2月1日(水)
別に読もうと思ったわけではないがパラパラとページをめくっていたら意外と面白くて読み出してしまったのが三島由紀夫の『新恋愛講座』。ギリシアの同性愛・キリスト教の禁止の多い愛・日本の男女の奔放な恋の説明も興味深かったがそこからの引用が凄い。キルケゴール(ドン・ジュアン論)ボーマルシェ(フィガロの結婚)スタンダール(恋愛論)プラトン(饗宴)プルースト(失われた時を求めて)ヴェデキント(春の目覚め)メリメ(カルメン)テネシー・ウィリアムス(欲望という名の電車)万葉集/古今集…さらに多くの恋愛映画から男女の様々な恋愛のパターンが紹介される。小説家がストーリーテラーとして自らの素材を分類したのを優しい言葉で女性に(?)語りか恵田のあと思って初出を巻末の見てみると『明星』昭和30年12月〜31年12月とあった。集英社の月刊『明星』と言えば平凡出版(現マガジンハウス)の『平凡』と並ぶ二大芸能雑誌。昔の芸能雑誌はレベルが高かったですねえ。ベッドから出てRKB毎日放送『田畑竜介GroooonUp』の『Catch Up』ZOOM音声出演。今日の話題はスポーツ協会の小中学生に対する暴言パワハラ指導が増えたこと(体罰は減ったらしい)を受けてかつてミスター・ラグビー平尾誠二さんが口にしていた選手指導の3箇条(+2箇条)を紹介する。@長く叱らないA感情をあらわにしない(「コラ−!」はダメ)B相手の人格に触れない(アホ、バカ、マヌケ等はダメ。「愚か者めが」もダメですよね)…+@選手の誤りの指摘は繰り返さず簡潔にA嘘は言わない(死ぬ気でやれ!はダメ)他に彼が指導者としてよく言ってたことは「言ってワカラン奴に叩いてワカルわけがない」「見て真似て身体で覚えろって指導者のアンタが言葉で説明できないだけのこと」…彼はいいこと言ってましたね。ラジオを終えて黒兵衛と散歩。ワン。終日デスクワークは『甲子園大会はいらない』の初稿校正。対談部分の校正を終わってレターパックで投函。自分の書き下ろしメディア批判『甲子園大会の「廃止論」どころか「改革案」も封殺する日本のジャーナリズム(マスメディア)の根本問題」と題した原稿も校正。ふうううう。残るは短い「あとがき」だけ。サケ・メシ・フロ・ネル。テレビでウクライナ戦争の戦車や航空機がどーしたとか戦戦がどーしたとか語ってる人々が楽しそうに見えるのは小生の誤解でしょうね。
2月2日(木)
三島由紀夫が月刊『明星』に連載していた『新恋愛講座』読み進む。面白い。ついにサルトル&西鶴&バルザックまで登場。映画はキム・ノヴァク&ウィリアム・ホールデンの『ピクニック』やラナ・ターナー&リチャード・バートンの『雨のランチプール』まで登場。時代と言うべきかもしれないが三島自身が《思春期の人たち》と書く昭和30〜31年『明星』の読者は相当にリテラシーのレベルが高かったようですね。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩のあと岩波ブックレットから4月1日の発売が決まった小林信也さんとの共著『真夏の甲子園はいらないーー問題だらけの高校野球』の小生の書き下ろし部分(第三章・甲子園大会の「廃止論」どころか「改革案」も封殺する日本のジャーナリズム(マスメディア)の根本問題)を校正。高校野球・都市対抗野球・職業野球の主催開催を朝毎読の大新聞社が次々と決定する一方で同じ時期に日本の軍国主義化が進むという記述(年表)のなかに箱根駅伝の開催が落ちていたので書き加えたりイロイロ赤入れして完了。宅急便で送稿。これだけメディア批判をしたら大新聞の書評には取りあげてもらえないでしょうかねえ?…でも書くべき事は書かねば…いや最近の潮流が変化して大新聞の書評にも取りあげてもらえることに期待しましょう!!『新恋愛講座』は『明星』の出版社である集英社の編集者だった粉川宏という人物が三島の口述を筆記して三島の赤入れで完成したモノらしい。同様の同じ編集者が同様の口述筆記で三島の『わが思春期』『第一の性』と続いたらしい。昔は『明星』の読者だけでなく芸能編集者のレベルも高かったようですね。
2月3日(金)
三島由紀夫『新恋愛講座』読了。少々時代遅れを感じさせる男女の会話の例などもありますが多くの思春期の性に関わるアフォリズム(金言警句)が並んでいる本書は今では小学校の先生などが読むべきかもしれませんね。あるいは少子化対策で筋違いの発言を繰り返す代議士も読むべきでしょう。ワン。ベッドから出て黒兵衛と散歩。庚高校野球廃止論の初稿も終えたのであとは短い後書きを書くだけ。ほんの見開き程度のうえ岩波ブックレットでは「あとがき」でなく「おわりに」というタイトルになるらしい(「前書き」は「はじめに」というタイトルで既に小林信也さんが書いた)ので今更マスメディア批判や甲子園大会批判をを繰り返すのもつまらないし「登山」の話を書くことにする。ルネサンスの時代にペトラルカが山に登る喜びを詩に書いて以来アルプスを初めとする登山が大流行。誰もが高い山への初登頂を「争う」ようになって投石や岩雪崩をわざと起こして「敵」をやっつけようとするようになったとか。マッターホルンに初登頂したイギリス隊のウィンパーもイタリア隊と争った末に岩雪崩をわざと起こして「敵」のイタリア隊を退けたことを『アルプス登攀記』に書いてますからね。昔の登山は恐ろしいことをしていたモノです。同じようなことを高校生に甲子園球場でやらせていることを大人たちはわかっているのでしょうかねえ…?と「おわりに」の原稿を書いて岩波編集部に送稿したあとは『ニューズ・オプエド』リモートMC出演。今日のゲストは小林信也さんと山本敦久さん。プロ野球のキャンプやWBCの話題や五輪談合疑獄等についてイロイロ濃い話をしたあとメインテーマはスポーツ協会へのスポーツ活動の暴力暴言パワハラの告発が過去最多となった話。小林さんが東海大管生の監督が暴力事件を犯しながら甲子園に出場することについて鋭い指摘。山本さんは五輪談合に関して根本的IOC&五輪大会批判。今も聞けますのでどーぞ。オプエド終えて『チコちゃん』見ながら晩飯&ネル。オプエドのURLです→https://op-ed.jp/
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『コーラス・ライン』 舞台裏を表に出したらソノ文化はオシマイですね。ブロードウェイ・ミュージカルも今はパロディしか面白くない?
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2月4日(土)
『新恋愛講座』に続いて続編として月刊『明星』(昭和32年)に連載された三島由紀夫の語り下ろし『わが思春期』読み始める。マスターベーションや初キスや同性愛の感情等「性の目覚め」が赤裸々に…というよりナチュラルに語られている。ここでもデュマ&ラディゲ&マゾッホ&コクトーという言葉が飛び出し昭和の思春期読者のリテラシーのレベルの高さを感じる。元殿様で社長の息子という友人宅へ遊びに行ったときの表現として取次に現れる老人が毎回違う部屋に通すのを《おそらく彼のヴァニティであったのでしょう》と書き「ヴァニティ」という言葉に注釈はない。小生がvanityという言葉の意味を知ったのは数年前に筒井康隆大先生の『ダンシング・ヴァニティ』というメッチャ面白い小説を読んで言葉の意味を調べてからだったということは戦時中に生まれ育って戦後に思春期を迎えた『明星』の読者たちはその後のベビーブームのあとに生まれ育って還暦を迎える頃の世代より成長が早かったというか…どこで知識を得たのでしょうね?ベッドから出て黒兵衛と散歩。そー言えば『ダンシング・ヴァニティ』は筒井康隆大先生によって舞台化され音楽を狭間美帆さんと山下洋輔さんによって創られ上演されました。そのパンフレットに原稿を書いたのは小生で『蔵出し原稿音楽編』のどこかにあるはずですので興味のある方はどうぞ。ワン。終日雑務。昼飯はカーリング見ながら。晩飯は『博士ちゃん』見ながら。途中からNHK『大河ドラマが生まれた日』を見る。小学4年の時親父が一番好きだった歌舞伎役者の尾上松禄が主役の井伊直弼を演じた舟橋聖一原作『花の生涯』制作の舞台裏。ケチを付ければNHKの自画自賛番組だけどドラマとして面白かった。ただブロードウェイのミュージカルも舞台裏を描いた『コーラスライン』を上演したあとロクなミュージカル(新機軸の作品)は生まれてないことを思うと大河ドラマもオワコンになったということかな?
