ナンヤラカンヤラ
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『ニューイヤー・コンサート2013』
『ニューイヤー・コンサート2013』
来年は10年ぶりにこの人ウェルザー=メストだそうです

1月1日元旦
皆さん明けましておめでとうございます。今年も年賀状は失礼して本HPでの御挨拶ですが‥大晦日の本ブログを書けないほど子供たちと飲みまくって明けた2022年です。2021年は最悪の年でした。イヤその前の2020年も最悪でしたね。今年こそ悪い年にはならないことを願って前を向いていきましょう!

1月1日元旦つづき
元旦の「旦」の字は地平線から太陽(日)が昇るのを表してるのですね。わかりやすすぎる象形文字ですね。大晦日の夜にやってきた長女と次女と孫とヨメハンと鴨鍋と年越し鴨鍋蕎麦をつついて新年を迎える。紅白歌合戦を完全に無視して迎える新年というのはひょっとして生まれて初めての経験かな?元旦になって長男も現れて全員で黒兵衛と散歩。午後イチに『鮨処もり山』さんが美味しいお節を持ってきてくれて全員で新年の乾杯と料理に舌鼓。お節のあとは新春映画劇場。娘が持参した『ジュディ虹の彼方に』。ジュディ・ガーランドの生涯と晩年の悲劇を描いたアカデミー主演女優賞作品。主演のレネー・セルヴィガーはナカナカの熱演でしたね。ジュディ・ガーランドの映画が観たくなったので『ザッツ・エンターテインメント』をツマミ鑑賞。ミュージカルが見たくなったという娘の希望でヘプバーンとレックス・ハリスンの『マイ・フェア・レディ』も。ジョージ・キューカー監督素晴らしい作品ですね。ラストシーンは原作者のバーナード・ショウの意図に反してますけどね。夕方からは酒&晩飯に雪崩れ込んでウィーン・フィルの『ニューイヤー・コンサート』。今年の指揮はバレンボイム。ラデッキ−行進曲のテンポの遅さなどもうすっかり巨匠の域ですね。途中ワケのワカランカラオケ・ビデオ映像のような恋人同士のウィーン案内があったけどシラケましたね。バレエも何やら多様性を意識しすぎてかイマイチでした。人気を得すぎるとイベントは堕落するのかな?

BOOK
森田真生『数学する身体』新潮文庫
森田真生『数学する身体』新潮文庫
大好きな素晴らしいエッセイ。これも何度も読み返してます

1月2日(日)
正月三が日2日目。若い頃はあっと言う間に過ぎた正月が歳取るとゆっくり進む。悪いコトではないですね。ベッドのなかでの正月初読書は何度も読んだ大好きな本2冊の側線を引いた部分を飛ばし読み。アラン・ライトマン『アインシュタインの夢』(早川書房)《この世界では時間は経過するがほとんど何も起こらない。平穏無事の一日。平穏無事の一カ月。平穏無事の一年が続いてゆく。もし時間と様々な出来事の経過が同じモノであるとすれば時間がほとんど動いていないことになる》時間が動かない世界。究極のエコ?森田真生『数学する身体』(新潮社)《数学的には小さい数字が左にあって大きい数字が右にないといけない理由はないのに脳の中では足すことと右に移動することが分かちがたく結び付けられてしまっている(略)脳は数量の知覚をサイズや位置や時間などの数とは直接関係のない他の「具体的な」感覚と結び付けてしまう(略)脳は数学をする上では随分厄介な器官なのだ。しかしその厄介さこそが数学的風景の基盤である》やっぱり人間(脳)は抽象よりも具象に反応しますからねえ。ワン。ベッドから出て家族全員6人で黒兵衛と散歩&お隣さんに新年の御挨拶&初雑煮。白味噌は京風&大きな人参と頭芋は四国風のハイブリッド。少し休んでからみんなで大船観音へ初詣。ふうふう息子と孫の手を借りて息を吐きながら山登り&階段上りして観音さんに平穏な一年の祈る。アインシュタイン的に言えば時間が止まることを祈ったことになるのかな?そのあとルミネのイタリア料理店でワイワイガヤガヤ伊太飯パーティ。悪くない正月かな。

BOOK
ホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集』岩波文庫
ホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集』岩波文庫
ガルシア=マルケス、リョサ、プイグ、ボルヘスなどラテンアメリカ文学にハマったのは、もう20年前のことか…

1月3日(月)
正月三が日3日目。誰かがどこかに書いていた言葉。《どんな創造的な仕事も誰でも40歳くらいまでにやってしまうものだ。あとはその註釈を書く仕事が残っているだけ》確かにそうかも。《世の中に新奇なるものなし。新奇なるものは忘れ去られたものなり》これはユダヤ王国のソロモン王の言葉だと確かホルヘ・ルイス・ボルヘスの『伝奇集』の冒頭に書かれていましたね。そう言えば最近のテレビの歌番組で歌われている歌は何やら昔聴いたようなメロディが多いですね。そんな感想を抱く小生はベートーヴェンやモーツァルトを半世紀以上聴き続けてるわけですね。《時間は螺旋状に進むから人生も歴史も同じことを繰り返す》と誰かが言ったかな?ワン。ベッドを出て長女と孫とヨメハンと黒兵衛と散歩。長男と次女は仕事があるのか昨晩のうちにいなくなる。《時間も人生も寄せては返す波のようなもの》かな。《大海の磯もとどろに寄する浪 割れて砕けて裂けて散るかも》実朝のコレも源氏の人生を詠んだものでしょうね。静かな正月3日目。孫の算数ドリルに付き合ってやる。サイコロを何度かいろんな方向に転がして上に出る目を答える。まぁ空間認識の問題なんでしょうが結構難しい。Xと連立方程式を使わずに解く算数も難しい。けど面白い。まぁ面白いと感じられなければやめればいいよ…と心の底で思ってしまう爺は教育指導者としては失格でしょうなぁ。酒呑みながら長女とヒトラーのドキュメンタリー(映像の世紀)を見たり晩飯に孫が大好きなヨメハン手製の炒飯に舌鼓を打ったり…。箱根駅伝は仕事の都合上チラチラとチェックしたけど関東の大学のみに全国の優秀な男子高校生ランナーを集める差別的(非スポーツ的)宣伝イベントをこれほど大騒ぎしてもいいのでしょうかねぇ?

BOOK
『筒井康隆全集〈21〉大いなる助走.みだれ撃ち涜書ノート』
『筒井康隆全集〈21〉大いなる助走.みだれ撃ち涜書ノート』
この全集、小生は全巻初版本が出たときに買って全巻読破したのだ!全巻読破の全集は『ドリトル先生』と『谷崎全集』かな(但し『源氏物語』を除く)

1月4日(火)
何年か前に一度執筆させていただいたからかホームレスの人たちの支援をしている雑誌『BIG ISSUE』の新年号が毎年送られてくる。販売している街角に出る機会がほとんどないので読む機会が少ないのは残念だが面白い記事が並んでいる。「もう自分電力」と題した特集でガスも電気もつながない生活をしている人のレポートも素晴らしかったが原子力資料情報室共同代表の伴英幸さんの連載「原発ウォッチ177回始まるのか?汚染水の海洋放出/東電の放射線影響評価・潮流や海底蓄積は考慮せず」と題したコラムは興味深かった。《海洋環境の放射能汚染をこれ以上広げないためにも汚染水はコンクリート固化する方針へと変更すべき》という意見があるのを知らなかった。《コンクリート固化》がどのように有効なのか…どのくらいの場所を占めるのか…東電の言う海洋放出は無害ではないのか?…さらに詳しく知りたいですね。ワン。ベッドから出て孫と黒兵衛と散歩のあと今日からストレッチとスクワット再開。足が相当衰えてますからね。仕事始めはホームページの原稿作りや依頼されていた新しい音楽企画の企画書作り。まだ本格的仕事ではなく助走路疾走中かな。そう言えば筒井先生の作品に『大いなる助走』という大ケッサク長編小説があったなあ。仕事の合間に孫の算数ドリルを手伝ったら数独が含まれていた。ウム。集中力養成にはいいのかな。勉強とは初戦遊びですからね。夕方から酒。まだ正月気分かな。

