2010年1月1日元旦(金)
あけましておめでとうございます。とりあえず御挨拶だけ。佐吉と散歩。天照大神と富士山が見事。思わず手を合わせる。
1月1日元旦(金)新春スペシャル!
2010年新春記念に昨年末送られてきた最高にオモロイ見事なメールを紹介します。送り主は『日本語の滅亡を招く危ないコトバの乱用を観測するクラブ』。主宰者はバス・フルート奏者でクラシックもジャズもこなす天田透サン。日頃から某国で『思い』という言葉が乱用されていることを憂い嘆き山下洋輔さんなどと警鐘を鳴らしている人物。その天田サンが『オモイ』というワケのわからない曖昧模糊とした意味不明の言葉を某国首相が記者会見で25回も連発するのを採取。そこでコノ『オモイ』を他の言葉に置き換える「問題」作成されました。天田サンによると25か所の空欄すべてを「思い」という言葉で埋めた人物は「オモイ星」の「オモイ星人」としては100点満点。次期総理大臣候補とのことです。皆さん0点めざして日本語を鍛えてください。
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国民のみなさまに現在の私の_1を正直にお伝えを申し上げたく、まさに調査の限界を痛感する_2でございます。今回の件に関して、そのような私腹を自分が肥やしたという_3は一切ないと。不正な利得を得たという_4も一切ないものでございますので、この連立政権の歩みを止める訳にはいかん、その_5のもとで、苦しくても、身を、職を、今投げ出さずに続けさせて頂きたい。その_6を決意として持っているところでございます。私としては、今、この、政治の遅滞を許すことはならないという_7のもとで、知らないはずはないだろうという_8があると思います。事実は事実ですから事実を正直に申し上げ、わかっていることはすべて、自分の_9として申し上げているつもりです。説明責任というもの、私としては、いくらでも正直にお話し申しあげているつもりでありますが、なかなか、わかったと言っていただけないのではないかと、そのことは大変つらい_10がございますただ、そのことと、何かまだ合点がいかないなぁということと、しかし、でも、政権運営はしっかりやれよという_11というものは、また、必ずしも同じではないと思っておりまして一方では、やはり企業から色んな_12を含めて、献金を受けることよりは、やはり個人の方々から、よりクリーンな献金、寄付をしていただけることの方が、不正はなかったというふうに理解をしたいと思っているが、そこに、何らか問題というものがあるかどうかということも含めて、必要ならば、という_13はございますが、自分自身にとっても、青天の霹靂(へきれき)というか、なんでこんなことが、という_14があっただけに、なおのこと、国民の皆様方にはいくら説明をしてもわかっていただけない、という部分があろうかと思います。その_15から、それで政治が停滞して、こんなことではやってられないよというふうに、国民の皆様方が、もともと総理の職に、かじりついてもやりたい、という_16でいるわけではありません。率直な感想とすれば、申し訳ないなぁという_17。本当に国民の皆様方のお気持ちというものをしっかり受け止める政権運営をしていかないといけない、という_18を強く感じているところであります。そのような時に、我を張ってでも、続けることよりも、引いた方が、という_19が、ある意味で自分の心の中に生じた時は、国民の皆さん方に、極力、丁寧に、また正直に、自分の_20を、お伝え申し上げたいと、そのようにも思っておりまして、お金がかからない政治を、もう一度原点に立ち返って作り上げる、努力をしていかねばいけないと、_21を新たにしているところでございます。私でなければという、思い上がった_22はありません。一つは過去の秘書の責任は、当然議員の責任だという_23(なので)、責任は当然ないとは思っておりません。私にもなぜ母が一言も話をしなかったのかという_24は、確かにないわけではありません。決して、一般にいわれているような形での、私腹をこやしているということを行った_25もありません……
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<回答例>
1 事情 2ところ 3自覚 4うしろめたさ 5大義名分 6覚悟 7道義 8疑念 9(責任ある)言葉 10観測、懸念、無力感 11要望 12下心 13 用意 14動揺 15観点 16わがまま、執着心 17気分 18焦り 19迷い、判断 20考え 21志 22自惚れ 23認識 24疑問 25覚え
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どうです?見事でしょう。抜群の面白さでしょう。小生も最近『私の1冊日本の100冊』というNHK番組をムックにされたとき「この本への思い」という見出しを付けられたので「思い」という言葉を変えてくれと申し入れたら「検討する」といわれながらそのまま出版されたのでコノ国の人々の「思い」への傾倒ぶり社会への蔓延には愕然としていたところでしたがマサカ首相がココまで脳味噌を「思い」に侵食され言語不足に陥ってるとは思いも寄りませんでした(こういう正しい使い方をしましょう!)。しかし「思い」の他の部分も日本語としてハチャメチャで理科系とはいえ一国の首相がこれでいいのでしょうかねえ。尚この素晴らしい問題を送って下さった天田サンのホームページはhttp://homepage.mac.com/torutenda/index_j.htmlです。
1月1〜3日(三が日・金〜日)
テレビ見て本読んで音楽聴いて初詣して麻雀して食って飲んで買い物して…の3日間。TVはプレートル指揮のウィーンフィルNYコンサートが流石の演奏。番組はゲストなし女子アナだけ。予算切りつめやな。2日朝NHK「京都南禅寺界隈明治日本のユートピア」が面白かった。映画は食べ疲れたときにWOWOWで『バックトゥザフューチャー3』。4度目くらいかな。ここでもJ・ウィアムスの音楽大活躍やな。それと餓鬼がようやく返してくれたDVD『ブルースブラザース』。何遍繰り返し見てもエエ映画や。本は気軽に坂本勝『地図とあらすじでわかる!古事記と日本書紀』青春出版社と山井教雄『まんが現代史 アメリカが戦争をやめない理由』講談社現代新書を読んだだけ。2日にNHKブックレビューの合評本がドカッと送られてくる。中原早苗『女優魂』ワイズ出版。面白そう。帚木蓬生『水神』新潮社。読みたかったけど機会がなかった。機会を与えてもろて嬉しい。初詣は近場で大船観音。ふ〜ん曹洞宗やったんか。買い物はIC録音機。これまでインタビューに録音機を使うたこともメモを取ったこともなかった。忘れるような話の中味はオモロナイ証拠やと少々傲慢かましてたけど最近オモロかったはずの話を思い出すのに時間がかかるようになってしもて編集者に録音頼むようになったので自前で録音機を持つことにする。歳やな。とほほ。正月のメシはヨメハンのおせちも『鮨処もり山』さんの鯛の塩焼きやら鮑の蒸し焼きも美味かったけど次女のBFの鳩料理が最高。麻雀は半荘1回。ザンクと親のゴッパーあがっただけ。こんなもん餓鬼どもが強なってどないすんねん。雀牌積むのは右手中指に少々残る不自由さのリハビリにはエエな。あ。こーして今年もナンヤラカンヤラ書き進めるとせっかく元旦に載せた『日本語の滅亡を招く危ないコトバの乱用を観測するクラブ』のキョーレツにオモロく中味のある文章が読まれにくくなってしまうではないか。コレはシリーズ化してコノHPを作ってくれてる「bit」さんに新コーナーとして立ちあげてもらうことにしょうかな。ともかく皆さん今年もヨロシク。
1月4日(月)
仕事始め。いろいろ仕事のメール。すべて返事なし。ハッハッハ。みんなまだ休んどるな。ふっふっふ。蟻と蟋蟀の話を忘れたか。晩飯映画劇場は『ブルースブラザース2000』と『ブルースブラザース』2作品のメイキング。以前朝日新聞のコラムでナンバーワン映画に選んだときは他の傑作映画を他人に選ばれてしもたあとやったからコノ映画を選んだちゅう事情もあったけどコノ映画は間違いなく大傑作ですよ。気取って一般的名作名画を選ばすコレを選んで良かった。映画と関係ないですが『水神』は凄い小説です。まだ仕事の調子出んなぁ…。皆さん!本欄元旦新春スペシャルを読んでください!
