6月1日(月)
新幹線で大阪へ。付添いはソムリエ・ナースの次女。とはいえヨウ寝る付添いやで。MBS『ちちんぷいぷい』生出演。掛布雅之さんから「ちょいと聴きましたけどお身体大丈夫ですか」といわれる。「アンタのほうこそ…」といいそうになって「いやモウすっかり大丈夫」と答える。中村雅俊さんなどゲストが多かったので2時間でお役御免。助かった。「角の★印弁当」食べもって帰鎌。『興亡の世界史20人類はどこへ行くのか』ようやく読了。今月収録のNHKブックレビューに選ぼ。帰宅して体重測ると94キロ。うわっ。いつの間にか2キロ増えとる。飯食いながらの減量は難しいな。煙草復活したら痩せるかな(汗)。
6月2日(火)
朝佐吉の散歩に付添い。まだ自分で佐吉の首輪につながったリードを持つのは怖いもんな。あっちゃこっちゃへ走り回りよるもんな。午後名古屋から来客。12月の講演会の打合せ。ちょいと気が早い話やで。虫明亜呂無『女の足指と電話機』(清流出版)読み直す。今度NHKブックレビューで推薦するため。何度読み返しても凄い文章やな。なるほど教養と思索力は文体そのものに現れるんやな。恥ずかしい。いや。恥ずかし。
6月3日(水)
朝ラジオ2本。昼まで読書。昼食後にビリー・ワイルダー監督ビング・クロスビー主演の映画『皇帝円舞曲』を見てると介護保険の関係の方が来訪。そうか。俺くらい身体が動けばカネはなかなか下りんのか。相当のマイナスを被ったんは事実なんやけどシャーナイな。高い保険料を月々支払ってるんやからちょっとくらい返してもらわんと…。年金もいらんから今まで35年間払た分を返してくれよ。そないな気持ちになってしまうな。シャーナイし仕事しょ。夜長女の誕生日に託けてシャンパンの栓を抜く。フルートグラスに一杯。倒れて以来初のアルコール。別に取り立てての感慨ナシ。やっぱり俺はビールが好きやしな。ビールはまだ怖いかな。
6月4日(木)
朝読書。ビデオの編集。時間が空いたのでCSの日本映画専門チャンネルを見ると小林政広監督の『海賊版-BOOTLEG FILM』をやってたので見る。柄本明・椎名桔平熱演。台本的に面白いところあるけど微妙。ATGの精神はこんなところに生きながらえているのか。午後から青山へ。NHK-JALのオペラ講座。テーマは『ニーベルングの指環』14時間の楽劇を1時間半で解説。『ロマン派の交響曲』と『ベートーヴェンの交響曲』の本の宣伝をさせもらったら用意した合計15冊が完売。買えない人が出現。来週も持ってこなければ。しかし人混みのなかを杖ついて歩くのは疲れるで。みんな前向かんと歩いとるからぶつかりそうで怖い。まぁコレもリハビリかな、退院してまだ一か月経ってへんのやもんな。夜BSでジョン・ヒューストン監督『許されざる者』見る。オードリー・ヘップバーン唯一の西部劇。ヒューストン監督の大失敗作。とはいえ昔のアメリカ西部の時間の流れがそのまま映像化されてると思えばタルイ中味も納得。撃ち合いの場面では黒澤明に与えた影響も読みとれる。タイトルの『The Unforgiven』が誰を指すか考え直すのも面白い。しかし失敗作には違いない。巨匠の失敗作を見るのは面白い。夜遅くまで起きる癖が付いてきた。これで土曜のサッカーは眠らずに見られそう。
6月5日(金)
朝昨日の夕刊を見て音楽評論家の黒田恭一さんが亡くなったことを知る。パヴァロッティの『愛の妙薬』やオッターの『カルメン』で隣同士の席。座談会でも何度か同席させていただいた。このごろ次々と…やな。合掌。鎌倉高校前の病院へ。雨のなか傘をさして杖をつくのは難しいと思いながらリハビリ・チェック。身体もよく動き片足立ちも軽く10秒以上続いて一応リハビリは卒業。脳出血もこの程度か…と思ってると先生に「視床出血でこれだけ後遺症が軽く済むのは10人に1人いるかいないか」といわれる。運は使い果たしたからモウ絶対に宝くじは当たらへんな(笑)。夜は映画『プラダを着た悪魔』を見ながら晩飯。なかなか面白い映画ではあるけど中途半端。成功と安定の挟間で悩む女性の話。ファッション業界入りした女性が主人公のためそれが男の嫌う女性になるか男の好む女性になるかの悩みになる。けど男の映画監督はそこがわからず男の好みを押しつけて浅薄な映画にしてしまった。男の映画監督が女の凄さや怖さを描くのは所詮無理。男は優しすぎる。とはいえハリウッドは人間を深く掘り下げなくなったな。日本もかな。しかし討論の対象にはうってつけの映画かな。
