5月1日(日)
明後日からのスポーツジャーナリスト養成塾のために英気を養う。早い話がぐっすりと眠ってゆっくり本を読んだということ。それ以外に休日はやることがない。趣味がないから。
5月2日(月)
澁澤龍子さんから著書が届く。『澁澤龍彦との日々 夫と過ごした十八年』(白水社)。パラパラとめくったら、「わたしは、今でいうスポーツライターみたいな仕事に憧れていました」という一文に目がとまる。「当時は、女性がプロ野球のキャンプを取材するなんてことはありませんでしたが、六大学野球やプロ野球をスコア・ブックをつけながら観戦していましたし、とにかくスポーツが大好きで・・・」そういえば、鮨処『もり山』で御一緒したときも、一度お宅におじゃまさせていただいたときも、スポーツ(とバレエやオペラや音楽や文学)の話でおおいに盛りあがった。「岡田さんがいかに素晴らしい監督でも、フランスW杯のときにカズを切ったのはいまも許せません!」また遊びに行かせてください。同行希望者もリストアップできましたので、よろしく。
5月3日(火)
今日から3日連続でスポーツジャーナリスト養成塾の講義。初日は正午から4時まで「スポーツジャーナリズムとは何か?」ということについて語る。受講生は20名。一昨年の80名と60名、昨年の60名と50名に較べて激減ではあるけれど、これくらいの受講生のほうが密な講義になることを実感。プロレスラーのザ・グレート・サスケさんが「観客が少ないほど力が入る」といっていた言葉に納得。今回の受講生はハッピーやなぁ(笑)。
5月4日(水)
スポーツジャーナリスト塾2日目。いつもならこの日にゲストを招いていたのが、今回は講師(元ボクシング世界王者)のスケジュールの都合で明日の3日目になったため、朝の10時から午後4時まで、日本のスポーツジャーナリズムの歴史、インタヴューの仕方、原稿の書き方・・・について話しまくる。さすがに疲れた。夕食をとって宿泊先のホテルに戻って塾生の原稿を添削。そのときテレビをつけると、NHKで「プロ野球改革」に関する特番をやっていた。出演者は巨人の滝鼻オーナー、バファローズの宮内オーナー、ホークスの孫オーナー。ところが、話の中味がサイテー!赤提灯での与太話級の話の連続。企業野球の枠を脱しない、球団所有者(オーナー)たちの悩みに付き合う暇はないで。「地域密着」の意味もわかっとらへん。「何のために野球をやるのか?」「何のために球団経営をするのか?」という問いかけもなし。もう、選手が立ちあがるしかないで、古田君!
5月5日(木)
スポジャー塾最終日。塾生の原稿の添削と特別ゲストを迎えての模擬記者会見。今回のゲストは元WBAスーパーフライ級世界王者・飯田覚士さん。その話の中味が、『タケシの元気が出るテレビ』に出演した経緯から高度なボクシング技術論まで抜群に面白かった。小生も塾生も感服。自慢じゃないけど、この塾の特別ゲストは、平尾誠二(神鋼ラグビーGM)、川淵三郎(サッカー協会キャプテン)、高野孟(ジャーナリスト)、廣道純(車椅子レーサー)、田中宏幸(吉本興業役員)と、毎回素晴らしい人ばかり。これにオレの熱血講義がついて4万円は安いで(笑)。今回も3日間でクッタクタ。明日から少しゆっくり休もう・・・と思って帰宅したら、東海テレビから『スーパーサタデー』の緊急出演依頼。時間が空いてると断れへん性格で・・・。トホホ。
5月6日(金)
