11月1日(日)
今年のゴールドコンサート(身障者による音楽コンクール)でグランプリに輝いた珍獣王国サンのリーダー珍獣王こと山下純一サンからメール。プロモーション・ビデオをつくったから見て欲しいとのこと。喜んで!メチャメチャ素晴らしいブルース・ハーモニカのパフォーマーのうえに同郷人やから宣伝部長でもナンでも引き受けまっせぇ(本欄10月12日参照)。午後から渋谷オーチャードホールへ。リヨン歌劇場来日公演マスネ『ウェルテル』のコンサート形式上演。指揮は今をトキメク大野和士。俺は関西人やからどうしても関西系のミュージシャンに思い入れがあるけど鎌倉市民として湘南高校卒の彼にもどこか近しさを感じると勝手に思てたらパンフレットに島田雅彦が寄稿してた。やっぱり。演奏前のプレトークでピアノ弾きながらウェルテルがピストル自殺する様子を舞台にひっくり返りながら実演。さすが。オモロイやん。演奏もじつに見事。オーケストラを完全にコントロールして若きゲーテの独善的悲劇を描いてた。それにしてもリヨンはオッターのカルメン以来2度目やけどエエ音出すなぁ。それにしても新進気鋭のテノール歌手には驚嘆。歌も悪くなかったけど身長が2bを超す長身。だいたい背が高い人間は声帯が長いからバリトンかバスに決まっててテノールは(パヴァロッティ・ドミンゴ・佐野成宏以外は)チンチクリンと相場は決まってたけど彼は規格外。ここまで高いとラヴシーンがまた不自然になるのが辛い。まぁ歌が一級やあらエエけど。名前はヴァレンティ。デュダメル指揮の『ボエーム』でスカラ座デビューも果たしてるらしい。
11月1日(日)つづき
帰宅して日本シリーズ。ダルビッシュの軟投粘投のあと晩飯映画劇場は最近よく見るマカロニ・ウェスタンに敬意を表して『SUKIYAKI WESTERNジャンゴ』。監督はこれまた今をトキメク三池崇史。しかし…中味はビミョー。源氏と平家に用心棒をかぶせるアイデアは秀逸。北島三郎のモリコーネ風テーマも抜群。こういう作品大好きです。しかしタルイ。マカロニ・ウェスタンもリズムはタルイけど音楽と映像と役者で間を持たせる以上に迫力を醸し出してる。それがなかった。最後のアクションは桃井かおりもがんばったけど…。NHKで白洲次郎をやった伊勢谷友介はこんな映画に出とったんや。発想と試みは大好きやけどモット暴れてほしかったなぁ。けど嫌いになれへん映画。そうか。大島渚さんの言うてた失敗作を愛してほしいとはこういうことか。ほかの三池作品も見てみよ。
11月2日(月)
ゴチャゴチャ雑用に追いまくられる一日。まぁコンナ日もあるわなぁ。民主党は事業仕分けで躓いてる。小沢の選挙原理主義もワカランでもないけどドーセ将来は自民が潰れて民主が分裂するんやさかい選挙より仕事さしたったほうがエエと思うけどなぁ。あ。文科省関係の事業仕分けのアイデアはいっぱいありまっせ。国でやってる音楽家や学者の卵やスポーツ関係者の海外留学は全部停止。国のカネで海外留学した人はほとんどが国内ボスになるだけで海外でも活躍する一流人はほぼ自費留学ですからね。ゴチャゴチャ雑用のなかであっという間に晩飯映画劇場。クリント・イーストウッド全部見るシリーズ第X弾『タイトロープ』。舞台がニューオリンズ以外はダーティハリーにもつながる嫁さんに逃げられた刑事の風俗関連事件。おもしろかった。騒ぐほどの映画やないけどチャンと作品一歩手前の商品になってる。ガンファイトがほとんどないのも狙いとしては面白い。しかしイーストウッドはナンデこの脚本をプロデュース第1号映画に選らんだんか…。性産業の女性を取りあげるのは後の少数派への視線につながるな。
11月3日(火)
文化の日。憲法公布記念日。旧明治節。米朝サンに文化勲章。たしかにめでたいことかもしれん。松鶴や枝雀はどんだけ長生きしても逆立ちしても無理やろな。このへんが人生のミソで私は米朝の落語も好きですが松鶴や枝雀のほうが大好きです。幕末から現代までの日本を「犬」から考えた『犬の帝国』読了。メチャメチャオモロカッタ。これはどこぞの書評に書かねば。続いて井沢元彦『逆説の日本史16江戸名君編』(小学館)読み出す。後半の江戸文化史から。相変わらず面白い。そうか。『仮名手本忠臣蔵』は反徳川将軍仮想暗殺の芝居なんやな。やっぱりな。来年のオペラ『忠臣蔵外伝』もそのセンを現代に行かしてほしいな。おれはもう離れたけど島田雅彦さん頼んまっせ。晩飯前映画劇場でセルジオ・レオーネの『ウェスタン』を1時間半見て晩飯日本シリーズ劇場で巨人助っ人の強さをチェックして晩飯後『ウェスタン』の続き。フランスとイタリアで大好評イギリスでズッコケアメリカで酷評不評大失敗の理由がよくわかる。少々タルイがそれはマカロニ・ウェスタンのリズム。映像は圧倒的に素晴らしい。しかしチャールズ・ブロンソンは似合てるけどヘンリー・フォンダは悪人になれへんで。それにしてもウェスタン(西部劇)ちゅうのは時代から外れてはぐれる人間を描くのに適した映画やな。現代のIT産業に夢中の連中に見てほしいな。楽天球団(文明)と野村一家(はぐれ者の悪)の関係は完璧な『ウェスタン』やな。
11月4日(水)
朝ラジオ2本。今季で引退の野村監督について。大阪へ。MBS『ちちんぷいぷい』生出演。ここでも野村監督について。セルジオ・レオーネの『ウェスタン』の話ができればエエけどどう考えても難しく伝わりにくいので(昨日の本欄参照)知られざる現役時代の野村選手のエピソードを紹介。ナント本盗7回成功!ホントウ?(シャレです)ホームスチールのことです。本当です。三重盗(トリプル・スチール=走者満塁で全員盗塁)を三塁走者として本盗(ホームスチール)で引っ張ったことも2度もあります。足が遅い選手(敵が油断する選手)で演技のできる(盗塁しないふりのできる選手=敵を油断させる選手)なればこその大記録ですね。ちなみに野村選手は二桁盗塁(10度以上成功)のシーズンが3度もあり成功率は盗塁成功率は65%近くのハイアベレージでした。ほかにオールスター戦でキャッチャーを務めたとき巨人の王選手にまったくホームランを打たせなかったなんて記録も残ってます。選手に頭を使えというのも当然ですけど奥さんの買い物の請求書まで球団にまわしたらアキマヘン。帰宅後日本シリーズ。エエ勝負で面白いけどジャイアンツとファイターズの熱狂的なファン以外でどっちを応援してる人のほうが多いのか知りたいな。圧倒的にファイターズと違うかな。ジャイアンツは他球団カラーの色濃く残った助っ人が多すぎるモンな。それにしても東京ドームは狭いなぁ。
11月5日(木)
朝チョイト仕事してワールドシリーズ観戦。松井凄い!3安打1ホーマー6打点!ヤンキース優勝!松井MVP!素晴らしい!これでまた日本人野球選手のメジャー志向が募るなぁ。日本野球はいつになったらメディアの支配・親会社の支配から自立するのかなぁ…。それはさておき松井は凄い。やっぱり真面目にコツコツやるのがイチバンやな。ヤンキースは貴重な財産を手放すのかな?
