ダルビッシュがレンジャーズと契約した。そのときのテレビのニュース映像では、テキサスのファンも日本のファンも、それに札幌のファイターズのファンも「早くアメリカでの活躍を見たい」と、誰もが笑顔を見せていた。
既に忘れた人も多いだろうが、1995年に野茂英雄投手がドジャース入りしたときは、「日本のファンへの裏切り」「失敗して半年で尻尾を巻いて帰国する」と激しい非難の声が巻き起こった。
野茂のメジャーでの活躍が日本のテレビ画面に現れるようになっても、投手は通用しても日本人打者は無理と言われた。
その声をイチローや松井秀喜が黙らせ、内野手や捕手は無理…という声を井口や城島が粉砕し、メジャーリーグは日本の野球選手やファンにとって「別世界」ではなくなり、「日本のプロ野球の上に存在するリーグ」という認識が定着した。
以来、一流選手は自然に「上」を目指し、ファンも「上」へ進む選手に拍手を惜しまなくなった。
一流選手が次々とアメリカへ流出することで、日本のプロ野球の空洞化を嘆く声もなくはない。いったい日本のプロ野球はどうなる?……と将来を憂える声もある。
が、そんなとき、常にぶつかる問題がある。日本のプロ野球は、いったい誰が、何のために、運営しているのか?
その答えは簡単で、親会社が主に宣伝のために運営している。だから例えばヤンキースが新球場を建設したとき、ニューヨーク市は8億ドルもの資金を税金で援助した。が、東京都が巨人軍に同じことを行うのは、都民が許さないだろう。
そこが日米の野球における最も大きな相違点で、日本のプロ野球の構造を抜本的に変革しない限り、日本球界は選手を育成し供給するメジャーリーグの下部組織、すなわちマイナーリーグとして機能し続けるのだろう。
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この原稿が掲載された毎日新聞が発売された同じ日(1月21日)の朝、NHKの『週刊ニュース深読み』に出演し、「ダルビッシュのメジャー入りと日本のプロ野球の未来」という同じ切り口で、「日本のプロ野球は、“極東地区リーグ”としてアメリカ・メジャーリーグに参加すればいい」という意見を言いました。メジャーリーグのルール(不文律)では、ジャーナリズムを全うすべきメディアが球団運営に関わったり、フランチャイズ都市の市民のためのものである球団に、親会社の企業名を冠することなどできなくなりますからね。 |