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『花の生涯』 小学区5年のとき親父が大好きだった尾上松禄が出ているので見ました。そして全集に入っていた舟橋聖一の原作を読んでエロいのに驚きました
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2月5日(日)
三島由紀夫『わが思春期』読み続ける。戦時中、それも終戦間近となった頃に思春期を迎えた人物の回顧記は読む価値ありですね。戯曲『若者よ蘇れ』を読んでいただけに余計に面白い。赤紙が来ても肺病と判断されて入隊失格した東大法学部の学生が女性に恋心を抱く文章を甲種合格で中国の最前線に送られて3度の応招で3度の負傷入院をした親父が読んだらどう思うかなという思いで読んでます。ワン。ベッドから出て黒兵衛と散歩。ナンヤラカンヤラいろいろ雑務をこなして夕方からNHK『カラーで蘇る大河ドラマ花の生涯』を見る。見事な時代劇ですね。尾上松禄も淡島千景も佐田啓二も香川京子も皆さん台詞回しも演技も上手いし上等ですね。「しょうばら(妾腹)」「ごぞうさ(御雑作)」「ひっきょう(畢竟)」「かじつ(過日)」…等々今日の若い人には通じない言葉も多いとも思われたけどTVドラマなどでこういう言葉を覚えればいいわけで最近の大河ドラマの現代語台詞はリテラシーのレベルをますます下げるだけでしょうね。とはいえ今ではディレクターもプロデューサーも時代劇の台詞はアウトかな。『花の生涯』最終回での「桜田門外の変」はなかなか見事だったけどやっぱり映画にはかなわないと思い晩飯食べながら岡本喜八監督『侍』のDVDを棚から引っ張り出して晩飯食べながら見る。新納鶴千代が水戸浪士に荷担して自分の親だとも知らずに井伊直弼を殺すというフィクションの映画化。三船敏郎&伊藤雄之助&東野英治郎&新珠三千代&八千草薫&杉村春子&松本幸四郎(初代白鴎)&志村喬…という俳優陣も凄いし江戸城のオープンセットも凄いけど黒澤明の『椿三十郎』で殺陣師を務めた久世竜の殺陣も凄い。けど一番凄いのはやっぱり岡本喜八のカメラワークですね。映画のこのレベルの高さがあったから『花の生涯』も高いレベルを目指せたのかもしれませんね。ウクライナ戦争のドキュメンタリーやアメリカの空を横断した中国の気球のニューズ…桜田門外の変で井伊直弼が最後に残した言葉は「これで日本から侍がいなくなる」…今の日本では…そして世界では…何がいなくなろうとしてるのでしょうか?
2月6日(月)
三島由紀夫『わが思春期』読了。最後は戦時中の長年が年上女性にあこがれてキッス…と少々ポルノチックなハーレクインロマンス風になってしまったようですが月刊『明星』の読者にはぴったりの読み物というか三島由紀夫という人物はすべての仕事でサービス精神旺盛なことがわかりますね。ベッドから出て黒兵衛と散歩のあと終日雑務。マイナンバーを出版社に知らせたり…インボイスのことはどないしたらええのかヨーワカラン。そもそもインボイスという意味がワカラン。スペルもワカラン。こーゆーことをさせる役所仕事は日本社会の活発で健全な活動を妨げますね。嗚呼。初稿を返した岩波ブックレット『夏の甲子園はいらない−問題だらけの高校野球』(4月1日発売)を切っ掛けに共著者の小林信也さんが日本のスポーツ界に対して新しい活動を始めるという。大賛成の意志を込めてココに彼のYuTube『小林チャンネル』のURLを記しておきます。皆さん応援してください!!
https://www.youtube.com/watch?v=8M0KfWHO_5M よろしく!
晩飯はヨシモト新喜劇を見ながら。MBS『せやねん!』のメンバートミーズのまさやんとけんちゃん大活躍。懐かしいなあ。まだ『せやねん!』やってるのかなあ?最近はジャーナリストも国会議員もインタヴューが下手になりましたね。「同性婚を認めたら家族観や価値観、そして社会が変わる」と総理が言ったのなら、どうして「良い方向に変わるのですか?悪い方向に変わるのですか?」と続けて訊かないのでしょうねえ?これはコロナ以来の総理会見一問一答の悪い癖が染みついた結果というべきでしょうか?嗚呼。
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『鳥』 三島評は「無償の戯れと商業的確実性の見事な結合」ナルホド!
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2月7日(火)
三島由紀夫『芸術断想』読む。昭和38年8月〜翌年9月『芸術生活』という雑誌に連載された能・歌舞伎・演劇・オペラ・ミュージカル・コンサートとうに接した感想を集めたモノ。メッチャ面白かった。なかでもベルリン・ドイツ・オペラの来日公演でワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』を見て孫のヴィーラント・ワーグナーの演出を「三流の知性」の「珍演出」と糞味噌に批判しているのには笑った。音楽を抜けば《うす汚れた布と貧乏くさい櫓や椅子のほかは何一つ見られず陰気な不格好な人物が右往左往するだけの世にも寒貧で退屈な見世物》と酷評。ヴィーラントの演出はワーグナーの上演史上革命的と世界的に評価されたモノできっと日本の舞台装置が残念ながら寒貧だったのかもしれませんね。指揮は若きマゼール。しかし三島の他人の評価をモノともしない自分の判断は凄いですね。同じ来日公演で歴史に残る大名演と言われているカール・ベーム指揮のベートーヴェンの『フィデリオ』を《素晴らしいものであった》と褒めながらも《かつてスカラ座できいたカラヤンの華麗をきはめたこの曲に較べると私のような俗耳には入りにくい》と書いている。ナルホド自分の耳を「俗耳」と認めているところも凄いがカラヤンの演奏を「俗耳向き」と断じる「耳」は相当の「楽耳」と言えるだろう。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩。11歳になった黒兵衛が相当スマートになったのは老化のせい?食も雲古もシッカリしてるからまだまだ大丈夫のはずだけどチョイ心配募る今日この頃。ワン。終日デスクワークは『スポーツゴジラ』連載『走』第5回を書きあげる。1964年東京五輪でのアベベの「哲学者的快走」について。これを切っ掛けに「皇居一周銀座ホステスマラソン」が生まれ日本中に市民マラソンが…という話は先週の『チコちゃん』でもやってたがコラムでは書ききれないので今回は哲学者ランナー(に見えた)アベベの話だけにする。ふうううう。晩飯時のニュースは相変わらずウクライナ戦争。戦線の戦いの行方(勝敗)を予想とともに語る以外に報道の仕方はないのかなあ…?三島の『芸術断想』でのヒッチコック『鳥』の評価は面白い。《無償の戯れと商業的確実性の見事な結合》《徹底的なリアリズムが実に徹底的なナンセンスの裏付けになつている》ナルホド。寝よ。
2月8日(水)
