コラム「スポーツ編」
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掲載日2013-05-08
この原稿は、本ホームページのナンヤラカンヤラに書いたことなどを整理して書き直し、News-Logにアップしたものです(5月5日)。すると即座に、ヒット数で1位を記録しましたが(旬の話題ですからね)、同時に、いろいろツイッターなどで批判もされました。『(ニューヨークタイムズのインタビュアー2人のうちの1人が)日本人女性ならば、「猪瀬発言」がマズイ結果を招くかもしれないということを、その場で指摘してくれても良かったのに…』と書いた部分が、「ジャーナリストとして甘い」と批判されたのです。小生としては『…と(東京五輪招致賛成派としては)思わないでもない』とう部分まで、文章を切らずに引用したうえで判断してほしかった、とも思わないでもありません(小生は過去に一度も自らジャーナリストと名乗ったことはありませんが、とりわけこの一文は「東京五輪招致賛成派」としては…と断ったつもりですから)。とはいえ、この原稿を書きながら、猪瀬発言が何とか丸く収まって東京五輪招致を成功の方向に…という意志が働いているのも事実で、それもふくめて「ジャーナリストとしては」(私の言葉で言うなら「物書きとしては」)甘い姿勢だったと反省し、読者の指摘を真摯に受け止めました…というわけで、我がホームページにも“蔵出し”しますので、多くの皆さんにも読んでいただきたいと思います。

猪瀬都知事「失言」後の「東京五輪招致」に必要なことは?

4月29日から30日にかけて、例の猪瀬都知事の発言(NYタイムズの記事)の発言詳細がわかって来るに連れ、全身から力の抜けて行くような気持ちになった。

 IOC(国際オリンピック委員会)は、立候補都市の招致活動関係者が競合都市を批判するような言動を固く禁じている(五輪招致都市活動規則第14条)。猪瀬都知事が、それを知らないわけがない。いや、彼は、そのことを、はっきりと認識していた。

 今年の1月、BSフジの『プライム・ニュース』に出演したとき、私は、イスタンブールは同じ年の6月にユーロ(サッカーのヨーロッパ選手権)も開催しようとしており、続けて8月にオリンピックというスポーツ・ビッグ・イベントの連続開催は、かなり不可能なことを指摘した。

 すると猪瀬都知事は、「立候補してる他の都市を批判することは、はっきりと禁止されてるからねえ……」と語った。この会話が本番中だったか、楽屋での話だったかは忘れたが、彼がIOCの招致都市活動規則を知っていたのは事実で、それだけにNYタイムスの取材での「失言」は、なるほどインタヴューがほぼ終わったあとの「雑談時」のものだったようで、気の弛みが招いたことのようでもあるとはいえ、余計に悔やまれる。

 ニューヨーク・タイムズの2人のインタヴュアーうち、1人が日本人女性だったというのも「気の弛み」を招いた一因だったかもしれないし、日本人女性ならば、「猪瀬発言」がマズイ結果を招くかもしれないということを、その場で指摘してくれても良かったのに……と(東京五輪招致賛成派としては)思わないでもない。

 しかし、東京五輪招致の支持率が70パーセントを超えたとはいえ、今年1月の朝日新聞が躍進するトルコ経済とイスタンブール五輪招致の活動を大きく報道したのをはじめ、日本のメディアやメディアに関わる人々の「東京五輪招致」への支持は、けっして「熱い」ものではない。「反猪瀬派」のマスコミ人や都庁関係者も、けっして少なくはない(と聞いている)。

 もっとも、そのくらいのことは猪瀬都知事も十分に御存知のはずだから、あらゆる場所でのあらゆる発言には、より慎重になってほしかった。

 とりわけ、宗教というsensitiveな話題での次の発言は、「気の弛み」では済まされず、「差別視」を疑われても仕方ない発言とも言える。“Islamic countries, the only thing they share in common is Allah and they are fighting with each other, and they have classes.”(イスラム諸国が共有しているのはアッラーだけで、お互いに喧嘩しているうえ、階級がある)

 この発言は、キリスト教諸国や仏教諸国も似たり寄ったりであることを思えば、イスラムに対する差別発言と言われても反論はできないだろう。

 さらに、次の発言も、イスタンブールやトルコへのリスペクトが感じられない上から目線の物言い、と取られても仕方ない。“I’m sure people in Turkey want to live long,” he added. “And if they want to live long, they should create a culture like what we have in Japan. There might be a lot of young people, but if they die young, it doesn’t mean much.”(トルコの人々も長生きしたいでしょう。長生きしたいのなら、我々日本のような文化を創るべきです。(トルコは)若い人が多いかもしれないけど、早死にしては意味がない」