6月6日(土)
昨日病院の帰りに大船の島森書店で買った本ニコラス・スロムスキー『名曲悪口事典〜ベートーヴェン以降の名曲悪評集』音楽之友社を読む。オモロイ。評論家とは難しいレトリックと磨かれた言葉で新しいモノを排斥する人種であることがよくわかる。しかし最近は難しいレトリックも磨かれた言葉もなくなった。新しいモノもなくなったからエエのか。ほかにジャン・パウルの大作小説『巨人』国書刊行会も購入。B5版782頁8800円!マーラーが交響曲の名前にとった本やから読まねば。1日3頁約260日で読了予定。ほかの本も読みながらやからそんなもんやろな。石澤良昭『興亡の世界史11東南アジア多文明世界の発見』講談社/松木武彦『日本の歴史1列島創世記・旧石器・縄文・弥生・古墳時代』小学館/平川南『同2日本の原像・新視点古代史』ともに小学館も購入。しかし読み出して止まらんようなったんは沼正三『異嗜食的作家論』現代書館。この人の谷崎論は面白い。と読書三昧の一日。真にマゾヒズムを理解してる人間同士やからね。
6月6日(土)つづき
読書三昧で晩飯終えてもサッカーまで時間は有り余るんで映画ウイリアム・ワイラー監督『コレクター』。テレンス・スタンプの名演も含めて超名作。ワイラーにとっては『ローマの休日』の裏返し…と考えると面白い。『ベン・ハー』とも共通点を見出せそうな傑作。「人間を描く」ならばここまでやらねば。
6月6日(土)つづき
日本サッカー4大会連続W杯出場決定!岡田監督おめでとうございます。しかしヒドイ試合やったな。日本選手はまだまだ幼いな。シリアの審判がなんぼもろとったかは知らんけどモウちょっと余裕ある試合をせんとアカンな。けどヨウやったですね。岡崎選手はナイスゴールでした。さあ本番ベスト4目指して立て直しましょ。ホームのカタール戦アウェイのオーストラリア戦はどう闘う?それがミモノやね。あ〜あ。血圧上がってしもた。早よ寝よ。
6月7日(日)
昨夜が遅かったので少し朝寝。というても8時前には起きる。トシやな。佐吉と散歩。昨日雨やったので黒田恭一さんの葬儀は供花だけで失礼させていただいたところが出席した某氏からFAX。黒田さん直筆の御挨拶。『(前略)たくさんの胸をうつ音楽に出会えてぼくは心ときめかせて毎日を過すことができました。ぼくの人生は最高でした。ありがとう』謙虚な人やったなあ。『ぼく』という主語の似合う人やった。日本サッカーのW杯出場が決まったので『週刊朝日』に関連書評を書く。選んだ本は吉田文久・編『中村敏雄著作集8フットボールの文化論』創文企画。この本に書かれたことがジャーナリストの常識となるときは日本サッカーももっと強くなるのでは?夕方も佐吉と散歩。疲れやすいとはいえかなり普通に歩けるようになった。ぼちぼちちょっとばかり走ってみるか。踊ってみよか(笑)。
6月8日(月)
朝佐吉と散歩。まだリードを持つのは不可。女房が引くのに付いて歩くだけ。佐吉も不思議そうに振り返る。俺がリードを持ってへんとわかると右へ左へ蛇行を始める。杖で叱ると申し訳なさそうな顔をする。阿呆な犬やで。可愛いけど。朝仕事したあと昼から名古屋へ。指揮者の佐渡裕さんと『カルメン』のトークショウ。偶然同じ新幹線やったことに気づかず名古屋駅のホームでバッタリ。思わずハグ。病気に関する積もる話もあったけど辻井クンのクライバーン・コンテスト優勝の話でもりあがる。会場へ行くと舞台監督の小栗哲家さんとも再会&ハグ。病気からの復活を喜んでくださる。ほかに昔『月刊朝日』の島田雅彦さんとの連載対談で1年間世話になった懐かしいN記者や名古屋の塾生も駆けつけてくれる。嬉しいコッチャ。退院後初のトークショウは満員の約800人のお客さんを前に楽しく無難にこなせた(と思う)。佐渡さんやスタッフの皆さんのおかげです。ありがとうございました。さすがに帰りの新幹線では熟睡。自宅に長女と次女が来ていてワイワイ。余計に疲れるやないか。屁ぇこいて寝たろ。爆睡。