三島由紀夫の昭和30年代のエッセイ(短文・雑文?)を集めた文章を読む。谷崎潤一郎や安部公房の小説論(瘋癲老人日記・砂の女を絶賛)演劇論・俳優論も面白い。NHK交響楽団とケンカして追い出された小澤征爾のコンサートの感想もある。ボクシング観戦記も多数。関光徳が世界王者ラモスに敗れた一戦では『釣狐』をを例に挙げて《狐はある場合は敢然と罠に飛び込むことで彼自身の身が狐であることを証明する。それは狐の宿命でありプロ・ボクサーの宿命のごときもにであろう》と書く。ボクシングの観戦記に狂言の大曲を例に出した筆者は三島以外にいないだろう。いや関光徳という教養溢れる異色のボクサーが三島にそれを書かしめたのかも。具志堅用高が何度も世界戦を防衛したとき挑戦者の世話をしたのはいつも関ジムの関光徳会長で小生は何度も見学させていただいてお世話になったが会長はトレーナーで薬剤師のN氏とともに本当に物腰の柔らかい人格者だった。懐かしいなぁ。ベッドから出てRKB毎日放送『田畑竜介GroooonUp』の『Catch Up』ZOOM音声出演。今朝の話題は毎冬恒例の市民マラソン。NHKの『チコちゃん』でも取りあげられていたけどその端緒は1964年の東京五輪マラソンに触発されて行われた「銀座ホステス皇居一周マラソン」だったそうですね。優勝したのは21歳のあけみさん。タイムは23分30秒だったらしいです。それ以来誰もが走る市民マラソンが普及したとか。ワン。ラジオのあと黒兵衛と散歩。散歩のあと『スポーツゴジラ』の校正や明日の『ZAITEN』対談の準備や金曜の『オプエド』録画取りの準備。午後7時半からの録画撮りのゲストは五輪アナリストの春日良一さんとスポーツライターの小林信也さん。途中東京五輪談合汚職でジャーナリストの上杉隆さんも参加。400億円という莫大な金額が動いた談合事件は今後どう進むのか?組織委・政治家・メディア(テレビ局・新聞社)の関与は?だからテレビや新聞は詳しく取りあげられないのですね…といったことをザックバランに話し合いました。この録画は金曜日午後6時から配信されます。乞ご期待。https://op-ed.jp/
2月9日(木)
今日の「ZAIEN」の佐野慎輔さんとの対談を少し意識して三島由紀夫は東京五輪の観戦記を読む。やはり面白い。目の付け所が違う。開会式で8千羽の鳩が飛び立ったことに《癒やされた》と書きながら《放たれた鳩の一羽が一向に飛び立とうとせず緑のフィールドに頑固に座ってゐた。かういふ鳩もあっていい》と書く。同じ鳩のシーンは市川崑の映画にもとらえられてますね。思わず笑ってしまう表現もある。女子バレーボールで《(セッターの)河西は素晴らしいホステスで多ぜいの客のどのグラスが空になってゐるか(略)を一瞬一瞬見分けて配下の給仕たちに抜かりないサービスを命ずるのである。ソ連はこんな手痛い良く行き届いた饗応にヘトヘトになったのだった》河西選手の《アップに結ひあげた髪の乱れも見せず》という印象からの連想だろうか。たしか橋本治さんも「アップの髪の毛」から「銀座のママ」を連想したようなことを書いていた。選手たちが子供ではなく大人だった時代のオリンピックですね。三島は女子バレーを見て最後に《生まれてはじめてスポーツを見て涙を流した》ことも書いている。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩。東京へ出て財界展望新社での対談が今日で良かったですね。明日なら雪でキャンセルかもしれませんからね。ワン。イロイロ準備をして東海道線で東京へ。地下鉄東西線で竹橋へ。このコースは昔小学館の雑誌『GORO』の記者をしていたときと同じコース。懐かしいですね。財界展望社の会議室で小生が『GORO』記者だったときからのお付き合いのある佐野慎輔さんと対談開始。昔はプロ野球のキャンプ取材でよく出逢った報知新聞記者。その後産経新聞に移られて今は尚美学園大学教授。スポーツとメディア=ジャーナリズムについて約1時間半討論。イロイロ勉強になりました。東京五輪で朝毎読日経産経北海道新聞が軒並みスポンサーになったのは森氏の「策謀」ではなくメディア側から申し入れたとか。何だか日本のメディアは余計に情けないですね。イロイロ話したあと「ZAITEN」編集者の方と締め切りについてはなしたあと逆コースで帰宅。晩飯は何日か前に録画したNHK-BS『贋作の迷宮』を見ながら。メッチャ面白かった。オーソン・ウェルズの映画『FAKE』が大好きで偽物贋作紛い物パッチモン大好き人間には素晴らしい番組でした。贋作でも素晴らしい作品ならイイですよね。ピカソでもマチスでもモジリアニでもモネでもマネでもゴーギャンでもゴッホでも…何でも描いてしまう贋作画家の技術は本当に見事ですね。ゴッホを完成させたあとインスタントコーヒーを全体に塗って古さを出すのですね。自分自身の個性がないのはチョット可哀想だけど絵画を超高額で取引している世界の絵画界のほうが狂ってますよね。すべては個人の評価。好き嫌いがすべてですからね。俺もモンドリアンの贋作なら描けるかな?(笑)
2月10日(金)
昨晩は週刊誌3冊をベッドに持ち込む。「文春」の「疑惑の銃弾」は安倍元首相を死亡させた銃弾の飛び方がオカシイという。まるでケネディ暗殺みたい。「新潮」のコロナ・ワクチン批判も興味津々。だがホナどないせいっちゅうねん?と言いたくなる。「現代」の中国の台湾侵攻日中戦争米中戦争も読んだがリアリティを欠いてしまうのは記事のせいか?こちらの気持ちのせいか?よーわからん。全部明日になったら忘れる記事か?心に引っかかって残ったのは「新潮」の片山杜秀氏の連載コラム「夏裘冬扇」のローマ帝国は人口減少で滅んだということくらいかな?日本はローマ帝国ほど偉大な国ではないけど気になりますね。ワン。ベッドから出て黒兵衛と散歩。大雪情報で時雨れてきたので雲古させてサッサと帰宅。終日デスクワークは『ZAITEN』連載「今月のスポーツ批評」。今月3日にNHK『チコちゃん』で取りあげられた「銀座ホステス皇居一周マラソン大会」について書く。昔大先輩の新聞記者から「銀座の夜の街の余興」として聞いたことがあった。1964年東京五輪マラソンの影響を受けた2週間後のイベントで優勝タイム23分30秒も40人のホステスさん全員完走も立派だが高級ブランドのバッグや香水や口紅や客へのプレゼント用のネクタイなどが賞品だったこの催しを「市民マラソンの端緒」と位置づけるのはどうか…?それも五輪自身が商業化や賄賂や談合…まで至った結果かな?と書ききったら夜になって昨日の佐野氏との対談の速記がメールで送られてきた。2月は締め切りが早いのですね。晩飯は『チコちゃん』見ながら。ヴァイオリンのストラディバリの話も身体が痒いのは何故という話も鶏肉の唐揚げの話も以前見たなあ…再放送か…とすぐにわかったけど内容(回答)を忘れてしまっているので見てしまいアアそーだったそーだったと思い出す。テレビも週刊誌もそーゆーメディアなんでしょうねぇ。
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『テルマエ・ロマエ』 はっはっは。3度目かな。見てしまった。小泉八雲は日本人を「東洋のギリシャ人」と呼んだけどローマ人もいけるでぇ(笑)
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2月11日(土)
ベッドのなかの読書は三島由紀夫「雑文集」。いや「雑文集」などと言ったら叱られる。『楽屋で書かれた演劇論』は見事な評論だった。役者の《仮構に奉仕するやうな世界の危険は重大だ》と書き俳優の中に《生(なま)の生(なま)への激しい渇望》が見られない状態を《健全な兆候とは思われぬ》と書く。《表側しかない大道具と幻惑的なフットライトと舞台の袖で待つあひだのときめきと……これら一連のものから逃走の欲求がほとん見られない》ことに首を傾げ《生(なま)の生(なま)・生(なま)のもの…表側も裏側もある物象…張りボテではない堅固な物体…かういふ存在への渇望が見られないのを不思議に思ふ》と書く。これは日本の役者批判と同時に小説家という虚構を創造する自分への戒めのようだ。そしてイギリスの偉大な役者は《自宅で1ダースの猫に囲まれてひっそり暮らしてゐるそうだ》と最後に書く。猫は「生(なま)」ですからね。小説家のヘミングウェイが自宅で多くの猫と暮らしていたのもそういうことか…。メタヴァースの世界を創ったり推進したりしているデジタル人間たちはどんな「生(なま)」と暮らしているのだろう?いや既にコンピュータ世界にどっぷり浸かって「生(なま)」の不必要な「改造人間(アンドロイド)」になっているのかな?アバターってどんなセックスをするのでしょうねぇ?ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩。大雪情報は外れてホッ。コンピュータ予想も外れるところはヒューマン(人間的)ですね。ワン。終日デスクワーク。『ZAIEN』対談原稿と取り組み始める。甲府vs横浜の頂上決戦は大声をあげての応援が許可されてサッカーの試合の雰囲気が戻ってきましたね。甲府に2度目の奇跡が起こらなかったのはスタジアムは日常に戻ったからか?晩飯は『ブラタモリ』を見ながら。前橋もなかなか面白い街ですね。日本中至る処青山ですね。意味違うか(ーー;)テレビで『テルマエ・ロマエ』やってたのでチョイと見て終盤録画。面白い映画ですね。そうそう何度も見る映画でもないけど…寝よ。