BOOK
黒鉄ヒロシ『千思万考天の巻』幻冬舎
黒鉄ヒロシ『千思万考天の巻』幻冬舎

1月5日(水)
昨晩寝る前にビデオ録画しておいたNHKドラマ『倫敦の山本五十六』を見る。新資料と言うほどの驚きはなかったが海軍組織人としての五十六が上層部の反対からロンドン軍縮会議で自分の主張(米英との妥協と和平路線)を貫けず会議は決裂(建艦競争軍備拡張に入る)。それを国民が大歓声で迎えるという構図のなかでさらに新聞の果たした役割なども描いてほしかった。香取慎吾の静かな熱演は好感が持てたけどTVドラマの限界かな。そう言えば五十六は黒鉄ヒロシさんが面白いことを書いていたなと思い出し『千思万考 天の巻』(幻冬舎)をベッドに持ち込んで再読。確かに面白いけど夏目漱石の記述のほうが面白かった。そのなかで1890年にフランスで出版され1901年にロンドンでも出版された『蚤の自叙伝』という本が紹介されていた。《私は蚤である。そして此世に生を受けたのである。然しどうしてどこで生まれたのか知らない…》これは《艶笑譚というより女性の下着に入り込んだ蚤の独白という体裁のポルノグラフィ》らしく漱石は《着想は借りたであろうが類似するのは主人公が動物であることだけで比較するのも阿呆らしい》作品らしい。けどあらゆるアイデアは盗むところから生まれるもののようですね。ワン。ベッドから出て孫と一緒に黒兵衛と散歩のあと昨年末に溜まった段ボールや雑誌や紙類の処理&イロイロ仕事&来週火曜の『オプエド』今年1回目放送の準備などなど…。講演会の仕事が入り始めたけどオミクロン株蔓延で…なんてことにならないことを祈りたいですねぇ…。

1月6日(木)
昨日の東京新聞の斎藤美奈子さんのコラムに注目《新年早々めでたくない案件が目白押し【脱脱原発】EUは原発を地球温暖化に資する「グリーンな投資先」に認定する方針》とのこと。核のゴミより温暖化をケアするのか?しかし使い古した原発の処置はどうする?《【新聞の身売り】12月27日大阪府と読売新聞大阪本社が「包括連携協定」を結んだと発表。読売は元々権力に媚びる傾向が強かったもののここまで露骨だとさすがにヤバい。東京五輪の次は大阪万博の利権に乗るつもりなのか。もう「身売り新聞」に改称しなさい》日本のジャーナリズムはどうなるのでしょうねえ?すべてはスポーツとジャーナリズムの癒着を「スポーツだから」「スポーツくらいならば…」と許したところがダムの一穴となったように小生には思えます。ベッドから出てRKB毎日放送今年初の『インサイト・カルチャー』ZOOM出演。読売新聞社主催の箱根駅伝の「非スポーツ性(不平等性=関東陸上競技連盟加入大学のみ出場)」をまるで「全国区大会」のように騒ぐマスメデイアを批判。選手は全国から集まった大学生だから(全国規模)…なんて馬鹿言ってたテレビ人もいたようですが関東の大学に若者ランナーが集中するのをメディアは協力するわけ?しかも女子を排除した差別性ある大会を!ラジオのあと黒兵衛と散歩。寒い。空は黒い曇天。コリャ雪だな…と思ったら激しく降り出す。昼前に来週12日リモートで開催予定の日本福祉大学と笹川財団のコラボ・パラリンピック・シンポジウムの打ち合わせをZOOMで行ったあと孫を迎えに来た次女たちと昼食に行く予定を変更して早く帰宅させる。でないと雪が積もりますからね。孫がいなくなって静かにいなった我が家で正月の終わりを実感。さぁ仕事せねば。外を見れば一面銀世界。綺麗。白い雪は見るには良いですね。正月の終わりは日本酒で雪見酒と洒落込むか。

DVD
『黒部の太陽』
『黒部の太陽』
トンネルが貫通してダムが完成したあとが最後が少々冗長かな。でもイイ映画だと思います

1月7日(金)
読む本が枯渇したときに手を出すのは漱石の『草枕』。ボロボロになった新潮文庫のどこでもいいからページを開いて読み出すと必ず感激する。《余は明らかに何事をも考えておらぬ。又は慥かに何物をも見ておらぬ。只恍惚と動いている。余が心は只春と共に動いていると云いたい。普通の同化には刺激がある。刺激があればこそ愉快であろう。余の同化には何と同化したかが不分明であるから毫(ごう)も刺激がない。刺激がないから窈然(せつぜん)として名状(めいじょう)しがたい楽(たのしみ)がある。活力はないがしかしそこには復って幸福がある。偉大なる活力の発現にはこの活力も何時か尽き果てるだろうとの懸念が籠る。常よりは淡き我が心の今の状態には我が烈しき力の錆消磨しはせぬかとの憂(うれえ)を離れたるのみならず常の心の可もなく不可もなき凡境をも脱却している。淡きとは単に捕え難しという意味で弱気に過ぎる虞(おそれ)を含んではおらぬ》すごいなあ…。スポーツからは絶対に得られない心境ですね。ワン。黒兵衛と散歩。昨日積もった雪道を細心の注意で転ばぬように歩く。ワン。孫もいなくなった静かな正月七草。『草枕』を読み出すと止まらなくなる。ピアニストのグレン・グールドも死の直前までこの本の英語版を読んでいたのですよね。晩飯は七草粥。芹薺御形繁縷仏乃座菘蘿蔔。自分でも何を書いているのやらわかりませんがATOKでは七草の漢字変換ができました。晩飯と風呂のあとは『黒部の太陽』前半を観る。辰巳柳太郎と石原裕次郎の親子の葛藤はナカナカですね。この時代(高度成長開始の時代)まだまだ戦争の影は大きかったですね。

1月8日(土)
昨日の夜『チコちゃん』見て風呂入ったあとビール飲みながら映画『ザ・プロフェッショナルズ』という西部劇を観る。リー・マーヴィン&バート・ランカスター&クラウディア・カルディナーレという豪華配役だったのでNHK-BS放送を録画したけど台本が御都合主義でイマイチでした。パンチョ・ヴィラ革命軍とアメリカ人の関係がチョイとわかったのが収穫かな。昨日送られてきた有隣堂のPR紙『有隣』に『鎌倉武士と横浜』(有隣堂)の著者である盛本昌広という方が『鎌倉殿の13人と横浜』という興味深いエッセイを書かれていた。鎌倉幕府も処刑するときは横浜六浦まで出て処刑したそうです。武士でも血の穢れを忌避したそうです。最近『頼朝と義時 武家政権の誕生』(呉座勇一・著/講談社現代新書)を読んでコノ時代の人間模様の面白さを感じていたけど久し振りに明日からの大河ドラマを見てみるかな。脚本が三谷幸喜だし…もし毎回見たら竹中直人の『秀吉』以来かな?その前は尾上菊之助&緒形拳の『源義経』かな?(フルッ(>_<)ワン。黒兵衛と散歩のあとデスクワーク。オミクロン株新型コロナ…ええ加減にしてくれと本気で悲鳴ですね。フリーランスはマトモに被害を受けてますから…。

1月9日(日)
朝ベッドのなかで漱石『草枕』どこでもいいから開いて読む。《汽車ほど二十世紀の文明を代表するものはあるまい。何百と云う人間を同じ箱へ詰めて轟と通る。情け容赦はない。詰め込まれた人間は皆同程度の速力で同一の停車場へとまってそうして同様に蒸?の恩沢に浴さねばならぬ。人は汽車に乗ると云う。余は積み込まれると云う。人は汽車で行くと云う。余は運搬されると云う。汽車ほど個性を軽蔑したものはない。文明はあらゆる限りの手段を尽くして個性を発達せしめたる後あらゆる限りの方法によってこの個性を踏み付け様とする》確かに。そう言えば井沢元彦さんは『コミック版逆説の日本史明治維新編』での最後のシーンで明治5年という早い時期に明治政府が新橋横浜間に鉄道を開通させたことを取りあげ「国民を(江戸の過去から)目覚めさせ」「幕末は終わった」と書いてましたね。「技術」が新しい時代を拓くのですね…良くも悪くも。5Gとメタヴァースの新しい時代はどうなる?ワン。黒兵衛と散歩のあと終日デスクワーク。夜は晩飯を『ダーウィンが来た』でトラを見たあと大河ドラマ『鎌倉殿の13人』初回を見る。15分で創れるドラマを45分かけてやるのがTVドラマなのかな?現代語の会話のなかに筆書き草書の手紙が出てくる不自然さを感じる。現代語は別にイイけど北条政子(小池栄子)はキャラが違い過ぎるのでは?最後にドヴォルザークの『新世界交響曲』が流れたのには意図がベタすぎて笑ってしまった。来週からはやっぱり『日曜美術館』を見るかな。