塾の講義でさすがに疲れて朝寝。部屋の整理をしただけで仕事にならず名古屋へ。名古屋のホテルで原稿を書こうと思ったら『タモリ倶楽部』のジョン・ケージ特集が最高に面白く、最後まで見てしまってまたしても仕事にならず。続けてNHKーBSが放送した「超ヒモ理論」の長時間ドキュメンタリー番組まで見てしまう。このアメリカのプロダクションが制作したドキュメンタリーは明らかにブライアン・グリーンの『エレガントな宇宙』(草思社)に基づくもの。重力も電磁力も核力の強い力も弱い力もすべてを統一する大統一理論が「超ヒモ理論」から発見されるのも目前に迫っているようで、そうなると宇宙の原理がすべてわかることになるらしい。凄いことやとは思うけれど、世の中は変わらんやろなぁ・・・。いや、そうでもないのんやろか・・・。以前、寿司屋で東大宇宙物理学の最高権威の先生に向かって「ジダンのサッカーボールの扱いは量子力学のようなもので、速度がわかれば場所がわからず、場所がわかれば速度がわからず・・・」と酔っぱらって絡んだことがあったけれど、ま、スポーツライターにとってはその程度の応用には使えますな(笑)。
5月7日(土)
東海テレビ『スーパーサタデー』に生出演。愛知県で一家無理心中を図った建築下請け業者のドキュメンタリーが秀逸だった。ビルや道路建設に必須の鉄筋コンクリートをつくる名人といわれた技師が、大手ゼネコンのコストダウンの圧力に打ち勝てず一家心中を・・・というのだが、万博などで好況といわれる名古屋周辺も「勝ち組」と「負け組」が存在した上での話なのだ。おまけに「勝ち組」はJR西日本のような「危うさ」のうえに「勝っている」だけということを忘れてはならないだろう。
5月7日(土)つづき
帰宅するとNHK-BSで今春京都醍醐寺で上演された歌舞伎が放送されていたので見てしまう。演目は『勧進帳』。海老蔵の富樫は良かった。声もエエし、父親(團十郎)よりもずっとエエなあ。その團十郎の弁慶は・・・台詞も舞もニラミも相変わらずやなあ・・・。イライラしてしまい、吉右衛門の弁慶のビデオを見て口直し。夜はチューリヒ歌劇場の『ばらの騎士』。疲れて眠たくなったので、これはDVDに録画。ちょっと見て聴いた限りでは演奏は良く、演出もおもしろそうで、歌手も美人やけど・・・侯爵夫人や伯爵に見えへんのはちょっとどうも・・・。
5月8日(日)
庭にヘチマ(ひょうたん)の苗を植えて、古いビデオや本の整理で一日が暮れる。セパ対抗戦は盛りあがってるようやけど、これで盛りあがらんかったらほんまにエライことやで。けど、巨人戦しか満員にならんとは、楽天も古い体質のままであるという証拠。おまけに「楽天が巨人に勝ってほしい」という仙台の野球ファンの言い方にもひっかかる。そんなに企業を応援したいの?ま、岩隈で勝ってよかったけど・・・。
5月9日(月)
いろいろ仕事を片づけたあと『クローズアップ現代』生出演のためNHKへ。テーマは四国アイランドリーグ。その存在自体が自ずと旧来の日本のアマ野球・プロ野球に対する批判になるところを、代表者の石毛宏典さんと一緒に柔らかく説明(笑)。何日か前に同じTV局で放送したプロ野球の3人のオーナーによる与太話よりも中味は充実してたと思うんやけど・・・。番組終了後石毛代表から、四国アイランドリーグのテーマソングについて相談を受ける。待ってました!おれは音楽評論もやってまんのやでぇ。ええ音楽はいっぱい知ってまっせぇ。おれが創ってあげることはでけへんけど、ええ音楽はいっぱい紹介でけまっせぇ。楽天のモー娘みたいなケッタイナ曲とは違うオーソドックスでみんなの歌える音楽で、Iリーグを盛りあげまひょ!
5月10日(火)
東北地方の某メディアの記者からの情報。楽天イーグルスの二軍が山形をフランチャイズにするとのことで、山形県が室内練習場や選手寮の建設予算を組んだところが、突然楽天側から「不要」との連絡が来たとか。山形県は日本ハム・ファイターズの鎌ヶ谷のようなベースボールタウンの建設を考えていたが、楽天側は二軍選手も仙台に住んで通うことが可能だから・・・との理由をあげて協力を断ったらしい。山形県側にも口約束だった甘さはあるけれど楽天は何を考えてるのか?!「独裁者」の思いつきに振り回されるのは、もう、やめまひょや。楽天はカッコだけの「東北地方地域密着」なんていってないで、さっさと神戸に本拠地を移したら?
