少々個人的な体験を書かせていただく。
生家が町の小さな電器店だったこともあり、物心のつき始めた頃から目の前にテレビがあり、それで野球の大ファンになった。
小学校時代は金田vs長嶋の対決に興奮し、中西・豊田・稲尾の西鉄ライオンズの「野武士野球」の迫力に驚き、村山・江夏の快投や、王の豪快な一本足打法に大喜びし、広島カープの台頭を経た頃からスポーツライターという職業に就くことにもなった。
そんな過去もあって、一番好きなスポーツは? と訊かれると、今でも「やっぱり野球」と答えてしまう。
新日鉄釜石や神戸製鋼のラグビーに感動し、Jリーグの誕生でサッカーも好きになり、オリンピックの迫力に目を奪われても、やっぱり野球が一番! 一球一打の投打の駈け引き、バント、エンドラン、盗塁、代打、代走、投手交代……等々の作戦の妙など、野球には、他のスポーツでは味わえない魅力を感じていた。
だからもちろん、ワールドカップ・ラグビーを楽しんだあとは、野球のプレミア12を観戦した。
結果は皆さん御存知の通り、台湾での一次リーグを全勝で勝ち進んだ日本チームが、日本に戻ってアメリカに1敗を喫したとは言え、リーグ戦の最後と最終戦の決勝戦で、韓国を相手に2試合連続勝利して見事に優勝!
それは確かに見事なことで、とりわけ希望通りの選手たちを招集できなかったうえ、不振に喘ぐ打者や調子の上がらない投手を辛抱強く使いながらチームを優勝に導いた稲葉監督には、心の底から「おめでとう!」の言葉を贈りたいと思う。
とはいえ日本代表チームの試合を見ながら、最近野球に馴染めなくなってきた自分を感じ始めていた。
日本代表の試合には台湾まで応援に行った熱心なファンもいたうえ、日本での試合は全試合ほぼ満員。ところが、日本代表の出ない外国チーム同士の試合はガラガラの空席だらけ。
日本代表が出ない試合でも満員だったラグビーW杯とは、イベントの規模が違うので比較にならないだろうが、外国チーム同士の試合を見ようとする「野球好き」はごく少数で、テレビ中継もされなかった(バレーボールにも、こういう傾向がありますね)。
そして満員の日本代表の試合でも、ほとんどの観客は日本チームの攻撃の時に大声を張りあげ、手を振り、メガホンを振り、椅子から立ちあがったり座ったり……。彼らは野球を見ているのか? 本当に野球を好きなのか? それとも応援することが好きなか? と首を傾げた。
しかも試合時間は軒並み3時間半! なるほどこれほど長時間のスポーツ観戦となると、歌ったり踊ったりしなければ間が持たないのか……とも思った。
そこへテレビのアナウンサーが「世界一」という言葉を連呼した。が、その試合内容がメジャーリーグと較べれば、相当にレベルの低いものだったことは誰の目にも明らかだった。
アマチュア野球の世界機構から発展したWBSC(世界野球ソフトボール連盟)主催で、メジャーリーグとは無関係に開催された「プレミア12」とはいえ、「過大広告」は良くない。そんなゴマカシでは本当の野球ファンの増加にも、子供たちの野球人口の増加にもつながらないだろう。
来年の東京五輪を見据えた大会とは言え、次のパリ大会からは野球もソフトボールも五輪から消えてなくなる。
ならば東京五輪後はどうするのか? プロ野球は12球団のままでいいのか? 高校野球は真夏に行うのでいいのか? そんな課題に今すぐ取り組むことこそ大事なことのはずだ。 |