ナンヤラカンヤラ
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2月1日(金)
大阪へ。途中某通信社よりソフトバンクとパ・リーグの放映権問題について電話取材が入る。新聞からテレビそして衛星放送やネット…とメディアは変わっても野球を利用することには変わりない。野球がメディアを利用しなあかんのにメディアが親会社で野球を利用し続けるようでは日本の野球は永遠に自立でけんし文化になれへんで。MBS『ちちんぷいぷい』生出演。西アナが他の仕事でおやすみ。河田アナが我々ゲストにちょっと虐められて緊張しながらも無難に代役。ベースができてる番組は強いな。いやいや河田アナの実力ですな。それに較べて近江牛を一人で食うた山中五右衛門アナは赦せへんで(笑)。ゲストの生田智子さんに「岡ちゃんからダンナに代表入り要請の電話はない?」と訊くと笑顔で「ないですねえ」。そらまぁそうやわなぁ。

2月2日(土)
単行本の仕事ばっかりしてたらいつの間にか雑誌原稿の締め切りが貯まってしもた。頭が切り替わらへん。なかなか書けへん。編集者の皆さんスンマセン。謝ってばっかしやな。しかし晩飯映画劇場は欠かせへんのでオーソン・ウェルズのシェークスピア第2弾『オセロ』。凄い!白黒の映像も画面の構図も光と影の使い方も見事!ウェルズのオセロ以下イヤーゴもデズデモナもエミリヤも抜群の演技と台詞まわし。友人のOさんから借りたVHSで観たけどナンデこんな素晴らしい作品のDVDが出てへんねん!先端技術の進化と普及は素晴らしいソフト(名作)を切り捨てることか?それにしても映画作り(シェークスピア作品の再構成)も見事やけどヴェルディのオペラ(ボイートの台本)の再構成も見事なことに改めて舌を巻く。エエもん見せてもろたなぁ。オーソン・ウェルズは『市民ケーン』や『第三の男』よりも『フェイク』が大好きやけど先に見た『フォルスタッフ』もこの『オセロ』も最高やな。早く『マクベス』も観なければ。

2月3日(日)
一面銀世界。黒い鴉も真っ白けのけ。まいったな。電車動いとるんかいな……と思いながら新幹線でヨメハンと一緒に京都へ。10分遅れで到着して駅のエスカレータを降りてると錦織健さんが昇ってきた。「お久しぶりです」「やぁお元気そうで。このあいだテレビで拝見しましたよ」「サッカーでの『君が代』聴きましたよ」と言葉を交わしただけですれ違い。タクシーで四条縄手行きつけの酒肆「G」で食前酒。行きつけ言うても半年以上ぶりやで。食前酒を飲んで同じく半年以上ぶりの行きつけのグリル『金星』で食事。相変わらず美味しいな。「G」に戻って今年の干支にちなんだ創作カクテル『雪舟』と歌会始のお題(火)にちなんだ「Fire to me」をいただいたあと大阪へ。

BOOK
フランソワーズ・サガン『ブラームスはお好き』(新潮文庫)
フランソワーズ・サガン『ブラームスはお好き』(新潮文庫)
DVD
ブラームス『交響曲2番』
ブラームス『交響曲2番』

2月4日(月)
関テレ『痛快!エブリデイ男がしゃべりでどこが悪いねん』生出演。6〜7月に兵庫県立文化芸術劇場で佐渡裕指揮の『メリー・ウィドウ』に出演する桂ざこば師匠に控え室でDVDをプレゼント。もちろんメルビッシュ音楽祭の湖上ステージ公演の収録。そこへ司会の桂南光さんが現れ「師匠。オペラに出やはるんですって。凄いでんなぁ」「おまえそないにプレッシャーかけんといてえな」。今から楽しみ。番組も大笑いのうちに楽しんでいったん帰鎌。往復の新幹線で原武史『昭和天皇』(岩波新書)読了。知られざる天皇の姿。面白かった。この著者の本は『可視化された帝国〜近代日本の行幸啓』(みすず書房)も面白かった。天皇を考える上での必読本。改めて東京へ出て金聖響さんと講談社の編集者でイタメシ食いながら『ベートーヴェンの交響曲』のうちあげ。まだまだ売れてるらしい。嬉しいこっちゃで。同時に新企画の打合せ。ブラームスを中心に『ロマン派の交響曲〜「未完成」から「悲愴」まで』。ちょっと欲張りすぎやけどオモロイと思う。聖響さんも賛成してくれて今年の仕事の成功を祈って乾杯。ベートーヴェンよりも面白いものにしますから皆さん御期待ください。

2月5日(火)
コラム2本仕上げてから駅前へ出て買い物。行きつけの島森書店は時々面白い企画販売をしていてこの日はケッタイナ絵画の本ばっかり集めて平積み。中野美代子『綺想名画大全』(飛鳥新社)イ・ミョンオク『ファム・ファタル妖婦伝』(作品社)を衝動買い。ついでにチョイト評判を聞いた武田邦彦『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』(洋泉社)が目についたのでソレも買うて『213』へ。ヨメハンがまだ京都なんで晩飯に生ビール4杯とウォッカとルッコラのサラダとアンチョビーのピザと牛タンシチュー。美味い。食い過ぎ飲み過ぎって?おれには普通です。

2月6日(水)
ラジオ2本こなしてから単行本の仕事は一旦休止して雑誌の締め切りを処理…がなかなかでけん。苛々するうちに岡田ジャパンW杯アジア予選初戦。主力選手を欠き途中退場で人数の減ったタイから4点。まぁこんなもんやろ。けどFIFAランキングでも身長差でも実力差でも個人能力差でも上回ってる相手との試合のやり方がワカットラン。応援の仕方も報道の仕方もワカラン。イタリアがマルタと試合するときはどんな放送をするんやろ?