1月5日(火)
三が日を存分に休んだ(仕事をせなんだ)せいか昨日からモーレツに仕事。ちゅうても原稿締切はまだやし資料読んで企画書書いて単行本目次作って編集者とメールやりとりして…おっと今年はいろんな企画で結構忙しいなぁ。いやメチャメチャ多忙になるで。ありがたいこっちゃけど血圧要注意やな。たまに全く仕事せん日を作ることが今年の課題やな。晩飯映画劇場は『耳の残るは君の歌声』。オペラの歌が満載でジョニー・デップ出演で1000円やったから思わず買うてしもたDVDやったけどビミョー。女の子版『ひまわり』といえる映画かもしれんけどユダヤとナチスとロマという重いテーマも重く沈んだまま。クリスティーナ・リッチの魅力も活かされてない。ジョニー・デップはただ恰好イイ悲劇のロマを演じるだけ。ああ。女性監督(サリー・ポッター)か。女性監督や女性製作者の映画にこの手のホンワリやんわり焦点ズレズレ映画が多いなぁと思てしまうのは小生の偏見か…。
1月6日(水)
朝ラジオ2本。新年最初で消費されるスポーツは何故現代社会に受け入れられるのかというちょっと堅い話。あ。これ。難しくゆーたらこーなるちゅう話でラジオではもっと簡単に喋ってますからね。あ。RKBラジオはホームページで聴けるはずです。http://rkbr.jp/stamina/文化放送もコーユーのやったらどーかいなと思うけど…。新幹線で大阪へ。毎日放送『ちちんぷいぷい』今年初出演。キャスト・スタッフの皆さんに新年の御挨拶。スポーツイヤーの打合せを少々。番組中の鰤ステーキ美味かったなぁ。今年もヨロシク。終了後京都の若きライターと打合せ。関西にいて今の時代やと仕事が甘なる。将来が心配…と説教。俺も歳やで。帰りの新幹線で帚木蓬生『水神』上巻読破。うーむ。真理は細部に宿る見事な時代小説。『213』に寄って新年の挨拶。え?今日はフリーが品切れなん?ないのんやったらシャーナイな。ほな本物のビール飲も。うい〜。
1月7日(木)
七草。春の芹薺御形繁縷仏座菘蘿蔔は言える。書けへんけど。ATOKでは書けるんやな。Microsoft IME Standardでも書ける。なんか自分が情けない。秋の萩尾花葛撫子女郎花藤袴朝顔は言えへん。今広辞苑で調べた。秋は食えへんもんばっかりやなぁ。言葉は意外と簡単やな。ヨッシャ。憶えよ。ムニャムニャムニャ。ヨッシャ。憶えた。秋になったら忘れてるやろなぁ(笑)。一日かかって二つの大学と大学院の授業のシラバスづくり。まだシラバスという言葉がピンと来いひん。なんやねんコノけったいな言葉は!俺の使い古してる広辞苑第4版には出とらへん。新潮国語事典にも出てへん。横文字に強いはずの集英社国語辞典にも出とらへん。大野晋先生の言葉の解説が見事な角川必携国語辞典にも出てへん。その程度の流通度の言葉を大学ちゅう権威主義の集団は使いたいのか…と思いかけたら三省堂の大辞林にはシラバスが出てた。【syllabus】講義などの要旨。一学期の教授細目。…そういうことなら講義要旨・授業概要・梗概といえばええのにナンデこんなケッタイナ言葉を使うんやと思てWikipediaを見てみるとコレがケッサク!《この言葉は、米国の学校で慣用され、近年、日本の学校でも流行しているが、ヨーロッパの学校ではあまり用いられていない。というのも、シラバスという言葉からして、ラテン語として誤っており、正しくはシッティバス (Sittybas、ギリシア語「題箋」sittyba の複数形) であるからである》《米国の学校においては、個々の講座の独立性が強く、教員も外部からの人材が多いために、講座の教育方針や教員の連絡方法その他の情報を含めて学生に必要なものであるが、教員のほとんど全員が学校に所属し、教育方針も学校として統一的な日本において、シラバスは、もっぱらたんなる授業計画の同義語となってしまっており、この奇妙な似非ラテン語は、一時の流行にすぎない可能性もある》「題箋」なんて言葉は知らなんだけどコレ書いた人もソートー苛ついとるで。こんなケッタイナ言葉を平気で使とる大学ちゅうところは…と思いながらも書きあげた「シラバス」らしきものをネットで送稿。ふうー。
1月7日(木)つづき
夕方『忠臣蔵外伝』の入場券を大量に団体購入してくださった『213』へ。チケットを届けてついでに生ビールを2杯。アリガトサンです。帰宅して晩飯映画劇場は『でんきくらげ』。先日品川駅のエキナカディスク・ショップで見つけたので思わず買ってしまったDVD。レジの女の子が薄微笑を浮かべてるように思えたのでコレは増村保造監督・林光音楽・渥美マリ主演デビューの名作で…と言いたくもなったがウッディ・アレンの映画にエロ本買うてレジで言い訳して余計に赤恥をかくシーンがあったことを思い出して口をつぐんで一緒に笑う。大映の濃厚エロ軟体動物シリーズ(他に『いそぎんちゃく』『しびれくらげ』など)の一つで1970年作品。高校生として看板に興奮しつつ映画館に入る勇気が出なかったのを憶えてる。改めて晩飯食いながらリヴィング・ルームで見て真面目な作品と納得。エロ度も現在と較べると比較にならないほど柔。母親の情夫に犯された娘がその情夫を刺殺した母親のために夜の銀座で成り上がっていく物語。ちょい役ながら玉川良一がイイ味出して西村晃などが脇を固めてる。作品として完成度は低いけどマダマダ清く貧しく美しさの残っていた70年のチープな空気が漂う。今よりイイ時代やったかな?東京の当時の景色や銀座の風景がもっと多かったら立派なタイムマシン映画になったのに…少々残念。『しびれくらげ』も見てみなあかんな。
