2月下旬、韓国で行われた世界卓球選手権で、日本代表チームは男女ともにベスト8入りをクリヤーし、パリ五輪への出場権を獲得した。
なかでも女子チームは決勝へ進み、常勝王者の強敵中国と激突。5年連続優勝中の中国に、2勝3敗と肉薄し、惜しくも敗れたものの大健闘を見せた。
一方で、少々興味深い「事件」が起きていたことを御存知だろうか?
それは決勝トーナメントに勝ちあがる前のグループリーグでの出来事で、日本の木原美悠と平野美宇の両選手が、南アフリカの選手を相手に、それぞれ第1ゲームを11対0と完封勝ちしたことだった。
そして、その結果に対してネット上の卓球ファンの声や中国のメディアのなかに、「マナー違反」と批判する声が表れたのだ。
卓球界には相手選手に1点も与えず、一方的に勝つことを、「マナー違反」と言った時期もあったらしい。
が、それはおそらく、21点先取で1ゲーム勝利となっていた時代の過去の話。2001年から11点先取で1ゲーム勝利にルールが変更されてからは、絶対に考えられない「マナー」と言える。
たとえ10点近くの大量リードをしても、相手に1点をプレゼントして試合の流れを渡すと、たちまち同点、逆転の危機を迎えるかもしれませんからね。
とはいえ、多くのスポーツには、ルールには書かれていないが、様々な「マナー」が存在していることも事実。
たとえばサッカーで、負傷して倒れた選手が出れば、ボールを保持している選手は、攻撃せずにボールをタッチラインの外に蹴り出すのがマナー。そして試合の再開は、スローインする選手が、ボールを出した相手チームの選手ににボールを返すのがマナーで、このマナーに反する選手(チーム)は、ほぼ存在しない。
野球では大差のついた試合で、勝っているチームがバントや盗塁の細かい作戦を行うことや、ホームランを打った打者がベースを回りながら派手なガッツポーズを見せることなどが、「マナー違反」と言われている。
また、打者の身体を狙った投手の投球はもちろん「マナー違反」だが、「故意死球」と「危険球」はルール違反でもあり、審判は投手に対して厳重注意や退場等の処分が下せる。
が、故意か指が滑った偶然の結果かの判断は困難で、最近は打者の頭部付近への死球や危険球は、ほとんどすべて即座に投手に退場命令が下されるようになった。
バスケットボールでは、試合終了が近づいた時点でリードしているチームの選手がが、ダンクシュートなどの超派手なプレーを見せることが「マナー違反」とされていたが、最近は「非難の声」はあまり聞かれない。
バレーボールでも、かつてはサービスエースや強烈なスパイクを決めたときに、派手な喜び方をするのは相手チームに失礼だから避けるようにと言われたらしい。
ラグビーでも30年前頃までは、トライした後に派手に喜ぶのは「マナー違反」と言われていた。それに反発したのが当時神戸製鋼スティーラーズのキャプテンだった故・平尾誠二さんで、彼は選手に「トライしたらカッコつけて気取ったりせずに、素直に喜びを爆発させよう」と、選手に呼びかけていた。
そして現在では、平尾さんの言っていたように、トライした選手は、遠慮なく大喜びする姿を表現するようになった。
スポーツにルール以外の「礼儀作法」が存在するのは良いことだろう。が、マナーには時代とともに変化しても良いものと、変化してはいけないものの2種類がありそうだ。
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