11月5日(木)つづき
午後チョイト仕事のあと東京へ。オペラシティでミンコフスキ指揮ルーヴル宮音楽隊コンサート。今年最高に期待のコンサート(もちろん聖響神奈フィルと並んで…です。汗)。ロビーで久しぶりに池辺晋一郎サンに逢う。俺に脳出血には驚かれたが「ステッキ姿もステッキじゃない」と相変わらず。コンサートは凄いの一言。CDやDVDで既に知ってたけどこんなに楽しくメリハリの効いたピリオド奏法のバロックや古典は初めて。しかもモーツァルトのセレナーデ『ポストホルン』ではポストホルン(郵便喇叭)を吹きながら自転車に乗った制服姿の郵便配達員が登場。郵便物を楽団員や指揮者にわたしながら喇叭の演奏。休憩中に歓談した音楽評論家の青澤隆明さんや山田治生さんも絶賛。アンコールはラモーとモーツァルトとグルック。サービス満点。コンサート終了後池辺さんも絶賛。名古屋で一緒にカルメンのトークをした山之内英明さんも絶賛。「あれだけサービスしながら演奏は最高にしっかりしてるんですからねえ」「少々演奏がダメでもサービスしてくれるほうがいいですね。それが音楽ですよ」と俺。そういうサービス精神から演奏も良くなるに違いない。ミンコフスキのような素晴らしいミュージシャンをかなり前から絶賛していた自分が嬉しい。今度は是非ともオッフェンバックのオペレッタを!ルーヴル音楽隊(Les Musiciens du Louvre・Grenoble)はグルノーヴルに本拠地を構えてる。素晴らしいオケや素晴らしい演奏活動とはそういうもんだろう。NHK交響楽団の本拠地は何処?
11月5日(木)つづき
ミンコフスキとルーヴル宮音楽隊のコンサートをオペラシティのタケミツ・ホールで聴いたあと東京駅へ。巨人のユニフォームを着たファンが笑顔で大勢。帰宅後ビデオを見るとオイオイ巨人は負けやないかアノ笑顔は何やったんやねん…と思たところが9回裏に大逆転サヨナラ。しかしニュースは松井やな。「君だけはアメリカに行ってほしくない」と朝日新聞紙上で訴えた元巨人監督も絶賛やもんな。それにしても最近は過去は消えてゆくものという前提での軽い発言が目立ちますね。羽田空港は拡張できない。だから成田を作る。そんな意見もあったなぁ。プロ野球チームから企業名をなくすべし。そんな新規参入球団オーナーの主張もあったなぁ。なんで言わんようなったんかなぁ。
11月5日(木)つづき
書き忘れたので書いておきますがヤンキース松井選手が試合終了直後スタジアムでのインタヴューに通訳付のきちんとした日本語で堂々と答えていたのは良かったですね。サンフランシスコ講和条約調印後の吉田茂首相演説を白洲次郎が日本語で行うよう主張したのを思い出しました。コペンハーゲンIOC総会での東京五輪招致の演説がすべて英語か仏語で結局実らなかったのは何やら象徴的です。
11月6日(金)
朝佐吉と散歩のあと仕事。男は仕事じゃ。なんのこっちゃ。昼飯映画劇場はセルジオ・コルブッチ監督フランク・ネロ主演『続・荒野の用心棒』。高校生のとき名画座で見て興奮。『SUKIYAKI WESTERN』を見た関係で再チェックしたけどフランク・ネロの若さに驚き。昔はもっとニヒルでダンディで大人の主人公やと思てた。イタリア語版で見るとより面白いことがわかった。アメリカ映画ではないですからね。しかしセルジオ・レオーネのほうがはるかに上やな。脚本が雑やな。夕方から昨日に続いてオペラシティのミンコフスキ公演へ。今日はハイドン特集。時計もオモロイ。バロック・ドラムを叩きまくった太鼓連打もオモロイ。それにミュジシャン・ドゥ・ルーヴルのオケも全員がソロストかと思えるほど抜群に上手い。一聴驚嘆。二聴舌巻。名古屋に行かなければならないので前半2曲だけで退席。ロンドンとアンコールが聴けんかった。涙。新幹線で名古屋へ。
11月7日(土)
東海TV『スーパーサタデー』生出演。トヨタF1撤退の話題。日本メーカーはモータースポーツから続々撤退。BMWも。変わるべきはモータースポーツの側かな?松井の話題はあれど日本シリーズはなし。巨人ファン大谷昭宏さんが最後にチョコット喋っただけ。名古屋は健全ですな。しかし立浪の背番号3は永久欠番にならへんのは中日球団と名古屋にとって不幸やで。雇われ監督にそこまでいう権利はないはずで球団がしっかりせんとあかんな。新しく3に変わる森野もやりにくいやろな。来年は女子プロ野球が生まれるらしい。日本版プリティ・リーグ。終戦直後もあったけど経営不振で潰れた。これは明らかに女性問題。イギリスではすべてのスポーツ団体が障害者も女性も含むことが義務化されていると聞いた。民主党のスポーツ政策の基本の「スポーツ権」に照らすと日本の女子野球はプロ興行を行う以前にプロ団体やアマ団体から活動を支援されなければならないのでは?新幹線で『逆説の日本史16』読了。相変わらずオモロイ。落語の歴史もオモロかったけど漱石の文体が落語に根ざしてることにも触れてほしかったな。井沢さんにも知らんことあるんやなと思うと少しホッ(笑)。晩飯日本シリーズは巨人完勝。ファイターズは勝てる試合を3つも落としたな。ヌケヌケ(○●○●○●○)は今年も出来んかったな。ワールドシリーズでも1909年のパイレーツがタイガースを破ったときに1回あるだけやし難しいんやろな。ということは今日ファイターズが勝ってたら…。残念。
11月7日(土)つづき