1月8日(金)
うわあ。新年早々やらなアカンことがいっぱいやなぁ。ほんま正直言うて助手がおらんとやってけへんのやけど人使いが下手なんか人材に恵まれへんのか上手いことイカン。しゃーないなぁといつものように思いつつ血圧上げんようにコツコツやるほかないな。とほほ。晩飯映画劇場は宮藤官九郎が5年前に岸田國士戯曲賞を受賞した作品を細野ひで晃が監督した『鈍獣』。最近の芝居はどこがオモロイのかさっぱりワカランといいとなるのがケッコウあるけどコレもソレ。くだらないシチュエーションとオモロナイ台詞とヘタクソぶってホンマに下手な演技ばっかりで胆がたってきた。あ。観客に胆立てさすのがこの芝居のネライか。究極の異化効果か…。阿呆な。誰かこの脚本の面白さを解説してくれ。『真夜中の弥次さん喜多さん』はオモロカッタのに…。見終わったあとWOWOWで『印獣』の舞台をやってたけど見る気をなくす。題箋だけは江戸川乱歩の『盲獣』なんかをパロッてるかパクッてるんやろけど…。憶えた言葉はすぐ使う!
1月9日(土)
朝からイロイロ仕事の整理。一段落したところで新宿オペラシティへ。『ミセス』編集長と新連載打合せ。今年は他にも春から新連載がある。嬉しいこっちゃけど焦らず騒がず淡々と…。夕方からタケミツ・ホールで山下洋輔サンの新春恒例ニューイヤー・コンサート。今年はなんとクラシックのスタニスラフ・ブーニンと競演!!フリージャズからドビュッシーまで堪能の2時間。洋輔サンのフリージャズの迫力とスタミナにブーニンもマイッタちゅう感じやな。終了後楽屋で洋輔サンに挨拶したあとステージに置かれていたブーニン愛用のファツィオリのピアノを間近で見せてもらう。ふ〜ん。ナルホド。これがイタリアの名門家具メーカーが最近作りだしたピアノか…。正直言うてヨウわからんけどエライもん間近で見せてもろて触らしてもろたと妙な感激に浸ってピアノ線を覗きこんでたら近くで恰好いいイタリア人がニカニカ笑てた。ファツィオリの日本代理店の人らしい。「グラツィェ」と挨拶してパーティへ。ジャズ評論家の相倉久人さんや奥さんで昔の『GORO』編集部の同僚中安さんや今年も編曲で活躍した挟間美帆さんや音楽評論家で鎌倉芸術館時代の戦友の青澤さんらと歓談してから家路。帰りの湘南ラインでビール飲みながら本読んでて思わず「オオッ」と声を出してしまう。隣の席のヨメハンがびっくりして「どないしたん?」。帚木蓬生『水神』下巻のクライマックスで驚愕興奮。うむむむ〜。マイッタ。凄い小説やなぁ。
1月10日(日)
早朝目が覚めてベッドのなかで『水神』読了。最後がちょっとTVドラマ的ハッピーエンドに過ぎるような気もしたけどソレほど過酷な江戸時代の水利工事だったかと思うと納得もできる。1000枚上下2巻の長さも感じさせない今日的意義も高いイイ小説でした。佐吉と散歩のあと仕事の整理。バタバタしてる最中に昨日のコンサートについて方々からメール。ほんま洋輔サンのニューイヤーは毎年凄いですよ。そうか。ブーニンの弾いてたイタリアのファツィオリのピアノは20000000円か。ストラディヴァリなんかの弦楽器の200000000円と較べたら安いもんやな。どうかzero数えて下さい。ピアノちゅうのは100グラムあたりの単価もメッチャ安やな。弦楽器はメッチャ高やな。まぁ牛肉と違うんやからグラムで較べてもシャーナイけど。晩飯映画劇場はペキンパー監督の『ダンディー少佐』のはずがメシ食い終えたら眠とうなってしもた。サスペンデッド・ムーヴィーやな。zzzzzzzz……。
1月11日(月)
午前中CS衛星劇場から送られてきたメトロポリタン歌劇場DVDチェック。プッチーニ三部作は初めて見る。グレギーナ・フリットリ・リチートラ・ポンス・コルベリ…の配役は凄いな。ゲルギエフ指揮ホロストフスキーの『エフゲニー・オネーギン』はDVDで何度も見た。ロバート・カーセンの枯葉を敷き詰めた舞台が見事。そういえばカーセンはヴェニスのフェニーチェ座の火災消失からの復活『椿姫』でも彼は敷き詰めてた…かと思うとそれは実はヴェルディの顔写真が印刷されたお札だったという凄い舞台やった。今年の兵庫県立芸術文化センターの佐渡裕のオペラはレナード・バーンスタインの『キャンディード』でカーセンの演出。舞台に何を敷き詰めよるのんやろ?今からワクワク。成人の日はやっぱり小正月にあったほうがええのんとちゃうか…と思いながら千駄ヶ谷の国立能楽堂へ。新年にふさわしい能の『養老』を見たあと野村萬斎の狂言『釣針』。なかなか面白かった。けど爆発力がないなぁ。最後の能『大原行幸』はパス。帰りに大船で本屋とディスクショップで新春の買い物。ラザレフ指揮ボリショイ交響楽団のハチャトゥリアンの管弦楽曲集が「浅田真央の音楽!決定盤」とのポップ付1000円で売って他ので衝動買い。なかなかエエ演奏やけど最近ロシア音楽はリャードフやらチェレプニンにはまってる。「パパヤガ」「キキモラ」なんてタイトルもエエ。伊福部昭なんかにも影響与えたとか。晩飯映画劇場は久しぶりにクリント・イーストウッド監督兼脇役『パーフェクト・ワールド』。主役はケヴィン・コスナー。脱獄して少年を人質に取った男と少年の物語。悪くない映画です。ひょっとして『1Q84』に影響を与えてたりしてて…。
1月12日(火)
