唐突に発表された近鉄とオリックスの合併。そして性急に進行する1リーグ制への移行。しかし、この動きはプロ野球界を牛耳っている有力なオーナーたちが、かねてより周到に計画していたもののように思える。
1993年、選手会が何度も要求しながら認められなかったフリーエージェント(FA)制度が、オーナー会議によって承認された。と同時に、ドラフト制度に「逆指名」(現在では「自由獲得枠」)が設けられた。
FA制度とはドラフトで選手が球団を選択できないから設けられるべき制度であり、これは明らかに矛盾する決定で、この結果、選手の年俸は急騰し、人気選手がすべて資金力のある球団に集中し、赤字球団は経営困難に陥ることが予想された。
にもかかわらず、パ球団のオーナーが、このような制度改悪になぜ賛成したかというと、既にこの時点で、パのいくつかの球団の消滅による1リーグ制への移行が約束されていたとしか考えられない。
しかし、イチローの活躍やパ各球団の営業努力によって破綻する球団がなかなか現れず、10年を経てようやく近鉄が経営の困難を訴え、規定の方針どおりに1リーグ制への移行が動き出した、というわけである。従ってライブドア社が「近鉄買収」を申し出ても、顧みられることはなかったのだ。
もっとも、ここで不思議なのは、パ各球団が赤字に困っている、という「事実」である。
近鉄球団は年間40億円近い巨額の赤字に耐えられなくなったという。が、近鉄全選手の年俸合計は約20億円。大阪ドームの使用料が警備費も含めて年間約10億円。一方、収入はチケット販売の入場料だけで約30億円あるという。ならば諸経費を5億円と見積もっても、赤字額は数億円単位のはずである。
経営内容がディスクローズされないままリストラが断行されるのも大問題だが、仮に近鉄の発表した赤字額が正しいとしても、それなら1リーグとなって巨人戦の全国ネットの放送権料(約10億円)が手に入っても焼け石に水である。また、近鉄の発表した巨額の赤字額が、選手獲得のための裏金等であるなら改革の余地はいくらである、といえる。
なのに既定路線として1リーグ化の推進に固執するのは、「巨人中心のプロ野球」を堅守しようとする意志の表れとしか思えない。
かつて常時20%以上だった視聴率が、最近では一桁も珍しくないほどまで凋落した。それを新たな対戦カードによって盛り返そうというわけだ。が、そんな長期展望のない弥縫策は一時的に話題を提供するだけで、野球人気の長期低落に歯止めをかけるのは無理だ。
球団数の減少(すなわちファンとマーケットの縮小)を阻止したい選手会は、ストライキも辞さない構えだが、いっそのこと選手全員で現在のプロ野球機構から飛び出し、新たなリーグを設立してみてはどうか。
現在のようにチームが企業(オーナー)に「所有」される形ではなく、自立した運営で企業の「支援」を受ける形にしない限り、どんな「改革」も不可能だろう。 |