日本シリーズのあとパゾリーニ監督『アポロンの地獄』。高校生の時に見て最高の作品と興奮した映画。名古屋駅新幹線口のソフマップでDVDを安売りしてたので衝動買い。とにかく光あふれる映像が凄い。さらにモダンな衣裳の見事さにも改めて感銘。オディプスが父親を殺すシーンもスフィンクスを倒すシーンも最初と最後に舞台が現代になるシーンも秀逸。パゾリーニ映画では珍しく同化効果が異化効果を完全に上まわった作品。パゾリーニとなるとチョイト難しいことを言いたくなる自分がアカンな。トホホ。
11月8日(日)
以前渋谷へ行ったときエキナカの書店で買ったプルーストの『失われた時を求めて』を読破。というても漫画本。高校時代に『スワン家のほうへ』だけは読んだ憶えがあるけど紅茶の香り以外は忘れる。源氏物語と並ぶ長編をこんなにあっさり読めてもエエのかと思いながらも楽しんで読む。ナカナカ面白い。絵もまずまず。イーストプレス社の『まんがで読破』シリーズは『資本論』も『カラマーゾフ』も『ドグラマグラ』もいろいろあるらしい。読んでみよかな…と思てると御近所さんがドラヤキを持ってきてくれる。「うさぎや」という銘菓店のモノらしい。美味い。しかし記憶は過去に戻らず。香りが薄いからかな。ナンノコッチャと思た人は『失われた時を求めて』をお読みください。
11月8日(日)つづき
昼飯映画劇場は『ノルマンディ 将軍アイゼンハワーの決断』。『史上最大の作戦』を見た人にはオススメ。パットンやモントゴメリーやドゴールやチャーチルの描写がオモシロイ。アイクを良く描くためとはいえ(不倫相手が出てこない)納得できるイヤな個性ばっか。チョット外交でぶつかると大騒ぎする日本のメディア人も見るべきですね。アイク(アイゼンハワー)はやっぱり指揮官としてマック(マッカーサー)より上やったんかな。晩飯映画劇場は(映画ばっかり見とるなぁ)クリント・イーストウッド監督主演『ハートブレイクリッジ勝利の戦場』。レーガン時代のグレナダ侵攻と米軍海兵隊を美化した映画。しかしおもしろい。良くできてる。米軍全面協力のPR映画といえるがベトナム後の米軍の退廃堕落や未熟兵の心情などもよく描けてる。ナルホド。アメリカ(米軍)はこれでチョーシこいてエエ気になったところへ9・11を迎えた(導いた?)わけか。
11月9日(月)
一昨日書いた日本シリーズとワールドシリーズのヌケヌケ(○●○●○●○)の原稿でワールドシリーズでは1909年に続いて最近の1997年マーリンズ×インディアンズ戦(マーリンズ勝利)で2回目が記録されていたのを失念していました。それを知らせてくれたのは元我が塾生のMクン。持つべきモノは弟子…いや全員破門したにもかかわらずアリガトサンです。昔のことを憶えてて最近のことを忘れるのは老化の典型かな(笑)。
11月9日(月)つづき
先週土曜の本欄で『逆説の日本史16江戸名君編』の江戸文化としての落語の説明で漱石の文体との関係にも触れてほしかった旨書いたところが文化放送「ソコトコ」スタッフを通して井沢元彦さんから「それは明治編で触れる予定」との返事。楠木正成を「日本マラソンランナーの祖」と書くくらいの人やからやっぱり御存知ですわな。終日原稿書き。脳出血について第2弾文章化。2回目もコラム程度の長さなので重複を避けるのがチョイト難しい。いずれ長文を書くか。晩飯映画劇場はクリント・イーストウッド主演『ガントレット』。ダーティ・ハリーのアリゾナ・フェニックス版。こうなるとダーティ・ハリーもNHKのど自慢か朝の連ドラか大河ドラマとおんなしで御当地モノで引っ張りだこてな感じ。銃弾使用量が半端やない迫力が凄い。ただそれだけ…とはいえ後のハリウッド・アクションに与えた影響は小さないな。そうか。刑事ハリーの分身は常に内部(警察検察)の腐敗と闘うんやな。水戸黄門の「下から目線版」ちゅうわけか。
11月10日(火)
原稿を書いて編集者から「面白かった」といわれるとコノトシになっても嬉しいモノ。もっとも本日送稿したのは脳出血体験記第2弾であまり喜べず。そうか。市橋が捕まったか。理由の如何に関わらずたった一人のexodusは相当にシンドイはず。不可能なはず。整形までして阿呆やな。しかし逃げてる人は世の中に多いな。あのメディアの騒ぎ方は事件の性質によるモノ以上にpersonal exodusに対する恐れと捕獲した安心感から起こったことかな…。森繁翁死去。「俺は勝手に死んでゆく。ほっておいてくれ」とかナントカ書かれた直筆(もちろん毛筆)の詩を京都高台寺前の料亭『川太郎』で見せてもらったことがある。たしか金田正一投手の墨痕鮮やかな燕の絵入りサインと一緒に屏風にしてあった。写真に撮らせてもろたはずやけど…そういえばそこの先代の女将は森繁と…ヤメトコ。
11月11日(水)