6月9日(火)
朝佐吉と散歩のあと校正2本。午後から書店とDVD店へ。アル・セッケル『錯視芸術の巨匠たち 世界のだまし絵作家20人の傑作集』創元社購入。アルチンボルド・ダリ・エッシャー・福田繁雄・北岡明佳は知ってたけどデル=プレーテ・オカンポ・オロス・ゴンサルヴェスなんて知らなんだ。けど凄い!凄い絵の連続。見飽きひん。帰宅して映画『東京暗黒街竹の家』。ロバート・ライアン&ロバート・スタックに李香蘭(山口淑子)・早川雪舟が加わって昭和30年の東京を見せるギャング映画。最後の銃撃戦はデパート松屋の屋上らしいけど見所満載B級映画。こういうハチャメチャはっきりいって好きです。けど戦後日本の見える映画としては『SAYONARA』のほうが秀逸。夜飯食いながらNHK-BSでムハマド・アリvsフレイジャーのTHRILLA IN MANILAを見る。どっちが本当に黒人の味方だったかという点について新視点を提供する美事なドキュメンタリーだったがスタジオは最悪。『時空伝説』やと?マイッタナ。
6月10日(水)
朝ラジオ2本やったあと新幹線で大阪へ。MBS『ちちんぷいぷい』生出演。メイク中に未知やすえさんに久しぶりですねといわれ松井愛アナに小耳に挟んだんですけど大丈夫ですかといわれたので脳出血の報告。ギョエーと驚かれる。「禁煙禁酒は当然ですよね」と愛ちゃんにいわれたので「休煙休酒中。40年間愛し続けた美味しくも素晴らしいモンをそないにサッサと捨てられますかいな。また復活します」と答えてやすえさんと愛ちゃんから「エエカゲンにしなさい」「酒も煙草も女と一緒でサッサと新しい相手を見つけまっせ」と叱られギャフン。本番は月亭八方師匠や初顔合わせの桂吉弥さんらと歓談。やっぱり疲れるのか帰りは爆睡。カタール戦は後半とダイジェスト。ショーモナイ試合やったみたいやな。まぁシャーナイな。
6月11日(木)
朝校正を返す作業。午後は青山へ。NHK-JAL文化講座全7回の最終回。ビルの入り口で石川好さんにバッタリ。歳とらはったなぁと思ってるところへ「どうしたの?」と小生の杖を指さされたので大病の話をすると「俺もスゴイのやっちゃって…」と大病の話で返される。元気やで。講座はモーツァルトのオペラについて。途中脳卒中で予定が変わったけど完結。受講生の皆さんも暖かく見守ってくださり本も30冊近く売れて満足。ヤッタ感にあふれて終了。大船の新星堂に寄って頼んでたDVDを何枚か受け取り帰宅。しかしNHK-BSで『荒野の七人』やってたので見てしまう。『七人の侍』の西部劇版。小学5年のときに『朝日ソノラマ』(ソノシート=ビニール製レコードが付いていた雑誌)で台詞と銃撃戦の音とテーマ音楽だけを聴いて興奮した映画。中学1年の時初めて名画座系映画館へ一人で見に行って感激した映画。長男が小学高学年か中学生の時一緒にテレビで見て二人とも興奮した映画。ユル・ブリンナーとスティーヴ・マックィーンよりもジェームズ・コバーンのほうがカッコエエことに気づいた映画。ナポレオン・ソロが映画俳優であることに気づいた映画。日米の違いは面白いなと思える映画。
6月12日(金)
朝佐吉と散歩は退院後避けてた某学校裏山に挑戦。結構坂が多い自宅周辺の中でも急坂。息は切れるけど脚は大丈夫。一気に上り一気に下る。リハビリ順調。今日は仕事の予定なし。虫明亜呂無『女の足指と電話』に出てきて見てない映画を見る。市川崑監督『太平洋ひとりぼっち』。小学生のとき堀江健一の原作は読んで大感激したけど映画は見てなかった。最高の出来。『ぼんち』『東京オリンピック』『野火』と並ぶ市川崑の大傑作。石原裕次郎も海の男=海でしか生きられない男を市川崑の指示通りに好演。森雅之の父親田中絹代の母親浅丘ルリ子の妹も市川崑の狙い通りに好演。