 いまさら発言を悔やんでも仕方ない。イスラム諸国への謝罪、イスタンブールとトルコへの謝罪をきちんと行ったうえで、今後の「五輪招致活動」を、どのように進めていけばいいのか、猪瀬都知事と東京都、およびJOC(日本オリンピック委員会)は、改めて方針を打ち出すべきだろう。

 まず、やらなければならないことは、きちんとした「票読み」である。東京オリンピック&パラリンピックの理想を語る一方で、冷徹犀利に現在の選挙運動を分析するべきだ。総数約100票で決定されるIOC理事の票のうち、東京は現段階で何票の票の獲得を確定し、何票の票を高い確率で獲得できると計算し、絶対に獲得できない票は何票と読んでいるのか。そして東京五輪招致は、現時点で、どの程度の確率で選ばれる可能性があるのか?

 メディアの予想やイギリスのブックメーカーのオッズなどではない東京都と日本政府が独自に収集した情報があるはずだから、それに基づき、まだ大きな可能性があるというのであれば、もちろん全力で招致活動を継続するべきだと思う。が、現時点(IOC総会での投票まで、あと約4か月の時点)で、可能性が薄らいできた、と判断されるのであれば、「五輪招致活動」の原点に戻って、招致活動を無理して継続するのではなく、より価値のある活動にシフトすることも考えるべきではないだろうか。

 では、「五輪招致活動」の原点とは何か? それは石原都知事時代、日本の経済と社会に漂う「閉塞感」を打破するキッカケとしてオリンピック招致を……というところから、まず始まったと言える。そして3.11の東日本大震災を経て、現在の猪瀬知事時代には「復興五輪」がテーマに掲げられた。それが、「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ」という国内向けのスローガンにつながっている。

 しかし「復興オリンピック」というコンセプトは、あくまでも国内的なものといえるので、世界的にアピールするキャッチフレーズとしては、「Discover Tomorrow 未来(あした)をつかもう」を掲げた。1964年の東京オリンピックのような発展途上国による開発型オリンピックではなく、成熟した国の成熟した都市による未来志向型のオリンピック……というわけである。

 このような経緯のなかで、我々日本人にとって重要なことは、やはり何といっても「復興」だろう。誤解をおそれずに言うなら、東北被災地の復興は五輪招致よりも重要なことであり、五輪招致は東北被災地の復興に、ひいては日本全体の活性化につながるからこそ価値があるものと言える。

 「復興五輪」というならば東北地方でやるべきだ、と復興をキャッチフレーズにしての東京五輪招致に、否定的な人も少なくない。が、オリンピックやパラリンピックほどの巨大なイベントとなると、東北の諸都市での開催は不可能だ。そして、東北地方の甚大被災3県(岩手、宮城、福島)も東京五輪招致に賛成し、石巻市の「武道フェスティバル」(今年も第3回大会が10月に開催される)のように、東京五輪招致と連動したイベントを開催したり、東京オリンピック&パラリンピックが実現した暁には、並行して様々なイベントを計画している東北の諸都市もある(石巻市のスポーツ関係者は、五輪競技以外の武道大会をオリンピックやパラリンピックと並行して開催することを考えている)。

 そのことを考えるならば、もしも万一、残念ながら「東京五輪招致」に失敗した場合でも、東北被災地の「復興」につながる何年後かのイベントが、計画立案されてしかるべきだろう。それが、いつ(何年後に?)、どこで(東北3県で?)、どんなイベント(オリンピックやパラリンピックに変わる国際的な文化とスポーツの祭典?)を行うことが、「復興」にとってプラスになるのか?

 名古屋や大阪が、いったん五輪招致に立候補しながら、ソウルや北京との争いに敗れると、ただ敗れたという結果が残っただけで、五輪に変わる価値ある「何か」は「何も」残すことができなかった。東京の五輪招致についても、何も今から招致を諦めろと言う気は毛頭ないが、たとえ4か月後のIOC総会の結果がどうなろうとも、財力その他の「首都東京の力」で「東北被災地の復興」に弾みのつくような活動が継続するよう、今から準備を心掛けてほしいものだ。

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