「ビアポン」というスポーツ競技を御存知だろうか?
私自身、2010年11月からインターネット上で開催されている『未公開映画祭』(http://www.mikoukai.net/)で『ビアポン〜世界一バカなスポーツ』と題されたドキュメンタリーを見て初めて知ったのだが、たしかに何とも「おバカなスポーツ」ではある。
ルールは簡単。二人一組のチームが2チーム。互いに紙コップかプラスチック・コップを10個用意し、それを細長いテーブルの両端に、ボウリングのピンのように三角形に並べる。そして互いに、その紙コップを狙ってピンポン球を投げ合う。紙コップには半分くらいビールを入れ、相手チームの選手がピンポン球を紙コップに投げ入れると、そこに入ったビールを飲まされる。
ビール(Beer)+ピンポン(Pingpong)=ビアポン(Beerpong)というわけだが、一日数試合行うと、酔いが回る。しかも風を起こしたり、相手選手に触れたりしなければ、どんな妨害行為をしてもよく、相手がピンポン球を投げる瞬間に、突然大声で奇声を発したり、オカシナ顔を見せたり……。なかには何杯もビールを飲んで大胆になったせいか、Tシャツをまくりあげて裸の胸を見せる女性の猛者までいる!
もとは1980年代、アメリカ各地の大学でパーティのときのゲームとして流行しはじめたのが起源らしい。が、現在では毎年ラスベガスでビアポンのワールドシリーズも開催され、優勝賞金は5万ドル!
昨年は「日本ビアポン協会」なる正式団体(http://www.bpong.jp/)も発足し、ワールドシリーズ予選の日本選手権も開催された(11月28日)。
初めてこの「スポーツ」のドキュメンタリー映画を見たときは、何とくだらないことを……ホントにバカだなぁ……と思ったのだが、そのうち、徐々に笑えなくなってきた。
真剣な眼差しでコップを狙ってピンポン球を投げ合い、「入った!」「はずれた!」と大騒ぎし、ビールを飲んで楽しく酔っぱらい、勝った負けたと無邪気に大騒ぎ。これこそ「スポーツSports」という言葉の本来の意味(冗談、戯れ、気晴らし、遊技……といった意味)に即した「スポーツそのもの」といえるのではないか。
しかも、棒でボールを叩き、小さな穴を狙って入れるスポーツ(ゴルフ!)と、どこが違うのか!? と考え始めると、どちらも似たようなものじゃないか……とも思えてきた(ゴルフとビアポンの類似点と相違点を、各10項目以上あげて理由を述べよ――。これを大学での我が授業の試験問題にするかどうか、いま本気で真剣に考えています)。
アジア大会では、ダンス、チェス、囲碁、シャンチー(中国象棋)、ビリヤード、ボウリング……も、正式競技として実施された。チェスは、オリンピックの正式競技に採用されることを目指し、ほかにダーツ(パブによく置いてある的当てゲーム)も正式五輪競技になることを目標にしているという(ウィスキーを飲みながらやるのかな!?)。また麻雀のルールに似たトランプ・ゲームのコントラクト・ブリッジを五輪競技に! という運動もあるらしい。
ならばビアポンも……いや、やっぱりアルコール付きの競技はダメか? ならばビールを青汁に変えて健康的に! などと考えるだけでも楽しくなってくるのは、ビアポンがスポーツ(気晴らし)である証拠?それとも私が、ビール好きなだけ?
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以下は『毎日新聞』12月11日付朝刊スポーツ面「時評点描」に書いたものです。こちらも合わせて“蔵出し”します。タイトルは新聞社の編集部が付けたものですが、元塾生諸君は、短いコラムと、それより少し長いコラムの原稿の書き方の違いでも考えてみてください(笑)。
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大騒ぎ「ビアポン」の魅力
ビアポンというスポーツ(?)を御存知か?
細長い机の端に紙コップを10個、ボウリングのピンと同じ三角形に並べる。それを狙って机の反対側からピンポン球を投げ入れる。
2人1チーム。2チームが向かい合って行う。ただし紙コップはビール入り! ピンポン球が見事コップに入るとなかのビールを敵の選手に飲ませてコップは除外。敵に入れられると、その逆。
ビールを敵に飲ませてコップをなくせば勝ち。BEER+PINGPONG=BEERPONG(ビール+ピンポン=ビアポン)…という簡単なゲームだ。
アメリカの大学生のパーティから流行したらしいが、私はネット上の『未公開映画祭』で公開されているドキュメンタリー映画『ビアポン〜世界一バカなスポーツ』で知った。
確かにバカさ加減は世界一。一日数試合行うと、多くの選手は酔ってヘロヘロ。おまけに敵の選手がピンポン球を投げるとき、風を起こさなければどんな邪魔をしてもよく、奇声を発したり、オカシナ顔をしたり、女性のなかには突然Tシャツをまくりあげ、乳房を見せる猛者までいる。
毎年ラスベガスで行われる「ビアポン・ワールドシリーズ」は、優勝賞金5万ドル!
とはいえ選手は賞金以上に、敵と(そしてアルコールと)必死に闘い、投げるピンポン球の行方に一喜一憂。ガッツポーズで雄叫びをあげたり、涙を流したり(泣き上戸?)…。
その大騒ぎを見て大笑いしたが、そのうち笑えなくなった。ゴルフ、サッカー、野球…等のスポーツとビアポンに「違い」はあるのか?
スポーツは所詮遊びである。ボールがカップに入ろうが、ゴールに突き刺さろうが、大空に舞おうが、それ自体に意味はない。だからこそ、多くの人が熱狂する。が、そのうち「意味」が加わり、教育、経済、政治…とも結びつく。が、スポーツの原点は遊び。だから素晴らしいのだ。その単純な真実をビアポンは示している。
先週の日曜「ビアポン・ジャパンカップ」が東京渋谷のパブで開催され、来年1月ラスベガスでの第6回ワールドシリーズに初出場する日本代表選手が決まった。「ガンバレ!ニッポン!」と素直に応援したくなるのは、私がビール好きだから…だけではあるまい。
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