2月12日(日)
ベッドへは佐野慎輔氏との1時間半分の対談速記録を持ち込んで読み続ける。対談原稿もインタヴュー原稿も理想はすべて頭に入れて書き始めること。速記録やメモは時折見て確認する程度でいいのですね。そのためには対談速記録は何度も読み返したほうがいい…というわけで昨晩から3度読み返したあとベッドから出て黒兵衛と散歩。体操&スクワットのあと机の虫。原稿書き始める。昼飯は『テルマエ・ロマエ』の最後を見ながら。マンガのほうが面白かったのにこの物足りなさ何かな…と考えてマンガはマンガとして楽しめたけど映画はリアルさを求めてそのリアルさが欠けることが問題のようですね。いくらラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が日本人ことを「東洋のギリシア人」と呼んだからと言って日本人が西洋人になれるわけないですからね。午後原稿の見通しを付けて晩飯は『サカナ・スター』や『ニュース』や『ダーウィンが来た』を見ながら。NHKばっかりですね。『日曜美術館』の欧亜堂田善の話題は面白かった。こんな洋画(西洋風絵画)を描く日本人が寛政年間の江戸時代にいたとは知らなかった。その少々奇妙な洋画風風景画やエッチングに驚きながらベッドへ。早く寝て明日朝早く起きて原稿を完成させるのである。寝よ。
2月13日(月)
朝4時に起きてコーヒーを淹れて『ZAITEN』佐野慎輔さんとの対談原稿を書き始める。深夜や朝早くの仕事は何故か一段とコーヒー(イタリアン・ロースト)が美味しく感じられるがBGMの音量を絞らなければならないのが少々不満。最近はNYフィル時代のバーンスタイン指揮のCDに再々々々度感激している。ベートーヴェンの交響曲(特に3番4番7番)やハイドンの交響曲が素晴らしい。中学生の頃にLPレコードで聴いてこんなに素晴らしいのに何故『レコード芸術』『音楽の友』『朝日新聞』の音楽評では無視されるのだろうと何度思ったことか…この頃から小生は権威や権力というものを信じなくなったようですね。耳が若きバーンスタインの演奏に奪われてチョイと原稿が進まなくなったのでカラヤン指揮ベルリン・フィルのCDに変更。「カラベリ(と煌めくストリングス?)」の当たり障りのない大衆音楽なら美しいBGMとして耳を奪われませんからね。朝8時に原稿はほぼ完成して朝食と黒兵衛と散歩。雨がぽつりと落ちてきたので急いで帰宅して原稿のブラッシュアップ。昼頃完成して送稿したあと昼食と昼寝。目覚めると起きたらNHK-BSで『日本沈没』をやっていた。何度も見たし読んでもいたし小松左京さんには生前インタヴューもさせていただいたのでもう十分かな。『日本沈没』は続編(日本が沈没したあと世界に散らばった日本人がどうーなるか…)を読みたかったですね.筒井康隆大先生の『日本以外全部沈没』もケッサクだけどあの映画には確か北朝鮮のトップ(のそっくりさん)も出演してたけど無問題だったのかな?トルコの地震での建物のパンケーキクラッシュはトルコが世界一難民を受け入れていることと関係があるのですね。寝よ。
2月14日(火)
一つ長い原稿を書きあげると結構疲れるのか昨晩から今朝までは爆睡。本読めず。少々残念な気分。昔はニコチン中毒だったけど今は活字中毒かな。ベッドから出て朝食&黒兵衛と散歩のあとデスクワーク。佐野慎輔さんからの丁寧な赤入れをチェックしていると大阪朝日放送『正義のミカタ』から電話。今週土曜の放送で五輪汚職談合問題と札幌冬季五輪招致問題を取りあげるという。東京キイ局は取りあげにくい話題のようだけど地方局はやれるんですね。喜んで出演承諾。金曜夜の『オプエド』の出演を他の人でカバーしてくれるよう上杉隆さんとスタッフにお願いしたり午後はイロイロと雑務。午後のNHK-BSの映画で『ニューヨークのゴースト』をやっていてあまり好きはない映画で何度見てもしかり見ることができなかったけどメトロポリタン・オペラで『マクベス』を見ることにはじめて気付く。ナルホド幽霊が出ますからね。晩飯は『マクベス』が見たくなって黒澤明『蜘蛛巣城』を見ながら。久しぶりに全編ゆっくり見たけどやっぱりこれは凄い映画ですね。能の演出が下敷きになっていて浪花千栄子の魔女(妖婆)も山田五十鈴のマクベス夫人も怖い!三船敏郎のマクベスの顔の演技も凄い!『椿三十郎』はリメイクできても(面白くなかったけど(>_<))『蜘蛛巣城(マクベス)』のリメイクは無理ですね。能の演出でなくても魔女やマクベス夫人をできる役者がいませんからね。あ。今KAAT神奈川芸術劇場で舞台化上演してるらしいけどチョイと見てみたいですね。
2月15日(水)
ベッドのなかで三島由紀夫『反貞女大学』読み始める。《新憲法下では人妻が浮気をしても法律上の罪にはならない。法律上の罪になることでさへスイスイやつて金まうけに成功した人が尊敬される世の中ですからまして罪にならないことなら大いにやるべき》こんな文章をスイスイ軽く書いてしまう物書きはいなくなったみたいですね。これは産経新聞昭和40年の連載。今の自民党保守派の人々や五輪で大儲けした元電通社員に読んでほしいですね。ワン。ベッドから出て黒兵衛の散歩はあとまわしでRKB毎日放送『田畑竜介GroooonUp』の『Catch Up』ZOOM音声出演。今朝の話題は近づくWBCに引っかけて日本人は明治時代に多くのスポーツが伝播したなかでなぜ野球が大好きになったのか?という話。それは鉄砲が伝播してわずか半世紀後の関ヶ原の戦いで市民(農民)戦争が一端終わったからという話。鉄砲の闘いはチームプレイ(団体戦)になるけれど刀と槍と弓の闘いは個人戦ですからね。義経弁慶や川中島の戦いや宮本武蔵が好きな日本人の心には「ヤァヤァ我こそは…」とバットを手に打席に立つ野球のほうが全員でボールを追いかけるサッカーやラグビーより納得しやすかったのですねという話。ワン。ラジオのあと黒兵衛と散歩。デスクワークは『ZAITEN』対談原稿の校正や週末の『正義のミカタ』の打ち合わせ。『オプエド』のスタッフや上杉隆さんに電話して今週金曜の『オプエド』は休ませてもらうことにする。いろいろ仕事をしていたら東京新聞特報部から電話。スウェーデンが30年の冬季五輪開催に立候補するとか。札幌しかやれるところがなくて日本が五輪汚職談合問題で揉めているときにIOCは大喜びでしょうね。しかし日本のスポーツ界としては「Without Mori & Dentsu」で新しいスポーツのやり方を始めるチャンスをなくしましたね?辻村寿三郎さんが亡くなりましたね。この人の創った人形も素晴らしかったけど確か都はるみさんの衣裳にも関わっておられましたよね。合掌。晩飯は昨晩の『蜘蛛巣城』の影響でヴェルディのオペラ『マクベス』を見ながら。パッパーノ指揮コヴェントガーデンの舞台。このフィリダ・ロイドの演出や陣羽織に旗指物などの衣裳は明らかに『蜘蛛巣城』の影響を受けてますね。リュドミラ・モナスティルスカのマクベス夫人が怖くて素晴らしい!パッパーノの指揮も見事!
