3月9日1次リーグ東京大会の開幕を間近に控え、第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は大いに盛りあがってるようだ。
それは、日本代表の大谷選手やダルビッシュ投手だけでなく、アメリカにもドミニカにも、メキシコやベネズエラや韓国にも、多くのメジャーリーグ(MLB)の現役一流選手が多数出場するからだろう。
今はもう忘れてしまった人も多いだろうし、知らない人もいるだろうが、17年前の2006年第1回WBCは、はっきり言って大会前の盛りあがりなどまったくなかった。
その理由はいくつもあった。 開催時期がMLBやプロ野球(NPB)のシーズン開幕前で、選手たちの調整も困難。だからMLBの一流選手は出場せず、「世界一決定戦」とはお世辞にも呼べなかった。
MLBから日本代表として出場したイチロー選手も、日本チームの練習に合流して参加したときは、他の何人もの選手に「本気でやるの?」と訊いていたくらいだった。
そもそも「野球の世界大会」は、日本球界のアイデアで、社会人野球の父と呼ばれ、野球の五輪競技採用にも尽力された山本英一郎氏がMLBと交渉し、NPB日本シリーズ優勝チームとMLBワールドシリーズ優勝チームが戦う「スーパー・ワールドシリーズ」の実施で合意していた。
ところが01年に9・11同時多発テロが勃発。2年後に計画されていたスーパー・ワールドシリーズも白紙に戻された。そんなところへ、突然MLBが06年春のWBC開催を通告してきたのだ。
このとき山本英一郎氏は「MLBが世界中から選手をスカウトする見本市の大会にするつもりか!」と激怒した。
彼はスーパーワールドシリーズを日本からアジア、アメリカから中南米諸国に広げるだけでなく、やがてイスラム諸国やアフリカ諸国など、全世界に広げる夢を語り、MLBの自分勝手なやり方に大反対。NPBの組織としても、日本のプロ野球選手たちも、WBCへの参加を直前まで迷ったくらいだった。
おまけに結局は参加を決めたものの、第1ラウンドの東京ドームでの試合で韓国に敗れ、2位進出で第2ラウンドのアナハイムでのアメリカ大会に進んだものの、再び韓国に敗戦。
さらにアメリカとの試合では、アメリカ人審判による明らかに日本チームへの不当な判定で1点差で敗退。
万事休す……と思われたが、メキシコがアメリカを破り、日本代表はかろうじて準決勝進出。3度目の正直で韓国に勝ち、決勝でキューバを破り、第1回WBCの王者に輝いたのだった。
第2回大会も韓国に2度敗れながら敗者復活戦を勝ち、決勝で3度目の韓国との対戦に勝って2大会連続優勝。こうした逆転劇の連続で日本の野球ファンはWBCが大好きになったのだった。
が、13年第3回大会はプエルトリコに敗れてベスト4(優勝はドミニカ)。23年第4回大会はやはりベスト4でアメリカに敗れ、決勝でプエルトリコを破ったアメリカが優勝。
今年の第5回大会は史上最強と言われる日本チームだが、各国ともMLBの精鋭を揃えて見所満載。
とはいえWBCには、日本などの強豪チームは免除された予選があったことをご存じか?
ドイツ、フランス、パキスタン、ブラジル、スペイン、アルゼンチン、南アフリカなどが参加。イギリス、チェコ、パナマ、ニカラグアが本戦に勝ち進んだ。
そのことも記憶にとどめ、いつの日かアフリカやイスラム諸国も参加する、山本英一郎氏の夢見た「野球の真の世界一決定戦」へとつながってほしいものだ。
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