朝ラジオ2本。来年から日本に誕生する女子プロ野球について話したあと新幹線で大阪へ。MBS『ちちんぷいぷい』生出演。なんとゲストとして文化勲章受章者の桂米朝師匠が車椅子で登場。小生は高校時代に新体育館落成直後の文化祭でお会いして以来(何年ぶりやろ?)。そのときの前振り。「おかしな男がビルの2階から釣り糸を垂らしとるのでチョットからこうたれと思た男が『おい。よう釣れるか』と訊(たん)ねたところが『へえ。今日はアンタで3人目や』」というのはいまも憶えてる。昭和57年発行創元社版『米朝落語全集全7巻』は何度読んだかわからん宝物で『地獄八景亡者戯』をもじって『甲子園八景亡者戯』というパロディ作品を書いたこともある。その師匠を前にして少々感激。角アナウンサーが「長生きの秘訣は?」と訊くと「食い気と色気」との答え。「まだ色気も?」「自分ではあるつもりやけど周りはそうは見てくれんようや」その会話の後ろで弟子の一人の月亭八方師匠が御猪口を口にする素振りを見せた。あとで訊くと毎晩久保田の万寿を傾けられるらしい。そらウマイやろ。俺も日本酒復活で長生き目指すか…。帰りの新幹線で辻井いつ子さんの本『今日の風、なに色?-全盲で生まれたわが子が「天才ピアニスト」と呼ばれるまで』(アスコム出版)読む。明日は辻井伸行君のソロ・コンサート。MBSでソレを言うとADの女の子にまで「うわあ。凄いですねえ。いま全然切符とれませんから」といわれた。ふ〜ん…なるほど…そうか…そんなもんなんやなぁ…。
11月12日(木)
最近佐吉のことを書いてへんけどヤツは相変わらず元気です。ほぼ毎朝一緒に散歩してます。今日もその散歩のあと雑務事務処理と明日の毎日新聞のコラム原稿書き。夕方から紀尾井町ホールへ。辻井伸行君のコンサート。素晴らしかった。何年か前に金聖響さんの指揮でモーツァルトのコンチェルトを聴いたときよりも格段に音が大きくなった。音が大きいことは素晴らしいことでグルダをナマで聴いたときなどその音の大きさに驚いた(必然的に小さな音が凄く綺麗に聴こえるわけですね。最近ではミンコフスキ指揮ミュジシャン・ドゥ・ルーヴルの小編成オケなのに音の大きさに驚いた。辻井君も身体も大きくなったから当然かな。でも見事。ショパンはお手の物。それよりベートーヴェンが面白かった。荒削りではないが若々しく未来を感じさせる『悲愴』と『熱情』。20年後にも是非聴きたいと思わせる力は凄い。雑誌『ミセス』のお母さんへの取材で聴かせてもらったが「今回のツアーは私は食事の美味しいところとか友達のいるところだけ着いていきました」とか。鮮やかな子離れ親離れですな。
11月13日(金)
朝から東京へ。午後からの全日空ホテルでの『忠臣蔵外伝』記者会見に備えて打合せ。出演者の佐藤しのぶさん・塩田美奈子さん(ソプラノ)佐野成宏さん・樋口達哉さん(テノール)作曲者兼プロデュサーの三枝成彰さん勢揃い。それに俺に変わって演出をすることになった島田雅彦さんも。俺は「構成者」として参加。早い話が言い出しっぺということ。形としては俺の手を離れたことになるけどココまで漕ぎ着けて良かった。上演は来年2月19〜21日オーチャードホール。料金はD席5000円〜SS席25000円。少々値が張りますが皆さんよろしく。午後からは各種メディア40人ほど出席。島田雅彦さんが「チョット玉木さんの頭がおかしくなってのでぼくが演出を…」マァそういうこっちゃ。文化放送のS君も来てくれていてついでに『珍獣王国』のプロモーション・ビデオを渡す。『ミセス』の編集長も来ていたので一緒に新宿へ。
11月13日(金)つづき
新宿PITT INNでM-Unit(ジャズ・トリオ)のコンサート。リーダーの挟間美帆さんが誕生日ということで去年に続いてコンサート。エレキベース弾いてるイキリボケのアホガキも誕生日らしい(笑)。後半は弦楽四重奏やらサックスやらペットやらトロンボーンが加わってナカナカ華やか。客席にはナンデカ山下洋輔さんの姿も。あ。挟間美帆さんと同じ事務所か(言い方逆やで・笑)。演奏途中に佐渡裕さんから携帯にtel。ええことがあったそうです。「ほんま可愛いわぁ」「あんまりメロメロになったらアカンでぇ」「そんなこと言われても無理やわぁ」はいはい。さよですかぁ。めでたい話は洋輔さんにも報告。あ。挟間美帆トリオM-UnitのHPはhttp://www.jamrice.co.jp/miho/index.htmlです。
11月13日(金)つづき
M-Unitのコンサートを聴いたあとCSテレビ衛生劇場の関係者3人と打合せ。今冬からメトロポリタン・オペラの放送の全解説を務めることになった。向こうの依頼はオペラに少ししか興味のない人やオペラを見たことない人を惹き付けること。望むところや。俺がやるからには破天荒にしてオモロイモンで日本のオペラ・ファンが三倍増するようなモンにしまっせぇ。長い一日が終わって『213』へ。『忠臣蔵外伝』のチラシを置いてくる。帰宅したらナンデか本がドカッと届いてる。抜群にオモロイ「クロガネ歴画」の神髄第2弾。黒鉄ヒロシさんの『信長遊び』リイド社。我が師と勝手に言わせていただいてる虫明亜呂無氏の第2エッセイ集『仮面の女と愛の輪廻』清流出版。以前モスラをテーマにした本『モスラの精神史』講談社現代新書の面白さに舌を巻いた小野俊太郎さんの『フランケンシュタイン・コンプレックス 人間はいつ怪物になるのか』青草書房。アカン。今読んでる宮崎学さんの『近代ヤクザ肯定論 山口組の90年』と書評を書かないかん『犬の帝国』だけでも手一杯やのにこんなにオモロイ本がいっぱいあったら…うれしいなあ。自分の『スポーツジャーナリズム論』がナカナカ書けんはずやで。トホホ。
11月14日(土)