Blu-ray
『アルマゲドン』
『アルマゲドン』
スペクタクル父子人情話ハリウッド映画。小生は見なくても良かったけど見ないとわからないこと、見て気付くこともある。映画とは無関係に
BOOK
夏目漱石『草枕』新潮文庫
夏目漱石『草枕』新潮文庫
芸術論&文明論&戦争論&女性論&恋愛論…。凄い名作ですね

1月10日(月)
『草枕』アタマから読み直し始めるとやっぱりメチャクチャ面白い。冒頭の《智に働けば角が立つ。情に棹させばば流される…》の書き出しの名文芸術論も凄いけど婆さんとの軽妙な会話や茶菓子の上に糞をする鶏など見事ですね。反近代反戦芸術論恋愛論小説でもある漱石の最高傑作だと思います。熟読し直します。中学2年の国語の授業で読まされて以来通読は50回を超えるかな?ワン。ベッドから出て黒兵衛と散歩。静かな祝日。しかし成人の日の祝日はやっぱり小正月(15日)と重なるべきですよね。ワン。終日デスクワークでスポーツ・ジャーナリズム論をまとめているところへ某編集者から電話で音楽の書き下ろし企画を持ち込まれる。いやぁ…それは…ちょっと無理かなぁ…と返事したものの電話を切って考え直してみるとナカナカ面白いことに気付く。やってみるか…。昨日から大相撲。昨日の大栄翔も照ノ富士に惜しかったけど境の若隆景も惜しかったなあ。しかし照ノ富士は強いですね。倒すのは誰かな?晩飯映画劇女は『アルマゲドン』。昼間NHK-BSがやっていたので半分見て続きを録画。後半を見る。話題の映画だったので見たけど…まぁ…どーでもいいハリウッド映画でしたね。

1月11日(火)
『草枕』の主人公は画家。だから文中にミレーのオフィーリアやターナーや応挙&白隠&蕪村など様々な画家や禅画や文人画が登場するのは憶えていたけど若冲が出てくるのは記憶になかった。最近の大ブームになるずっと以前に日本の画壇では評価があまり高くなかった若冲を取りあげているのは流石というかブームの後になって気付いた小生は情けないですね(>_<)。《若冲の図は大抵精緻なものが多いがこの鶴は世間に気兼ねなしの一筆書きで一本足ですらりと立った上に卵形の胴がふわっと乗っかっている様子は甚だ吾が意を得て飄逸の趣は長い嘴の先まで籠もっている》ナルホド。画を文字にするお手本ですね。これに続く芸術論もスゴイ。《詩人とは自分の屍骸を自分で解剖してその病状を天下に発表する義務を有している》うわあっと叫びたくなる文章が続きますが長くなるの省略。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩のあと今年最初の『ニューズ・オプエド』の打ち合わせ&準備。火曜日だけど月曜日まで待っていたら17日が新年最初になるので今日をスポーツ特集に。ゲストは五輪アナリストの春日良一さんと尚美学園大教授の佐野慎輔さん。本番では「東京五輪から北京冬季五輪へ」ということでオリンピックについて話し合いました。自分で言うのも我田引水気味ですが内容はスゴく濃く小生自身も勉強になりました。東京五輪ではロシアがドーピングに対する処分からロシアとして出場することができずROC(ロシアオリンピック委員会)として参加しましたがオリンピックの本質としてはすべての出場国が五輪委員会として参加するほうが正しいのですよね。日本はJOCとして参加。また「開催国の元首」に開会宣言をさせるならIOCの主張する「反戦宣言」も「人権宣言」もさせろという小生の意見には春日氏も賛成。今でもこの番組の一部は視聴できますから見てください。https://op-ed.jp/

1月12日(水)
昨日送られてきた『東京オリンピック1964の遺産 成功神話と記憶のはざま』(坂上康博/來田享子・編著/青弓社)を読み出すと面白くて…というか興味深い記述の連続でアッという間に第2章まで読んでしまった。1964年は「大成功」だけではなく「負の遺産」も山ほどあった…つまり東京五輪1964を歴史としてキチンと記述しようという試み。最年長者が1959年生まれで最も若い人が1990年生まれの8人による記述は「東京五輪1964」の「大興奮」を実体験として味わっていない人たちだから冷静に書ける部分も多いのでしょうね。開会宣言を行った天皇の立場は「パトロン」だったというのは小生が翻訳したR・ホワイティング『ふたつのオリンピック』の引用もあり訳者として小生も「総裁」「名誉総裁」の日本語を書くかどうかを悩んだことを思い出した。ボブさん(ホワイティング氏)にも相談したら「ボクハぱとろんトシカオモッテナイ」と言われたのでそのままパトロンと言う言葉を使うことにした。当時は首相の池田勇人が「ニューライト」と呼ばれて憲法「改正」に積極的ではないのに対して自民党の佐藤栄作をはじめとする「オールド・ライト」や「ハード・ライト」による憲法「改正」推進者たちが「天皇元首論」を唱えて五輪の開会宣言を「国の元首Cief of Stateが行う」と書かれている五輪憲章との整合性など様々な問題もあったらしい。それに五輪組織委会長が原発実用化推進のトップだったという記述も興味深かった。五輪の聖火は「原始の火」で組織委会長は「原始力から原子力まで」の「脚光を浴びた」と朝日の天声人語も書いたらしい。そう言えば大阪万博も(福井県の)「原子の火」で開催されたと当時は喧伝されましたね。高度経済成長とはそういう時代だったんですね。ベッドから出て黒兵衛と散歩。そのあと体操とスクワットを新年から再開している。10年近く前に脳出血を克服して以来続けていたのを昨年春頃からやめていた。足の衰えがアタマにまで影響しないうちに復活させないと…とまずはスクワット30回くらいから以前の100回にまで…復活できるかな?午後からは日本財団パラスポーツ・サポートセンターと日本福祉大学の共催による「東京2020パラリンピックのレガシー」に関するシンポジウムにオンライン参加。冒頭組織委の中村英正氏と日本福祉大の藤田紀昭教授から30分ずつの基調講演のあとIPCの理事に就任したマセソン美季さん・パラリンピアンの土田和歌子さん・日本パラ陸上競技連盟の三井利仁さんと共に加わってシンポジウム。小生はパラスポーツ(パラリンピック)があらゆるスポーツへの視点を広めスポーツに対する認識を深めてくれるということをいろいろ例を挙げて話すが私のほうが勉強になった2時間半でしたね。晩飯前に大相撲&ビール。宇良は照ノ富士に惜しかったですねえ。メシ&フロのあとは早々にベッドへ。『東京オリンピック1964の遺産』の続きを読みたいですからね。『草枕』は一時休止です。