5月11日(水)
三枝成彰さんのオペラ『忠臣蔵』のショートカット・ヴァージョンを考え直したり、四国アイランドリーグのテーマソングを考えるために行進曲のCDを大量に聴いたりで、一日中音楽の勉強。でも、音楽は楽しい。字を書くと誤解されたり誤読されたりで気分が滅入ることも多いけど、音楽はハナから抽象的表現やから好かれるか嫌われるか無視されるかだけで文句のいわれようがないもんなあ。そういえば同じようなことをシラーがベートーヴェンの『荘厳ミサ』に対していうてたことを、どっかで読んだなあ。山根銀二の『音楽美入門』(岩波新書)やったか長谷川千秋の『ベートーヴェン』(同)やったか・・・。アカン。歳取ると若いときに読んだ本の中味を忘れてしまうで。
5月12日(木)
水曜日に中国で行われたACL(アジア・チャンピオンズ・リーグ)の横浜マリノスの試合はそうとう判定に首を傾げるものだったと現地へ行った人から話を聞く。日中戦での韓国の審判は中立ではない?などといいだすと政治問題に発展するのかな?それにしても岡田監督が今年最大の目標にしていた一戦だっただけに・・・。もうちょっとサッカー協会の支援、サポーター(横浜市民神奈川県民)の支援も必要やったやろし・・・。
5月12日(木)つづき
アメリカで来年3月ベースボールW杯の開催が正式決定したらしいけど、日本はどうするんやろ?日本のプロ球界の意思をまとめるのは誰?コミッショナーを変えんと、どないもならんのとちゃう?
5月13日(金)
『ちちんぷいぷい』生出演のため大阪へ。司会の角淳一さんが突如入院で西靖アナウンサーがピンチヒッター。検査で不整脈が出たとか。ご本人はいたって元気らしいけど、おれも検査したら絶対にナンカ出てくるやろなぁ。知らぬがホトケ・・・で、まぁエエやろ。番組のあと西さんと食事。久しぶりに新地の『パパ・ヘミングウェイ』へ。Y興業のT氏も合流して久々の痛飲。これが通院・入院につながるモトなんやろけど・・・。大阪泊。
5月14日(土)
USJにあるMBSのスタジオで『せやねん』に生出演。足かけ7年以上『近畿は美しく』や『なんでなんでサンデー』という番組で一緒に仕事をした松井愛アナウンサーと久しぶりに仕事。トミーズの雅さんの仕切りで大阪ダービー『ガンバ対セレッソ』が取りあげられ、おれの「大阪のキタ対ミナミ色の対決色を打ち出したら盛りあがる」という一言でごっつぅ盛りあがる。番組中にめちゃくちゃ旨いラーメンを一杯平らげて京都へ。『NHK講座オムロン文化フォーラム』で「スポーツ文化論」を1時間半講演。昨日の飲み過ぎが祟ってクタクタ。帰りの新幹線でグッスリ爆睡。東京で下宿して看護大学に通ってる娘が横浜で買い物をしているというので久しぶりに一緒に食事。カンボジアでエイズ患者の村を訪れたり、精神病棟での研修があったり・・・で看護師になるのも大変やなぁ。スポーツライターなんて甘いもんやで。娘のほうが上や。それだけに親父も真剣にがんばらんとあかんなぁ・・・。
5月14日(土)つづき
四国アイランドリーグのテーマミュージックを考えるため四国出身のバンドを捜していたら、4月から音大でジャズベースをやり始めた息子が『ジャパハリネット』という愛媛出身の「青春パンクバンド」のCDを聴かせてくれた。これは、なかなかええでぇ。『哀愁交差点』『物憂げ世情』なんてカッコつけたタイトルの歌をうととるけど、なかなか上手い。歳とると子供から教わることも多いなぁ(笑)。
5月15日(日)
NHK教育テレビの『芸術劇場』で藤原オペラ『椿姫』と二期会『魔笛』のハイライトを見て、日本のオペラ界の最大の欠点に改めて気づく。アンサンブル(特に合唱)が「揃いすぎる」のだ。謡曲、長唄、声明などでは見事に「揃わない豊かさ」を表現できる日本人が西洋音楽となると「揃いすぎる(揃わせすぎる)貧弱さ」しか表現できないのは、スポーツで「チームプレイ」を「団体行動」と同一視する誤りを犯したことと通底する問題かもしれない。いずれにしろスポーツも音楽も学校教育が根っこにある限り、この問題から逃れられないだろう。
5月15日(日)つづき
『椿姫』のエヴァ・メイは最高に良かった。佐野成宏のアルフレードは不調だったけど美しいイタリア語で酔わせてくれたし、堀内康雄のジェルモンも貫禄。広上淳一の指揮も悪くない。けど、「揃いすぎる」のだ。カネゴンやピグモンやメカゴジラまで出てくる実相寺昭雄演出の『魔笛』は・・・もうひとひねりほしかったなぁ。
5月16日(月)
昨日から取り組んでた原稿を1本仕上げたあと、久しぶりに庭の大掃除。次の日曜にスポーツジャーナリスト実戦塾U期生の卒塾パーティをするので草むしり。こういう単純作業が気分転換にならへんのは仕事のことばっかり考えてしまうからやろなぁ。我ながら損な性格やで(トホホ)。
5月17日(火)
ビジネス・コンサルティングの第一人者であり、小生の友人でもあるY氏とS氏を石毛宏典さんに紹介。四国アイランドリーグの「スポーツビジネス戦略」についての会議に出席。小生にとっても大いに勉強になる。Y氏は慶応、早稲田、東大でスポーツビジネスについての講座を担当しているが、その講義には、阪神、横浜、ロッテ、日ハム、セレッソ・・・といった野球サッカー関係者も出席しているとか。時代は少しずつでも動いてますな。その時代の動きに乗れない「老舗」や、後ろ向きに進んでる「新規参入」もあるけど・・・。ついでにアイランドリーグのテーマソングについても話し合う。「モー娘。」では話にならないから吹奏楽のほうがいいのでは・・・?といった意見交換。夜、グッチ裕三さんの店になだれこむ。相変わらず旨いぞお!