2月7日(木)
時津風部屋元親方逮捕の情報が朝から飛び交い大急ぎで音楽のコラム2本仕上げる。夕方NHKのスタッフが『ニュース9』の取材で来宅。主に4点について話す。1)今回の力士死亡事件は稽古の延長ではなくリンチ殺人事件であること。2)スポーツも相撲も暴力行為をゲーム化(神事化)したもの。そこには「殺すな!」というメッセージが常に存在しており今回の事件は反スポーツ的で反相撲道的行為といえること。3)従って大相撲の伝統とは何ら関係がないこと。4)責任能力と自浄能力を欠いた大相撲界の改革には外部の人間の参加が必要なこと。放送されたのは4)だけやったけどシャーナイか。

2月7日(木)つづき
遅い晩飯映画劇場はオーソン・ウェルズのシェークスピアシリーズ第3弾『マクベス』。見事な光と影。監督として俳優としてのウェルズの天才的才能に驚くのみ。『蜘蛛の巣城』はこの映像を真似た?しかしやっぱりヴェルディの音楽(オペラ化)も凄いと改めて納得。序曲だけで『マクベス』のすべてを表してるもんな。音楽だけなら何といってもマリア・カラスのマクベス夫人が最高。映像としてはクロード・ダンナの演出でシャイー指揮ボローニャのオケにヌッチとシャーリー・ヴァーレットが歌うたやつが秀逸。

BOOK
武田邦彦『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』(洋泉社)
武田邦彦『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』(洋泉社)

2月8日(金)
バタバタと締め切り原稿の処理に追われてメールや手紙の返事を失礼している人が10人近くに達していることに気づく。御容赦。そういえば去年の暮れから「年が明けたら飲みましょう」と言うてた相手が5組あってまだ2組しか約束を果たしてないことにも気づく。これまた御容赦。多忙ではのうてスケジュール管理が下手糞なんやな。腰が重いのんやな。自分から動くのが下手なんやな。周囲に流されるのが好きなんやな。主体性がないんやな。違うかな…なんて考えるうちに晩飯。映画は…と思たらNHKがCO2削減問題をやってたので見てしまう。これってホンマかいな。温暖化がそないに逼迫した問題なんかいな…と思たのは昨晩の風呂とベッドで武田邦彦『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』を読んだため。この本もちょいとユダヤ人謀略説的飛躍を感じたけどなかなか面白かった。京都議定書の目標数値達成に向けて藻掻いてるのは日本だけらしい。政治問題化した環境問題はナルホド難しい問題やけどメディアはそのあたりきちんと報道してほしいな。ダイオキシンも環境ホルモンも騒ぐだけ騒いで今ではノープロブレムなんやもんな。

2月9日(土)
武田邦彦『環境問題はなぜウソがまかり通るのか2』も読む。地球温暖化!CO2削減!と叫ぶ人よりも謙虚な書き方に好感。片山杜秀『音盤考現学』(アルテス出版)も読了。現代日本のクラシック(と言われるジャンルの)音楽をたくさん聴いてみたくなった。興膳宏『中国名文選』(岩波新書)もパラパラとめくる。千里馬常有而伯楽不常有。なるほど漢文は風格があるな。本ばかり眺めた一日。というのは昨日原稿を書いたあと首筋と肩が猛烈に固まってしもたから。首が回らんのはカネでは経験があるけど身体では始めて。頭痛と肩凝りだけは未経験やったのに歳かなぁ。こういうのは酒で治さなければと思い「213」へ。若いカップルが隣に座ったので「早よ結婚せい!」と酔った勢いで叫んでたら「な〜んでえ〜」とか言ってた女性が本気になって…。俺はキューピッドか。

BOOK
中村政則『戦後史』(岩波新書)
中村政則『戦後史』(岩波新書)

2月10日(日)
昨晩カップル相手に深酒したせいか肩凝りが治ってへん。まいったな。中村政則『戦後史』(岩波新書)読了。自分の生きてきた時代を歴史として読むと現在の問題がちょっとは見えてくる気がする。某週刊誌記者から電話。「時津風部屋問題で文科省の松浪副大臣が同じ意見を口にしましたが…」「同じ意見て?」「相撲協会に外部の人間を入れろと…」「それは同じ意見と違うで。文科省の天下りはアカンで」とはいえ松浪健四郎さんの『古代宗教とスポーツ文化』(ベースボールマガジン社)はなかなか面白い本です。晩飯映画劇場は肩の凝らない映画を選んで『幸せのレシピ』。川島雄三なら30分で描いて残り1時間でもっと深いテーマに移るやろな。まぁハリウッド商品はこの程度でええのんやろな。