1月13日(木)
『東京オリンピック1964の遺産』読み進む。小生にとって極めて興味深いのは「1964東京五輪」を「実体験」として持たない若い研究者たちが「1964東京五輪」にまつわる様々な(過去の)出来事を「歴史」として書き残そうとしている文章を「実体験」を少しは持っている小生が読むことだ。もちろん「実体験」を持つ者(経験者)の意見が「正しい」などという気は毛頭ないがもう少し書き加えてほしいことが次々と脳裏に浮かんでもどかしさを感じることもあった。しかし総じてなかなか面白いと感じるのは「1964東京五輪」を「想い出」や「感想」や「体験談」でなく「歴史化」しようとする意志が貫かれているからだろう。全体の小生の感想はあと60ページほど読み切ってから書きますが一人でも多くの人に読んでほしい一冊ですね。ここから日本の戦後の新たな出発が始まったのですから…。ベッドを出てRKB毎日放送『インサイト・カルチャー』ZOOM出演。内村航平引退について話す。素晴らしい選手の引退に拍手。鉄棒一本に絞らず全ての種目と取り組んでたら現役生活がむしろ伸びたのでは…と思うのは素人の勝手な思い込みでしょうね(^^;)しかし体操競技というスポーツは面白い。塚原氏にインタヴューして「一人の選手が凄く難しい月面宙返りのような新しい技を行うと次々とあっと言う間に他の選手もその難しい技をやってしまうようになるのは何故?」と訊いたところが「体操競技は人間のできないことに挑戦する競技ではなく人間にできることを発見する競技だからですよ。こうすればできる…ああすればできる…と見本が生まれれば誰もが真似ればいいのですから」この考え方はスポーツ全般に当てはまる思想かもしれない。ワン。黒兵衛と散歩のあといろいろデスクワーク。昨日の東京新聞のコラムに斎藤美奈子さんも書いていたけどNHK-BSの『河瀬直美が見つめた東京五輪』というドキュメンタリー番組で「五輪反対デモに参加しているという男性」が「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」とテロップで紹介した一件は本当に酷い「捏造」と言うほかない事件ですね。何故こんな一件が起こったのか?反五輪のデモに「お金をもらって参加した人」はいたのか?いたなら金を出したのは誰か?どのような組織か? NHKは間違いを糺すべくそこまで検証してほしいですね。

1月14日(金)
『東京オリンピック1964の遺産』読了。大成功と評価が高かった1964東京五輪を様々な面から再検証。そして最後に編著者の坂上康博氏&來田享子氏の対談で2020東京大会へとつながる。1964には《公共性高いもの》であったはずの五輪が2020では《商標や知的財産の取り締まり》で《常規を逸して》(坂上)《単なるイベント化していることを完全に可視化した》(來田)それにしてもIOC憲章の根本原則第6条で「大会は国家間の競技ではなく個人またはチーム間の競技である」と示され第57条には「IOCと組織委員会は国ごとのランキングを作成してはならない」とも明記されていたのに東京大会組織委のホームページで「国別メダル数ランキング」が掲載されていてるのはIOC憲章違反だと小生も春日良一さんも來田さんも抗議の声をあげていた。が《IOCは(2021年)8月8日の総会で第57条を改正したそうです。改正版では「競技結果の表示は情報提供を目的としてIOCによってもしくはIOCの承認を得て組織委員会によって作成することができる」となりました》組織委のホームページでは「国別」ではなく「NOC(各国五輪委)別」となっていたが《国とほぼ同義語に理解できるようなNOCのものとして一括りにしてしまっては(いくら根本原則に個人間の競技と記されても)選手一人ひとりの姿など見失われて当然です》《IOCの歴史を見ていると自分たちの責任を逃れることができる範囲だけで成功を語る狡猾さが見え隠れします》(來田)「平和運動」と「国際イベント屋」を使い分けるIOCは確かに「狡猾」でヒトラーにもブッシュにも安倍にも擦り寄って利用したわけですね。次は習近平と握手?ワン。黒兵衛と散歩のあと大相撲まで終日仕事仕事仕事。うわっ。37歳の玉鷲が照ノ富士を倒した!お見事!『チコちゃん』見ながらメシ&フロ&酒&読書『草枕』復活&ネル。

1月15日(土)
ベッドでの読書が『草枕』に戻る。銀杏返の髪型の女も登場。《軽侮の裏に何となく人に縋りたい景色が見える。日を馬鹿にした様子の底に慎み深い分別がほのめいている。才に任せて気負えば百人の男子を物の数とも思わぬ勢の下から温和しい情けが吾知らず湧いて出る。悟りと迷いが一軒の家に喧嘩しながら同居している体だ。不幸に圧し付けられながらその不幸に打ち勝とうとしている顔だ。不仕合わせな女に違いない》漱石は女性の描写も上手いですねぇ。ワン。黒兵衛と散歩のあと雑誌『ZAITEN』の連載原稿執筆。北京冬季五輪で注目する点。羽生結弦の4回転アクセルとスノーボードの「反五輪的横乗り文化」と大会後の中国の台湾太平島への侵攻…という「三題噺」を書く。どれも金メダルなんてことよりモノスゴイコトですよね。大相撲は阿炎が無念の一敗。御嶽海の驀進は何時まで続く?などとビール飲みながら興奮したあと『ブラタモリ』で和歌山の魅力を満喫。関西人のなかには和歌山人を「デンキデンダッギ(電機洗濯機の和歌山弁的発声らしい)」などと揶揄する輩もいるけれど熊野や白浜を除いた和歌山市周辺だけでも魅力いっぱいですよね。そう言えばNHKは何日か前に見た人類の「出アフリカ=グレートジャーニー」は岩塩を求めた旅立ったというドキュメンタリーも面白かったです。NHKばっかり見てるなあ。

1月16日(日)
朝ベッドで『草枕』。漱石の痛烈な「茶道批判」。《世間に茶人ほど勿体振った風流人はいない。あぶくを飲んで結構がるものは所謂茶人である。あんな煩瑣な規則のうちに雅味があるなら麻布の聯隊(引用者註・帝国陸軍のこと)のなかは雅味で鼻がつかえるだろう。廻れ右前への連中は悉く大茶人でなくてはならぬ》という文章にニヤニヤしていると早起きのヨメハンに「世の中大変やのにのんびりやね」と起こされた。昨晩のトンガの海底火山の大爆発で日本にも津波警報がジャンジャン出ているらしい。後でわかったことだが神奈川県は特にシステム故障でスマホやケータイが10回以上ピョロロンピョロロンと鳴り続け緊急避難情報が次々と出たとか。慌ててベッドから出てテレビを見るとニュースだらけの大騒ぎ。我が家の周辺は大丈夫と判断して黒兵衛と散歩に出る。と空にくっきりと一本の飛行機雲。地震雲かな…などと思っていると一緒に歩いてたヨメハンが「アッチこそ地震雲」と北側の上空を指さすのでソッチを見ると二筋ほど楕円形の弧を描くような太い筋雲があった。こっちこそ地震雲かな?と言いながら歩いたが後の情報から勘案するとアレはトンガから伝わってきた「空振」による雲かもしれない。写真を撮れなかったのは残念。終日デスクワーク。夜のNHK特集は菅退陣時の政局ドキュメンタリー。最近のメディアや政治評論家や政治ジャーナリストは政治を語らず政局ばかり語っている。日米安保や地位協定や日中関係や日韓関係は将来的にどうするべきか…というようなテーマは取りあげられないのかな?

1月17日(月)
漱石はスゴイ。草枕は凄い。宿の露天風呂で遭遇する那美さんの裸体の描写に圧倒される。《ふっくらと浮く二つの乳の下にはしばし引く波が又滑らかに盛り返して下腹の張りを安らかに見せる……これ程自然でこれ程柔らかでこれ程抵抗の少ないこれ程苦にならぬ輪郭は決して見出せぬ……しかもこの裸体は……》皆さんご自身でお読み下さい。ベッドから出て黒兵衛と散歩のあとイロイロ仕事していると今日の『ニューズ・オプエド』のスタッフからゲストに神戸大学教授で感染症医師でインターハイ出場校出身のサッカー選手でもあった岩田健太郎さん(cイッセル神戸のファンだとか)から出演OKの返事が来たと連絡。思わずイエーイと快哉を叫んで岩田先生に感謝のメール。もうひとりのゲストのサッカー・ジャーナリストの大住良之さん(岩田先生は若い頃に大住さんがサッカーマガジンなどに書いていたサッカー論を愛読していたとか)にも連絡。午後からのスタッフZOOM打ち合わせを経て夕方から本番。日本代表のW杯アジア最終予選(来週と再来週が中国・サウジとホームで闘いますからね)の展望を大住さんに話していただきオミクロン株との戦いやスポーツ観戦時の新型コロナへの対処法などを岩田先生に話していただく。メッチャ濃厚で有意義な1時間。大住さんは番組終了後に岩田先生にサッカー日本代表チームの感染担当医就任を試験に要請。これを書いているときはちょっと多忙で連載の校正を済ませて出かけねばなりません。『オプエド』のホームページでまだ大住さんや岩田先生出演の本番を見ることができますので御覧ください。https://op-ed.jp/