5月18日(水)
唐澤まゆこさんの『なつかしい未来〜日本のうた』という新譜が素晴らしかった。バロックオペラの勉強をした人らしく、ベルカントの発声ではないので素直な声が美しく伸びやかに響く。『椰子の実』『早春賦』『朧月夜』などが入っているアルバムだが、武満徹の歌『翼』『巡り逢い』『島へ』『燃える秋』や高木東六の『水色のワルツ』が良かった。しかし日本の歌にはホンマにエエのんがぎょうさんあるなぁ。
5月18日(水)つづき
レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・スタジアム交響楽団の1950年代の録音がCDで復刻された。これも凄い!何といってもレニーの解説が見事。『英雄』『新世界』『悲愴』それにシューマンの2番、ブラームスの4番を若きバーンスタインが解説している。クラシック音楽ってこんなに面白いもんだったのだ!と改めて目ウロコ!いや、耳ウロコ!
5月19日(木)
兵庫県立芸術文化センターが設立した新しいオーケストラの名前を付ける会議のために神戸へ。こういう名前を付けるのは自分の子供の名前を付けるのよりも難しい。ということは、このオーケストラを自分の子供やと思てる人が命名すればええだけのことかも・・・。ほな、スポンサー(兵庫県)は親を決めればええだけで、その作業はもう終わってるはずやけど・・・。
5月19日(木)つづき
新大阪と新神戸の駅でエスカレーターの左側に立ってる人が多かったことに衝撃!関西は右側、関東は左側に立つのが常識で、それは(小生の考えでは)関東は武士の世界で刀を守る性癖があるから左側に立ち、関西は商人の世界で財布をすられないように(懐に手を入れられないように)右側に立つ、ということで(小生は)納得していたが、最近は関東圏文化が関西まで浸透してきたようやなあ。
5月19日(木)つづき
新神戸駅で、どっかで見たことあるガイジンやなぁと思う人が隣の車両から降りてきて、駅を出てタクシーに乗るときに気づいた。ロストロポーヴィッチや!天才チェリストで、バッハの最高の解説者で、ロシア民主化革命のときに戦車のうえに登って演説した、あの・・・。握手してほしかったなぁ。けど、チェロを持っとらへんかったで・・・。見間違いかなぁ。
5月20日(金)
午前中鎌倉市芸術文化振興財団の理事会に出席したあと原稿を一本書いて麻布へ。オペラ『忠臣蔵』の小生が改編したヴァージョンについて作曲者の三枝成彰氏と打合せ。侃々諤々の大議論の末、最高の新ヴァージョンが完成!『三枝オペラ忠臣蔵外伝「討ち入り心中・平左衛門と金右衛門」』!来年には上演される予定で「演出もやれっ!」ていわれたけど、ええのんかいなぁ・・・。クプファーやセラーズ以上の演出をする自信だけはあるけど(笑)舞台演出なんて高校の文化祭で自作の戯曲を上演して以来のことやでぇ(爆)。
5月20日(金)つづき
三枝成彰氏との打合せでオペラの次回作についても話し合った。『源氏』を題材にするなら葵上と六条御息所である・・・と小生。いや、空蝉だ・・・と三枝氏。『平家』ならば祇王祇女仏御前と清盛との確執を・・・と小生。源氏よりは平家が面白く、武力が台頭する時代の話は現代日本社会にも通じるが、祇王祇女は面白くない・・・と三枝氏。話は微妙に噛み合わなくても、新たな創作の話をするのは楽しい。澁澤龍彦の『高岳親王航海記』の話をするのを忘れた。残念!