午前中いろいろ仕事のあと午後から鎌倉極楽寺S・Y氏邸訪問。ブランデーを舐めながらコーヒーと緑茶を飲みカステラとお汁粉をいただきながら新連載企画の基本的枠組みを話し合う。ついでに鎌倉市の政治行政情勢について教えていただく。有意義な時間を終えて夫人にクルマで送っていただく。恐縮。帰宅後晩飯映画劇場。クリント・イーストウッド監督主演『目撃』。原題は『Absolute Power』。年老いた大泥棒(イーストウッド)が盗みに入った大邸宅で米大統領(ジーン・ハックマン)の不倫異常性癖殺人を目撃。それを隠蔽しようとする大統領側近とSPと真相究明に動く刑事と大統領の不正を暴こうとしつつ娘(検事)との信頼関係を取り戻そうしながらその娘にまで手を出そうとする大統領とその周辺に闘いを挑む大泥棒のアクション・ドラマ。面白かった。話は単純。気持ちのいいハリウッド娯楽映画。とはいえ権力を有する組織と対立し続けたダーティ・ハリーがついに大統領まで敵に選んだのは流石。
1月12日(火)つづき
そうか。魁皇が808勝で幕内通算歴代1位になったか。そういう記録に騒ぐようになったのは大相撲がメディアスポーツ化した証拠やろな。テレビで「凄い記録」と評価を口にした人のうち何人が魁皇のどの勝負を記憶に留めているか…?イチローの9年連続200本安打も同じ。あの選手のあの時のあの一打が…とオフシーズンにストーヴを囲んで語り合う「ストーヴ・リーグ」の意味が変わりドラフトやトレードの話題を指すようになって以来スポーツへの視点も変わった。「ファンの眼」から「メディアの眼」へ。そして「スポーツなきスポーツの話題」へ。この時代の流れは止められない?変えられない?戻せない?
1月13日(水)
朝ラジオ2本。テーマは相撲。魁皇と貴乃花親方。後者は親方支持の声が高く「改革派」vs「守旧派」の構図で見られてるけど親方の「改革案」も見えんなぁ。所詮はコップのなかの権力争い?ヨウわからん。指揮者の金聖響さんと電話打合せ。今週末の神奈川フィル・ベートーヴェン『ミサ・ソレムニス』のプレトークで話す内容。皆さん聴きに来て下さい。おもろいですよ。原稿2本書きあげようと思てたら三枝成彰氏から『忠臣蔵外伝』の構成手直し案(A・B案)が送られてくる。小生は全体のバランスを崩すという理由で両案に反対。メールを送ると電話がかかってきたのでハッキリ反対意見を述べる。「名曲ダイジェストじゃなく再構成新作品なんですから」三枝氏は残念そう。作曲者の気持ちはわかるけどね。演出の島田雅彦氏はA案可能性有り(B案不可能)の意見。最終的には製作者兼作曲者の判断。公演が一か月後に迫ってこういう話が飛び出すのはゲージュツカだから?創作オペラ公演ってホンマにタイヘンやね。みんな見に来て下さいね。なんやらかんやらタイヘンなんですから。
1月13日(水)つづき
原稿執筆予定の半分で晩飯映画劇場。クリント・イーストウッド監督主演の現代西部劇コメディ『ブロンコ・ビリー』。カウボーイに憧れた男がサーカスもどきの西部劇ショウ集団を率いてドサ廻り。ヴェトナム脱走兵や臭いメシを食った連中が金に困って列車強盗をするシーンなどケッサク。後の傑作作品群に続くイーストウッドの心優しさが感じられるハリウッド娯楽映画。そうか。JALは法的整理か。シャーナイな。小沢と鹿島に強制捜査か。これもシャーナイな。自民党的なるものは全部崩壊やな。時代の変わり目やからな。中原早苗『女優魂』読了。凄い女優…いや凄い女性やな。凄い女性だけが凄い女優になれるんやな。関係ないけどゴルフの石川遼が誰かに似てる誰かに似てると思い続けてワカランかったんがコノ本の写真でわかった。赤木圭一郎や。
1月14日(木)
小正月だからといって何もなし…それにつけても金のほしさよ…というどんな上の句にもつけることが可能な下の句は知ってたけど…「にがにがしくもをかしかりけり」「あぶなくもありめでたくもあり」というのは15年くらい前にドナルド・キーンの『日本文学の歴史』で知った。外国人力士も相撲について面白いことを日本人に教えてくれんもんかいなぁ…などと思いつつ昨日書けなかった原稿を苦心の末に仕上げて相撲を見たら朝青龍が豪栄道に負けた。その後の態度が悪いなぁ。まぁこういうやんちゃ坊主が一人くらいいてもええのんやろけど口五月蠅く注意する年寄りもおらんといかんわな。晩飯映画劇場は『キャッチ・ミー、イフ・ユー・キャン』。小野俊太郎さんの『フランケンシュタイン・コンプレックス』に紹介されてて未見だったスピルバーグの作品。10代で数百万ドルという小切手偽造詐欺をした60年代実在の男(少年)の物語。虚実の皮膜と追う者と追われる者の差異と同化がハリウッド娯楽映画商品に昇華された好作品。トム・ハンクスとデカプリオの演技も見事。面白かった。
1月15日(金)
朝NHKーBSで『プラネット・アース』見る。正直に書くと今週1週間『プラネット・アース』に感動。全11話すべて見たわけではないけどコノ3年前の作品はレベルが違う。ディズニーの『百獣の王ライオン』や『砂漠の生きものたち』に始まったネイチャー・ドキュメンタリーもここまで進歩したかと驚嘆するほどの素晴らしい出来栄え。NHKとBBCとドキュメンタリー・チャンネルの日英米合作最高峰。DVDでほしいけど全3巻11枚33,428円は高すぎる。イギリス版なら£24.99(約5,800円)。この違いはいったいナンヤ!?ということを午後からのNHK関東甲信越番組審議会で発言。ほかに紅白・オペラのNYガラをとりあげてポップスとクラシックの距離がありすぎることを話す。ついでにNHK響が日本のトップ・オケとして満足できる活動をしてないように思えることも指摘。会議のあとパーティ出席はキャンセルして新潮社へ。『新潮45』の編集長&編集者&坂井保之氏の4人で春から始める新連載の打合せ。通しのタイトルは『プロ野球血風録』になりそう。おもしろくなりそう。打合せのあと食事。昨今の野球相撲から民主政権小沢の話まで盛り沢山。忙しなるなぁ…。望むところではあるけど…。帰宅後テレビは小沢周辺ニュース。坂井さんの解説のほうがよっぽどわかりやすくオモロかった。さすがは岸信介-中村長芳の長州ライン側近だけあるなぁ。