2月16日(木)
三島由紀夫『反貞女大学』の続きを読もうと思ったら昨晩違う巻をベッドに持ち込んでしまったので取り替えるのも邪魔臭くそのままパラパラと読み始めると面白い。三島は『トスカ』をオペラの主人公のような激しい嫉妬深い猛女ではなくもっと若く可憐な(だから嫉妬する)女の子だと考えてるのですね。ナルホド。『三十過ぎてのスポーツ』と題した短いエッセイも面白かった。若い頃スポーツマンだった人物は歳とってスポーツをやらなくなり腹が出て…しかし自分はスポーツマンだと思ってるから体力に自信があって暴飲暴食で高血圧でぽっくり逝くという指摘は逝きかけた男としてはその通りだと納得して笑ってしまいますね。学生時代ガリ勉タイプは会社で出世してゴルフに夢中になって過去の自分を忘れてスポーツの効用を吹きまくりポックリと…。そこで《スポーツ政策もなってゐないし(略)スポーツを見るものにしてしまったテレビも悪い。三十過ぎてのスポーツを何だか気恥ずかしいものに思はせゴルフだけは特別に思はせる世間も悪い》と書き《三十代に入った人は一斉にスポーツを》と書く。真面目な人ですね。真面(マトモ)な人ですね。三島は何を読んでもどこを読んでも面白い。ワン。ベッドから出て黒兵衛と散歩のあとデスクワークは『フォーラム8』の機関誌『Up & Comming』の連載「スポーツは教えてくれる」を書き始めたり週末の『正義のミカタ』の台本をチェックしたり…。晩飯は昨夜のパッパーノ指揮ヴェルディ『マクベス』の最後を見ながら。素晴らしい舞台で面白いけどやっぱりヴェルディの初期作品は少々物足りなさが残りますね。続けてウェルザー=メスト指揮チューリヒ歌劇場トマス・ハンプソン主演の同じ作品を見始める。パオレッタ・マッロークのマクベス夫人が良いですね。怖いですねえ。パウントニーの現代演出も面白い。ウクライナ戦争の報道は押してる引いてるの戦況分析ばかり。風船も地震も報道と同時にもう少し違う視点や分析や考え方を…と思うのは小生だけではないと思うのですが…。
2月17日(金)
『反貞女大学』楽しく面白く読み進む。「反貞女」は浮気相手に芸術家を望む。なかでも理想は音楽家らしい。ナルホド。佐渡裕さんに教えてあげよう(笑)。《芸術家が女心をとらへるのは彼自身が女性的だからかもしれない》うむ。ナットク。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩。ショパン(の音楽)を女性が好むのは音楽が意外と男性的だからと思っていたが女性が好む男性的な音楽を女性的なショパンがわかっていたのかもしれませんね。ワン。終日デスクワーク。昨日半分完成させた『Up & Comming』の連載原稿を仕上げて送稿。テーマは高校柔道の「文武両道杯」。アスリートは高学歴で頭が良いという明治以来の常識を覆して[スポーツマンは脳味噌」筋肉などという間違った認識を広めたのは第二次大戦の戦地帰りの体育教師による体罰教育などの影響もありそうですね。原稿を送ったあと準備して大船から品川へ。新幹線で『反貞女大学』読みながら新大阪へ。結構混んでるのはコロナ禍も終わったからか?いや。コロナを恐れなくなったから?明日の朝日放送『正義のミカタ』に備えてホテルで一泊。晩飯&ビールで『チコちゃん』楽しんだあと『反貞女大学』読みながら爆睡。
2月18日(土)
『反貞女大学』大阪のホテルのベッドでも読み進む。三島由紀夫の旧仮名遣いには全然苦労せず読んでいたはずがわからない言葉が突然出現した。「らふそく」とは何ぞや?「かはいさう」はすぐに可哀想だとわかったが「らふそく」はしばらくわからず「らふそくの光」という文章が出てきてようやく蝋燭のことだとわかった。わかったからといって何の役にも立たないところが面白い。「イカもの喰い」という言葉も出てきて昔大人たちが使っていた言葉だとすぐにわかったが意味も語源もあやふやなので東京へ帰ってから調べると「如何物」だとわかった。普通の人なら「如何な物か?」と疑問に思う物(物)を好む変人のことですね。なるほど。ベッドを出てホテルから徒歩十分のABC朝日放送へ。『教えて!NEWSライブ正義のミカタ』生出演。このタイトルは『世界まるごとHOWマッチ』を真似て漢字平仮名ローマ字カタカナのすべてを使ったのでしょうけど重複のあるのが少々残念ですね。番組では東京五輪贈収賄汚職や官制談合と2030年冬季五輪が札幌からスウェーデンへ移りそうなことを解説。司会の東野幸治さんに「そもそも電通って何をする会社ですか?」と訊かれたので「(金を)中抜きする会社です」と答える。東京キイ局では口にできないコメントでしょうね。しかしこーゆー「口入れ屋」とか「口入さん」という役割は昔から必ずあったものでその行き過ぎを(中抜きするカネが多くなりすぎないように)押さえるために戦前は談合に参加した会社の支払う金額を法律で決めていたのがGHQによって潰されたと言うことを藤井聡さんがコメント。ナルホド。絶対になくならない談合を認めて規制した法律を正義感に溢れるアメリカ人が競争入札一本槍にしたわけですね。しかし東京五輪の汚職と談合は酷すぎましたね。ほかにトルコシリア地震やチャットGPTや日銀新総裁などの話で盛りあがって番組を終えて新大阪駅へ。新幹線でテレビ局にもらったおにぎりの昼飯&爆睡で帰鎌。帰宅すると長女と孫が遊びに来ていてワイワイのうちに晩飯。NHKスペシャルの『キーウの冬と子供たち』というドキュメンタリーが素晴らしかった。被害を受けたり戦争に行ってる父親を思ってロシアを憎む子供たちにロシアにも良い人はいることを教えて防衛戦争だからロシアへは攻め込まないことまで教える女の先生たちの努力に感動。戦争を子供と女性を通して考え直す意義は非常に深いですね。
2月19日(日)