家庭とはこういうもんや。最後にアメリカに着いた裕次郎(堀江青年)はとにかく眠る。『老人と海』の老人のように。コレがスポーツの本質や。今のスポーツマンは騒がれすぎ作られすぎかまわれすぎ持て囃されすぎやな。夕方の佐吉と散歩も急坂の上り下り。晩飯の時は岡本喜八監督『江分利満氏の優雅な生活』。小林桂樹熱演。岡本喜八の映画は『侍』でも『斬る』でも『大菩薩峠』でもそれに『沖縄決戦』でも『日本のいちばん長い日』でももちろん『ジャズ大名』でも常に滑稽さが漂っている。『エブリ』はそれの大成功した傑作。山口瞳の原作の美事な映像化やな。
6月13日(土)
朝佐吉と散歩に出たあとしばらくして杖を忘れたことに気づき急に不安になる。それでも30分以上完歩。完走の代わりに完歩という言葉を使たけど「かんぽ」関連は世の中慌ただしい。基本的に俺のスタンスは紅旗征戎非吾事やけどアカンもんはアカン。鳩と漫画のどっちがイイという問題ではなく政治のレベルが物凄く低くなったことは事実。口の曲がり具合を見てると郵政民営化の旗を振って自分は阪神ファンと言った人物を見るのと同じ不快感を催す。何でもエエから変わらなアカンな。それからやな。日本の政治家に普通の知性と教養を求めることができるのは。昼食映画劇場は『ライトスタッフ』。トム・ウルフのニュー・ジャーナリズムの原作を『存在の耐えられない軽さ』のフィリップ・カウフマンが監督。3時間の長丁場を飽きさせない男性映画。ハウフマンは女性的な『存在の…』の反対の映画を作りたかったんやな。面白かった。けど音楽が最悪。チャイコフスキーのV協もどきに失笑。ビル・コンティはロッキーのテーマとかエエ作品作ってるのにコレが何でアカデミー作曲賞やねん。晩飯映画劇場はヘップバーンとピーター・オトゥールの『おしゃれ泥棒How to Steal a Million』監督はウィリアム・ワイラー。鮮やかなお手並みの粋な映画。文句なし。読書と映画の毎日はストレスがのうてエエな。血圧もちょっとは下がった。体重もあと一息やな。
6月14日(日)
朝佐吉と散歩。少し速歩。問題なし。脳卒中で倒れてからぼちぼち2か月が経つ。仕事復帰は順調やけど将来的にヤル仕事・ヤルベキ仕事・ヤレナイ仕事の判断をする時やな。もう一度倒れたら終わりやしな。来週1週間で結論出すことにしょ。昼食映画劇場は『たそがれの維納(ウィーン)』原題『MASKERADE』監督は『未完成交響楽』のヴィリ・フォレスト。虫明亜呂無氏がパウラ・ヴェッセリーについて「静まりかえったウィーンの街の雰囲気のある女優」と書いていた。なるほど。そういうものか。映画は1934年の作品とは思えないテンポでR・シュトラウスやマーラーやフロイトやクリムトの時代のウィーンを描く。なるほど。淀川長治さんが「部屋に籠もって一人こっそり見たい映画」と言うた理由がわかる。夜はテレビ。NHK-hiで『猫のシッポとカエルの手』なる番組を発見。京都の大原の里が綺麗やな。住みたいけど冬が寒いで。『日曜美術館』でビュッフェ。昔好きやったな。同名の同伴喫茶もあったしな
(笑)。そうか。静岡に専門の美術館があるのか。行こ。
6月15日(月)
大阪へ。付添人は長女。昨日誕生パーティで友人と徹夜で飲みまくったらしく朝帰り。No Problemというので一緒に。新幹線の中で俺は読書。長女は惰眠貪眠。俺はMBS『ちちんぷいぷい』生出演。すっかり元気になった長女はアメリカ村と道頓堀へ大阪見物。どこが付添やねん。番組は芝田山親方(大乃国関)初出演もあって楽しく過ごす。キッチンぷいぷいの鰹のタタキに舌鼓。往復の新幹線で読んだ沼正三『異嗜食的作家論』が抜群の面白さ。身体感覚の発言はサドでもマゾでもスポーツでも鋭いなぁ。長女はすっかり大阪の魅力に取り憑かれたようである。アホか。
6月16日(火)