1月16日(土)
朝佐吉と散歩。近頃書いてへんけどコレと朝の筋トレだけは欠かさずやってます。何を誰に断らなアカンねん。ほっといてくれ。まぁかまへんけど…。こういう書き方を関西では一人ツッコミ一人ボケと言います。どーでもエエ話です。仕事の整理で少々バタついたあと夕方横浜みなとみらいホールへ。なんで平仮名なんやねん。まぁエエけど…。こういうのも軽い一人ツッコミですね。そこからケッコウ発見はあるもんです。物書きには必要な資質かもしれませんね。何の話やったけ?そうそう横浜みなとみらいホール。こういう一人ボケは必要ないでしょう。何の話やねん。そこで神奈川フィルのベートーヴェン『ミサ・ソレムニス』。演奏前のプレトークを指揮の金聖響さんとこなす。人文の第九に対して天文のミサソレ。ほな地文は何かというと弦楽四重奏やと聖響さんの話から気づいた。ベートーヴェンの天地人。つまりベートーヴェンの「世界」のすべて(ピアノソナタは何やねん…と突っ込まんといてください)。やっぱり凄い作曲家やなと思いながら素晴らしい演奏に少々感激。ちょっと作品としてはわかりづらいんやけど四人の独唱者(澤畑恵美・押見朋子・吉田浩之・長谷川顕・敬称略)が素晴らしかった。神奈フィル合唱団も!独奏ヴァイオリンの横浜ヤンキー暴走族隊長コンマスも素晴らしかった!聖響さんの肩揉んでたmimulaもヨカッタ。関係ないか。ホンマ素晴らしい演奏でした。神奈フィルええで。コンサート後の新春パーティでちょっと喋らされてから帰宅。晩飯映画劇場はマダ見るかと自分でも呆れながらスピルバーグ未見シリーズ第2弾『ターミナル』。う〜ん…次の機会に書きます。
1月17日(日)
朝佐吉と散歩したあと新幹線で神戸へ。とくに震災15年だからというわけでもないが長田に住む女房の親戚の家を訪問。最近亡くなられた女房の叔母に線香を上げる。昨年小生と同時期に同じ脳出血で倒れた女房の従姉妹を励ます。リハビリは楽しく明るく仕事(できれば収入)になることを!リハビリのためのリハビリはつまらないですからね。震災直後に神戸を訪れたときはポートピアで中高時代の友人に朋友から集めた見舞金を手渡し山の手で被災した叔父さん(親父の弟)を見舞ってからココを訪れた。商店街がアーケードと一緒にすべて斜めに傾いていた。その向こうは焼け野原。それでも皆さん訪ねただけの者を明るく歓迎してくれてこっちのほうが元気をもらった。今回は等身大『鉄人28号』を見て帰る。なかなか立派。カッコイイ。これで神戸も長田も元気になってほしい。クルマで西宮の兵庫県立芸術文化センターまで送ってもらう。佐渡裕指揮ヴェルディ『レクイエム』。開演は5時46分(被災時の12時間後)。強烈な演奏。こういう言い方は好きではないけどこれほど魂のこもった演奏は初めて。言葉に表せない身震いに襲われ図らずも落涙。震災後に脳梗塞に倒れた叔父のことや滅茶滅茶に潰れた商店街のことが思い出されたとはいえ音楽の力は大きい。ソプラノ並河寿美さんとメゾの林美智子さんの声は美しく二重唱は素晴らしかった。林美智子さんのお腹が大きかったことも素晴らしいことだった。テノールの松本薫平さんもバリトンの成田博之さんも素晴らしかった。松本さんはアンコールのバースタイン『キャンディード』の『僕らの畑を耕そう』が涙声になってしもたけど納得。演奏終了後楽屋を訪れたら佐渡さんも涙。似合わないことと自覚しながら私も…。京都へ帰って『酒肆G』で今年の干支のカクテル「白虎」をいただく。ウォッカに白味噌と芥子。見事に美味かった。先斗町で蕎麦食って長い長い一日を終える。
1月18日(月)
朝六道珍皇寺へ墓参り&和尚っさんに新年の挨拶。今年は親父の13回忌とお袋の7回忌。合わせてやることをお願いして大阪へ。MBS『ちちんぷいぷい』生出演。同い年の小林繁氏逝去はツライ。TBSの『ニュース23』で何度か御一緒したがダンディな裏にいつも陰があった。最後に逢ったのは4〜5年前の甲子園やったな。試合前のベンチでいろいろ話したけど何か辛そうやった。合掌。昨日訪れた鉄人28号が番組の話題に。小生が携帯で撮った写真も披露してもらって思いっきり喋る。新大阪から帰りの新幹線に京都から乗り込んできた女房から浅川マキさんの訃報を聞く。ショック。短い学生時代に事務所でバイトさせてもらってチケットのもぎりとか入場者の行列の整理をやってた。新宿文化アートシアターや蠍座でのコンサートはオモロかったなぁ。四谷シモンさんがゲストで『カンサス・シティ』や『アンド・アイ・ラヴ・ハー』を歌たりして…。つのだひろも泉谷しげるも三上寛もゲストで出て…。大学中退を決めたときは駒場寮の20畳ほどの広さの一室でピアノとアコースティック・ギター2本をバックにプライヴェート・コンサートをやってもろた。100人近い聴衆に一升酒付のチケット売ってギュウギュウ詰めのなか罵声と怒号と大合唱が交じり合う3時間以上の深夜に及ぶコンサート。今の俺の女房も京都から駆けつけた。そういや山下洋輔サンと初めて出逢たのもマキさんの事務所を手伝うてたときのことやったなぁ。洋輔サンは憶えたあらへんけど。ピアノのシブやんが今もコンサートしてるのは知ってるけどギターのノブさんはどうしたんかなぁ。曼荼羅の社長やおタラはどうしてるかなぁ。今更懐かしがってもシャーナイけど無茶苦茶破茶滅茶の青春やったなぁ。合掌。今日も長い一日やった。