BOOK
織田作之助『夫婦善哉』新潮文庫
織田作之助『夫婦善哉』新潮文庫
この小説ほど「浪花」を表してる作品はないですよね

1月18日(火)
改めて草枕は凄いと思う。どこを読んでもスゴイ。芸術論小説が恋愛論小説に変身して最後は反戦小説に行き着き全ては「非人情」で貫かれている。《「地震!」と小声で叫んだ女は膝を崩して余の机によりかかる。御互の身軆がすれすれに動く。余の顔と女の顔が触れぬばかりに近付く。細い鼻の穴から出る女の呼吸(いき)が余の髭に触った。「非人情ですよ」と女は忽ち居住居を正しながら屹と云う。「無論」と言下に余は答えた》「非人情」のラヴシーン。いいものです。そう言えば男女の密な会話中に地震が出てくる場面は織田作之助の『夫婦善哉』にもありましたね。次は浪花文学を読み直すか。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩のあと連載コラムの校正に赤入れをしてテレビやネットで天気予報をチェック。雪のため新幹線が関ヶ原付近で30分の遅れというのをチェックして早めに家を出て品川から新幹線で大阪へ。8分の遅れは朝日放送『教えてNEWSライブ!正義のミカタ』録画撮りに十分間に合うのでホテルに入って着替えてからABCへ。22日放送の番組は全編北京冬季五輪をメインテーマにロシアのウクライナ侵攻と中国の台湾侵攻をテーマに1時間半。小生は北京冬季五輪が如何にヒトラーのベルリン五輪に似ているかを話してロシア問題は筑波大の中村逸郎教授が説明。中国問題は『オプエド』にも何度か登場してもらったジャーナリストの近藤大介さんが説明。ロシアはモスクワ五輪の時にアフガン侵攻。北京夏季五輪の開会式当日にグルジア(ジョージア)侵攻。ソチ冬季五輪直後にウクライナ・クリミア半島占領。オリンピックの平和の主張はただの画餅?今年は何をする?ロシアはウクライナとベラルーシへ?中国は台湾領南沙諸島の太平島へ侵攻?この番組の放送は関西ローカルですが中味が我ながらメッチャ面白かったので見てください。今週土曜の放送後はYuTubeで見ることができるのかな?ホテルへ戻って大阪泊。

DVD
『女は二度生まれる』
『女は二度生まれる』
若尾文子の魅力満載の川島雄三監督作品です
BOOK
島田裕己『性セックスと宗教』講談社現代文個
島田裕己『性セックスと宗教』講談社現代文個
ナルホド。いろんな宗教は性への意識のあり方から生まれたのですね

1月19日(水)
大阪のホテルで目覚めてタクシーで新大阪へ。新幹線で帰鎌。車中『草枕』と思ったところが鞄に入れていた島田裕巳氏の新刊『性(セックス)と宗教』(講談社現代新書)を読み出したら面白くて止まらなくなった。直立二足歩行から口腔を大きく広げた人類は複雑な音声を発することから言葉を手に入れ実在しない神や天国も言葉で創ることが可能となり本能を失って常に発情可能となって第二次性徴の時に邪(よこしま)な性の目覚めをコントロールしようとするところの回向(えこう)=conversion=「二度生まれ=二度目の誕生」によって神の啓示を受けたと思い込んだところから宗教が生まれたワケか。ナルホド。「病める魂」が宗教を生んだのですね。第二次性徴のときですから女性のほうが男性より宗教画の目覚めが早いのですね。そう言えば川島雄三監督・若尾文子主演で『女は二度生まれる』という面白い映画がありましたね。見直そうかな。大阪行きの機能の新幹線では見事に綺麗な富士山がでっかく裾野まで広がって見えたが今日は雲に隠れて見えず。残念。トンガの火山爆発は物凄かったけど富士山は大丈夫かな?帰宅後いろいろデスクワークのあと大相撲。昨日北勝富士に敗れた御嶽海は正代に勝って1敗キープ。正代の元気の無さは心配ですね。御嶽海が照ノ富士を破ったら面白いけどチョット淋しい初場所ですね。いや。王鵬・阿炎・宇良が頑張ってるか…。しかし…オミクロン株の収束と終息はいつ頃になるのかな…もうエエ加減にしてくれ!…ですね。それを誰に言えばイイのかな?

DVD
『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集』
『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集』
若きツィンマーマンを支えるバーンスタイン。名演ですがチョットピアノが堅いかな?
『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」他』
『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」他』
グルダの見事な弾き振り。クラシックがこんなに自由に楽しめる見事な演奏です

1月20日(木)
『性と宗教』読み続ける。面白い。アウグスチヌスも淫蕩の末にマニ教からキリスト教に帰依。鎌倉仏教の俊英たちも女犯と無縁ではなかったことを思うと宗教とは発情期のない人間の常に発情するセックスのコントロール=煩悩の制御から生まれたとも言えそうなんですね。ベッドから出てRKB毎日放送『インサイト・カルチャー』ZOOM出演。北京冬季五輪が近付いたのでロシアのウクライナ侵攻や中国の台湾侵攻の話題は一先ず横に置いてウィンター・スポーツとサマー・スポーツの違いを話す。冬季五輪は「雪と氷」に関係する競技のみと規定されている。つまり人間の肉体という自然が自然環境と交わる競技。一方夏の五輪は近代五種のクロスカントリーを除いて全て人工の施設のなかで行う競技ばかり。つまり人工の環境のなかで肉体という自然を再確認する競技。もっとも北京冬季五輪は人工雪と人工氷のなかで行われますけどね。ワン。黒兵衛と散歩。オマエはまだ童貞。佐吉(前に飼ってた雑種犬)も雌犬と結ばれないまま亡くなった。アウグスチヌスよりも高潔な存在かな?ワン。終日デスクワーク。大相撲はウワッ照ノ富士が負けた。これで優勝争いは面白くなった。晩飯コンサートは明日すみだトリフォニーホールで聴く佐渡裕指揮&反田恭平ピアノのベートーヴェンの予習というわけではないけどグルダの弾き振りミュンヘン・フィルとツィンマーマン&バーンスタイン指揮ウィーン・フィルで『皇帝』を楽しむ。どっちも見事な演奏ですけどグルダはヤッパリ破格の凄さですね。明日はどんな演奏になるのかな?オミクロン対策も考えねば。

CD
『リムスキー=コルサコフ:交響組曲《シェエラザード》他』
『リムスキー=コルサコフ:交響組曲《シェエラザード》他』
ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場オケ。見事な演奏です
BOOK
小笠原博毅&山本敦久『東京オリンピック始末記』岩波ブックレット
小笠原博毅&山本敦久『東京オリンピック始末記』岩波ブックレット
これも一人でも多くの現代日本人に読んでほしい一冊です

1月21日(金)
『性と宗教』読み続けようと思ったら昨日成城大教授の山本敦久さんから神戸大教授の小笠原博毅さんとの共著『東京オリンピック始末記』(岩波ブックレット)が送られてきたのでそちらを読み始める。《オリンピズムへの参加は権利要求の結果ではなくIOCからの承認という「施し」によって可能になる》確かに。《各種競技会や学校行事が相次いで中止になるのに何故オリンピック選手だけが優遇されたのか》オリンピックはナルホド別世界=パラレルワールドの出来事だったのですね。我々の暮らす実社会とは何の関係もない世界の出来事。《選手たちは自分たちが頑張れば頑張るほど夢でも希望でも自己実現でも「世界平和」でもなくIOCという興行主のための利益を生み出しているだけだ》正論の連続。来週月曜の『オプエド』には山本先生と一橋大の坂上康博先生に出演してもらいオリンピックの話しをしていただきます。ワン。黒兵衛と散歩のあとチョイとイロイロ仕事して大船駅へ。横須賀総武線で錦糸町へ。すみだトリフォニーホールでの佐渡裕指揮新日本フィルと反田恭平さんのピアノベートーヴェンの『皇帝』のコンサート。これが凄かった。はっきり言って大名演。昨晩DVDで見た若きツィンマーマンの演奏のように堅くなく柔らかくてしなやかでそれでいて力強く味わい深く美しく…バックの佐渡の指揮も実に雄弁に見事で…いやはや呆れ返るどの素晴らしいブラヴォー!な演奏でした(ブラヴォー!と叫びはできませんでしたけど)。陳腐な表現ですが世界一の演奏でしたよ。アンコールのショパンも美しかった。しかも続くリムスキー=コルサコフの『シェエラザード』も素晴らしい演奏!千夜一夜の世界が眼前にカラフルに現れました!久し振りに佐渡さんや事務所の皆さんともお逢いできて積もる話も少しできたし同行した音楽好きの編集者も紹介することができたし大満足のコンサートでした。佐渡さんは4月から新日フィルの音楽監督に就任とかでメッチャ楽しみですね。ビール飲みながら微酔いで帰宅。

