大震災と原発事故からの復興もままならないなか、国会は内閣不信任案騒動というまったく馬鹿馬鹿しい空騒ぎで空転。国会議員という職業の人間は、ホンマに阿呆ばっかり……ということはさておき、そんな最中の5月31日、議員立法として「スポーツ基本法」が国会に提出された。
そのことを知っている日本国民は何%? という疑問もさておき、昭和36年に3年後の東京五輪開催を見据えて作られた「スポーツ振興法」を全面改正する「基本法」の制定は、十年以上前から、いや、もっと以前から検討されていた。
何しろ「振興法」では「営利のためのスポーツを振興するためのものではない」と、プロスポーツに対する支援を原則否定して除外。それが今回の「基本法」では「プロスポーツ選手をふくむ」と、やっと現代に即したものになった。
また前文に「スポーツは、世界共通の人類の文化」であり「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは、全ての人々の権利」と明記され、人類固有の権利としての「スポーツ権」も確認された。
ようやく日本にも「スポーツの憲法」ができようとしているのだ。
が、全文を読むと、残念ながら少々中途半端な印象を拭えない。
プロスポーツに関しても、国際的な競技大会等で「優秀な成績が収めることができるよう」と書かれているだけで、プロ野球やJリーグや大相撲が、いったいどのような位置づけにあるのか、よくわからない。
だから条文で「地域スポーツクラブ」への「支援」がうたわれても、それがJリーグやプロ野球のクラブを含むものか否か、よくわからない。
また「附則」のなかに「スポーツ庁」の設置について「必要な措置を講ずる」とある。が、法案には「スポーツの定義」が書かれてないまま「体育」という言葉も使われ、国民体育大会に関する記述もあるため、たとえば高野連の管轄する高校野球やその他の学校スポーツは「スポーツ基本法」に基づく(スポーツ庁ができた場合、その管轄下の)スポーツなのか、それとも「教育基本法」に基づく(文部科学省管轄下の)教育(体育)なのか、よくわからない。
前文で「国家戦略」として「スポーツ立国の実現を目指す」とあるが、本当にそう思うなら、今後、いま指摘した「よくわからない」部分を明確にすると同時に、この法案が長年討論され、やっと国会に提出された事実を、もっと多くの国民に知ってもらう努力をする必要があるだろう。
(一つ付記しておきます。「スポーツ立国を目指す」と書かれている「スポーツ立国」とは、どのような状況・状態のことを指すのでしょうねえ? そのあたりをはっきりすれば、日本は少しはいい国になると思うのですが……) |