2月11日(月)
世の中休みか。ほな俺も休も。まだ肩凝り治らへんしテレビでも見よか。建国記念日なら建国記念日らしく神武天皇にまつわる番組でもやればええのに。記紀神話は面白いのんやから…なんて思てたらNHK-BSが『世界から見た日本』のシリーズを延々とやってたので見てしまう。何年か前に見ようと思て見られへんかった再放送。日露戦争後第一次大戦から満州事変に至る日本を外国人がどんなふうに見てたかをとりあげて有意義な内容。さすがNHK。しかし「世界から見た…」というタイトルは不適当やで。「外国人が見た」だけやん。「世界」てなんやねん。そういえば「世界に通じるサッカー」なんて言われる場合もある。そのときの「世界」てなんやねん。ようワカラン。晩飯映画劇場は次女が借りてきたDVDで『ドリームガールズ』。まいった。合衆国のアフリカ系アメリカ人たちもこういう駄作を作れるくらい文化的に成熟したということか。歌もストーリーも一本調子のタルイ展開にうんざり。これがアカデミー賞?ハリウッドの力も落ちたな。

DVD
『黒船』
『黒船』

2月12日(火)
一昨日と昨日2日連続して仕事を放棄したのに肩凝りが治らへん。糞。おまけに気合いを入れてエッセイ2本書いたらクタクタ。人間にとって大事なのは精神よりも身体やとつくづく思う。まぁ頑健な身体だけちゅうのも問題ですけどね。そのことをラテン語でOrandum est ut sit mens sana in corpore sano.と書いたのはローマの風刺詩人ユウェナリス。この言葉を「健全な精神は健全な肉体に宿る」と誤訳されてから(本来の意味は「宿るように祈りなさい」)日本の体育会系スポーツはおかしなことになってしもたんやで。肩凝りは2日続けてクダラン映画を見てしもたせいかもしれんと思て晩飯映画劇場はジョン・ウェイン主演『黒船(原題はThe Barbarian and The Geisha)』。初代領事のハリスと唐人お吉の物語。史実が大幅に改竄されてたり二条城と妙心寺が江戸城になってたりオカシナことは山ほどあったけどサスガはジョン・ヒューストン監督。映画の作り方は巧み。戦後の日米関係を思いながら見ると面白かった。同時代につくられた日本を舞台にしたアメリカ映画としてはマーロン・ブランドとナンシー梅木でジョシュア・ローガン監督の『SAYONARA』のほうがはるかに上ですけどね。

DVD
『西鶴一代女』
『西鶴一代女』

2月13日(水)
仕事をすると肩が凝る。この癖はもう治らんのかなぁ。鍼治療でもせんとアカンのかなぁ。糞。体操で治してみせるぞ。頭痛だけは一生無縁でいてやるぞ…と思いながら原稿を書いてる途中に何度も体操イチニッサン。たしか芥川龍之介もそんな随筆を書いてたな。昼飯時にNHKを見たら『スタジオパーク』に茂山宗彦クンが出てた。『ちりとてちん』で人気沸騰らしい。彼が初出演したTVドラマ『京都発ぼくの旅立ち』も話題になってたけどナンデ原作(京都祇園遁走曲)と原作者(オレや!)に触れてくれへんねん!(笑)。肩凝りを治すためには名作に触れるべし…という根拠のない考えから晩飯映画劇場は溝口健二監督『西鶴一代女』。若いときに見て感激したけど歳とってから見ると全然印象が違う。映像美よりも脚本の勝利やな。川島雄三を見過ぎたせいかテンポがちょっとタルイ。いまリメイクするなら『椿三十郎』なかよりコレをテンポよくやりゃええのに。元ネタは西鶴やろけどルーマニアのノーベル賞作家ゲオルギウの『25時』を溝口は読んでたんとちゃうかな…と思て調べたら日本での初訳出版は1950年。映画は52年。コレハ読んでたでぇ…。

DVD
『破戒』
『破戒』
PERSON
レニ・リーフェンシュタール(当時90歳)との座談会
写真はレニ・リーフェンシュタール(当時90歳)との座談会でのもの。91年12月。

2月13日(水)つづき
市川昆さん逝去。昆さんとはレニ・リーフェンシュタールさんが来日したときに雑誌対談の司会をさせていただいた。ベルリン五輪の記録映画『民族の祭典』『美の祭典』を撮ったレニさんはほとんどすべてのシーンで「ヤラセ」を敢行。それはスポーツの素晴らしさを描き出すために絶妙の効果を発揮したが市川さんも『東京オリンピック』で何か?と話を向けると「聖火が富士山の前を走った時ちょうど雨でね。富士山が雲に隠れていたので大会終了後に本来の聖火コースにはなかったけれど富士山が綺麗に見える上九一色村で取り直したよ」ほかには?「マラソンで3位になった円谷選手の表彰台でのアップがなかったのでコレも大会終了後に銅メダルを首にかけてもらって朝霞駐屯地でアップだけ撮り直した。それくらいかな」するとレニさんが「たったそれだけ?それだけであの素晴らしい映画ができたなんて信じられない」もう一つ東京五輪撮影にまつわる素晴らしいエピソードを。市川昆さんのクルーが駒沢競技場でサッカーの撮影をしていたら数人のお婆さんが近づいてきてこう訊いた。「オリンピックは何処でやってるのでしょう?」それはオリンピックの本質を衝く質問ですね…と小生が言うと昆さんは「そうだよね。そのとき僕はオリンピックというものがわかったような気がしたんだ」合掌。