5月21日(土)
明日の卒塾パーティの準備で庭や玄関を掃除。こういう日常は、つまらないけど必要なんやろな。日常の存在しない非日常なんてありえへんのやから。そこを間違えてる人が多いけど・・・。特にスポーツジャーナリズム界には・・・。
5月22日(日)
わが家の庭で卒塾大パーティ。10数人の実戦塾生に仕事部屋を見せたあとシャンパンで乾杯、おでんやステーキを振る舞い、塾生全員と縁を切る(笑)。スーパーゲストとして遊びに来たロバート・ホワイティング氏の話が抜群に面白く、夜までわいわいがやがや。しっかし、最近の若い連中は飲む量も食う量も少ないなぁ。原稿が未熟なことよりそっちのほうが心配やで。おれらの商売は一にも二にも体力勝負なんやから。原稿を何十回書き直すのも(知力は当然備わってることとして)体力勝負なんやから。
5月23日(月)
昨日のペルー戦の録画を見てウンザリ。語る言葉もない。なんでスポーツ新聞の記者が小笠原を高く評価するのか理解不能。指示されないと動けない選手たちは、指示しないジーコ監督の下ではパス回ししかやれることがないのか?
5月23日(月)つづき
渋谷のCine la Septへ。1966年のイギリスW杯でイタリアに勝ってベスト8に進出した北朝鮮チームのドキュメンタリー『奇蹟のイレブン』の試写を見る。2002年のイギリス映画(BBCとVeryMuchSo productionの共同製作)で、現在60歳を超す北朝鮮の選手たち(勝利に浮かれて破目をはずし、強制収容所に送られたとも噂されるメンバー)が「金日成首領様のおかげで・・・」と泣きながら、しかし試合内容になると活き活きと、当時のことを振り返って語る場面が興味深かった。北朝鮮での取材が規制だらけなのは仕方ないが、当時のイギリスの事情(植民地が次々と独立して大英帝国の没落が明らかになり、自らサッカー発祥の地としてFAカップを世界最高の権威とし、長くFIFAに加盟しなかったグレイト・ブリテンが初めてFIFAに加わってW杯を開催した大会で、失業問題に苦しむ労働者の町ミドルスブラやリヴァプールの市民がアジアの小国=朝鮮戦争の敵国の活躍に熱狂した時代背景)がもう少し詳しく描かれていてもよかった・・・とは思うが、過去のW杯の様子を知るうえで(『ベルンの奇蹟』とともに)サッカーライター、サッカーファン必見の映画。しかし、サッカー映画はなんで邦題に『奇蹟』ばっかりつくのかな? ついでに、お薦めのサッカー映画を三つ。ヴィットリオ・デ・シーカ監督の名作『自転車泥棒』と『ひまわり』、それに痛快ドタバタコメディ『黄金の七人7X7』。どれもどこがサッカー映画やねん?と思った人は是非ともDVDで見なおしてみてください。
5月24日(火)
東北地方の某メディアの関係者が来訪。東北楽天ゴールデンイーグルスの「地域密着」について取材を受ける・・・というよりも情報交換。成績の悪さよりも、「地域密着」のなされてないことの方が問題・・・ということを三木谷オーナーは気づいていないようだ。
5月25日(水)
インディ系のレーベルからブラジル音楽のCDが何枚か送られてくる。いいですねえ・・・ジャズ・ボッサ! マルシア・ロペスもジョー&トゥッコも、アストラッド・ジルベルトやアントニオ・カルロス・ジョビンなんかよりも大人の魅力にあふれてる。けど、重くない。存在の耐えられる軽さ。心地良い軽さ。キューンと冷えたトロピカル・カクテルがほしくなった。おかげで原稿が進む。
5月26日(木)