終日原稿書き。もう年末進行みたいなもんやで。まいったな。ここんとこ天皇即位20年とか民主党の事業仕分けとかオバマ来日とかで世の中も大変やったんやな。俺は自分のことで大変で…皆そういう状態になれることが大事かも…ちゅうことはマスコミの仕事に携わるちゅうのは他人のことにちょっかい出すばっかりで最悪か…コノコトハもうチョットよう考えヨ。遅い晩飯までに一気にコラム1本半書きあげて映画はシャーリー・マクレーンが7人の女性を演じ分ける『女と女と女たちWoman times seven』。インテリ通訳や不倫自殺決意の女やウブな作家夫人や相当やり手の未亡人や浮気性夫から離れられない妻などを演じ分けて眼鏡をかけたりスッピンだったり全裸だったり…粋で美しくて可愛くて寂しさの漂うマクレーンのチョット子供っぽい大人の魅力満載の映画でした。監督はヴィットリオ・デ・シーカ。流石ですね。男優陣もピーター・セラーズやロッサノ・ブラッツィやアラン・アーキンやマイケル・ケインが順々に登場する豪華さ。こういう映画大好きです。映画のあとコラム半分の残り完成させてサッカー日本代表vs南アフリカ。ボールをまわしすぎ。もっと早いタイミングでドリブル突破かクロスかシュートか何でもエエから攻撃せんかい。続けてイングランドvsブラジル戦見よかと思たけど日本代表を嫌いになりたくないので寝る。
11月15日(日)
何でこんなに仕事あるねんと思いながら昨日書いた原稿をチェックして送稿。さらに新しい原稿のための下調べ。昼飯映画劇場は長谷川一夫二役主演『雪之丞変化』。市川昆監督のコダワリ映像と山本富士子の珍しい鉄火肌姐御それに市川雷蔵など豪華配役とはいえ長谷川一夫がもう少し若ければ。晩飯オペラ劇場は12月からCS衛星放送で始まる衛星劇場でのMETライブビューイング(メトロポリタン・オペラの舞台映像放送)の解説を務めることになり送られてきた第1回目放送のモーツァルト『魔笛』を見る。ちょうど名古屋中日文化センターのオペラ講座受講生の皆さんと一緒にニューヨークへ行って『ドン・カルロ』や『ラ・ボエーム』を見たときに大々的に宣伝していた演し物。初めて見たが『ライオンキング』を手がけたブロードウェイ・ミュージカルの女流演出家の演出が極めて秀逸。英語でカット有り2幕を1幕に短縮とはいえ見事な舞台。嗚呼ニューヨークが懐かしい。もう一度行けるかなあ…。
11月16日(月)
朝佐吉と散歩のあと新幹線で大阪へ。MBS『ちちんぷいぷい』生出演前に桂ざこば師匠が「玉木さんエエモン見せたろ」といいながら掌に握っていたモノを見せてくれる。なんと京都祇園の『酒肆G』のマッチ。ざこば師匠は狂言関係の人に連れられて初めて訪れたとか。そこでGのお母はんに「黙ってコレ見せたら事情が全部わかりまっさかい」といわれたらしい。マイッタナァ。ざこば師匠はニヤニヤするだけ。小さい頃の話いっぱい聞かされたんやろなぁ。番組は「ふむふむ」のコーナーで山中アナウンサーとマラソンの話。終わったところでオペラ『忠臣蔵外伝』の宣伝してくれる。どうぞ大阪からも来年2月渋谷に駆けつけて下さい。大船に着いたら長男が戻ってて『213』で食事するとのことで合流。この前のライヴの報告。まぁオモロカッタ。ナンノコッチャ。
11月17日(火)
コラム1本書いて晩飯映画…と思たら長女が映画版プッチーニの『ラ・ボエーム』をTSUTAYAで借りてきたのでそれを見る。ヴィリャソンとネトレプコの熱演熱唱。ドキュメンタリー映画『カラヤンの美』でカラヤンは教養がないとか知性がないとの発言を平気で並べたロバート・ドーンヘルム監督の映像が美しい。特に目新しい演出ではないけどド・ビリーの指揮が素晴らしい。音楽で泣けます。
11月18日(水)
朝ラジオ3本。文化放送レギュラーコーナー(7時のリアルドクトリン)でオペラの話(来年2月の『忠臣蔵外伝』上演やオペラとはナンゾヤという話)と誰も知らないオリンピックの話。続けてRKB毎日放送でかつてフィギュアスケートは夏の五輪で行われていたという話。ジャンプにその名を残すサルコウ選手も1908年ロンドン大会でサルコウ・ジャンプを飛んだそうです。原稿いろいろ書いて鎌倉芸術館で前進座公演。『さんしょう太夫』。めちゃくちゃ微妙。いま安寿と厨子王の話を謡曲長唄延年之舞モドキで上演する意味ってあるんかなあ?会員制ベルトコンベアー観客やからできるのかな。失礼。『忠臣蔵外伝』もそないに見られんように…。ウン大丈夫でっせ。
11月19日(木)
朝からイロイロ頭の痛なる問題が勃発。こういう話は歳とともに避けられへんもんなんやね。まぁなんとかなるやろ。我無非やから。3日がかりで昼飯オペラ劇場。ベッリーニ『清教徒』を1日1幕づつ見て完了。ネトレプコ主演のメトの舞台ライヴヴューイングのDVD収録版。ああヤヤコシ。NHK衛星で見て2度目やけどやっぱりネトレプコの歌もエエけどルネ・フレミングのインタヴューや舞台裏案内の巧みさに感服。喋りもエエ。歌手としての自分の経験を生かしながらしゃしゃり出ずに論理的で綺麗な英語で相手に話を訊く姿勢は日本のTVの女性レポーターに見せてあげたい。全体に舞台の雰囲気がゆるむのは指揮者のせい?『犬の帝国』の読み残してた部分を読了して書評執筆。面白い本でした。晩飯映画劇場はハンフリー・ボガード&ローレン・バコール『三つ数えろ』。監督は巨匠ハワード・ホークス。脚本はなんと世界文学全集にその名を連ねるノーベル文学賞作家フォークナー(なんという紹介の仕方!)。『アブサロム、アブサロム』は一時期筒井康隆先生が大絶賛してたな。だから役者の会話が面白いのは当然なんやけど私立探偵フィリップ・マーロウも時代的に古さが目立つようになったなぁ。女優陣は時代を超えて美人やなぁ。女は強いなぁ。