1月18日(月)つづき
本日の〆(シメ)は品川の寿司屋へ。朋友のT・Sクンに最近独立した経営コンサルタントのS・Yクンを加えて歓談。気の置けない友人とのひとときはホンマに楽しい。この場合「気の置けない」という書き方が正しいらしいけどどうもしっくりこんなあ。そういや昔「雪に変わりがないじゃなし」という歌詞があって問題になったことがあったけどアレとおんなしやな。あ。友人二人といろんな話をしたけど往復の新幹線で読んだ小野俊太郎『人間になるための芸術と技術』の話をもっとすリャよかった(ナンデモカンデモ参照)。理論物理学が直接的に人間生活の役に立つわけやなく即効的に金儲けにつながるわけでもないけど大切な学問であることは多くの人々にある程度認識されてるけど人文学(Humanities)は同様の立場にありながら今日多くの人々にとって雑学クイズと同レベルにしかとらえられず大学でも「教養課程」は「絶滅危惧種」扱いされてる。それがいかに大切な学問かということが書いてあるけどマクルーハンがウッディ・アレンの映画『アニー・ホール』に出てることを知るだけでも面白い(あ。これって雑学クイズ的トリヴィアやなぁ。失礼)。ラリー・サマーズとネオリベやポドレツとネオコンの人文学的見方なんかハーヴァード系のSクンにもシカゴ系のYクンにも読んでほしいなぁ。ネオコンは《急進的「トロツキズム」が「新保守主義」になったという単純な図式でとらえられがちだが、やはりその方向転換には「イスラエル=パレスチナ」問題が大きな影を落としているといわざるをえない》コレは佐藤優サンにも読んでほしいなぁ。長い一日の終わりは楽しくビール一杯と焼酎一杯と寿司で閉幕。
1月19日(火)
仕事のメールをチェックして返事を書いたりしてたらアッというまに昼飯時。午後もメールのチェックと返事と雑誌原稿の校正と電話で仕事の打ち合わせしてたらあっという間に晩飯時。映画はトム・クルーズ主演スピルバーグ未見シリーズ第3弾『マイノリティ・リポート』。超能力少年少女を利用した犯罪予知システムが稼働してる未来社会(21世紀半ば)で国家犯罪に巻き込まれた犯罪予知警察署員のサスペンス・ドラマ。微妙やなぁ…。アクションも未来的すぎてイマイチ。ストーリーも結末が読めてイマイチ。映画としての面白さも?『フランケンシュタイン・コンプレックス』に書かれた名解説がなければ見てられへんなぁ。スピルバーグは『ジョーズ』だけでもエエけど意欲はわかる。愛すべき失敗作かな。
1月20日(水)
朝ラジオ2本。小林繁氏逝去と「江川空白の一日事件」について。事件としては社会的に大きなものになったけどプロ野球界にとっては部外者個人が発見した抜け穴に読売全体が陥ってしまった事件で「プロ野球1リーグ化画策事件」やソレに続くストライキなどと較べればちっぽけで珍奇な事件だったという話。仕事整理資料読み校正であっという間に晩飯映画劇場は『ディアドクター』。右下に紹介してる映画と同じ女流監督のリズム。鶴瓶も八千草薫もそのリズムと合致。女性監督とか女性作家といわずに女流というのは意味のあることやなぁと思いながらも男にとっては(とりわけ俺みたいなイラチにとっては)ついていけない。たるい。コノ映画と脚本が何故か高評価を得たことには日本の映画と映画評論家のレベル低下を危惧するけどあくまでもイラチの見方かなぁ。イラチってわかりますよねぇ。
1月21日(木)
朝新幹線で再び京都へ。活け花未生流笹岡の次期家元笹岡隆甫氏にインタヴュー。活け花の世界も何やら奥深い。たおやかなダイナミズムとでもいえばいいのか移ろいゆく自然の儚さを感じさせる美しい活け花を堪能。資料調べの段階で知ったことやけどこの次期家元のイケメン青年は小生の中高の後輩。狂言の茂山宗彦さんほか京都の共通の知人も多いみたいで少々マイッタ。何をマイッタのかわからんけど京都は怖いなぁ。何が怖いのかわからんけど…。インタヴューのあとちょっと祇園の家に寄って『酒肆G』で建築家のT・Sサンと待ち合わせ。『グリル金星』で晩飯。お互い子供の話と健康の話が多なったのは歳のせい?楽しい一時を過ごしたあと新幹線で帰鎌。車中『人間になるための芸術と技術』読了。抜群に面白かった。大学の教養課程など役に立たない…と少しでも思っている人には是非とも読んでほしい。それにしても小野俊太郎さんはエエ仕事してはるなぁ。感服。
1月22日(金)
いろいろ彼方此方飛び回る一方で原稿を書き…という仕事の仕方は身体にヤバイヤバイ…と思いながらちょっとペースダウン。来週の衛星劇場メトのオペラ・ライブビューイングのVTR撮りのための資料映像を見て勉強。ロッシーニ『セヴィリャの理髪師』はファン・ディエゴ・フローレスが流石やなぁ…と思てたら先日逝去された浅川マキさんの元マネジャーから電話。何年ぶりやろなぁ。俺が追悼原稿を引き受けたことについていろいろアドヴァイスをいただく。難しい原稿を引き受けたもんやと思いながらも平岡正明さんは亡くなってるし山下洋輔サンも加藤登喜子サンもは既に他紙に書いたらしいしココは引き受けんとシャーナイなぁ。いや。こんな光栄は他にありませんヨ。喜んで書かせていただきます。けどプレッシャーきついなぁ…と思いながら久々に嫁さんと次女と一緒に『213』で食事。原稿のコトが頭にこびり付いたまま何を食ったかも記憶にない。トホホ。
1月23日(土)
