報道番組」は息も絶え絶えの情況に陥っている。

 そんななかでわずかに、7月7日に放送された『NHKスペシャル/戦禍のオリンピック』、8月31日に放送されたTBSの『報道特集/炎天下のスポーツと熱中症』、そして小生もコメンテイターで出演した9月4日放送のBSフジの『プライムニュース/オリンピックと戦争と平和』が、私の知る限りテレビがスポーツ(高校野球やオリンピック)を、エンタメではなく報道として真っ当に取り上げた番組だった。

 スポーツ番組目白押しのなかで、わずかに3本しか紹介できないのは情けない限りで、これからも、メジャーに選手を奪われるばかりの問題は無視したプロ野球の優勝争いやメジャーのプレイオフ、関東の大学だけによる不平等な地方大会に過ぎない箱根駅伝等をテレビは大騒ぎするのだろう。

 が、かくもメディアがスポーツをエンタメとしてばかり扱っていると、日本のスポーツ界ばかりか、日本経済をも大きく傷つけることになるはずだ。

 
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2020年東京オリンピックの新種目は?野球&ソフトボールも見たいが、綱引も面白そう

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高校野球の本質を考えよ――タイブレークに疑問……高校生に娯楽の主役を演じさせるナンセンス

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日本のスポーツ界の現状と課題

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2020年東京オリンピック・パラリンピック開催決定記念講座 「オリンピック」とは何か?〜その意義と意味を考える 2020東京オリンピック・パラリンピックで日本はどう変わる?

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『60年代のスポーツ』――その光と影と……

1974年10月14日――長嶋茂雄がバットを置いた日

スポーツ中継・スポーツ番組作りの「プロ」になっていただくために

美しい「JUDO」が見たい!

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賭博は「悪」か? 「必要悪」か?

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人類最古の文明に生まれた人類最大の文化(フットボール)は、人類生誕の地(アフリカ)で、新たな時代を拓く

スポーツにおける日本人のオカシナ常識

「野性味」は「体育教育」から生まれない

日本サッカー青春時代の闘い

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「自民党=政府」でなくなった「二大政党制」の時代に、「スポーツ政策」を構築するのは誰?

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長嶋茂雄・著『野球は人生そのものだ』 不世出の野球人の述懐

貴乃花親方は理事に若すぎる?

ジャーナリズムとアカデミズムの狭間で

民主党政権で日本のスポーツは変わるか?

2016年五輪はリオに決定。東京に欠けていたものは何か?

東京五輪招致の真の敗因

「熱帯の日本」は「ウィンタースポーツ」もできる不思議な国?

2016年、東京五輪・パラリンピック招致〜玉木正之氏「東京五輪に賛成する理由」-前編-

政党マニフェストに見るスポーツ政策──「日本のスポーツ政策」は、まだ生み出されていない

開発と規制の狭間で

WBCよりも大切なこと

ON時代の真の終焉

2016年東京にオリンピックがやってくる?

2016年東京五輪開催の可能性

野茂英雄投手の功績と日本球界の課題

「いまこそタイガース・ファンを辞めるべきではないか」と悩む男の弁明

日本にスポーツジャーナリズムは存在するのか?

野茂の功績と日本球界の課題

人類は4年に一度夢を見る

水着で「言い訳」をしたのは誰?

世界史のススメ

『玉木正之のスポーツジャーナリスト養成塾』夏期集中講座

Jack & Bettyは駅の前

五輪とは死ぬことと見つけたり

セールスマンの死

日本人野球選手のMLBへの流出が止まらない理由

深い衝撃

大学はスポーツを行う場ではない。体育会系運動部は解体されるべきである。

スポーツニュースで刷り込まれる虚構 <森田浩之・著『スポーツニュースは恐い 刷り込まれる〈日本人〉』NHK出版生活人新書>

メディアのスポーツ支配にファンが叛旗

スポーツと体育は別物

岡田vs玉木 ドイツW杯特別対談第5回(最終回)「W杯守備重視の傾向は今後も続く?」

岡田vs玉木 ドイツW杯特別対談第4回 「ブラジルは何故ロナウドを使い続けた?」

岡田vs玉木 ドイツW杯特別対談第3回 「個人のサッカーの差がこんなに大きかったとは…」

岡田vs玉木 ドイツW杯特別対談第2回「世界のランクBからAへ昇るには…」

岡田vs玉木 ドイツW杯特別対談第1回「追加点を取るという国際的意識に欠けていた」

巨人の手を捻る

中日ドラゴンズ監督・落合博満の「確信」(加筆版)

300万ヒット記念特集・蔵出しの蔵出しコラム第2弾!

300万ヒット記念特集・蔵出しの蔵出しコラム第1弾!

「朝青龍問題」再考

大相撲の改革の契機に

“日本のサッカー”は“現代日本”を現す?

スポーツとは合理的なもののはずなのに……

世界陸上と日本のスポーツの未来

デデューの「復帰」に学ぶ「カムバック」に必要なもの

特待制度は「野球の問題」か?

学校はスポーツを行う場ではない!

動き出すか?球界の真の改革

東京オリンピック〜戦後日本のひとつの美しい到達点

日本スポーツ界における「室町時代」の終焉

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「歴史の重み」による勝利は、いつまで続く?