2月14日(木)
朝のTVワイドショウではどこもかしこも市川昆さん逝去のニュース。スタジオにいる人物がどれほど市川映画を見てるのか大いに疑問。そういうオレも『野火』を見とらんし中学生の時に見た『ビルマの竪琴』は忘れてしもた。それでも大好きな市川映画は1)『ぼんち』2)『東京オリンピック』3)『炎上』かな。UFOの出てくる『竹取物語』も嫌いではないけど『細雪』はアカン。下手な関西弁が聞いてられへん。コラム1本書いたあと晩飯映画劇場は市川映画『破戒』。原作はもちろん島崎藤村。凄い!最も扱いにくい差別問題に映画として真っ正面から取り組んでる。白黒の映像が溜息をつくほど美しい。市川雷蔵以下三国連太郎・藤村志保・岸田今日子・雁治郎・杉村春子らの役者も凄い!誰もが長台詞を見事に語ってる。こういう映画がDVDで売られてること自体に日本もまだ捨てたもんやないと思える。TVでは放映でけんやろけど。それがTVの限界かな。BSでやってくれへんかな。市川映画の順位変更。1)『ぼんち』2)『破戒』3)『東京オリンピック』。『野火』も見なければ。現在を知るには過去を知らねば。過去を知ってれば現在は語れるけど現在しか知らんと何も語れへんもんな。賢者学歴史。愚者学経験。

2月15日(金)
朝雑用を済ませて昼からNHKへ。関東甲信越番組審議委員会出席。福地新会長が出席。委員の一人がNHKの『蔵出しジャズ』を「再放送に蔵出しの言葉は不適切」と批判。ドキッ。そのとおりや。「蔵出し」の本当の意味は蔵に入れたもんを再び引っ張り出すんやのうて新品を蔵から出すことや。ということはこのHPの「蔵出し」の言葉の使い方も間違うとる。けど、いままで誰からも抗議もなかったし…お蔵になったものを引っ張り出す…という意味で当分使わせていただきます。そのうち意味も変わりそうな気配がしますから(汗)。

CD
『ショスタコーヴィチ交響曲第5番』
『ショスタコーヴィチ交響曲第5番』

2月15日(金)つづき
NHK番審委のあとオペラシティへ。金聖響指揮東京シティフィルでプロコフィエフの5番とショスタコーヴィチの5番。開演前の楽屋で誰がこんなえげつないプログラム組んだんや?というと聖響さんがニンマリ笑って自分の鼻を指さした。その意気込みがそのまま出た演奏。とりわけショスタコにはマイッタ。悲鳴を上げて絶叫して…。聴くものが酸欠になりそうなほど強烈な…。そんな激しい演奏を聴きながら共著の『ベートーヴェンの交響曲』で聖響さんが語ってた言葉を思い出す。『スターリンの圧政時代に「友人のなかで拷問を受けなかった人はいない」と書き残した人物がつくった楽曲です。反逆者という汚名をかぶせられた友人が、目の前でピストルで撃ち殺されるような時代を生きた作曲家の作品です…』そのとおりやで。20世紀最高の古典作品…なんてノーテンキに言うてる場合やないんや。演奏が終わって楽屋へ。「思いっきり狂うた演奏やったな」「だって楽譜にそう書いてあるんですから。エグイ音楽なんですから」一緒に本を作らせてもろたりしたけどホンマに凄い指揮者やで。

DVD
『妻は告白する』
『妻は告白する』

2月16日(土)
昨日の金聖響さんの演奏に脳味噌がハンマーで打たれて頭がボワーンとしてる。仕事にならん。責任とってくれ!バーンスタインとNYフィルの極めつけ名演のCDを聴いてもオトナシィすぎて。ショスタコはこんなんと違う!と言いとうなる。ボワーンとしたまま雑務処理の一日。晩飯映画劇場は増村保造シリーズ第4弾(くらいかな)『妻は告白する』。夫殺しの妻の物語。女の愛情を絞り出す若尾文子の怖いほどの名演技と増村保造の撮り方に感服。『清作の妻』と双璧のなかなか凄い映画でした。原作小説は初代タレント弁護士の円山雅也。今の丸山弁護士とは大違いです。それも時代のせいかなぁ。

CD
『シューマン交響曲全集』
『シューマン交響曲全集』
『シューマン交響曲3、4番』
『シューマン交響曲3、4番』
『マーラー交響曲第10番(クック版)』
『マーラー交響曲第10番(クック版)』