三島由紀夫に少々飽きたので昨晩は講談社現代新書の新刊『今を生きる思想マルクス 生を飲み込む資本主義』(白井聡・著)をベッドに持ち込み読み始める。面白い。ナルホド「資本主義」が怖いのはソレがどんなに悪影響を及ぼす悪いモノだとわかっても《やめられない止まらない。それどころか数々の危機を招きながらも深化する》コトなんですね。カッパエビセンよりも中毒になるわけですね。いやモウなっているのか。《その深化を近代の人間は「進化」だと見なし言祝いできた》中毒症患者ならではの振る舞いですね。あらゆるモノを商品化するのが資本主義ですから当然「スポーツも商品化」しているわけですね。勉強しなければ。ワン。ベッドから出て長女と孫と一緒に黒兵衛と散歩。黒兵衛のリード長女に渡すと坂道が辛い。世の中一人では生きられないものなんですなぁ。犬の手も借りたい。ワン。散歩のあと長女の映画見放題システムを利用して『異邦人』を見る。90分と短いからと思ったが中身は濃かったですね。半世紀前に映画館で見て以来だったけど忘れていたことも多を新鮮。さすがはヴィスコンティ監督。アルベール・カミュの原作通りを映像で見事に創ってイタリア語だから法廷シーンはより過激でナンセンスに。被告にとって意味ない論争から死刑になって神父からも被告には意味ない説教が。ナルホド実存主義はヒューマニズムとサルトルは言ったけど孤独なものですね?午後から連載の校正やらイロイロ仕事して晩飯はサカナクンの『サカナ・スター』を見ながら。いつも美味しい魚料理を食べはりまんなぁ。『ダーウィンが来た!』のニホンオオカミも面白かった。以前飼ってた雑種犬の佐吉は絶対に日本狼の遺伝子が入っていたと外見からも断定できますね(笑)。『日曜美術館』で波山なんて知らなかった陶芸家の素晴らしい作品に感動。NHKスペシャルの国連レポートは興味深かったけど…せやからこれからどーするねん?という気持ちになりましたね。拒否権を有した常任理事国の存在する安保理は自分たちの核戦争を避けるために周辺弱小国で代理戦争を起こす装置ですからね。安保理改革をどーするべきか?をリポートしてほしかったですね。ルイージ指揮N響は『新世界交響曲』でアンコールなし?気取りすぎですね。平凡な演奏だったのに。
2月20日(月)
白井聡『マルクス』読み続ける。こんなにわかりやすく資本論を説かれた本を読むのは初めて。資本主義社会というのはタンある貨幣経済ではなく土地と労働力が商品化されて「商品による商品の生産」が始まる「資本主義的生産様式の支配的である社会」のコトを言うのですね。ナルホド。それは《人類の社会の常態ではなく歴史的に発生した特殊な人間社会の在り方の一つに過ぎない》ことをマルクスは証明したわけですね。家内労働から戦争まで何もかもを(もちろんスポーツも)商品にして売買する資本主義社会は外圧によって潰すことが不可能で内部崩壊を待つしかないのですね。しかもそれは不可能のようで……要するに人類は様々なモノを創り出したうえに自分の手に負えないモノ…制御不可能なモノまでも産み出してしまったわけですね。資本主義社会&核爆弾&AI…それは人類の生まれ持った性(サガ)であり業(ゴウ)であり宇宙を含めたすべてのモノはいずれ滅びるのですから人類も資本主義&核爆弾&AIとともに滅びるのでしょうか?…マルクスの本はまだ半分。先を読まねば。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩のあと終日デスクワーク。いろいろ雑務。金曜日の『ニューズ・オプエド』に一橋大の坂上教授の出演が決定。よっしゃ。五輪問題深掘りするぞー!あああ…深掘りなどという流行言葉を使ってはいけませんね。自戒自戒。晩飯は神奈川テレビで吉本新喜劇見ながら。最近は孫も見てるらしい。関西人の血筋かなぁ。
2月21日(火)
白井聡『マルクス』面白い。なるほど副題にある「今を生きる思想」「生を呑み込む資本主義」という意味がよくわかる。《生産量の増大をもたらす技術革新や発明は人間の幸福を目的としたものではない(略)近代資本主義が達成した生産力の増大は人間の生活を快適で安全なものにしてきたと称賛されてきた(略)しかしそうした肯定的側面は資本の内在的論理からすれば言わば副産物に過ぎない》《消費社会と呼ばれる高度資本主義社会になるとモノを消費することから意味を消費することへと人々の欲望が誘導されるようになった(略)広告宣伝に大量の資金をつぎ込んでブランド化を図るといった手段を講じて人々の欲望を掻き立てる。資本が欲求不満を創り出すようになる社会。それが消費社会である》《資本はただ盲目的な無制限の価値増殖の運動でしかない(略)資本主義が悪であるとするならその罪を資本家の貪欲といった人格的次元に求めてはならない(略)資本家ですら資本の乗り物に過ぎないのだ(略)株式を所有する法人の株式も法人によって所有されるならば人格としての資本家は消える。だからといって資本は消えない。株式会社資本主義・法人資本主義によって資本の他者性は完成する》そして資本は《人間の意図や欲望とは別のロジックで作用し人間の手に負えないものとなる。それが資本である》なるほど資本主義は核爆弾と同様既にシンギュラリティを超えているのですね。次はAIの番?さぁどうする人間?どうする人類?ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩のあとデスクワーク。メインは北國新聞の連載「スポーツを考える」の執筆。WBCについて。そもそも野球の世界一決定戦は社会人野球の父・山本英一郎氏がメジャーを説得して行おうとしていたのですよね。それが9・11で暗礁に乗り上げて山本氏の企図したものとは異なるカタチでメジャーが勝手に創ったのがWBCなんですね。その第1回大会のとき東京ドームでお会いした山本氏は穏やかな口調でもMLBの自分勝手なやり方を非難されてましたね。原稿完成させてメール送稿。晩飯はニューズを見ながら。バイデン大統領がウクライナ入りか…どこまで続く泥濘ぞ…そんな軍歌はモウ誰も知らないでしょうね。
2月22日(水)
白井聡『今を生きる思想 マルクス 生を呑み込む資本主義』(講談社現代新書)読了。凄く勉強になりました。『共産主義宣言』でマルクスは共産主義のことを「怪物」「妖怪」などと称したけれど本当の「怪物」であり「妖怪」は「資本」のことだったのですね。そして新自由主義経済下の高度消費社会では《感動・笑顔・仲間・感謝・協同・共感・連帯・連帯など本来われわれが自主的につくり出すべきもの》までもが《資本によって与えられる商品となる》のですね。しかし《居酒屋甲子園》などというイベントがあったことは知らなかった。《全国から参加した居酒屋の店員たちが5000人以上のおそらくはその大半が居酒屋の店員であろう来場者の前で居酒屋で働く夢や希望をつづった言葉を感極まりながら絶叫する(略)「夢は一人で見るもんなんかじゃなくてみんなで見るもんなんだ!人は夢を持つから熱く熱く生きられるんだ!》これは2014年1月14日にNHK『クローズアップ現代』で放送されたらしいがコノ《絶叫》を聞いて《涙ぐんだり笑顔を浮かべたりと共感的な反応を見せる様子を映し出した。このような居酒屋労働者たちの労働条件は同番組で紹介された事例では1日16時間労働で年収が250万円(略)同番組は居酒屋甲子園を「ポエム化」であり「目にしたくない現実を覆い隠す道具になりかねない」と明確に批判的な論調で紹介したため放送後に居酒屋甲子園主催者がNHKに抗議。他方ネット上では「典型的なブラック労働とその隠蔽」「異様な光景」であるといった意見が多く見られた》という。