1月22日(土)
『東京オリンピック始末記』読了。完璧に見事なIOC批判オリンピック批判ですね。五輪の「理念」など存在せずただの国際スポーツイベント主催者の方便で西欧近代植民地思想の現れと考えると東京五輪でのバッハ会長の傲岸不遜な態度も理解できますね。森組織委会長の女性蔑視発言も森会長個人の資質に加えてクーベルタン以来のIOCの女性蔑視の伝統の露見と考えられるわけですね。ナルホド。小生はオリンピックには「原点」など存在しないのだから新たに創っていかねばと主張し続けてきましたがナルホド一度破壊するほかないのかもしれませんね。ワン。黒兵衛とちょっと早めに散歩を済ませて大船駅へ。湘南新宿ラインで渋谷へ。井の頭線に乗り換えて下北沢へ。小田急線に乗り換えて梅ヶ丘へ。国士舘大学世田谷キャンパスまで歩いて日本スポーツ学会大賞授賞式に参加。受賞者は花巻東高校野球部佐々木洋監督&同野球部出身菊池雄星&同大谷翔平。ビデオ参加で受賞の喜びを語った大谷と菊池の話の中で菊池が読書を勧めた佐々木監督の影響で今も子供たちの読書感想文のコンクールを主催してるという話は素晴らしかった。国士舘大学出身の佐々木監督は岩手県から上京。授賞式に参加。御礼の挨拶の後記者会見があったので参加。手を挙げて「甲子園での勝利と高校生を育てることは両立するか?」と質問。「両立が難しいのはわかっているが両方目指したい」との回答。真面目な人だ。「二刀流ですね」とでも一言言えば良かったのに気付くのが遅かった。記者会見の後佐々木監督の記念講演。これはマスコミ関係者がオフリミットで話の内容を発信することが禁じられ小生は日本スポーツ学会会員として参加したので講演内容は書けませんが素晴らしい話でした。主催者の長田渚左さんによると記念講演を1時間でとお願いしたら1時間では話せない1時間半ほしいと言われたらしい。なるほど中味の濃い90分でした。会場を出て帰鎌。それにしても渋谷駅と下北沢の代わりように仰天。50年前は明大前に住んで何度も乗った井の頭線も小田急線もまるで未来都市。地下ホームがあるなんて知らなんだ。帰宅して大相撲。阿炎が照ノ富士を倒した一番。見事でした。今日佐渡裕と反田恭平のコンサートに行った長女と友人が電話をかけてきて素晴らしかった!と大興奮。世の中ガッカリすることも多いけど素晴らしいこともありますね。

1月23日(日)
朝ベッドでの読書が島田裕巳『性と宗教』に戻る。セックスと宗教のことを考えると仏教・密教・立川流・道教・ジャイナ教・ヨーガ・ヒンドゥー教…などなど東洋の宗教のほうがユダヤ教・キリスト教諸派等の西洋の宗教よりもよほど多彩多様で面白いですね。オーム真理教も出てきたか…《クンダリニーの覚醒をもたらすシャクティパット》なんて以前はテレビのワイドショウでもよく聞いた言葉で何だかナツカシイですね。しかしシャクティが「性力」のことで「チャクラ=会陰と肛門の間の蟻の門渡り」に眠っているクンダリニーを覚醒させるのがシャクティパットなんですね。それをかつては麻原彰晃がテレビで実演して相手になったオウムの女性信者が《性的なエクスタシーに達したような状態を示す》なんてこと《1987年日本テレビ「鶴太郎のテレもんじゃ」》もあったのですね。ワン。ベッドから出て黒兵衛と散歩。昨日の梅ヶ丘から国士舘大学への歩行で足が草臥れてるみたい。犬に連れられていつもの道を歩くのと知らない道を犬ナシで一人で歩くのとでは疲れ方が違うのかな。しかもアップダウンが結構キツかった。ここで音を上げてはアカンと鼓舞して散歩のあとスクワット50回。ふうう。そう言えば昨日は国士舘の学長にも挨拶されました。かつて小生が5年間ほど同大学院の教壇に立っていたことを御存知だったのは嬉しかったですねえ。そこで思い出したのが小生が教えた大学や大学院合計8校くらいでレポートの最高点をマークしたのが国士舘大学院の女性の98点でした。彼女の名前は忘れたけどその見事な点数は今も憶えています。終日デスクワークで夕方からは大相撲千秋楽。照ノ富士が足を負傷していたのは残念だったけど御嶽海の取り口は良かったですね。『鎌倉殿の13人』は歴史の流れにスピードも出てきて見ていられるようになりましたね。現代語会話には違和感「大」ですが…。同じ三谷幸喜の時代物『清須会議』では違和感なかったのに何故かな?

1月24日(月)
『性と宗教』面白い。イスラム教の「教祖」ムハンマドは聖職者ではなく世俗の信者なのですね。だから性の禁忌もなく嫁さんも4人いて絶倫を隠さなかったとか。だから千夜一夜物語もベリーダンスも生まれる文化が育ったわけですね。女性も外ではブルカを被っていても家に入るとおおらかな性と共に暮らしていたとか。このあたりがイスラム原理主義が平和的な存在に変わるキッカケにならないのかな?ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩のあと『ニューズ・オプエド』の準備。毎週スポーツ・ナヴィゲーターとして司会役を務めてくれている小林厚妃さんが発熱したとかでお休み。PCR検査の結果は陰性だったが代役に井田朱音さんの登場。午後のスタッフとの打ち合わせを経て本番。ゲストは東京オリンピック1964の遺産 成功神話と記憶のはざま』(青弓社)の編著者で一橋大学教授の坂上康博さんと『東京オリンピック始末記』(岩波ブックレット)の共著者で成城大学教授の山本敦久さん。2020を総括するには1964を考え直さねばならないという点から出発。1964の大会組織委会長が日本原子力発電(原電)会長と日本原子力研究所(原研)顧問という人物で五輪大臣が科学技術庁長官として原発を推進する人物だったことが2020前での福島の大事故との奇妙な因果関係や2020組織委会長の女性蔑視発言が個人の問題でなくIOCの歴史の中から滲み出した問題として捉えることなど興味深くて有意義な話の連続。IOCは既に人権問題についての指針を纏めておりHRW(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)はIOCにそれを実行するよう求めているという坂上教授の指摘はビッグニューズだった。その指針に沿ってNGOであるIOCは中国に対してテニス選手の「彭帥さん事件」への徹底調査と詳細な結果発表を要求しなければならないはずなのだ。その部分は有料配信になってますが今でも無料配信部分で素晴らしい話をたくさん聞けるので是非アクセスしてください。https://op-ed.jp/

BOOK
高森朝男&ちばてつや『あしたのジョー』週刊少年マガジンコミックス
高森朝男&ちばてつや『あしたのジョー』週刊少年マガジンコミックス
素晴らしい物語ですね。その一言で十分な大傑作です

1月25日(火)
『性と宗教』読み続ける。神道というのはナカナカ面白い「宗教」ですね。「教えがない」「教えを説く人もいない」「教義もない」「教団もない」「戒律もない」「罰則規定もない」キリスト教やイスラム教とは大違いで記紀神話はギリシア神話と同様「性欲旺盛」で「同性愛」も認めてるんですね。それだけに南方熊楠や折口信夫のように民俗学者には両刀遣いや同性愛者もいたのかな?不倫などの奔放な性関係についても本居宣長も『源氏物語』を「恋の心が生じたならばせんかたなし」と評してますからね。ワン。ベッドから出て黒兵衛と散歩のあと北國新聞の連載コラム『スポーツを考える』執筆。北京冬季五輪の「完璧バブルのゼロコロナ政策」を取りあげIOCアダムズ広報部長が東京五輪時に口にした「パラレルワールド」という言葉を思い出す。実社会と交流も関係もなく「パラレルワールド(別世界)」に独自に存在するオリンピックなどに価値があるんですかねえ?晩飯映画劇場はユル・ブリンナーがロボット役で登場する『ウエストワールド』。開拓時代のアメリカ西部や中世のヨーロッパや古代ローマの世界を再現して完璧なロボットを配置して現代の客を楽しませるアミューズメントパークのお話。まさに「パラレルワールド」だが中央制御室が故障して西部のガンマンのロボットがコンピュータの指示に従わずパークに遊びに来た観客を殺す。さて結末は…チョットつまらない。哲学を持たない映画監督がアイデアだけでSFに挑戦して失敗した感じの映画。オリンピックの「パラレルワールド」もオカシナことになるかも?