プレッシャーのきつい原稿とは違う原稿をまず1本片付けてから名古屋栄の中日文化センターへ。前の時間帯で講義を終えた高野孟氏と20分ほど歓談。10歳年上の団塊の上の安保世代にとっての浅川マキについて訊く。ついでに早大バリケードのなかでの洋輔コンサートについても。おもろかった。『クラシック入門講座』のテーマはコンチェルト。ラテン語で「競奏曲」イタリア語で「協奏曲」の意味を解説したあとグルダのピアノと指揮でモーツァルト…ムターのヴァイオリンでメンデルスゾーン…ロストロポーヴィチのチェロでドヴォルザーク…ナイジェル・ケネディのヴァイオリンでジミ・ヘンドリックス…グリモーのピアノでラフマニノフ…バーンスタインのピアノと指揮でガーシュウィンの「競奏・協奏曲」を楽しむ。イングヴェイ・マルムスティーンのエレキ・ギター・コンチェルトは時間切れで次回に持ち越し。しかしオペラと較べれば仰山見聴きできるもんやなぁ。やっぱりオペラは長いなぁ。新幹線のなかで『メディアスポーツ解体』読んで少々疲れて帰宅。この貴重な現代スポーツ分析と人文学の違いについて頭をめぐらすが集中できず。マキ原稿の呪いかなぁ(笑)。
1月24日(日)
朝佐吉と散歩。いろんなコトが起きて滅茶滅茶疲れた1週間を終えてホッ。忙しいときにはココには書けへん無理難題珍事件奇事態も次々と重なるもんやなぁ。マイッタナァ。とりあえず書いてて楽しくなるコラム1本仕上げてユニヴァーサルから送られてきたDVDとCDをチェック。デュダメルがロス・フィルの常任指揮者に就任したコンサートを見る。ジョン・アダムスの新曲『シティ・ノワール』も面白い。マーラー『巨人』は大熱演。ウォルト・ディズニー・コンサート・ホールも凄い。ベネズエラのシステマと同様の子供たちを貧困から救う音楽活動も始まったようでロスのクラシック音楽シーンは確実にニューヨークを超える勢いですね。客席にトム・ハンクスがいるのもロスならでは。グルダのピアノで素晴らしいモーツァルトを聴きながらもう1本例のプレッシャーのきつい原稿を書こか…と思たけどやっぱりソラ無理やでぇ…で晩飯映画劇場。石原裕次郎でなく中原早苗を見たかったので『紅の翼』。八丈島で破傷風に倒れた子供を救うためセスナ機で裕次郎がワクチンを運ぶ。そこへ海外高飛びを目論む殺し屋二谷英明と女性新聞記者中原早苗が同乗し…。まぁ筋書はどうでもヨロシ。ほかにも西村晃・滝沢修・芦川いずみ・小沢昭一などなどオールスター総出演。鶴丸マーク以前のJALの機体も現れてタイムマシン感覚に乗った気分は味わえます。しかし昔の映画と今の映画。一番の違いは台詞の言葉ですね。昔はソンナ会話をしてたんかいなと思うほど良くも悪くも語彙豊富に状況説明心情説明にレトリックを駆使する。そこを分析すると面白そう。
1月25日(月)
昨日仕上げた原稿をメール送稿。次の原稿に悩み始めた頃に去年1年間連載した雑誌『HITOIKI』の編集者とカメラマンとライターが来宅。愛用の万年筆Montblanc750極太について取材を受ける。こういう取材はどこか嬉しい。自分自身のことより自分が好きなものを語るほうが嬉しい。夕方から『鮨処もり山』へ。次女のBFのレベルアップ就職に次女自身の祝い事も重なり長女と長女のBFも久しぶりに集まってめでたしめでたし。ナンノコッチャ。しかし原稿が書けんなぁ。
1月26日(火)
早朝5時前に目覚めてベッドで悶々。アノ原稿のことばっか頭を巡る。こーゆー体験久しぶりやなぁ。佐吉と散歩のあと原稿書き出すも書き切れずに何度も書き直し。二階の書斎から昼飯で一階に降りてきてリヴィングの椅子で知らないうちに寝入ってしまう。イカンイカン。メシ食ってネジ巻き直して夕方まで集中。ようやく原稿用紙わずか2枚半の原稿を書きあげる。フウーッ。浅川マキさんのプレッシャーはきついでぇ。死せるマキさん生ける男どもを走らすやなぁ。とにかく追悼文書きましたでぇ。夕飯メシ前某記者より電話。朝青龍ピンチやで。マァ自業自得やけどな。晩飯映画劇場は気楽に楽しむつもりでヒッチコック『間違われた男』。ヘンリー・フォンダの主演で…しかしメシ食ったあと爆睡してしまう。映画のせいやのうて明らかに原稿のせい。
1月27日(水)
朝ラジオ2本。朝青龍のことはまだ喋れへんのでWHOが煙草規制に一定の効果を得たあと酒規制に乗り出すコトを表明したこと。TVCMも影響受けるし税金高なるし日本のスポーツ界は代表チームがビール業界をスポンサーにしてるんでこれはキツイでぇ。午後イチで都内NHK放送会館スタジオへ。BS『ブックレビュー』VTR撮り。ドリアン助川と名乗っていた頃にお会いした明川哲也さんと久々の再会。最近の肩書きは作家の他に道化師。もうすぐ「黴」を主人公にした小説を書きあげるらしい。相変わらず面白い人や。丁髷(時代劇)評論家のペリー荻野さんとも歓談。ペリーという名前は冗談で付けたら定着したらしい。『フランケンシュタイン・コンプレックス』『女優魂』『水神』の各本を楽しく合評。話の途中プロメテウスの名前がド忘れして出てこんかったけどマァええやろ。プロデューサーのIさんとは浅川マキの話題。「アングラの女王という報道はないよね」「そうですよねぇ。超一流の歌手ですからね…」銀座山野楽器に寄って帰宅。晩飯映画劇場は1958年イタリアRAI放送局製作のオペラ映画『オテッロ』。タイトルロールはデル・モナコ。イヤーゴ役はカペッキ。指揮はなんとトゥリオ・セラフィン。古い映像で輸入DVDのため日本語字幕なし。しかい演奏は凄い!この映像の光と影の使い方はゼッフィレッリか?