2月17日(日)
朝佐吉の散歩のあと渋谷へ。オーチャードホールでダニエル・ハーディング指揮東京フィルのゲネプロを聴かせてもらう。チャイコフスキーのV協。ええっ!オケがこんなに暴れるの?と思うほどの演奏。しかし面白い!奇を衒ったのでなくリーズナブル。独奏者だけがスポットライトを浴びるのんやのうてオケと独奏が一体となって音楽が構築される。チャイコの5番も同様。独奏楽器が目立つのでなく様々な楽器が有機的に結びつく。ワクワクする演奏。本番聴きたかったな。満員でチケット手に入らんかったんは残念。それにしてもゲネプロで3度目くらいの練習やいうのにダニエルは初顔合わせみたいに細かく音楽を止めて指示を出す。粘りよるなぁ。理屈とやりたいことを持っとるなぁ。エエ指揮者やなぁ。ゲネプロのあとダニエルの友人の聖響さんに連れられて楽屋へ。去年の『第九』で司会をした小生のことを憶えてくれてて歓談。もらったばかりのウィーンフィルとの新譜マーラーの10番のCDにサインしてもらう。ダニエルが終始ゴキゲンやったのは昨晩のNHK-BSの中継でマンチェスターがアーセナルに4−0で勝ったのを見たかららしい。オーチャードを出て銀座へ。34〜35キロ時点で東京マラソンを見る。

2月17日(日)つづき
銀座4丁目に着いたのが午後2時過ぎ。走ってる走ってる…とはいえサスガに34キロ過ぎの地点で打ち切り寸前ともなると全員歩いてる。なかには沿道の知人と写真を撮り合ってるランナーもいる。「じゃあね。先を急いでるんで」という一言には笑った。3万人が東京を走るというのはええけど申し込みは約15万人。5倍の倍率でタレントやアナウンサーが走れたのは?特別枠があるの?相変わらず女子と障害者が目立たないのも改善の余地ありかな。それにせっかくの銀座で特にイベントが見られなかったのは…残念。やたらと警察官が目立ったのはシャーナイやろけどせっかくのお祭りなんやからモウちょっと明るい笑顔で群衆を処理してほしかった。そないに笛をピイピイ吹かいでもエエやろに…。

2月17日(日)つづき
山野楽器でシャイーのシューマン交響曲全集を買う。マーラー編曲版。家に帰って聴いて感激。なるほど音色も迫力もこれまで聴き慣れたシューマンと全然違う。けどこっちのほうがシューマン的(ロマン派的)なのに満足。つづけてハーディング指揮のマーラー10番も聴く。ウィーンフィルの弦が美事に美しい。素晴らしい演奏。けどハーディングは若い(当たり前やろけどね)。死後の世界がこんなに美しいてええのんやろか…とフト思う。晩飯は岡田ジャパンと北朝鮮の一戦を見ながら。治ったと思てた肩凝りがまたぶり返すような試合。そんな細かいパスをコチョコチョとせんとブワーッと突破せんかい!まぁ負けいでよかった。けどTVのアナウンサーは重慶の観客がなぜ日本にブーイングするのかくらい話すべきでは?

DVD
『からっ風野郎』
『からっ風野郎』

2月17日(日)つづき
すっきりせんサッカーで苛々したので呑み直し映画劇場。増村保造第5弾『からっ風野郎』。主演はナント三島由紀夫。学歴も教養もない馬鹿なちんぴらヤクザの二代目を熱演。大学出のインテリヤクザ船越英二に向かって「オレは頭が悪くて学がないから」なんて台詞を言うのには笑った。若尾文子がまたまた女の魅力を好演。脚本作りが巧み。アイデアに溢れてる。うわ。菊島隆三やで。スピード感もあって最後に三島が殺されてエスカレーターの上で藻掻くシーンは圧巻。『死刑台のエスカレーター』と言いとうなる全編パロディックな娯楽映画として秀逸ですな。ふう〜ん。三島と増村は東大法学部の同期なんか…。

DVD
『痴人の愛』
『痴人の愛』

2月18日(月)
いろいろ仕事をしたあと(我ながらなんちゅう表現やねん・笑)晩飯映画劇場は増村保造第6弾『痴人の愛』。小沢昭一大熱演やけどビミョー。大正末に書かれた大谷崎の小説を戦後高度成長期の昭和に移したこととそこから派生する違い以外はほぼ原作どおり。しかし時代の移行で大正ロマン耽美派マゾ文学が社会派映画になってしもた。最後にナオミは譲治の背中にまたがって泣くんやから。それに安田道代の裸を出すことでエロチシズムのダイナミズムが薄れた。裸を出さんほうがエロチックなんやな。けど見てよかった。京マチ子のも見直したいな。