1月25日(火)つづき
風呂のあとに見たNHK-BSの『アナザーストーリー 時代を生きたヒーローあしたのジョー』が面白かった。全共闘でゲバ棒をふるってデモをした学生も日大闘争で学校側の味方をした体育会系学生も日航機を乗っ取って北朝鮮に渡った赤軍派もみんな『あしたのジョー』を読んでいたのですね。もちろん私もリアルタイムで読みました。最後のホセ・メンドゥーサとの世界タイトルマッチのリングの上がる寸前の控え室で白木葉子の肩を矢吹丈が両手で掴んで接近したところで『少年マガジン』の連載が「次週に続く」となったので次週の号で矢吹丈は白木葉子にキスをするかしないかで高校のクラス仲間と賭けをして私は10人くらいから500円ほど儲けました(笑)。もちろんキスはしないほうに賭けました。当然ですよね。あの時代はみんな「あした」を見ていましたね。その後物書きになって『あしたのジョー』コミックスの何巻目かに解説を書いたことは今でも誇りに思ってます。

1月26日(水)
島田裕巳『性と宗教』読了。面白かったという以上に勉強になりました。そもそも宗教というのは人間の性(セックス:性愛や性的欲望)ををどのように位置付けるかというところから生まれたものでその位置づけの違いからいろんな宗教が生まれたとも言えるのですね。おまけにそれが生まれたのがウン千年前からウン百年前のことですから現代社会にそぐわないことが山ほどあるのは当然。ところが神や仏の決めたことを人間が変えることはできないのですね。《宗教は根本的な刷新を行うことができないものなのです》厄介なものですけど宗教学者のエリアーデの《暇な神(デウス・オティオースス》という考え方は面白いですね。かつて最重要な神様だった《宇宙の創造神》はキリストの出現によって「暇」になりキリストも一部地域ではムハンマドの出現で「暇」になったりマリア信仰のほうが強くなって「暇」になったり…いろんな新興宗教の出現で「暇になった神々」は結構沢山いるみたいですね。そのうち「ホモ・デウス」があらゆる神々を「暇」にするのかな?それはともかくビートルズの『Let it be』の歌詞にある"mother Mary come tome"のMaryって《ポール・マッカートニーの実際の母のこと》なんですね。小生はてっきり「聖母マリア」のことだと思ってました(何かの訳語にもそう書いてあったですよ)。日本語では「聖母マリア」という表現が多いですが《英語では"Mother Mary"と呼ばれることは少なく多くの場合"Virgin Mary"処女マリアと呼ばれる》そうです。ナルホド。ベッドから出て黒兵衛と散歩のあと終日デスクワーク。連合通信の連載を書いたり校正をしたり…。指揮者の佐渡裕さんが今年4月から新日フィルの音楽監督に就任。その本拠地が墨田区のトリフォニーホールなので「おすもうさんと何か面白いことがしたい」という佐渡さんの意向を相撲ジャーナリストの荒井太郎さんに伝えると「二所関親方(旧荒磯親方・稀勢の里)が中学3年で合唱コンクールの指揮者をした」とか。イロイロあるもんですねえ。

BOOK
カフカ『変身』新潮文庫
カフカ『変身』新潮文庫
これも好きな作品ですね。主人公をミズコオル・サムサと言い換えた星新一は天才ですね
中島敦『李陵・山月記・弟子・名人伝』角川文庫
中島敦『李陵・山月記・弟子・名人伝』角川文庫
小生の大好きな小説ばかりです

1月27日(木)
昨晩ベッドに入るとき『草枕』の続きを読もうとしたが文庫本が見当たらない。どこかに消えた。こーゆーことは頻繁に起こるので焦らない。きっと仕事部屋の書類の下やベッドの下に隠れているだけのこと。数日前に東京新聞日曜版で中島敦の『山月記』を絵入り見開き2頁で特集していたのを思い出しちくま文庫版『中島敦全集1巻』を手にベッドに入った。詩人になれないことを周囲のせいにして悔しがってばかりいた自分勝手な男がその報いとして虎に変身してしまう話。高校の教科書に必ずと言って良いほど収録されているらしいが文章は硬質の名文にしても小生には「虎への変身」に対する嘆きがずっと理解できなかった。カッコイイ虎に変身できたら面白いではないか…なのに何故嘆く?…というのが高校時代の感想。大人になって読み直しても同じ。今回何度目かの読み直しで獣になってしまった自分を嘆く前に妻子の心配を先にすべきだったと反省する男に納得したのは小生が歳をとったから?しかし変身モノならやはりカフカの『変身』の甲虫に変身してしまう男のほうが面白いですね。主人公のグレゴール・ザムザの名前をミズコール・サムサと変えてショートショートを書いたのは星新一でしたね。ベッドから出てRKB毎日放送『インサイト・カルチャー』ZOOM出演。先週土曜の日本スポーツ学会大賞表彰式の話をする。花巻東高校野球部の佐々木洋監督と教え子の大谷翔平と菊池雄星の話。佐々木監督がかつては番長だったという話も面白いのだけど菊池雄星投手が岩手日報とジョイントして小中校生相手に読書感想文コンテストを行ってる話を中心に喋ったあと黒兵衛と散歩。終日デスクワークで読売新聞社会部の国民栄誉賞に関する電話取材に答えたり『昭和40年男』編集部のソウル五輪に関するZOOM取材を受けたあと晩飯サッカー劇場はW杯アジア最終予選日本vs中国戦。2-0で勝ったのはマァ良しとして4-0/5-0とならなかったのは日本代表の選手たちの「遊び心」の欠如の結果かな?と思えた。良い意味でもっと相手を見下した余裕あるプレイを見たかったですね。

1月28日(金)
ベッドのなかでの読書はベッドの下に落ちていた『草枕』を発見して復活。どこを読んでも面白く『草枕』の主人公も《小説は勝手に開いたところを読む》と言ってるがやっぱり栞を挟んだ続きから読む。小生は「非人情」がまだまだ足りないから仕方ない。主人公が鎌倉の円覚寺を訪れたとき長い石段を登る前に出逢った禅僧から(登っても)「何もありませんぞ」と言われたことに感激するのが素晴らしい。《なるほど禅僧は面白い(略)世の中はしつこい。毒々しい。その上ずうずうしい。いやな奴で埋まっている。元来何しに世の中へ面を曝しているんだか解しかねる奴さえさえいる。しかもそんな面に限って大きいのだ》漱石がここまで俗人を非難することに思わず笑う。小説中の禅寺を訪れた時に主人公の頭に「仰数春星一二三(あおぎかぞうしゅんせい)」という句が浮かぶ。「一二三」にはルビが振られていないがコレは多分「ひいふうみい」と読むに違いない。高野公彦の三十一文字「やはらかきふるき日本の言葉もて原発かぞふひい、ふう、みい、よ」はひょっとして『草枕』のこの句の本歌取りかもしれないと思うと何故か嬉しくなった。ワン。黒兵衛と散歩のあと終日デスクワーク。