朝佐吉と散歩。久しぶりに部屋の整理。いらんもんが多いなぁ。その時々にはいるもんやと思て大事に残しとったんやろけど2度目の人生を改めて歩みはじめようと思う身には不要なもんが多すぎる。ははは。ちょっとさっぱりした。夜はNHK-BSの「時空ナントカ」ちゅう番組でベルリンの壁崩壊前のライプツィヒデモとクルト・マズアの話。マズアが「日本で喩えれば小澤征爾」というのは理解できんこともなかったけどナンデ長嶋茂雄や森繁久弥にまで喩えられるんやねん。先週のモハメド・アリのときにも違和感が強かったけどコノ番組の欠陥が分かった。編集長が機能してへんのやな。あ。今年もスポーツジャーナリスト養成塾は行いますのでよろしく。これはライフワークやしね。
6月17日(水)
朝ラジオ2本。昼原稿1本。うわ。短い原稿の執筆依頼があったのを忘れてた。明日2本書けるかなと思いながら夕方佐吉と散歩。最も長い距離と長い坂走破じゃなくて歩破。あとは慣れと日にち薬の問題か。夜オーストラリア戦。これでは勝てんな。あと1年で勝てるようになるのんかな。早よ寝て早よ起きて北朝鮮とサウジアラビアの試合見たろ。
6月18日(木)
4時AM頃トイレに起きるがやっぱり眠いので無理せずニュースで。そうか北朝鮮はW杯決めたか。またぞろ政治とスポーツは切り離して…などという論調が出てきた。本気か?北朝鮮のスポーツは100%政治といって間違いない。日本のスポーツだって政治に支配されている部分はちょいとある。経済に支配されている部分は山ほどある。メディアに支配されている部分も大きい。教育に支配されている部分も小さくない。それらをすべて見据えてスポーツの自立とはどういうことなのかを語りたいな。さて北朝鮮はW杯でナニをするのか?朝佐吉と散歩のあと原稿少し長いの1本。午後から少し短いの1本。一日2本は退院後初の快挙(笑)。そういえば明日で脳卒中で倒れてからちょうど2か月。回復状況と将来の見通しをチェックせねば。晩飯映画劇場はウッディ・アレンの『スターダストメモリー』。一般ウケはせえへんやろけど面白かった。別に難しいことを言うてるわけでもないムーヴィ・エッセイやね。『星屑の(ような)記憶』なんやから。
6月19日(金)
朝佐吉と散歩&NHKブックレヴューのための読書。午後からNHKへ。NHKへ行くために恵比寿で降りてタクシーに乗ろうと思てたら快速湘南電車で恵比寿は停まらず。時間的余裕があったので杖ついて渋谷の雑踏を歩くのも妙味。ただし若干疲れた。関東甲信越地方番組審議会。入院中にけっこう見て感激した番組『シャキーン!』『日本の名峰』『山川草木』について話す。『つばさ』についてはもっと冒険を。『時空探偵』について少々批判したらさらに激烈な批判があった。まぁそやろな。入院のことを暴露すると委員の皆さん驚嘆。けどマァこんなもんですわ。人生の先輩方から血圧との折り合いの付け方を学ぶ。なるほど。そんなもんか。帰りはいつもはハイヤーで東京駅まで行って東海道線に乗るが今日は鎌倉まで直行を直訴。喜んで受け入れてくださり感謝。やっぱり疲れるで。帰宅後校正をこなして晩飯映画劇場はモニカ・ヴィッティの魅力満載『唇からナイフ』。60年代の超モダン・ファッショナブル・サスペンス。ダーク・ボガートまでコミカルな演技。最後のアラビアのロレンスには笑た。監督はジョセフ・ロージー。『暗殺者のメロディ』や『夕なぎ』の監督だがライモンディ主演のモーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』も監督した。石像が地獄落とすシーンは圧巻。ジュリア・ミゲネスとドミンゴ主演の傑作オペラ映画『カルメン』(早よDVD化せい!)の監督は『コーザ・ノストラ』のフランチェスコ・ロージー。ややこしい。
6月20日(土)