この記述を読んで「甲子園」という言葉がこんなところに使われていることに驚いたけど真夏の熱射病になりかねない太陽の下の熱波のなかでトーナメントで「戦わされている」高校野球もひょっとして「ブラック・スポーツ」と呼ぶべきかもしれませんね?『真夏の甲子園はいらない』(岩波ブックレット)は4月1日発売です!ワン。黒兵衛の散歩の前にRKB毎日放送『田畑竜介GroooonUp』の『Catch Up』ZOOM音声出演。今朝の話題も先週に続いてWBCに引っかけて野球。フットボールが古代メソポタミア文明起源の太陽(世界を支配する丸いモノ)の奪い合いだったのに対してベースボールは古代エジプト起源で王様が権力の象徴(錫杖=長いモノ=バット)で世界を支配する丸いモノ(太陽=玉=ボール)を打ってナイルの氾濫を占ったのが起源。フットボールが戦闘的なのに対してベースボールは平和的なスポーツなんですね。ワン。黒兵衛と散歩のあとイロイロ準備して午後から東海道線で東京へ。大手町から地下鉄東西線で竹橋へ。徒歩10分弱で『ZAITEN』編集部へ。フリー・ジャーナリストの後藤逸郎さんと対談。テーマはもちろん東京五輪贈収賄&談合事件について。やっぱり組織委の森喜朗会長と武藤事務総長が何も喋らないというのは全く不自然で無言でいること自体が疑問(疑惑)ですよね。対談は4月1日発売の『ZAITEN』に掲載されます。乞御期待。後藤さんには金曜の『オプエド』リモート出演もお願いして別れたあと大船へ帰ってDOCOMOで携帯の機種変更。はっはっは。小生はまだガラケイなのじゃ。ガラケイでもイロイロ書類やら何やら時間がかかるもんですね。便利になると不便なことも増えるんですね。期待して晩飯&酒&寝る。沢山歩いて疲れました。
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『ゼロの焦点』 野村芳太郎監督/久我美子、有馬稲子、高千穂ひずる、脚本は山田洋次&橋本忍・こっちを見直してみましょう
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2月23日(木)
読書inベッドは三島由紀夫『反貞女大学』に戻って読了。サルトル&ボーヴォワールのカップルについて(三島に言わせると《サルトルが相当の曲者でタヌキだからこそ成功した》)やイーデス・ハンソンさん(懐かしい!)と文楽人形使いの吉田小玉氏の結婚と離婚(《もし彼女に誤算があったとすれば日本といふ国の特殊性を重く見過ぎたことでせう》)や高村光太郎と智恵子に関する記述など面白かった。《反貞女であればこそ健康で欲が深くて不平不満が多くて突然やさしくもなったりするし魅力的でピチピチしてゐて扱いにくくてまあまあ我慢できる妻でありうるのです》ドン・ホセがカルメンを殺してこが発狂した例をあげて三島は《いくら貞女でも狂人や死人では困ります》と書き自分は《反貞女の待つ我が家へといそいそと帰ることにいたしませう》と結ぶ。三島由紀夫は極めて常識人なのですね。ワン。ベッドから出て黒兵衛と散歩のあとデスクワークは連合通信の月刊連載『スポーツ博物館』を執筆。144回目か…12年間も続いてるのですね。最長不倒かな?イヤ違うかな?連載はイロイロやったですからね。ファイルしたモノやパソコンやワープロの履歴を調べ直すのも億劫ですからね。過去は消えてゆくモノですね。しかし昨日の本欄に書いた「居酒屋甲子園」は今も第15回大会まで続いているみたいですねぇ。ふ〜ん…どう考えるべきか…。晩飯は松本清張原作『ゼロの焦点』を見ながら。広末涼子主演犬童一心監督の09年リメイク版。映画の作り方がイマイチで戦後日本の社会状況に「焦点」が合わされずミステリーの面が強調されて少々ウンザリ。エンドローに流れた中島みゆきの歌「愛だけを残せ」は力強く素晴らしかったですねえ。野村芳太郎監督山田洋次&橋本忍脚本の1961年版を見てみたいですね。
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三島由紀夫『行動学入門』文春文庫 このなかに昭和40年「女性自身」で連載した「をはりの美学」もあります。「結婚の終わり」から「世界の終わり」まで一読の価値あり
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2月24日(金)
三島由紀夫『をはり(終わり)の美学』一気に読了。昭和40年に『女性自身』に1年間連載した短いエッセイ。いろんな雑誌に書いてはりますなぁ。「結婚のをはり」に始まって「電話」「流行」「童貞」「OL」「尊敬」「学校」「美貌」「手紙」「芝居」「旅行」「個性」「喧嘩」「正気」「礼儀」「見合ひ」「宝石」「仕事」「梅雨」「英雄」「嫉妬」「動物」そして最後は「世界のをはり」とタイトルを全部書き出したのはドレモコレモ面白い記述に溢れ再度自分で「○○のをはり」を考えるのも面白いと思ったから。《自然に近い人間と自然から遠い人間がある。悪いと思ってゐながらやめられないといふ人は前者。悪いとわかってゐることは絶対に意志の力でやめるといふ人は後者。だいたい全人類の99%が前者で1%が後者だと思って間違ひありますまい》なるほど。《自然は事実を示すだけ。自然はけっして「宣言」などしない》「梅雨のをはり」から始まった記述は「梅雨入り宣言」「梅雨明け宣言」をする人間の話につながる。「英雄のをはり」では《英雄とは本来行動の人物だけにつけられる名称》だから《何も形の残らないもののために勲章と銅像の存在理由がある》と書いて文化勲章は邪道と批判する。ナルホド。プーチンに早く勲章や銅像を与えてウクライナから軍隊を引き揚げさせるべきですね。まさか彼は《永遠に魅力的な夢》である「世界のをはり」に向かって突き進んでいるのではないでしょうね。ワン。黒兵衛と散歩のあと4月1日発売の岩波ブックレット『夏の甲子園大会はいらないーー問題だらけの高校野球』の再校正を必死になって仕上げて宅急便で返送したあと『ニューズ・オプエド』。ゲストは一橋大名誉教授の坂上康博さんとジャーナリストの後藤逸郎さん。サッカーの近畿大会決勝出場より修学旅行を優先させた神戸弘陵高校の判断を高く評価したあと「東京五輪贈収賄&談合事件と日本のスポーツの将来」について話し合う。オリンピックを全TV局が中継する不思議さ坂上先生が指摘。ナルホド。五輪となると新聞社やTV局が足並みを揃えること自体がオカシイことに小生も気付かなかったことを恥じる。今も見ることができます!https://op-ed.jp/ オプエドのあと『チコちゃん』見ながら晩飯。山って何?…なんて質問が出たけど最近のチコちゃんは疑問のレベルが下がり気味かな?
