「2位に大差をつけても喜んでなんかいられません。タイガースはいつズッコケルかわからない。これまで裏切られ続けたホンモノの阪神ファンは、息を潜めて静かにしています。喜んで騒いでるのは、にわかファンです」
あるTV番組で「昔からの阪神ファン」がそういった。その番組を見たライトスタンドの応援団長の一人が、次のように反論した。
「そんなひねくれた言い方せんでも、素直に喜んだらよろしやないか。阪神ファンにホンマモンもニセモンもおまへんがな」
どっちが正しいかはさておき、こんな「真贋論争」は、よくある。昨年は昔からのW杯ファンやベッカム・ファン(主に男性)が、にわかサッカー・ファンやにわかベッカム・ファン(主に女性)を白い目で見た。
「古いファン」の気持ちもわかるが、「にわかファン」が悪いともいえまい。ファンは多種多様である。が、「悪いファン」は明らかに存在する。客席で催涙スプレーのようなガスを噴射したり、札幌ドームで禁止されているジェット風船を打ち上げた「ファン」。
これには、昨年の甲子園の最終戦で、ネット裏ではなくライトスタンドを向いて挨拶をした星野監督も、「もうファンサービスは何もせんよ」というほど呆れた。そういえば85年もライトの線審の判定に怒り、甲子園のスタンドから審判に向かって自転車のチェーンを投げつけた「ファン」もいた。
文豪の谷崎潤一郎は、関西の「食い物」を絶賛しながらも、《人間のほうはどうも食い物ほど上等ではないようである》と書いている(『阪神見聞録』より)。《東京と比べて、市民全体の公徳心が薄いのではあるまいか》
プロ野球ファンが「応援団」ではなくJリーグのような「サポーター」になれれば、タイガースを通じて、そのような「関西人の短所」を改められるようにも思えるのだが・・・。 |