朝佐吉と散歩。脳溢血から2か月記念。仕事は元に戻った…と書くと何も問題がないようだがそうでもない。脚のバランスは不安定。人混みはまだ怖い。杖は手放せない。腕には点滴の跡がまだ残る。シャーナイな。まだ2か月なんやから。午後から散髪&横浜へ買い物。肩から提げられるコンパクトな縦長の革製でマチの広いのを探す。なかなかイイのが見つからずドイツOFFERMANN製にする。少々高価。シャーナイな。横浜ラポールでの電動車椅子サッカーの試合を見に行きたかったけど疲れて中止。これもシャーナイな。帰宅すると匿名のメール。昨日書いた「二人のロージー監督」についてジョセフのほうはLosey。フランチェスコのほうはRosi。だから「ロージー」と「ロージ」だとか。御指摘ありがとうございます。でもレーザーディスクの『カルメン』はフランチェスコ・ロジー監督と表記。ややこしいな。シャーナイな。晩飯映画劇場は『愛人ラ・マン』。さすがはジャン=ジャック・アノー監督。戦前のヴェトナムの描写が素晴らしい。『薔薇の名前』の中世の描写も見事やったし『7イヤーズ・イン・チベット』も見なければ。
6月21日(日)
家族で一緒に静岡三島のビュッフェ美術館へ行く予定していたが雨。次女のBFが雨男の本領を遺憾なく発揮。仕方ないので佐吉と散歩のあと午前中みんなでダラダラ。CSのナショナルジオグラフィック・チャンネルのチーターを見て騒いだりクラシカ・ジャパンのザルツブルク音楽祭の超過激演出『こうもり』を見たり(これは後日DVDを買います)。脳溢血2か月記念退院1か月記念で『鮨処もり山』へ家族で昼食。酒と煙草抜きの『もり山』の鮨がこんなに旨いものかと感激する。やっぱり倒れる前までゴーマンやたんやなあ。まぁ酒を完全に抜きというのも鮨に失礼なので白ワインをグラスに一杯。美味い!トロも穴子も何もかも!食事のあとヤマダ電気でコンピュータ関係の買い物して帰宅。なぜか『七人の侍』を見出すと止まらなくなって4時間近くを見てしまう。悪くない雨の日曜日。
6月22日(月)
朝佐吉と散歩。昨日娘が買ってくれた万歩計をつける。相当の距離を歩いたつもりでも4千歩弱。意外と少ないもんやな。NHKブックレビュー出演のため読んだ本の感想をメモ。自分で選んだ虫明亜呂無『女の足指と電話機』が素晴らしいのはもちろん他の人が選んだ稲葉真弓『海松(みる)』も内藤朝雄『いじめの構造』もナカナカに素晴らしい本だった。夜晩飯映画劇場CSでトム・クルーズ&キャメロン・ディアスの『バニラ・スカイ』を見始めるがたるいテンポに耐えられず止め。スターでマが持つちゅう考えか?無性に腹が立つ。
6月23日(火)
朝夕佐吉と散歩。日本一周万歩計はいつまで経っても出発点の湯河原を脱出できず。よう歩いてるのに器械がおかしいんとちゃうか。それに散歩のあとの右脚の膝の周りと上腕の違和感が単に筋肉疲労によるものか脳からの命令系統未回復によるものか判断つかん。まぁリハビリが続いてるちゅうこっちゃな。昼間はブックレビューのためのメモ作りと読書。荻上チキ『社会的な身体』講談社現代新書はナカナカおもろい。そうか。文字も小説も誕生時はニューメディアとして受け入れられへんかったんやな。タマゴッチもケータイも同じ。続くか消えるかはちょっと考えたらわかるこっちゃな。ウチのバカ長女はタマゴッチをまだやっとるけど(笑)。晩飯映画劇場は『ジア 裸のスーパーモデル』。長女の持ってたDVDでフェイ・ダナウェイが出てるので見る気になったけどアンジェリーナ・ジョリーの演技に感心。奔放な女性がスーパーモデルになってヤク中のあとAIDSで死ぬ。26歳で亡くなったジア・マリー・キャランジの生涯。かつてベット・ミドラーが『ローズ』で描いたジャニス・ジョプリンと基本的には同じ。70年代と80年代の違い。ひょっとして卑弥呼やジャンヌ・ダルクも同じか?女はいつも凄いな。
6月24日(水)
朝から土砂降りの雨。病院へ行く予定を中止。海に降る雨を見たい気もしたけど傘に杖にバッグは無理やもんな。付添人が可哀想やもんな。雨は過去を思い出させる。そういえば2度の脳溢血で亡くなった作家の永倉万治さんに1度目のあと見舞いに行ったとき「次はお前だぞ」と言われたな。「絶対に徹夜はするな」とも。倒れられる1週間前に一緒に朝まで飲んだ。そのとき血圧は200を超えていたという。そのことをあとで聞いた。俺も救急救命士が救急車の中で測定したときは200オーバーやったらしい。谷崎の『高血壓症の思ひ出』のなかに確か「200を超すと危ない」というような文章があったように記憶している。