某総合研究所の関係者とスポーツ・ビジネス・シンクタンクの創立について話し合う。スポーツに関するビジネス・マーケットは誰もが関心を持ち、新しいビジネス・モデルの出現を待っている。そのマーケットを二つの巨大新聞社が独占利用し、門を閉ざしているのを、どうこじ開けるか・・・。打合せのあと、久しぶりに銀座のヤマハへ。CDやDVDを買い込む。ザルツブルク音楽祭の1950年代のライヴ『ばらの騎士』(ジョージ・セル指揮)と『ファルスタッフ』(トスカニーニ/カラヤン指揮)のCDが最高!とくにカラヤンの『ファルスタッフ』はタイトルロールのティト・ゴッビも、フォード役のパネライも抜群の歌・・・というより台詞で、演技が目に浮かぶ。シュワルツコップ、シミオナート、アンナ・モッフォと周囲も豪華すぎるキャスト。セルのシュトラウスもクライバー以上の精緻さで、いやぁ、まいった。昔のオペラは凄かった。一緒に買ったコルトレーンとチャーリー・パーカーとカウント・ベーシーは、ひとまず棚へ。夜、寝る前に『スイング・ガールズ』のDVDを見る。見んかったらよかった。買わなんだらよかった。
5月27日(金)
原稿書きのあと名古屋へ。中日新聞の関係者と万博企画打合せのあと某ジャズ・バーへ。カーメン・マクレエの新宿DUGでのライヴLPを聴かせてもらう。As Time Goes by・・・凄かった。「おれ、このとき、この店にいたんやから」とM氏。クヤシイ。こっちかって六本木のMistyでアニタ・オデイを聴いとるわい。
5月28日(土)
東海テレビ『スーパーサタデー』生出演。愛知出身の若松親方(元・朝乃若)も生出演。メッチャかっこいい眼鏡をかけて登場。「顔が地味なもんですから」との答えに全員大爆笑。高砂部屋って昔から何でこんなにオチャメな力士ばっかり集まってるんやろ?番組のあと名古屋市美術館で女性の肖像画ばかり集めたエルミタージュ美術展を見る。ティツィアーノやゴヤも凄かったけど、ジョセフィーヌやエカテリーナなどの知ってる人物(もちろん本で)の肖像に圧倒された。こういう人たちが、こんなふうに生きてたんやなぁ・・・。そのあと栄文化センターでオペラ講座。テーマはディズニー・アニメとオペラ。『スーパーサタデー』でいつも一緒の東海テレビの美人アナウンサー吉井歌奈子嬢がディレクター氏と聞きに来てくれる。オペラは苦手らしいけど、ミュージカルは大好きとか。そういう人はすぐにオペラにハマルのですよ。そして散財が始まるのですよ(笑)。
5月29日(日)
原稿書かなあかんのに、フェニーチェ劇場の復活柿落とし公演の『椿姫』を見始めたら止められへん。黒のブラジャーとガーター姿のヴィオレッタ(パトリチア・チョーフィ)に大興奮。いや、衣裳や容姿以上に、その丁寧な歌い方に感動。木の葉のように札束を舞い散らせるカーソンの現代化演出も最高!来日公演を見れなかったのが今更ながらにクヤシイと思うほど久々の大興奮。マゼールの指揮もいい。さすがはヴェネチィア。渾身の力を込めたら凄い舞台を創りよった!と思ったところへ、有朋自遠方来。不亦楽乎・・・ならえんやけど、話は深刻。しかしその男の自業自得。プロ之交淡若水、アマチュア之交甘若醴・・・ということを先輩として説き聞かせる。他人に説教できるほどエラないんやけどなぁ・・・。
5月30日(月)
一日中事務的整理。うんざりしていると久しぶりに看護師見習いの娘が訪ねてくる。なんのこっちゃと思たら、レポートの日本語をチェックしろだの、卒論のリサーチでのインタヴューの仕方を教えろだの・・・。おれはカネにならん仕事はせん・・・というと、お土産があるといってマイケル・ジョーダンのDVDを鞄から出す。どうせ自分が見たいくせに・・・。けど、しゃあないなあ、もう・・・。というわけで編集者の皆さん、原稿遅れてスンマセン。
5月30日(月)つづき
二子山親方逝去でいくつかのメディアからコメントを求める電話。現役力士時代に一度インタヴューさせてもらったことがあるが、あまりに厳しい人生観に建て前か本音か疑わしく思ったことを憶えている。それが本音だったことは取り組みを見ればわかったはずなのに・・・若かった。歳は2歳しか違わないのに・・・。という苦い経験があるのでコメントはすべて勘弁させていただいた。その厳しさが貴乃花にひきつがれ、一方お兄ちゃんと奥さんはその厳しさについてゆけず・・・というのはわかりやすすぎる構図かも・・・。
5月31日(火)
終日原稿書き。
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