『レーニ・リーフェンシュタール 美の誘惑者』ライナー・ローター〔著〕(瀬川裕司訳、青土社)
ダンサー、女優、映画監督としての成功以上に、ナチスの協力者、ヒトラーの恋人として虚名を馳せたリーフェンシュタールは、百歳になった今日も水中カメラマンとして活躍している(註・この文章は2002年に書いたもので、1902年8月生まれの彼女は、2003年9月に亡くなりました)。
そんな「強靱な意志」の持ち主は、自らの人生までも創造(捏造?)する。そこで著者のローターは、インタヴューを放棄し、膨大な資料と彼女の作品を丹念に読み、かつ見ることだけによって、「天才芸術家の一生」という「作品」を、描き出した。
彼女の作品の「様式美」は高く評価しながらも、「アンビヴァレンツとも矛盾とも無縁」で、「日常的なものにも風変わりなものにも興味を抱かな」い作品は、「イロニー(註・アイロニー=皮肉)ともフモール(註・ユーモア)とも関係がな」く、「省察的なものを回避しているがゆえに、潜在的に生気に乏しい」と、犀利な分析を展開し、彼女は「観客を誘惑したかった」と結論づける。
著者は断言してないが、本書は「女の一生」という悲哀を描いたとも思える。 |