永倉さんの教えは守ったつもりやったけど…。午後から東京へ。紀尾井町のスタジオでNHK-BSブックレビューVTR収録。もう何年も出させていただいてる番組で(1年1回かな)テレビマンユニオンのI氏と脳溢血談議。司会の中江有里さんも心配してくれる。「御覧のとおり。大丈夫ですがな」といいながらホンマにそうかなと自問。番組収録は臨床心理士の信田きよ子さんと詩人の蜂飼耳さんと一緒に楽しく話す。帰宅するとエンジン01の事務所からFAX。ええっ!?コピーライターの眞木準さんが亡くなった。深い親交はなかったが新潟や名古屋のオープン・カレッジでケッコウおもろいことを話し合った。享年60(満年齢)。急性心筋梗塞らしい。続くなぁ。彼らは逝った。俺は残った。ということか。
6月25日(木)
うわーい。朝の佐吉との散歩で日本一周万歩計湯河原脱出に成功。真鶴に入る。と書いて何やらヴァーチャルの虚しさを感じる。まぁドーデモエエことやけど。新聞コラム1本書いてフウウー。とはいえ短いコラム程度ではそれほど疲れなくなった。けどキイボードを打つと肩が凝る…ような気がする。歩く時も妙に上半身に力が入る。気にしすぎかな。アンネ・ゾフィ・フォン・オッターのバッハ・アリア集聴きながら読書。オッターの歌声は柔らかく綺麗。けどバッハの名アリア抜粋ちゅうのもナカナカええもんやな。晩飯映画劇場は『ブーベの恋人』。我々の世代は音楽を知ってる程度だが団塊世代はクラウディア・カルディナーレ&ジョージ・チャキリスに騒いでいたのを憶えてる。しかしこれほどの政治映画とは思わんかった。終戦直後のイタリア。ウンベルト2世もちらっと出てくる。パルチザンの男を愛し続ける女の話。女は強い。カルディナーレの強い芯のある演技が画面を輝かせ惹き付ける。イイ映画でした。勉強になりました。
6月26日(金)
朝佐吉と散歩のあと荻上チキ『社会的な身体』読了。大新聞の気取りジャーナリズム(ドーデモイイ意見)批判は面白かった。午後から客人。音楽の話いろいろ。人と話してもあまり疲れなくなった。テレビはマイケル・ジャクソン死亡のニュース。キング・オブ・ポップスの死。フォークやロックが商業資本に取り込まれたあとのスーパースターの死。適度のオピニオンと誰もが踊れるダンス。それを発見したマイケルは偉大でも次の世代はタイヘンやで。『コーラスライン』のあとのブロードウェイみたいなもんで楽屋オチもパロディもやりつくしたあとはやることないで。明日早いので早寝。
6月27日(土)
早朝新幹線で名古屋へ。東海テレビ『スーパーサタデー』生出演復活!峰竜太さんにも大谷昭宏さんにも田中弁護士にもスタッフの皆さんにも復帰を喜ばれて感無量。番組終了後『退院おめでとうございます』と書かれたケーキをいただく。うれしかった。ゆっくり食べてる暇がなく申し訳ありませんでした。大急ぎで横浜に戻って金聖響指揮神奈川フィルの定期演奏会。それでも武智由香さんの新作は聞き逃しハイドンの『軍隊』ワーグナーの『トリスタンから前奏曲と愛の死』そしてドビュッシーの『海』。うん。どれもオモシロイ。聖響と神奈フィルは明らかにオモロなってきた。あとは「美しい気取り」と「オモロイ理屈」と「サービス精神」やな。演奏買い終わって楽屋へ。聖響さんのご両親やmimuraさん家族から体調を気遣っていただく。音楽評論家のAクンやYクンやカメラマンのMクンやマネジャーのKクンにも。朝からずっと付き添ってくれたヨメハンと一緒に久しぶりに『213』へ。長女も現れてビール一杯。ウマイ!ワイン一杯!ウマイ!あとはメシ。これで仕事も遊びもほとんど復活やで。帰宅して風呂。うわっ。体重が1.6キロ戻ってる。油断禁物やな。ベッドで雨宮処凛『排除の空気に唾を吐け』講談社現代新書読み始める。明らかに現代日本社会は近過去よりも悪くなってるな。
6月28日(日)
