猛暑。酷暑。とにかく暑い。こんななかでも高校野球は行われる。試合を放送するテレビ画面の周囲には「屋外での運動は控えましょう」との文字が出るなかで、地方予選は行われた。
甲子園大会を中継するNHKの画面の周囲にも、同じような表示が出るに違いない。それでも高校野球は行われる。高校野球だけは例外……なんて馬鹿なことはないはずだ。が、安全に配慮して高校生を預り、教育を施すべき高校の指導者たちのなかで、この酷暑の炎天下で高校生たちに試合をさせることに、誰からも(先生方からも! ジャーナリズムからも!)まったく抗議の声があがらないのは不思議と言うほかない。
主催新聞社はこの異常な行為(炎天下でのスポーツの実施)を自己批判せず、改善策も打ち出さない。それはジャーナリズムの責任放棄。ジャーナリズム失格の行為と言うほかない。
夏の甲子園大会は今年が百回目の記念大会。その記念すべき大会で犠牲者が出るようなことがないよう、心から祈りたくもなるが、この記念大会を契機に、高校野球の抜本的改革に手をつけてほしいものだ。
暑さ対策としては、北海道で大会を行うことを真剣に考えるべきだろう。網走や釧路に甲子園規模の野球場を造ることも、今の高校野球人気を考えれば不可能ではない。そこで春夏の大会を行えば地方の活性化にもつながる。選手や関係者の移動費くらい、テレビの放映権料を値上げすれば簡単にまかなえるはずだ。
アメリカの大学野球は、夏は涼しいアラスカでリーグ戦を行う。それにアメリカの高校生は学年の進級期にあたり、夏はほとんど部活動をしない。それが当然の常識と言うべきだろう。
ただ、夏の甲子園大会を北海道で行うというのは、あくまでも次善の策でしかない。なぜなら北海道でも甲子園でも、現在のスケジュールが同じなら、地方予選が多くの高校の1学期の期末試験中に行われることに変わりはないからだ。
改めて言うまでもなく、高校生の本分とは勉強をすることである。にもかかわらず試験期間中に、課外活動に過ぎない野球部の試合のスケジュールを組み入れていいものだろうか?
高校野球だけでなく、高校や大学の他の運動部の学生たちも、自分たちは勉強をすることを免除されているかのように振る舞う場合が少なくない。
私自身、20年以上10校以上の様々な大学の教壇に立ち「スポーツジャーナリズム論」の授業を担当したのでよくわかるが、本気で勉強と取り組む学生のいかに少ないことか! とくに運動部系の学生のなかには、まともに文章も書けず、文字も書けず、本も読まない大学生が、山ほどいる。
そういう学生のレポートに片っ端から落第点をつけたところが、担当教授から「就職に影響するので、できるだけ合格点を……」と言われたこともあった。以来私はよほどひどいレポート以外は合格にし、授業は欠席自由。私の講義を聞きたい学生だけを相手にすることにした。
大学による偏差値の高低差は関係ない。どの大学も熱心な学生は1割程度。しかしアメリカの学生はそうではないらしい。スタンフォード大アメフト部のコーチの河田剛氏は、アメリカの学生は「寸暇を惜しんで練習の合間にもノートを開いて勉強する」という。
関西学院大アメフト部の鳥内監督も「ウチは落第点の学生には練習させない」という。が、こういう意見は、日本の大学や高校の運動部では少数派だろう。
高校野球の猛暑対策も喫緊のテーマだろうが、試験期間中の試合は許されないはず。年間を通しての週末だけのリーグ戦で各県の代表チームを決めるなど、来年の101回目の大会からは、ぜひとも大幅な改革に挑んでほしいものだ。 |