1月28日(木)
朝青龍も問題やけど貴乃花も大問題やな。なんで彼が“改革派”と持ちあげられるんやろ?まぁ持ちあげてる人は利害関係者か相撲界の実状を知らん人やけど…。昼前から都心の豪華ホテルの一室へ。『衛星劇場METライブビューイング』の解説VTR撮り。演目は『エウゲニー・オネーギン』(ゲルギエフ指揮ロバート・カーセン演出ルネ・フレミング/ホロストフスキー/バルガス等すべてにレベルが高い舞台)『セヴィリャの理髪師』(何といってもファン・ディエゴ・フローレスのテナー・コロラチューラ=アジリタが凄い)『三部作=外套/修道女アンジェリカ/ジャンニ・スキッキ』(ホァン・ポンス/フリットリ/グレギーナ/リチートラ/コルベリなどスター歌手総出演)。さすがに疲れたけど前回より上手くいったかな?帰宅後晩飯映画劇場は『THIS IS IT!』。MJがKing of Popsと呼ばれKing of Rockでないことに納得。「コレってアレやん」「ソレやん」と言いたくなるシーンの連発。あ。This is Itや!所詮は舟木一夫の延長線上にはあるけど浅川マキとは違うな…などと思いながらPops Liveのリハーサルを楽しむ。次女のBFがグレードアップ再就職で明日から大阪へ。ま。若いうちは目一杯ガンバレ。明日からは娘二人と同居か。賑やかに五月蠅なるこっちゃで。
1月29日(金)
朝から情報が飛び交う。朝青龍は解雇か自主引退か?高砂親方は朝青龍に引導を渡したあと廃業?理事長は辞任?そのくらいできんとアカンやろな。コレだけ協会がバカにされて国技がコケにされて横綱が傷つけられたんやから。これは理事選で貴乃花に追い風という声もナシ。親方衆は一門の締め付けに必死で事件どころでないらしい。とほほ。誰も(貴乃花も)朝青龍問題コメントせず。あぁ世も末の相撲協会。それにしても理事選を「民主的」に行うことが素晴らしいことで貴乃花親方は「改革派」という決定的に間違った考えだけは糺さんとイカンな。「民主的」な選挙が定着すると「村社会」では「倫理」が「ルール」に置き換えられる。貴乃花親方は「改革」の意見など全く持ち合わせてないし理念もなく部屋経営は最悪やし…とはいえ現理事の親方衆も「倫理」や「実行力」はサイテーやし…。どーしたらええねん?という気持ちでMBSの東京スタジオから『ちちんぷいぷい』生出演。とにかく西洋民主主義がベストという考えだけは否定。朝青龍は事件だけやのうて土俵入りも相撲の儀式所作もサイテーであることを強調。その後名古屋へ。うわっ。新幹線が止まってたらしい。東京駅大混乱。ソレでも座れたのは乗り慣れてるもんね。名古屋のホテルで浅田真央チェック。素晴らしい。アナウンサー最低。
1月30日(土)
東海TV『スーパーサタデー』生出演。そうか多くのメディア関係者は貴乃花を“改革派”と思てるんや。もちろん取材ぬきでのことでオマケに取材してない人の話を聞いてのことやけど。素晴らしいタニマチをカンカンに怒らせてサポーター制度を唱えてるようではアカンけどそれ以上いろいろ指摘すると個人攻撃になるし困った。貴乃花親方がもっと勉強してホンマの改革派になってくれたら一番ええんやけど…。朝青龍問題について電話出演のやくみつるさんと話す。解雇か自主引退かは最低限実行しなければならないだろうけど高砂親方への処分と理事長の責任問題もきちんとしなイカン点で一致。ああ角界のことを考えると血圧が上がる。丁髷組だけやのうて評議員と理事の半数に背広組を入れんとアカンで。さらに浅田真央の素晴らしいスケーティングについてコメント。あの挑戦精神は同じジャンプを繰り返して点数だけ稼いできた選手に較べて最高のスポーツ・ウーマンの証拠やで。五輪のメダルが何色でも浅田真央の挑戦にこそ拍手!彼女こそ世界一ですよ。帰宅後晩飯映画劇場は『ココ・シャネル』。シャーリー・マクレーンは流石やしシャネルは凄い人生やしもっと面白い映画になったはず。欠点がわからんままどこかツマラン映画。英語の問題か?メーキングも凡庸。音楽もアカン。
1月31日(日)
休み。休日。な〜んもせん日。一月に一日くらいはこーゆー日が必要やろな。とはいえユダヤ教徒の安息日ではないので本くらいは読む。井上章一ほか『性的なことば』(講談社現代新書)。これは5年前くらいに出た『性の用語集』の続編。おもろい。俺は金の茶釜はいらんな。その後オペラ三昧。『ばらの騎士』。侯爵夫人のルネ・フレミングは現代風で可愛い。ティーレマンの指揮も見事。鏡を多用した演出も面白い。一幕とメイキングを見終えたところで同じ『ばらの騎士』の2004年ザルツブルク音楽祭のものに変更。指揮はビシュコフ。ウィーン・フィルの音が最高。ロバート・カーセンの演出も面白い。21世紀に入ってようやく『ばらの騎士』もカルロス・クライバーの超名演の呪縛を解かれた感じやな。一二幕を見て両舞台の続きは後日…というのは贅沢やなぁ。という一日にも電話がいくつか。朝青龍問題が聞こえてくる。朝青龍も相撲協会もアカンでぇ。最悪やでぇ。貴乃花が“改革派”なら発言せんかい!武蔵川-高砂ラインの隠蔽工作は赦せん!と言わんかい!NHK『ブックレビュー』で御一緒した詩人で道化師の明川哲也さんから優しい歌のいっぱい詰まったCD『星屑通りで店開き/アルルカンの洋菓子店』とナカナカ面白い著書『なやむ前のどんぶり君/世界は最初から君に与えられている』ちくまプリマー新書が送られてくる。嬉しかったので『道化師』のオペラ(ゼッフィレッリ監督ドミンゴ主演やデル・モナコ主演)をプレゼント。
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