昨シーズン末、星野監督はコーチ陣に「戦力の見直し」を通達し、その結果、戦力外と認定された23人もの選手のクビを切った。それは「外様だからできたこと」という声が(とくに阪神OBのなかから)あがった。
関西の人気球団タイガースで活躍すると、タニマチやマスコミが味方につき、少々衰えてもクビにならない、トレードもされない、という暗黙の了解が生まれる。その了解を破ろうとするとタニマチ筋やマスコミ筋から圧力が生じ、監督が非難される――という構図から「派閥争い」「お家騒動」といった「タイガース名物」が繰り返されてきたという。
中日から来た星野監督は、そういうシガラミに縛られないから・・・、カルロス・ゴーンのようなものだから・・・というのだが、「それは違う」と星野監督は反論する。
「中日でも同じことをやった。むしろ『生え抜き』のほうが事情がいろいろわかっていてやりやすかった。どこをどう押せばそれがやれるかがわかってるから。けど、結局は、どこまできちんと『絵』を描けるかどうか、その『絵』をどこまで実践する気があるかどうか。そういうやる気の問題じゃないかな」
カルロス・ゴーンと比較されることについても・・・、「彼に、いちどタイガースの監督をやらせてみなさいよ。日産どころやないよ。もっとしんどいんやから」といって苦笑した。
さらに今年のキャンプで、金本が四番を打つのを「遠慮している」ことが番記者のあいだで話題となり、「やっぱり外様だから?」とある記者が口にしたところが、「その言い方、やめろや」と、星野監督は少しばかり強い調子でいった。
「同じチームの一員やのに、なんで『外様』とか『生え抜き』とか妙な区別をつけるんや。そんなもん意味ないやろ」
正論である。いや、当たり前のことである。
当たり前のことをいい、当たり前のことをやる。それをやりにくいのがプロ野球界であり、日本の社会であるのかもしれない。 |