2月19日(火)
佐吉の散歩のあと資料を見直して汐留へ。共同通信で地方紙の東京支局長さん相手に講演。メディアのエライさんが相手でいつもより話の筋をきちんと考えたことで逆に話がちょっとタルなったかな。いつもどおり大枠だけ考えといてアトは即興のほうが自分でもオモロイように思う。まぁ講演でウケ狙いしてもシャーナイですけどね。次の予定まで時間が空いたので日テレのカラクリ時計を見物したあと喫茶店で武光誠『地図で読む古代戦史』(平凡社新書)読了。おもろかった。わかりやすかった。磐井の反乱から保元平治の乱までで大化の改新の次の記述に目がとまる。『(唐が強大な勢力を東に伸ばしつつあったその時代は)政治改革を指導するものが求められていた。その役目をつとめる者は蘇我氏でもよかった。中大兄皇子以外の王族でもかまわなかった。たまたま政権抗争の流れによって中大兄皇子がそれをうけもった』ナルホド。いまもおんなじかもしれん。ジミンでもミンシュでも…。アメリカの言いなりかどうかの違いはどないなんやろ?夕方三枝成彰さんの紫綬褒章受章祝いで綱町三井倶楽部へ。

2月19日(火)つづき
綱町三井倶楽部へ。旧三井財閥の迎賓館。もちろん初めて。入り口から黒塗りハイヤーとタクシーで大混雑。クロークにコートと鞄を預けてとりあえず入り口で迎える三枝成彰夫妻に挨拶のあとワインを手に一目散に広い庭園へ。大噴水のある西洋庭園から眺める建物も美事。確か設計は鹿鳴館を造った外国人と同じはず。モダン明治の息吹を感じる。日本庭園では紅梅の梅が満開で脹よかな匂いに包まれる。庭を歩く人はほとんどなく一人で贅沢。鶴のように大きな鷺が空から弧を描いてゆっくり日本庭園の池に舞い降りる。ここが港区?パーティに戻る途中源頼光四天王の一人渡辺綱が産湯を使ったという井戸を見る。綱町の由来らしいけど平安時代の武将が産湯を使うたにしては新しすぎる。大きすぎるのは江戸っ子の好み?俺が檀家の六道珍皇寺の小野篁が地獄へ通うた井戸のほうが小さいけど味があって古いな。パーティに戻ると「Tさんどっしゃろ?」と和服姿の妙齢の女性に京都弁で声をかけられる。訊けば小学校の同級生のお姉さん。「三井さんのお庭だけでも見せてもらおと思いまして東京まで…」そうか。三枝さんは祇園のあの店で遊んではるのんか。テノールの佐野成宏さんバリトン師匠の福島徹也さん作家の島田雅彦さん和太鼓の林英哲さんソプラノの佐藤三枝子さんADの浅葉克己さんCGの河口洋一郎さんオペラ研究家の永竹由幸さん高円宮妃久子殿下…らと短いながらも歓談。川淵キャプテンを捜したけどはやく帰られたとか。あまりの人の多さに疲れて早々に退散。でも楽しかった。出口で取材。来訪者は600人とか。会費2万人。ごっついな(笑)。流石はコンポーザー兼プロデューサー。美事なもんや。三枝さん紫綬褒章オメデトウございます。

DVD
『女系家族』
『女系家族』

2月19日(火)つづき
家に帰ったのが8時過ぎ。よっしゃ。呑み直し映画劇場は『女系家族』。山崎豊子原作。『ぼんち』『暖簾』と同系列の大阪船場の三姉妹の物語は『細雪』より生々しゅうてオモロイ。雁治郎と浪速千栄子のあまりに素晴らしい演技に感服。というかコレは大阪人の地ぃでっせ。監督は三隅研次。ちょいとビミョー。そつなく仕上げてるけど市川昆や川島雄三の志と粘りがない。商業映画としてはまぁエエのんやろけど。

2月20日(水)
朝ラジオ2本。市川昆さんと東京五輪映画について喋らしてもらう。コラム1本書いて夜は晩飯サッカー劇場。「中東の笛」ならぬ「中国北朝鮮の笛」のなかで岡田ジャパンはよう勝った。エライ。どんなにラフプレイをしてくる相手でも日本のサッカーはコレでエエ。真面目にフェアに美しくやりましょう。世界のなかでわかる人にはわかる。中国のなかでもわかる人にはわかる。お天道さんは見てる。フェアに勝つためにもっと強くなりましょう。しかし胆立つなぁ…。けど我慢我慢。

2月21日(木)
佐吉の散歩やら校正やら資料の整理やらして夕方羽田から松山へ。空港について飛行機の扉も開いて出口に降客の行列ができたところでアクシデント。空港整備員とおぼしき人物が「いま隣の飛行機に乗りよるお客さんで混雑しとるんよ」スチュワーデスが「何分くらいかかるの?」と訊くと「10分か15分かな」俺はサッサと席に座り直したけど先頭の中年男が「早くしろよ」と抗議。「そないに急ぐことないぞなもし」とは誰もいわなかったけど「アンチ坊ちゃん」以来のノンビリ松山の伝統は残したほうがいい。空港からNHKへ。明日のVTR撮りの打合せ。二段の小さな桶に入ってきた出前の鮨に舌鼓。松山はホンマに魚が美味い。