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『ゲロッパ』 これも「井筒×李コンビ」の良い映画ですね
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2月25日(土)
三島由紀夫が昭和39年に『現代文学の三方向』と題して評したのは安部公房『他人の顔』大江健三郎『個人的な体験』北杜夫『楡家の人びと』の三編。《かうして見ると今のところ最も有力と見られる現代文学の三方向はいづれも暗雲に閉ざされてゐるやうに見えるが暗雲の兆が見えるのはそれだけ地平線のはうへ人に先んじて歩いて行つたからに過ぎず「本日晴天明日も晴れるでせう」といふやうな小説を私ははじめから愛することなどできない。いづれ「悪しき腫物(しゆもつ)」を生じることにならうとも私はこれら三種の作品とその作者の額に「獣の徽章(しるし)」を見出したからこそこれらを愛読したのである》と書いている。小説のレベルが高い時代だったですね。戦後20年・皇太子御成婚・高度成長・オリンピック…と小説のレベルは関係あるのかな?ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩。あっという間に庭の白梅がほぼ満開に。春はそこまで来ているみたい。ワン。終日デスクワークは本HPの更新原稿作り。以前月に2回やってた作業を月に1回にしたけど日頃からコツコツやっていないから時間がかかる。コツコツ仕事するのは苦手ですね。そう言えば試験もほとん一夜漬けでしたから(>_<)晩飯はニュースのあとNHK『のど自慢チャンピオン大会』を見ながら。同じような歌ばかり(演歌は1曲)だったけどサスガはチャンピオン大会。全員なかなかの歌唱力で市井の素人の頑張る歌声を聴くのは意外に面白かった。優勝は予想通りNHKが好みそうな父母に感謝の歌を歌った若い女性。見終わったら井筒和幸監督の映画『のど自慢』を見直したくなってDVDを引っ張り出して2時間近く見てしまう。これは心優しさに溢れた良い映画ですね。『ゲロッパ』とともに「李鳳宇×井筒和幸コンビ」の大好きな映画です。
2月26日(日)
二・二六のことなど誰も気にしないその日が少し気になるのは三島由紀夫の読み過ぎか?しかしアフォリズム連発の文章が面白いのだから仕方ない。《テレビによっていくらでも雑多な知識は広く浅く供給される。無用の知識はいくらでも増えるが有用な知識をより分けることはますます難しくなりしかも忘却が次から次へとその知識を消し去ってゆく》《人は孤独になればなるほど予想外の行動に出るものであって「一人きりでゐるとき人間はみんなキチガイだ」といふモオリヤックの言葉は人間性を洞察した至言にちがひない》ナルホド。たしかに。これは昭和39年東京オリンピックの後に「秋冬随筆」と題して『こうさい』という雑誌に連載されたもの。《オリンピックのやうな非常の事態に対抗できるものはただわれわれの「しきたり」だけである筈だがその「しきたり」を失つてしまつてはすべてが浮き足立つてしまふのはやむをえない。たとへばオリンピック期間中には十三夜があり浅草観音の菊供養があり京都平安神宮の時代祭があり鞍馬の火祭がある。それを外人に見せるものにするのは卑しく日本人がかういふ行事をオリンピックなどどこ吹く風といふ顔ですまして自分本位にたつてゐたらどんなに洒落てゐただらうと思ふのに天下の歌舞伎座の正面にまでウエルカムといふ英語の看板が掲げられるやうになつてはおしまひである》確かに。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩。満開の梅の脇で鶯がホーホケキョと啼いている。鶯は「しきたり」を守っているようだ。ワン。終日デスクワークは確定申告用の資料を揃える作業。ほとんどはヨメハンがやってくれるのだが小生も少々手伝う。年に1回面白くない作業。モオリヤックはノーベル賞作家だけど読んだことないなぁ…十五夜は知っていても十三夜は近頃誰も騒がないなあ…そもそも新暦では無縁か…などと思いながら領収書の整理。晩飯はヴェルディ『マクベス』第2幕を見ながら。ハンプソンの気弱でやさしそうなマクベスとマッロークのメチャメチャ恐ろしそうなマクベス夫人のコンビはイイですね。歌も音楽も最高のチューリヒ歌劇場の舞台です。風呂の後はNHKドキュメンタリー。ウクライナ開戦直後の72時間。ゼレンスキー大統領周辺の超危機がよくわかりました。そのあとのBSのNHKで働くウクライナ人女性のディレクターのリポートも良かったです。この戦争はどこまで続くのかなあ?イタリアやドイツや日本のような敗戦をロシアが迎えるとも思えませんからね…。
2月27日(月)
昨晩は送られてきた雑誌『ZAITEN』(財界展望新社)をベッドに持ち込み読む。自分の連載原稿『今月のスポーツ批評』(昔は商品レースと紛い物扱いされた銀座ホステスマラソンが『チコちゃん』によって市民レースの草分けと紹介されたことへの違和感)や佐野慎輔さんとの対談(スポーツとメディアの関係を刷新せよ!)にも目を通したがお目当ては佐高信さんの連載対談。これまで前川喜平・ラサール石井・水道橋博士・安藤優子・西山太吉・田中優子・有田芳生・田中秀征・落合恵子…などの各氏と対談。どれも興味深かったけど今回の相手は鈴木エイト氏。そうか。統一教会とズブズブなのは菅義偉前総理なんですね。世耕弘成参院自民党幹事長も。皆さんテレビでは喋れないことだらけで苦労されてますね。私だけではないのですね(苦笑)。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩。昨日聴いた鶯の声はホーホケキョだったが今日はホーホケケキョ。毎年啼くシンコペイデッド・ウグイスが今年も戻ってきた。いや子供かな?散歩のあと終日確定申告資料作り。一番苦手な作業。疲れる。資料のなかに紛れていたWBC東京大会のチケット販売の宣伝チラシを発見。公式戦では年間指定のVIP席。弁当&スナック付き飲み放題。記念ギフト付きやらイロイロ込みでプレミアムラウンジは19万8千円!準々決勝は22万円!プレミアムシートは8万8千円と11万円!こういう金額が日本の野球界に還元されるならイイですけどね…。そーいえば以前三枝成彰さんのオペラ『忠臣蔵』のスタッフとして同じような席に正力亨オーナー夫妻から招待されたことがあった。そのときの巨人の担当者が昔巨人の広報担当者として雑誌記者だった小生と大喧嘩した人物。「再び取材拒否しようと思ったけどオーナーの御招待ですからね」と苦笑いして互いに懐かしくってフランス料理のあと座席後方のラウンジで一緒にウイスキーやビールやブランデーを何杯も飲ませていただきました(笑)。そして試合を見に席に座ると外野のカメラマンが小生を発見。何人もの新聞記者がナンデあの男がオーナーの招待席にいるんだ!?と多勢寄ってきたらしいです。小生には知らせてもらえませんでしたけどね(苦笑)。一度だけの経験ですけど小生は野球は屋外でビール飲みながらベンチ裏の席あたりから見るのが好きです。昔話が出るのは歳とった証拠ですね。確定申告資料作りは一応完成かな。ふううう。
2月28日(火)
三島由紀夫のエッセイは本当に面白い。アフォリズムも引用も自慢話もタネ明かしも照れ隠しも面白い。そうか。『潮騒』は『ダフニスとクロエ』を下敷きにしていたのか。《小泉八雲は日本人を「東洋のギリシア人」と呼んだが都市はともかく辺鄙な漁村などにゆくとたしかにそこには古代ギリシア人に似た生活感情が流れている》ホンマかいなと思うのも楽しい。《顔も都会人より立派で美しい。日本人の美しい顔は農漁村にしかないのではないかといふ気がしてゐる》昭和はそうだった気がします。そして『潮騒』の2度目の映画化に吉永小百合が選ばれたことを大喜び。《彼女がいくら平凡に見えてもかういふ平凡さが永遠に新鮮だといふことを見抜く点では日本の大衆の眼力は相当のものである。いはゆる「個性」なんかには永遠の力はない》なるほど。そして『キネマ旬報』での吉永小百合に対するインタヴューを引用。《尊敬してる人物は?「ペスタロッチと宇野重吉さん」これから撮りたい映画は?「樋口一葉の『たけくらべ』とアンドレ・ジイドの『田園交響楽』この二つの並べ方には十代の少女の清純さの自信に仄かな女優としての自負がまざってゐるところが仄見える》そう言えば吉永小百合さんは五木寛之氏との対談で「好きな音楽は?」と訊かれて「ベートーヴェンの運命交響曲」と答えていた。こういう答えを含めて三島はこう書く。《この何とも形容しがたい返事に私は今の十代の渋好みのダンディズムを感じた》今の(令和の)十代のアイドルはどういう答えを返すのかな?ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩のあと『夏の甲子園はいらないーー問題だらけの高校野球』で岩波の担当者とイロイロ連絡。平尾剛・溝口紀子・佐野慎輔の各氏が素晴らしいエッセイを寄せてくれたことに感謝。中日文化センターの担当者ともイロイロ連絡7月の兵庫文化芸術センターでの佐渡裕さんプロデュースのオペラ『モーツァルトのドン・ジョヴァンニ』の講座と鑑賞ツアーのチラシについても打ち合わせ。楽しい雑務は精神的にイイですね。確定申告の残った雑務にはウンザリ(>_<)晩飯食べながらニュースを見ていたら市立船橋バレーボール部顧問の暴行事件について校長先生が「今の時代には受け入れられない」と発言していた。この発言はオカシイ。昔なら暴力指導が受け入れられたのか?そんなバカなことはない。戦後の戦地引き揚げ者の体育教師による学校の部活動の軍隊化の歴史を教育者なら知るべきですね。
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