朝起きて衝撃。何気なくカレンダーをめくって7月の予定欄に6月の残りの週の予定を書き込もうとしたらボールペンが普通に持てる。あれっ?字が普通に書ける。ヤッホー!凄い!凄すぎ!これまでは必死にボールペンを握ってゆっくり動かしてミミズの這ったような字にならないよう動かさなければならなかった。それでもミミズののたくりまわった字になっとったんが脳出血以前の状態に戻ってる!字はもともと下手やけどスラスラ書ける。脳とはこんなふうに突然回復するものか!佐吉と散歩に出ても右足の運びが全然違う。少し固まったり引き摺ったりしていた状態がなくなっている。人体の驚異!脳の不思議!こんなもんなんかなあ。『題名のない音楽会』で復活山下トリオの『キアズマ』聴いたからかなあ。それとも昨日飲んだビールとワインがよかったんかなあ。それにしても油断大敵。気ぃつけよ。
6月28日(日)つづき
午前中にコラム1本書く。これまで短い1本書くのにメチャメチャ疲れてたのが今日は平気。前後の脈絡コンテキストも何度も読み直さなくても簡単に頭のなかで整理できる。まいったなあ。奇蹟的やな。脳というのは怖ろしいもんやな。以前脳梗塞を経験した『ちちんぷいぷい』MCの角さんが「ある日突然ぴかっとつながる」と言うてた通りやなあ。脳内出血した血のかさぶたでもとれたんやろか。すべて吸収が終わったんやろか。何はともあれめでたいことです。血圧も俺にしてはまったく正常。人体とは不思議なもんやで。
6月28日(日)つづきのつづき
脳の回路がつながって少々興奮状態のまま午後から映画劇場。黒澤明監督三船敏郎山口淑子で『醜聞スキャンダル』しかし結局主役は小悪人の弁護士志村喬で『生きる』の前哨戦。小悪人が反省する単純すぎる話とはいえ戦後すぐの日本社会ではシャーナイか。それなりにオモシロかった。晩飯映画劇場と二本立ては三島由紀夫原作蔵原惟繕監督浅丘ルリ子主演『愛の渇き』。ちょっとATGのニオイが入って恋人役の石立鉄男がイマイチで不満も大きいけど面白かった。日本版『チャタレー夫人』兼『家族の肖像』。
6月29日(月)
朝湘南海岸の病院へ。主治医の先生から脳の少々神秘的な蘇生について話を伺う。血圧の薬を1個減らすことに決定。完璧完治は近い?酒煙草の完全復活は無理やろけど…病院前の海に続く舗装の悪い道も平気で歩けた。以前は怖かったけど今日は脚がしっかりしてる。昨日の奇蹟は夢やなかった。藤沢へ出て小田急で桐蔭学園へ。『論スポ』編集長のH氏と合流して今夏のスポーツジャーナリスト養成塾の会場下見とT学部長に挨拶。キャンパスでオモロイ学生と遭遇。関西出身で『ちちんぷいぷい』をよく見ていたらしい。俺が教壇に立つことを喜ぶ連中は関西人に多いのか(笑)。大船で島森書店に寄ったら『1Q84』が何故か2セットだけ置いてあったので買ってしまう。いつ読むのかな。ついでに昔浪人時代に原語(英語)で読んだ(だからあんまり内容を憶えていない)ジョージ・オーウェルの『1984』と『動物農場』も。いつ読み直すのかな。佐渡裕&高橋敏郎『バーンスタイン名盤100選』新潮社も。これはジャケ写が綺麗。持ってるのも仰山ある。見てるだけで楽しい。帰宅して映画…と思たけど退院後初の一人歩き(介添人なし)は予想以上に疲れた。おまけにバカ次女が「ヤッホー元気ぃ?」と突然来宅。長女の帰宅合流を待たずして早々に寝る。解散いつかな。こんなアホ総理をかついだんは誰や!?
6月30日(火)
佐吉と散歩の足も軽い。油断大敵。お医者さんにも最低3か月は様子を見ないとといわれたしな。まだ2か月やからな。雨宮処凛『排除の空気に唾を吐け』読了。そうか。小林よしのりの『戦争論』の受け入れられ方がようわかった。ホンマにメーカー各社の史上最高の純利益は何処に消えたんかな。人間消滅企業生残。アホクサ。ナントカせんとあかんな。続けて森巣博『越境者的ニッポン』講談社現代新書読み始める。この人の当たり前の意見大好きで著作はほとんど読んでます。ギャンブルだけは付き合えへんけど。いろいろ部屋の整理やら掃除やらして草臥れる。やっぱりまだ病み上がりかなとはいえ「草臥」の漢字の感じは好きです。
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