スポーツ総合誌の相次ぐ「廃刊・休刊」に関して考えられる理由

廃刊の決まった『スポーツ・ヤァ!』をなんとか継続できないものか!?

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日本のプロ野球と北海道ファイターズに未来はあるか?

私の好きな「スポーツ映画」

東京・福岡「五輪招致」のナンセンス?

政治と格闘した宿命のチャンピオン〜モハメド・アリ

日本のスポーツ界は「中田の個人の意志」を前例に

「求む。新鋭ライター」〜玉木正之の「第5期スポーツ・ジャーナリスト養成塾夏期集中講座」開講のお知らせ

1個のボールが世界の人々を結ぶ

「型」のないジーコ・ジャパンは大丈夫?

社会はスポーツとともに

「日本サッカー青春時代」最後の闘い

スポーツは、学校(教育の場)で行われるべきか?

常識を貫いた男・野茂英雄(日本人ヒーロー/1995年大リーグ新人王獲得)

「玉木正之のスポーツ・ジャーナリスト養成塾第4期GW期集中講座」開講のお知らせ

最近のプロ野球は面白くなった!

人生に「アジャストメント」は可能か?

「栄光への架け橋だ!」は、五輪中継史上最高のアナウンスといえるかもしれない。

スポーツの「基本」とは「ヒーロー」になろうとすること?

2005年――「2004年の奇蹟」(選手会のスト成功)のあとに・・・

アジアシリーズ日韓決戦レポート『日本の野球はどのように進化したか?』

2005日本シリーズに見た「短い闘い」と「長い闘い」

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阪神電鉄VS村上ファンド――正論はどっち?

高校野球の「教育」が「暴力」を生む

『スポーツ・ヤァ!玉木正之のスポーツ・ジャーナリスト実践塾』進塾希望者への筆記試験

ナニワの乱痴気

スポーツが開く未来社会

タイガースって、なんやねん 第10回「星野監督・阪神・プロ野球/それぞれの未来」

タイガースって、なんやねん 第9回「この先は、どんな時代になるんやねん?」

タイガースって、なんやねん 第8回「ミスター・タイガースはおらんのか?」

タイガースって、なんやねん 第7回「誰がホンマのファンやねん?」

タイガースって、なんやねん 第6回「関西は「豊か」やからアカンのか?」

タイガースって、なんやねん 第5回「星野さんは、コーチやなくて監督でっせ」

タイガースって、なんやねん 第4回「球団職員にも「プロの仕事」をさせまっせぇ」

タイガースって、なんやねん 第3回「星野監督は当たり前のことをする人なんや」

タイガースって、なんやねん 第2回「今年のトラにはGMがおりまっせ」

タイガースって、なんやねん 第1回「今年はバブルとちゃいまっせ」

「関西・甲子園・タイガース」=バラ色の未来――あるタクシードライバーの呟き

第V期スポーツジャーナリスト養成塾夏期特別集中講座・配布予定資料一覧

失われた「野球」を求めて――「楽天野球団」は「新球団」と呼べるのか?

浜スタから金網が消えた!

わたしが競馬にのめり込めない理由(わけ)

プロ野球ウルトラ記録クイズ

島田雅彦vs玉木正之 対談 『北朝鮮と闘い、何がどうなる?』

野球は、なんでこうなるの?

投手の真髄――PITCHING IN THE GROOVE

「球界第二次騒動」の行方は?

2005年日本スポーツ界展望〜「真の新時代」の到来に向けて

日本のスポーツの危機

野球は「学ぶもの」でなく、「慣れ親しむもの」

ライブドア堀江社長インタヴュー「落選から西武買収まで、すべて話します」

球団・選手「金まみれ」の甘えの構造

地域社会に根ざすスポーツ

新球団『東北楽天ゴールデンイーグルス』に望むこと

闘いはまだまだ続く

中日ドラゴンズ監督・落合博満の「確信」

奇蹟は起きた!

さようなら、背番号3

プロ野球ストライキと構造改革

「メディア規制法」とスポーツ・ジャーナリズム

黒船襲来。プロ野球維新のスタート!

パラリンピックを見よう! 日本代表選手を応援しよう!

アテネ大会でオリンピック休戦は実現するか?

「NO」といえるプロ野球

プロ野球選手が新リーグを創ってはどうか?

買収がダメなら新リーグ

「逆境こそ改革のチャンス!」

あの男にも「Xデー」は訪れる・・・

F1― それは究極の男の遊び

「戦争用語」ではなく「スポーツ用語」を

スポーツは国家のため?

阪神優勝で巨人一辺倒のプロ野球は変わりますか?

「高見」の論説に感じた居心地の悪さ

原稿でメシを食ったらアカンのか?

アメリカ・スポーツライティングの世界

<戦争とスポーツ>

長嶋野球の花道と日本球界の終焉

スポーツを知らない権力者にスポーツが支配される不幸

ニッポン・プロ野球の体質を改善する方法

草野進のプロ野球批評は何故に「革命的」なのか?

理性的佐瀬稔論

新庄剛志讃江――過剰な無意識

無精者の師匠、不肖の弟子を、不承不承語る

誰も知らないIOC

日本のスポーツ・メディア

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