11月20日(金)
最近送られてきたCD聴きながら原稿書いて送って校正やって。ベネッティ・ミケランジェリのシューマンP協も凄かったけどチェチーリア・バルトリの『神へのささげもの〜カストラートのためのアリア集』には圧倒された。超絶技巧とはこのこと。しかも美声で的確な技術。フィッシャー=ディースカウの後継者とは彼女のことかも。午後からNHKへ。関東甲信越番組審議委員会出席。意見百出面白い。終わってから懇親会の席で会社勤めと子育てのあとに司法試験に受かった某女性弁護士さんに「私もちょっと司法試験受けてみようかとも思うんですけど参考書のいいのを2冊ほど紹介してください」「いいですよ。最近は傾向が変わってるかもしれませんから次回までに訊いておきます」「あのう。大学は卒業してないといけないのですか」「いいえ。関係ないはずですよ」冗談半分ではなくHalf Serious。NHKを出て青山へ。フランス料理店で某雑誌編集部員と打合せ。新企画を推し進めることで合意したあとワイン飲みながら音楽談議。楽しい一宵でした。料理美味かったなあ。こういう店が★とは関係ないのんやな。
11月21日(土)
音楽評論家の山田治生氏から著書届く。『トスカニーニ大指揮者の生涯とその時代』アルファベータ社。これは読まねば。読まなアカン本だらけやなぁ…と思いながら小野俊太郎さんの『フランケンシュタイン・コンプレックス』読みながら東京へ。コレがまたオモシロイ!読み出したらとまらへん。そうか。フランケンシュタインの小説は科学者(電気取扱者)が探検家(磁気探求者)へ宛てた手紙で構成されてるのか。ナルホド。作者のメアリー・シェリーが女性やっちゅうのも大きいなぁ。と思ってるうちに新橋着。日生劇場で二期会オペラR・シュトラウスの『カプリッチョ』。こーゆー赤毛モノを日本人がヤル意味は奈辺にアリヤ?(オペラのアリアにひっかけた笑ろてもらえへんギャグです。涙)などと思てたらアリャリャ…最初にナチスと思しき連中が大挙して出てきたぞ…途中は時代設定が第二次大戦中(R・シュトラウスと台本を書いたC・クラウスの設定した18世紀ではない)であることを除けばオケの演奏も歌手陣も見事な演奏で日本人が赤毛モノをヤル意味は…などと繰り返し考えていたが最後にガガガ〜ン!と衝撃。オペラは言葉が大事イヤ音楽のほうが大事と論争しながらサロンの美人伯爵令嬢に求愛しつつオペラ制作をしていた詩人と作曲家それに演出家や歌手や女優が全員ナチスに逮捕されてしまった。そして蹂躙されたサロンの残骸が残る戦後年老いた伯爵令嬢が美しく切ないフィナーレの「月の光の音楽」を歌う。ブラヴォー!ブラヴィッシモ!見事な演出!どこか映画『タイタニック』の結末を思わせるけどナチスの支配する現実(1942年)のなかでThe Principle of Art for art's sake(芸術至上主義)のディレッタンティズムを貫いたR・シュトラウスの作品が見事に歴史的意義を備えて甦った!こういう演出を日本人演出家がやったというのなら日本人が赤毛モノをヤル意味もあるやろ(文化庁が支援する意味もあるやろ)けど演出は新進気鋭のジョエル・ローエルス。しかもこんなに過激でリーズナブルな演出になるとは二期会も思っていなかったのかチラシには「二人のオトコと一人の女 ドラマという名のオペラ・シアター」などと脳天気な言葉。パンフレットにも演出家がこの作品の創られた時期(ナチスの時代)を申し訳のように書いたチラシを添えるだけ。どうせなら「二期会がオペラの新世界を拓く!仰天衝撃の結末!貴方はこの幕切れに耐えられるか!」ぐらい書いて宣伝してたら良かったのに…。大船へ戻ってヤマダ電器で買い物したあと『213』で晩飯。馬鹿長女がお母さんにクリスマス・プレゼントとかいうて阿呆なモン買いよった。俺もぎゃーぎゃー笑いこけながら参加したけど…その顛末はまた後日。
11月22日(日)
世の中連休。俺は仕事。まぁオペラ見るのもスポーツ見るのも仕事やと言うてる男がその現実を嘆いたらバチが当たるわな。原稿書いて構成送り返してメトのオペラの衛星劇場解説のためにタン・ドゥン作曲『始皇帝』を見て。これは以前NHKでも見たけどナカナカ面白い中国現代オペラ。チャン・イーモウの演出が北京五輪開会式を連想させる。以前三枝成彰氏と一緒に見たときは「単純な拍子が多すぎるよね。自分で指揮するからそうしたいんだな」という言葉に納得。中国映画もそういう感じやね。規模の大きい割には単純で大袈裟な割には中味が乏しく…。けどそれがイイ面に出る場合もある。アメリカで初演するオペラなんかでは。晩飯映画劇場は『砂漠の鬼将軍』。第二次大戦ドイツ陸軍ロンメル元帥を描いたアメリカ映画。ヒトラーもロンメルも英語を話す。しかし中味は意外とオモシロイ。いかにもハリウッド的単純さとはいえヒトラーの作戦に疑問を持ち始めるロンメルの悲劇が滲み出てる。メト・オペラと同じかな。そのあとNHK教育で辻井伸行君がクライバーン国際ピアノ・コンクールで優勝したドキュメンタリーで3週間にも及ぶ闘いの記録を見る。闘いというのはチョット語弊があるかもしれんけど大変やったみたい。しかしテクニックや音の美しさや室内楽とのアンサンブルやコンチェルトでの指揮者とのコミュニケーション以外に人間性も加味される採点となると辻井君はダントツの一位ですよ。その誰にも愛される人間性が音楽にも出てました。悪いけど他の若いピアニストはイヤな性格やなぁと思わず…。そんなことどうでもエエか。ともかく辻井君のピアノが若い中国人青年のモーツァルトと並んで1位になったのは納得です。