2月22日(金)
朝NHK松山で明日放送の『四国羅針盤』VTR撮り。話題は四国から九州に拡大したアイランドリーグ。そうか長崎セインツはアメリカ独立リーグのセントポール・セインツと提携したのか。目の付け所がええな。小学5年やった息子とNHKの仕事でセントポールに行ったときは球場満員でエンタメイベントいっぱいで楽しかったもんな。そのガキももう大学3年やで。早いもんやな。VTR撮りはスムーズに行って午後の飛行機で大阪へ。新幹線で名古屋へ。ナゴヤドームのオープニングのパヴァロッティのコンサートで一緒に仕事した中日新聞社の朋友と仕事の打ち合わせしながら鮨に舌鼓。二晩連続旨い鮨。バチが当たるな。満足して名古屋泊。

2月23日(土)
朝東海TV『スーパーサタデー』生出演。ゲストは俺と浅井慎平さんとドアラ(ドラゴンズのコアラのマスコット)。最近キモカワキャラでブレイクしたとか。ワケのワカランもんが流行る。しかしぬいぐるみの中に入ってる人物はナカナカのクレバーと見た。筆談しかしないので「手袋脱いだ方が書きやすいのでは?」の俺のツッコミに見事に大慌ての大リアクション。峰竜太さんが「これが手なんですよ」とフォロウ。中日球団にしては珍しいおもろいアイドル出現に拍手。午後から中日栄文化センターでオペラ講座。『コジ・ファン・トゥッテ』を中心にピーター・セラーズの演出手法を解説。近々来日のパリ国立歌劇場公演で彼演出の『トリスタン』も大期待。三枝さんは「セックスシーンやるな」と言うてたけどサイテーでも全裸はやるやろな。こういうのもオペラの楽しみのひとつ…かな。日韓戦を見るため大急ぎで帰鎌。

DVD
『女の勲章』
『女の勲章』

2月23日(土)つづき
日韓戦後半からTV観戦。山瀬の見事なシュートで同点。最後は攻めきれへんかったけどマァこんなもんか…と思たら岡ちゃんカンカン。前半を見直して理由がわかる。昔は最後の大事なとこで緊張の糸が切れてやられたけど最近は先の北朝鮮もそやったように前半のなんでもないとこでフト糸が緩む。おまけに必死にならなアカンとこで必死になれん。これは…緊張を保てと指導するんやのうて巧みな緩め方を教えなアカンのんかもしれん。しかし中澤はええなぁ。

2月23日(土)つづき
サッカー観戦のあと呑み直し映画劇場は山崎豊子シリーズ第5弾(『不毛地帯』『ぼんち』『暖簾』『女系家族』に続いて)『女の勲章』。京マチ子・若尾文子・叶順子よりも田宮二郎が大活躍。女の深層心理を描くには(女を騙す)男が必要ということか?

2月24日(日)
ヨメハンまかせにしてる確定申告の領収書と支払い調書の整理がやっと終わったとかでチェックして税理士さんに送る。チェックいうても「これでええやん」の一言。商売人の息子として親父への反発もあるのかカネのことはトンと気にせんようなった。なんとかなるやろ。そういえば中学高校時代はアンプやらスピーカーボックスを自作してターンテーブルとピックアップを組み合わせ最高級のオーディオセットで音楽聴いてたけど今はBOZEのちっちゃいプレイヤーで満足。これも電器屋やってた親父への反発?夕方BS-iで女子サッカー日本vs中国戦を見る。抜群のディフェンスライン。堅守と合理的な攻撃で3−0優勝!お見事!あと2点は入ってたのをはずしたのは残念やけど男子よりも心強いな。税金の処理も済んだので『鮨処もり山』へ。関係ないか。

2月24日(日)つづき
明日緊急の出演依頼があって引き受けていた某TV局の某番組スタッフから電話。「企画が三浦事件に変更されましたのでまたの機会に」はいはい。ワイドショウとはそういうもんですよね。他人のスケジュールなんて屁とも思うとらん。事情は理解できるけどこういう作業を繰り返してると傲慢にもなるわな。しかし今頃になってなんでロス事件復活。まさかイージス艦事件潰しとちゃうやろな。

DVD
『その夜は忘れない』
『その夜は忘れない』

2月25日(月)
ほんまやったらTVの仕事で外出中…と思うと原稿が手につかず大島一洋『芸術とスキャンダルの間 戦後美術事件史』(講談社現代新書)を読んでしまう。永仁の壺事件については生前の加藤唐九郎さんから直接お話を伺ったことがありチョット中味が違ってるようにも思えた。ホンマかどうか知らんけど戦前から戦中は金が入り用な軍関係からの強制的命令で骨董をつくらされたこともあったとか。しかし唐九郎さんというのは怪物やった。生涯インタヴューした人のなかで一番の傑物大物やったな。晩飯映画劇場は若尾文子シリーズ第何弾かわかんけど吉村公三郎監督『その夜は忘れない』。テーマは広島原爆。見事な脚本。是非とも原爆を知らない現代人のためにリメイクしてほしい。若尾文子も田宮二郎も素晴らしい。最後がちょっと映画作りとして肩に力が入りすぎ(とくに團伊久磨の音楽)やけどリメイクすれば素晴らしい作品になるはず。しかし昭和37年にこんな素晴らしい映画が永田雅一の手によって娯楽作品としてつくられてたんや。それに較べて今は…。