1月28日(金)つづき
中日文化センターの担当者から電話で今年の兵庫県立芸術文化センター(PAC)での佐渡裕プロデュース・オペラ『ラ・ボエーム』の7月の鑑賞団体ツアーをどうするかという打ち合わせの電話。オミクロン株がピークアウトするのか?その後どうなるのか?サッパリ予想できない。バス・ツアーはほとんど全て中止状態らしいがチケット購入までまだ時間はあるということでとりあえず2月いっぱいまで結論は延ばすことにする。この電話の直後にPACオペラのプロデューサーの小栗哲家さんから久し振りの電話。『ラ・ボエーム』公演の情報発信のため佐渡さんとの対談を依頼される。喜んでやらせていただきますと返事したあと先日の佐渡さんと反田恭平さんと新日フィルのコンサートの最高に素晴らしかったことや大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の「違和感」などについて楽しく話す。息子さんが主役級ですからね。電話のあと昼間NHK-BSでやっていたクリント・イーストウッド&ロバート・デュバルの『シノーラ』の続きを見る。『荒野の七人』のスタージェス監督だったの期待したけどイマイチでしたね。メキシコ人とアメリカ人の土地争いの西部劇は日本人には理解が難しい?晩飯のあと『レナード・バーンスタイン音楽のよろこび』のDVDのなかから『何がオペラを大きくしているのか?』を見る。小栗さんの電話から見直したくなったのだけど『ラ・ボエーム』の第3幕を音楽なしで台詞だけの演劇と同じ箇所を音楽付きオペラでやるレニーのピアノ演奏入りの解説は何度見ても見事ですね。

DVD
『レナード・バーンスタイン音楽のよろこび』
『レナード・バーンスタイン音楽のよろこび』
ジャズやバッハやベートーヴェンや現代音楽やオペラの解説…お見事!素晴らしい!
Blu-ray
『007/私を愛したスパイ』
『007/私を愛したスパイ』
ロジャー・ムーアの007のなかでは一番漫画チックでエジプト観光もできて面白いですね

1月29日(土)
『草枕』には和歌・俳句・漢詩・英語の詩が次作引用共々次々と出てくる。《木蓮の花許りなる空をみる》イマイチかなと思って池澤夏樹個人編集日本文学全集29『近現代詩歌』の頁をパラパラ捲ると凄い三十一文字に出逢った。《やや長きキスを交わして別れ来し深夜の街の遠き火事かな》啄木の『一握の砂』にこんな歌があるとは知らなかったので最初は凄い!と思ったけど何度か読み直すと世間と隔絶した男女に少々嫌気が差した。しかもプロの詩人の言葉遣いの巧み過ぎることにも苛ついた。漱石の《木蓮》のほうが素直ですね。ワン。黒兵衛と散歩のあと終日デスクワーク。1月初頭に行った日本福祉大と日本財団パラ支援センターのコラボによるシンポジウムの発言要旨の校正をしたり5月に行う中日文化センターのオペラ講座のテーマに『ラ・ボエーム』を選んで企画要旨を書いたり『スポーツゴジラ』新連載の内容を考えたり…いろいろ仕事のあと夕方から酒呑みながら昨日の『チコちゃん』を見たり『報道特集』を見たり。ブラジル熱帯雨林の大量伐採もショックな話題ですが開発でそこ暮らす原住民の間に「水俣病」(砂金の採取のため水銀を使う結果)が広がっているのは凄いショックですね。ボルソナロという人物は何を考えてるのかな?風呂の後は気楽に『007私を愛したスパイ』を見始めたけど「ブラジル水俣病」のことも頭に甦って気楽にロジャー・ムーアと付き合う気になれず『草枕』を持ってベッドへ。

DVD
『一谷嫩軍記 熊谷陣屋』
『一谷嫩軍記 熊谷陣屋』
十六年はひと昔…夢だぁ…いい台詞ですねぇ。これは先代幸四郎。吉右衛門・玉三郎・菊五郎・仁左衛門の舞台もDVD化してほしい

1月30日(日)
『草枕』読了。日露戦争に出征する甥っ子を見送る汽車を茫然と眺める女性(那美さん)の顔に《これまでに見た事のない「憐れ」が一面に浮いている》この瞬間に《それだ!それだ!》と主人公の絵が完成する。そして終止芸術論を展開しながら明治の世の中(汽車と戦争の近代)と交錯する。凄い小説ですね。読み切った直後すぐに読み返したくなるくらい凄い小説です。素晴らしい箇所を読み落としているのではないかと思って…ワン。ベッドから出て黒兵衛と散歩。コロナさえなければ清し冬の空。御粗末。ワン。終日デスクワーク。東京都から送られてきた『TOKYOスポーツレガシービジョン』という28頁A4カラーの資料を読む。五輪のレガシーとしてのスポーツ活動を公共団体が主導しなければならないところがツライですね。地域密着型スポーツクラブはついに日本には(Jのサッカークラブ以外)誕生しないようですね。ならばまた五輪を招致しないとスポーツ界は動かないのかな?まさに日本のスポーツ界は一橋大の坂上教授が指摘したように「五輪中毒」「五輪依存症」ですね。そう言えば去年12月に東京都政策企画局計画部計画課がまとめた『未来へつなぐTOKYO2020の記憶』という24頁A4カラーの資料には「日本の総力を結集してテロやサイバー攻撃を阻止 約4億5千万回のサイバー攻撃も全てブロックに成功」と書かれていたけど「ブロックに成功」したこと以上にそれほど多くのサイバー攻撃があったことに驚きましたね。それがオリパラ期間中の約1か月の出来事だとすれば1日に約1千5百万回のサイバー攻撃。準備段階からの2か月間の出来事だとしても1日約750万回。1時間に約30万回。1分間に約5千回。1秒間に約80回。勝手に動くコンピュータとは言えこの数字には驚きますね。晩飯は『ダーウィンが来た』で鮫の生態を見ながら。『鎌倉殿の13人』は…なんとか石橋山の合戦まで我慢…。その後のNHK-Eテレ吉右衛門特集『熊谷陣屋』に大感激。玉三郎・菊五郎・仁左衛門・歌六も素晴らしく最後の吉右衛門の「十六年はひと昔。夢だ。夢だ」の台詞には涙が出そうになりました。親父が先代松緑のこの芝居のこの台詞を一番好んでいたのは戦争体験者だったからかもしれない…と今頃気付きました。

BOOK
小林信也『天才アスリート覚醒の瞬間』さくら舎
小林信也『天才アスリート覚醒の瞬間』さくら舎
沢村栄治・バロン西から荒川静香・大谷翔平まで…ナルホドと思える一冊です

1月31日(月)
中島敦『名人伝』読む。弓道の名人目指して鍛錬をするうちにあらゆる技術を身に付けて終には「不射の射」に至り最後には弓も矢も忘れてしまうという大傑作。西洋のスポーツと日本の武道を比較するうえでは欠かせない一冊。大正時代に来日した哲学教授のオイゲン・ヘリゲルも『日本の弓術』(岩波文庫)のなかで「不発の射」「無術の術」について書いてますね。オリンピックのメダルなどとは無縁の東洋精神ですね。詳しくは拙著『今こそ「スポーツとは何か?」を考えて見よう!』(春陽堂書店)をお読み下さい。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩のあと『ニューズ・オプエド』の準備や打ち合わせ。今日のゲストは『東京五輪の大罪ー政府・電通・メディア・IOC』(ちくま新書)の著者の本間龍さんと『天才アスリート覚醒の瞬間』(さくら舎)の著者の小林信也さん。小林さんの著書は沢村栄治やバロン西から荒川静香や大谷翔平まで54人のアスリートを描いた『週刊新潮』の連載をまとめた面白い本です番組のメインテーマは東京五輪のレガシーは存在するの?で本間さんの著作を中心に進める。結局東京五輪の総括をキチンとしないまま札幌冬季五輪の招致に動いてるのはナンセンスということで意見が一致。今も一部見ることができますからアクセスして下さい。他にも明日のサウジ戦は絶対に負けられないというサッカージャーナリスト大住良之さんの意見を紹介したり(南野の代わりに前田大然を使うべしとのことです)センバツの出受講選考に問題アリ(高校野球を野球を知らない新聞社が支配してはいけない)といった話題も話し合っています。https://op-ed.jp/

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