11月23日(月)
新嘗祭。明後日締切原稿の膨大な資料(オーバーやな)読破。昨日TVで大学生vsプロの野球をチョイト見て(その中味はドーデモエエ)今年は諸般の事情があって一度も野球場に足を運ばなかったことを痛感。来年行くときが楽しみ。どんなふうに目に映るんやろか。晩飯映画劇場は久しぶりに黒澤明『赤ひげ』。確かに名作ですが終戦直後的ヒューマニズムと東京五輪後現実社会の変化との乖離が伺えココから黒澤のピンチが始まったことが良く理解できた。皮肉な見方とはいえ事実。黒澤作品で見てないのはあとリチャード・ギアの出るヤツだけ。
11月24日(火)
早朝佐吉と散歩。坂道を下ってコンビニ往復。途中E学園に登校する生徒が大量に坂道を登ってくる。大船駅に着く電車とシンクロするのか集団がいくつかに分かれてる。その集団内でも何人かのグループを形成する生徒や一人で歩く生徒などイロイロ。そのバラケ方が宇宙での銀河の分布みたいに見える。時折それら坂を登る集団に逆行して出勤するサラリーマンやOLが走り抜ける。まるで流れ星か彗星みたいに(俺は車道を挟んで反対側を歩いてた)。あ。流れ星や彗星が銀河の外部を走るはずないな。と思った瞬間E学園に登校する生徒の途切れ途切れの集団や個人が素数分布のような不規則なものに見えてくる。とはいえゼータ(ζ)関数のゼロ点というのはこんなふうに一直線に並ぶのか?ということはリーマン予想が証明されたら不規則と思われている素数の配列の規則性も宇宙の銀河の不規則に思える分布の規則性も解明できるのか?多分ここに書いたことは無茶苦茶やろけど今日は朝から楽しい。いや無理矢理楽しくしてるのかな。
11月24日(火)つづき
終日原稿書き。明日と2日がかりのちょっとばかり長い原稿。煙草は不要になったがガムを噛み続ける。夜映画を見ても順調と判断。晩飯映画劇場はケーリー・グラントとキャサリン・ヘップバーンの『赤ちゃん教育』原題は『Bringing up Baby』監督は巨匠ハワード・ホークス。人間の赤ん坊は出てこないで豹が暴れる1930年代のスクリュー・ボール・コメディ。ナカナカ面白くキャサリン・ヘップバーンのコケットリーな魅力を見直した。
11月25日(水)
昨晩寝るのが早かったのか早朝4時半に目覚める。歳やな。一気に『ミセス』に載せる辻井いつ子さん(ピアニスト伸行君の御母堂)の原稿を書きあげてラジオ2本。明治時代に西洋犬が「かめ」と呼ばれていた話から競馬の「かんぱい」(スタートやり直し)やら野球の「バスター」やら「バレーボール」とテニスの「ボレー」など外国語の聞き間違えの話。最後は小生が餓鬼のころ草野球を「太鼓ベース」と呼んでいて全国各地に「沢庵ベース」「鉄管ベース」などの名前の残っているという話。すべて語源は同じ。わかります?朝からネット中継で事業仕分けを見続ける。スポーツ予算も体力調査予算も大幅削減。当然やな。体協もJOCも考え方を変える以外ないな。
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/h-kekka/pdf/nov25kekka/3-57.pdf
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/h-kekka/pdf/nov25kekka/3-54.pdf
そもそも企業と学校が独占してる野球を話の対象に加えんと日本のスポーツはドーショーもならんで。夜次女がBFと来宅。またヤヤコシイ問題が…。まぁコーユー問題は笑顔が出てしまいますけどね。ドーユー問題やねんと突っ込まんといてくださいね。
11月26日(木)
書評執筆のため小野俊太郎『フランケンシュタイン・コンプレックス』熟読了。いやあお見事。フランケンシュタインから始まってジーキルとハイド〜透明人間〜ドラキュラといった怪物を読みとったあと第一次大戦で男性機能を失ったチャタレイ卿(の夫人の不倫)からスピルバーグの描くジョーズ〜ジュラシックパーク〜A.I.から『ミュンヘン』でのテロリストへと「怪物像」が移行するなかで怪物と怪物でないもの(正常な人間?)の境界線がわからなくなってくる。「怪物とたたかう者は怪物にならぬようにこころせよ」(ニーチェ『善悪の彼岸』)というわけだ。いやあお見事!夕方から鎌倉芸術館へコンサート。第1部は小林研一郎指揮日本フィルで『新世界交響曲』。コバケンの指揮はオモシロイ。第2部はソプラノ森摩季サンとテノール錦織健サンによるオペラ名曲アリアと二重唱。摩季サンは『オンブラ・マイ・フ』や『ムゼッタのアリア』。錦織サンは『フェデリコの嘆き』や『誰も寝てはならぬ』。デュエットでドニゼッティとヴェルディ。アンコールにレハール。楽しかった。終了後楽屋へ。「ステージに出たら目の前にいるんだもの…ビックリしましたよ」と錦織サン。カンニンカンニン。前から6列目のど真ん中の席やったもんで。こっちも目を合わさないよう苦労しました。大笑いしてると隣の森摩季さんの楽屋からオギャーオギャーの泣き声。赤ん坊連れのプリマドンナってなんかイイ。楽屋から出てきてくれて錦織サンに改めて紹介していただいてこれまで擦れ違いばっかりだった摩季サンときちんと御挨拶。聖響との第九をよろしく…なんて言わなくてもいいことを口走ってしまった。聖響御免。『213』で軽く晩飯。