DVD
『赤い天使』
『赤い天使』
BOOK
『エディット・ピアフ コンサート&ドキュメンタリー』
『エディット・ピアフ コンサート&ドキュメンタリー』
『わが愛の賛歌エディット・ピアフ自伝』(晶文社)
『わが愛の賛歌エディット・ピアフ自伝』(晶文社)

2月26日(火)
一犬吠形万犬吠声。新聞もラジオもテレビもない時代からそんなふうにいわれたんやからシャーナイことかもしれんけどロス疑惑の騒ぎはなんとかならんもんか。アメリカの弁護士が「アメリカで起きた事件なら被害者や容疑者が日本人でもアメリカで裁くのが当然」というのなら沖縄での事件も日本できちんと裁きましょうね。コラム2本仕上げて晩飯映画劇場は若尾文子シリーズ最高傑作『赤い天使』。血まみれの野戦病院。脚を鋸で切るリアルな音。晩飯食べながら見る映画やないけど(ひたすら映画として見る私はかなり平気ですけどね)最高級の戦争映画でした。女性と戦争を描いた世界映画史上最高の作品かも。若尾文子の演技としては『清作の妻』と並ぶ最高の出来栄え。しかしこの女優さんはどんな役柄でも「女」として平然とやってのけるなぁ。本当に50年代と60年代の日本映画には見事な作品が山ほどあった。ただただ感服。

BOOK
永竹由幸『マリーア・カラス夜の虚しさを知る神よ』(東京書籍)
永竹由幸『マリーア・カラス夜の虚しさを知る神よ』(東京書籍)
杉山正明『興亡の世界史09モンゴル帝国と長いその後』(講談社)
杉山正明『興亡の世界史09モンゴル帝国と長いその後』(講談社)

2月27日(水)
早朝のラジオ2本のあと永竹由幸さんから送られてきた新刊『マリーア・カラス世の虚しさを知る神よ』(東京書籍)を読み出したら止まらへん。独自の関係者への取材とオペラに関する知識の宝庫。オペラファンにはたまらん一冊やな。活字に酔って気分転換のため島森書店へ。講談社の『興亡の世界史09モンゴル帝国と長いその後』が(杉山正明・著)出てたので購入。『213』へ寄って「序章・なんのために歴史はあるのか」を読み始めたら止まらへん。ホンマにこのシリーズはオモロイで。帰宅して呑み直し映画劇場は『エディット・ピアフ愛の賛歌』。アカン。凝りすぎ。題材が素晴らしく予算もたっぷりやのに脚本がヤヤコシすぎる。カメラワークも技巧に走りすぎ。監督に哲学がない。せっかくの美しい映像も生きてへん。主演女優賞はわかるけどもっと堂々と描いてほしかった。現代ハリウッド芸術志向失敗作。自伝を読んでドキュメンタリーを見るほうがエエで。

BOOK
小島克典『プロ野球2.0』(扶桑社新書)
小島克典『プロ野球2.0』(扶桑社新書)
DVD
『切腹』
『切腹』

2月28日(木)
小島克典クンから送られてきた新刊『プロ野球2.0』(扶桑社新書)を読む。小島クンは俺がやってたスポーツジャーナリスト塾の元塾生というより新庄選手の通訳で幻のライブドア球団GM。本の作り方はイージー(立命館大学での講義録)やけど中味はレッドソックスのCEOや団野村さんとの対談などオモロカッタ。昨日買うた『興亡の世界史09』も読み出して原稿書かなあかんのに本読んでばっかり。あっという間に晩飯映画劇場。小林正樹監督最高の時代劇『切腹』。いやぁ橋本忍の脚本が素晴らしい!仲代達也も三國連太郎も丹波哲郎も適役。日本ならではの様式美を追求した白黒の映像や殺陣も見事。黒澤の時代劇より凄い(但し『七人の侍』だけは別格)。テーマも極めて現代的。小泉や竹中や石破やカルロス・ゴーンに見せたいな。

CD
田村麻子『ソプラノ・オペラアリア集』
田村麻子『ソプラノ・オペラアリア集』

2月29日(金)
コラム1本書いてから近所の喫茶店で編集者と新連載コラムの打合せ。タイトルは定家の『紅旗征戎非吾事』のようなものにしたいと言うと受け入れられる。よっしゃ。1回目は道路特定財源の話でも書くか。利用者(ドライバー)からもらった税金は利用者に返すって?そやから道路を造るって?そんなアホな。酒税で徳利や御猪口を作るんか?煙草税で煙管や灰皿を作るんか?阿呆言うたらアカンで…てな話は文体も関西弁になりそうやな…。そのあと鎌倉芸術館へ。ソプラノの田村麻子さんのコンサート。なかなか見事なコロラチューラ。椿姫のアリアのハイFも出してくれて満足。最近ブラームスやシューマンばっかり聴いてるので久しぶりのヴェルディ・プッチーニは楽しかった。終わって『鮨処もり山』へ。あとからサイン会を終えた田村麻子さんがマネージャー氏夫妻と登場。歓談。そうか。京都の人なんや。ほんで舞台で京都弁がひょいと飛び出したんやな。

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