11月27日(金)
編集者のOさんからクナッパーツブッシュ指揮バイロイト1958年版の『ワルキューレ』全曲録音輸入盤CDが届く。すぐプレイヤーに。スゴイ!50〜60年代の欧州オペラ界はドイツもイタリアも絶頂やったね。クナの指揮も凄いけどヴァルナイのブリュンヒルデも素晴らしい!しかしハンス・ホッターのヴォータンが絶品!日本では55年カイルベルト指揮のバイロイトや51年バイロイトのクナ指揮『神々の黄昏』があるけれど黄金時代の『ワルキューレ』全曲をクナで聴くのは初めて。いやぁ長生きはするもんです。とはいえ昔のオペラ・ファンにとってはコレが日常?こんなラジオ中継を聴いてたわけ?世の中すべて月日とともに進歩してると思たら大間違いやな。オペラ界はセラフィン指揮カラスの存在したイタリア50年代も含めて明らかに退化してるな。トホホ。凄い音楽聴きながら原稿書こうと思ても書けず。当たり前やわな。晩飯映画劇場は久々に最近の映画で『スラムドッグ$ミリオネア』。かつての植民者イギリス人の描いた現在インドの恋愛映画。面白くなくはない。けどコレがアカデミー賞8部門独占か…。同じ監督の『トレイン・スポッティング』のほうがよっぽどマシやな。コレも退化かな。
11月28日(土)
早朝新幹線で京都へ。うわっ。新横浜の駅から爺さん婆さんの団体で満員。家族連れに主婦の団体も。みんな京都で下車。そうだ!京都行こう!というわけか?こっちゃ仕事みたいなもんやのにかなわんなぁ。京都駅のタクシー乗り場も鬼の反吐(人だらけ)。久しぶりに祇園の自宅に舞い戻って御近所サン挨拶&墓参り。うわっ。建仁寺まで紅葉見に来る観光客がおる。ここは昔はわてらのただの草野球場でっせ。ま。今は違うか。姉と墓を掃除して京都駅へ。途中タクシー運転手の話。「今日はまだマシでっせ。先週なんか四条河原町から金閣寺まで2時間半でっせ。クルマだらけ。人だらけ。仕事になりまへん。京都ナンバー以外のクルマは高速道路のネキの駐車場に停めさして市内に入れんようせなあきまへん。それにお寺はんも責任ありまっせ。拝観料だけで3千円も取るとこがおまんねんで。おまけに1万円札出したら釣り銭出しよりまへんねん。入場料やのうてお心付けやから金額の決まってへんもんに釣り銭もおへんなんていいよりまんねん。東京から来た客もクルマに乗せて案内したワテも開いた口が塞がらん。それで税金払いよらへんのやからモウ織田信長みたいなヤツが出てきてズバッとやってもらわんとどもならん。坊さんだけが丸儲けですがな…」なかなかオモロイ運転手の話聞きもって八条口へ。新幹線で名古屋へ。中日栄文化センターでクラシック音楽講座第2回。シューマンやらブラームスやらマーラーなどのロマン派の交響曲を聴いて話してケッコウ楽しんでまた新幹線で帰鎌。チョイト疲れた一日。京都の観光客は凄い量なんやなぁ。そうや。S社長と京都でのプロジェクト実現に向けて…やるか…。
11月29日(日)
佐吉の散歩から帰ってきて『題名のない音楽会』。凄いな。94歳のピアニスト。マドレーヌ・マルローさん。アンドレ・マルローの奥さんやったんか。サティを自分の言葉で弾くとこうなるちゅう演奏やな。90歳を超えて美人やとつくづく思った女性はコノ人とレニ・リーフェンシュタールだけやな。あ。レジスタンス夫人とゲッペルスの恋人を一緒にしたら怒られるがな。なんか原稿が書けん。昨日新幹線で読み始めた長嶋茂雄『野球は人生そのものだ』(日経出版社)の続きを読み出す。嘘はないけど書いてほしいことを書いてくれてへんなぁ。残念やなぁ。山平重樹『実録神戸芸能社山口組・田岡一雄三代目と戦後芸能界』(双葉社)読み出す。同じ時代が書かれてるけどこっちのほうがオモシロイ。内容の問題でなくナマの言葉が溢れてる。白鵬VS朝青龍見てから夕食はR・ホワイティング夫妻と朋友のS君と一緒に『鮨処もり山』へ。そうかボブさんは近々引っ越すかもしれんのか。寂しなるなぁ。帰宅して内藤VS亀田戦VTR。やっぱり若い方が勝ったな。しかしどっちも尻が落ちてるなぁ。体重を前に出した足に乗せて身体の回転でパンチを出すのが一流。体重を前後に移動させるのは二流…とは世界王者を2人作ったWトレーナーに教わった言葉。今どうしてはるのかなぁ。ボクシング界からは離れたんやろなぁ。
11月30日(月)
『フランケンシュタイン・コンプレックス』(ナンデモカンデモ右下参照)『新潮45』の書評原稿入稿。実際の本の面白さの百分の一も面白さを伝えられないもどかしさを感じる。久々に書評を次々と書いたせいかな?読了から入稿まで時間が空いたせいかな?所詮は他人の褌勝負と割り切れへん性格のせいかな?けど書評という仕事も一生かけて取り組みうる仕事であることは確かやなぁと実感する。晩飯映画劇場はクリント・イーストウッド監督主演『ブラッド・ワーク』。得意の刑事もので面白かったけどアクション・サーヴィスと臓器移植問題のバランスが中途半端。イーストウッド成長過程発展途上の作品かな。
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